前回記事「グルメ系漫画にみる、外食トレンドのこれから」からの続き。後編です。
今回は、カメラマンとしてインターン生のダイヤくんとぼくとで、山女庵に突撃インタビュー取材に訪問させて頂きました。

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今日は楽しみですね。

 いっちゃん
Foodionの料理人さんのインタビューとはまた違った話になりそうですしね。
カメラよろしく!

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ばっちりです、任せてください!

ジビエ料理の魅力を伺うため、クックビズ取材班は一路天下茶屋へ。駅から徒歩5分ほどの場所にある天然鳥獣山菜魚料理 山女庵。
店内は古民家のような落ち着いた雰囲気で、無垢の木のロングテーブルが2つ並んでいるだけというシンプルな内装。

完全予約制で、予約がないときは猟に出て食材を調達しに行くという。
山女庵は、現店主のお父さんが始めたお店で、現在は息子さんの康正さんが後を継がれていた。
残念なことに今年1月に先代が亡くなられたということだったが、幼い頃から先代に連れられ猟をしたり調理をしたりと、康正さんにその「技」はしっかりと受け継がれている。
先代が築きあげた山女庵のコンセプトを何一つ変えることなく、現在でも自然から調達した食材を提供するというスタイルを貫いているとのこと…

今年で30年になるという天然鳥獣山菜魚料理 山女庵。現店主、三池 康正さんにジビエ料理、野生鳥獣料理の魅力をお話頂いた。

 

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いざ、ジビエ専門店「山女庵」へ

 いっちゃん
今回はインタビューへのご協力ありがとうございます!
本日はよろしくお願い致します!

 店主
はい。

 いっちゃん
さっそくなんですが、山女庵さんでは食材をご自身で調達されるということをお聞きしたのですが、実際に山にとりに行かれたりしているのでしょうか。

 店主
そうです。春は山菜や鳥、夏はうなぎ、すっぽん。秋はきのこ、冬はイノシシ、シカ、鴨やキジ…
一年を通して自然から天然のものを頂きながらお店をしています。

 いっちゃん
山女庵は店主のお父様がはじめられたお店という事なのですが、そもそもどういう経緯で山女庵をはじめられたのでしょうか。

 店主
うちはおじいちゃんが狩猟犬を育てるという仕事をしていまして、親父は小さい頃から狩猟をするのが普通だったというか、生活の一部のような育ち方をしてたんです。親父はもともと建築業に携わっていたんですが、親戚が居酒屋をはじめて、その店を手伝うような形で、親父が狩猟したものを提供する事をし始めていまの山女庵のスタイルになりました。

 いっちゃん
なるほどぉ、そういう経緯があったんですね…
一般の人からすると、狩猟というのがあまり身近なものではないのですが
大阪から狩猟できる場所となると、どこに行くのでしょうか?

 店主
親父が三重の尾鷲育ちなんですね、狩猟仲間も三重にいるので、ぼくは三重でいまも狩猟をさせて貰ってます。あとは和歌山ですね。
完全予約制のお店なので、予約がない日は山なり川なり海なり獲りに行きます。

 いっちゃん
自分で獲ってきて自分で料理して

 店主
そうそう

 いっちゃん
いやぁ~~すごい!

 店主
なんとかね、”特殊”というのでやらせてもらっています。

 いっちゃん
地方ならまだしも、大阪市内ですからね。

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意外と女性にウケている?ジビエ料理の魅力

 いっちゃん
ここ最近ジビエ料理というのが少し注目されつつあるのかなと感じているのですが、ご来店されるお客様の層だとか変化があったりしますでしょうか。

 店主
ネットのおかげかなと思うんですが、最近は若い人が多くなりました。
親父の時代と比べれば客層はガラッとかわりましたよ。
すっぽんの時期とかはね、もう女性の方が多いです。

 いっちゃん
へぇ女性の方が、意外です。

 店主
コラーゲンが肌にいいとか、そういうのに関心が高い人が来てくれてるのかなと思いますね。

 いっちゃん
なるほどぉ、すっぽん女子ですね
若い人もジビエに興味を持つ人が増えてきているのかもしれないですね。

ジビエ料理の魅力ってどういうものがあるのでしょうか。

 店主(苦笑い)
うちが取り扱う食材って、天然モノなんですね。
イノシシでもシカでもそうなんですけど、牛や豚みたいに悪い脂とかがついてないんですよ。

 いっちゃん
ほぅ…悪い脂というのは…

 店主
牛、豚は食用で美味しくするために、“作られてる”所はあるんですよね。
肥えさせたりするでしょ?サシ入れるために。食べるものも“美味しい肉を作るため”の食べ物をあげる。

でも、自然のなかで生きてるシカやイノシシは、葉っぱやどんぐりや栗、ミミズなんかを食べる。生きていくために色んなものを食べて、自分でつけた肉であり脂だから、無駄な脂肪がついていない。

シカ肉なんかは、高タンパク低カロリーで低脂肪。アスリートなんかにはもってこいですし、女性に好まれるお肉ですよ。
今は牛や豚が主流になって、野生鳥獣がゲテモノ扱いになっているけれど、「伝統肉」とも呼ばれていて、古来の日本ではむしろ重要なタンパク源として食べられていたものですからね。いまの多くの人にも食べてもらいたいですね。

 いっちゃん
そうですね…。一般食材として見られていないので獣肉の特性など知られていないですから、もう少し認知が広がってもいいのではないかと思います。

補足:シカ肉の栄養価については、必須脂肪酸をはじめ、必須アミノ酸、ビタミン類、ミネラル分を豊富に含まれており、体内では合成できない脂肪酸(必須脂肪酸)中でも、主に青魚に含まれる多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸)が非常に高く、脳神経の発達やアレルギー症状の緩和を助ける成分が含まれているとされている。またビタミンB群を多く含むので、新陳代謝を活発にして疲労回復を促進するほか、皮膚被毛を整え、肌や粘膜の健康維持にも役に立つと考えられている。

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ジビエには旬がある?野生生物ならではの取扱いの難しさ

 いっちゃん
獣肉料理を提供する上で、取扱いの難しさなどはあったりするのでしょうか?

 店主
まず美味しく頂くための条件として、色々ありますね。
イノシシであれば、まずは冬じゃないとだめです。
夏のイノシシ肉なんかは美味しくない。寒さから守るために脂肪をつけたイノシシは旨味が出て美味しいです。あと、うちはイノシシはメスしか出しません。
シカは逆で夏です。シカは筋膜に包まれてて全部赤身なんですね。だからサシが入らない。
夏にたくさん食べて皮下脂肪をつける。その頃が美味しい。冬は夏に蓄えたものを消費して越冬するんです。

 いっちゃん
同じ獣肉とはいえ、動物で旬が夏と冬と違うんですね。

 店主
「血抜き処理」がちゃんとできているか否かというのも、重要です。死んでからできるだけすぐに血を抜き、内臓を出し、肉を冷やさないといけないんです。
獣肉が臭いというのは、誤解と言うか、ちゃんとした処理をすれば、本当に美味しいお肉を頂くことができます。

 いっちゃん
臭みがあるんでしょ?という誤解を持っている人も多いのかもしれないですね。

 店主
ただやはり、そう簡単ではないですね。
処理を早くしないといけないというのは牛や豚も同じではあるんですけど、野生生物の場合は山で狩猟するから、そういうちゃんとした処理をする施設がその場にないわけなので。

 いっちゃん
なるほど。狩猟後、安全に処理する事が難しいんですね。

 

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どんどん増えてしまう野生生物の実態

 いっちゃん
狩猟をされていると、野生動物の変化があったりするのでしょうか。
増えているというようなことは聞いたことがあるのですが。

 店主
獲る人が減ってるんでね…。鳥類なんか増えてますし、シカやイノシシなんかも獣害駆除ということで、もういまは地元の猟師であれば一年中獲っていいよということになってます。
農家の人たちなんかは、買って植えたばかりの苗を一晩で全部やられますからね。獲って欲しいと言われます。
猟師仲間が狩猟するところでも、シカなんかは年間2,000頭ほど獲ってます。
イノシシは大きくなれば大きくなるほど賢くなって、檻とかで捕まえられなくなる。
仕掛けすると子どもはよく捕まるけど、大人のイノシシはなかなか。
ぼくらは肉とりたいから大きいの取りたいんですけどね…。
ぼくが行っている山ではシカは落ち着いてきてるけど、イノシシはちょっと減りそうにない。

補足:シカ、イノシシの増加は調べれば調べるほど、年々問題が深刻化している事が伺える。環境庁も数年前から対策として乗り出している。環境省のHP
”環境省と農林水産省は「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」(平成25年12月)を共同で取りまとめ「ニホンジカ、イノシシの個体数を10年後(平成35年度)までに半減」することを当面の捕獲目標としました。”


 いっちゃん
農家の人は死活問題ですね… 猟師も減ってるうえに、イノシシにおいては狩猟するのも難しいと。
猟師業って、それだけでは生活するのは難しいんでしょうか?

 店主
駆除費というのがあって、一応狩猟で金銭を得ることはできますが、それだけで食えるというのは難しい。駆除費の枠があるからね。本業にはなかなかしにくい。

 いっちゃん
狩猟したものを販売していくというのはできないもんなんでしょうか。

 店主
保健所関係の手続きとかもあって、個人で食べる分にはともかく、お店に出すとか販売するとかになると、食肉流通の許可が必要なんです。
昔みたいに川でさばいたようなものを、売ることができればもっと流通するんだと思いますが、いまはそういう事やっちゃダメとなっていますからね。販売するには、きちんとした裁き場で処理しないといけない。

 いっちゃん
なるほど…猟師で稼ぐためのハードルが高いんですね。
だからシカ、イノシシが増えすぎていても単なる駆除になっちゃう…。
獣肉の有効利用という意味でも、もう少し食べられる食材になってほしいですね。

 店主
ですね、やっぱり食べてあげることが、一番の供養になりますから

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野生生物や狩猟、ジビエをもっと身近に

 いっちゃん
獣肉を他の飲食店でも取り扱うというようなことは可能なんでしょうか?

 店主
今後は、増えていくんじゃないかと思いますよ。というのは、三重とかではそんな感じになっていて、地元の猟師仲間もさばいた肉を三重の津とか松坂のフランス料理屋さんに卸していたりしています。いままでシカのステーキといえばエゾジカが使われていたんですが、段々と日本シカが使われるようになってます。
京都の美山とかは町おこしでシカ肉を使っていたりしますしね。
大阪も北摂の方はシカ多いし、大阪産のシカを提供することもできなくはないはずですよ。

 いっちゃん
今年茨木の山にホタルを観に行った時にシカを何頭か見ました。こんな簡単にシカに出会えるのかと。
需要がいまよりももっと増えれば、狩猟が盛んになったり、猟師という商売が成り立つかもしれないですよね。

ご主人がイノシシ、シカの狩猟にでられるのは、年がら年中行ってらっしゃるんですか?

 店主
シカ、イノシシは、地元じゃない人間が狩猟できるのは、11月1日~2月の終わりまで。各県知事さんに申請書だして、狩猟免許もらって行うことができます。

 いっちゃん
もしですね、可能であれば、でかまわないのですが。
今日カメラマンしているインターンのダイヤ君を狩猟に連れて行ってもらうというのは可能だったりしますでしょうか?

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え?ちょ…

 店主
うん。全然いいですよ。

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え!?ええ?

 いっちゃん
ほんとですか!
ありがとうございます。ぜひご同行させて頂きたいです。

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あの…

 店主
ただ、罠に何時かかるかわからないんで、罠にかかったら連絡させてもらうという感じになりますが

 いっちゃん
はい!ぜひお願い致します。

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………。

 店主
これね、紀見峠で猟師仲間が捉えたイノシシなんやけど…

(スマホでイノシシの動画を見せてもらう)

 いっちゃん
おぉ、これで大きさどの程度ですか。
そこまで大きくないように見えますが。

 店主
50キロぐらいかな

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50!

 店主
100キロなるのもおります。

 いっちゃん
100キロ…はすごいですね。
ぶつかってこられたらちょっとした軽トラぐらいの衝撃がありそうです。

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めっちゃ暴れてますね…

 店主
これを電気ショッカーでバチッと

(動画でイノシシが倒れる)

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おお…おぉ…

 いっちゃん
もう一撃なんですね。

 店主
一瞬ですわ。いまはこういう便利なもんがあるんでね。
昔は竹でついたりとかしてましたが、電気だと苦しませずに仕留めてあげることができます。

………

……

っと話題が尽きないお話を沢山して頂きました。

ジビエの話題から、狩猟など普段の生活では触れることのない世界を知るきっかけになった取材になりました。
シカやイノシシがこれほどまでに増えていることなど、今まで問題視したことなどありませんでした。
いまの状況が改善されなければ目に見える問題が顕在化するかもしれません。
日本は国土の7割が森林が占めている国で、いまや彼らはその森林の王者となっています。
オオカミはとうの昔に絶滅しており、人は彼らを食べなくなりました。
生態系の頂点に立ち、止めどなく増える彼らは、将来的には日本の山々を荒廃させ、自然のバランスを破壊する存在になるかもしれません。

「狩猟」という命のやり取りを行う行為は、可哀想という情緒を越えたリアルがあります。
狩猟について興味を持つことは、もっと命を知ることに繋がるのではないか?
彼らに関心を持つことは、日本の自然について関心を持つこととに繋がるのではないか?
すっぽん女子流行らないかな?
そんな事を考えさせられました。

近い将来、シカやイノシシの肉が、スーパーでたまに見かけるという日が来ることを願いつつ、山女庵を後にしました。

 

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ぼくたちのジビエへの探求は続く…

 いっちゃん
ダイヤ君楽しみやね〜
狩猟取材

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マジで行くんですか

 いっちゃん
マジマジ。
生きて帰ってきてね。

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本当に連絡くれますかね…

 いっちゃん
それはお楽しみです。
熊獲ってきてね。

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それはハードル上げすぎです。

 いっちゃん
獲ってこれたら、皆で食べましょう。

今日話し聞いていたら、ジビエ料理食べたくなったよ。

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が、頑張ってきます。

 

狩猟取材ができ次第、またお送りします!お楽しみに!