世界最大のチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ(Salon du Chocolat)」の目玉イベントである「ワールドチョコレートマスターズ2018」のワールドファイナルが2018年10月31日から11月2日にかけて、パリで開催されました。20カ国の代表選手が3日間にわたる熾烈な戦いを繰り広げた結果、スイス代表のElias Läderach(イリアス・ラディラック)にショコラティエ世界一の称号が与えられました。また、日本代表の垣本晃宏シェフ(京都・アサンブラージュ カキモト)は2013年の大会に続き、4位入賞と健闘しました。
「ワールドチョコレートマスターズ」は、世界のチョコレート大手・バリーカレボー社が主催するショコラティエの世界大会で、2年に1度(今回のみ3年間隔)開催されます。2018年の今年は第7回にあたり、参加国は過去最多の20カ国に及びました。世界各国の予選を勝ち抜いた選手が、今大会に決められたテーマ「未来都市(Futropolis)」に沿って、3ラウンド、7つの課題を完成させなければなりません。
この大会での優勝タイトルはショコラティエの今後のキャリアに大きく影響するだけではなく、ここで製作した作品が後に商品化され、数ヶ月後、数年後に街中で新しく流行るものの予告となったことも度々ありました。
このチョコレート界の一大イベントの様子、今年の優勝者や優勝作品とともに各課題の部門賞の結果をお届けします。
優勝はスイス、トップ3にフランス、アメリカ、欧米勢が表彰台を独占
優勝したスイス代表のElias Läderachは7つの課題のうち、4つの課題で最優秀作品を獲得し、文句無しの1位に輝きました。Läderachシェフは今大会において、3Dペインティングの技術を採用し、特に初日のピエスモンテ(チョコレートの細工物)と3日目のチョコレートデザインにおいて一貫したデザインテーマを貫き、そのシャープなデザインと、細部に至るこだわり、そして熟練したテクニックは審査員から高評価を頂きました。
また、第2位はフランスのYoann Laval(ヨアン・ラヴァル)、第3位は米国のFlorent Cheveau(フローレント・シェブー) が選ばれました。Cheveauシェフは初日の課題2「ピエスモンテ」を時間切れですべて組み立てきれなかった悔しさから一転し、2日目、3日目に高水準な作品を連発しました。初日の4位から逆転し、見事トップ3の座を掴んだのです。また、Cheveauシェフのフレッシュパティスリーは当該部門の最優秀賞にも選ばれています。
他部門の受賞者たち
ベストチョコレートのトラベルケーキ賞はイギリスのBarry Johnson(バリー・ジョンソン)に授与されました。Johnsonシェフのトラベルケーキはグルテンフリーの生地で仕上げられ、ケーキの箱はリサイクルコーヒーカップで作られています。携帯性の良さ、味のコンビネーション、サスティナブルの面で高評価を得ました。
ベストオールノワール(チョコレートタブレット)賞は、デンマークのTor Stubbe(トール・スタッブ)に与えられました。Stubbeシェフは自らに作品について「初めは繊細でフルーティーな口当たり、最後はインパクトなココアで仕上げています。エルダーフラワーはイギリスでよく見かける花です。この作品は家のカーデニングで栽培できるものを象徴しています。中身はエルダーフラワーのジャム、苺のガナッシュとデニッシュクッキーをベースにしています。作品名はアシリ、つまり心の笑顔だ」と述べました。Stubbeシェフの作品は終始家族への愛、自然への愛に満ちあふれ、緊張した試合の空気にどこか朗らかな雰囲気を与えていました。
日本代表・垣本晃宏氏の集大成。垣本シェフとその作品
日本代表の垣本晃宏シェフは2013年第5回ワールドチョコレートマスターズの日本代表としても選ばれており、今回は2度目の参戦です。試合前のインタビューでは「最大の敵は自分であり、今回の大会ですべてをぶつけたい」と述べていました。49歳のベテランは3日間通して安定したパフォーマンスを発揮し、これまで華々しい実績を残してきた日本代表としての総合力をもう一度世界に見せました。
フレッシュパティスリーの課題では、貝殻のチョコレートの器にフローズマリーとルビーグレープフルーツを合わせた創意工夫に溢れた作品を作り上げ審査員より高い評価を得ました。作品に使用した食材の組合せについて、「近い将来、新鮮な野菜やハーブは、果物より利用しやすくなる考えています。ローズマリーやディルのようなハーブの刺激的な香りは、食品とうまくマッチし、グルメフードには欠かせないものです。」と語っています。
最終課題のチョコレートデザインではピエスモンテ同様、女性、花、野菜を取り入れ、一貫した作品観を作り上げました。最終作品については、「将来、都市で食糧を育てるのは難しくなると思います。特に、果実は木が育つことが必要です。野菜はそれほど多くの栽培スペースを必要としないため、未来ではより多く使用されると考え作品に取り入れました。また、チョコレートの世界では、チョコレートと野菜を同時に使用できると考えています」と述べています。
<最終順位>
1位. Elias Läderach (スイス) 552点
2位. Yoann Laval (フランス) 529点
3位. Florent Cheveau (アメリカ) 517点
4位. 垣本晃宏 (日本) 507点
5位. Eun-Hye Kim (韓国) 478点
6位. Tor Stubbe (デンマーク) 468点
7位. Michal Iwaniuk (ポーランド) 461点
8位. Barry Johnson (イギリス) 448点
9位. Jurgen Baert (ベルギー) 434点
10位. Desmond Lee (シンガポール) 390点
■参考
写真提供 | World Chocolate Masters |
大会プレスリリース | こちらから |