平田明珠シェフがフライパンで調理している写真

ワールド・パスタ・マスターズ」は、今年で7年目を迎えるパスタ料理の国際競技会。〝パスタ界のW杯〟とも言われるこの大会は、予選を勝ち抜いた世界各国の若手イタリアンシェフがイタリア・ミラノに集結し、パスタ料理の技・味を競い、コンセプトや情熱をプレゼンテーションしてワールドチャンピオンを目指します。
去る6月4日には日本予選・最終選考会が行われ、2018年の日本代表が決定しました!日本代表に選ばれた平田明珠さん(「Villa della Pace(ヴィラ・デラ・パ―チェ)」オーナーシェフ)に予選を振り返っていただき、イタリア料理への思いや本選に向けた意気込みを聞きました。

パスタ界のW杯「ワールド・パスタ・マスターズ」とは?

「ワールド・パスタ・マスターズ」(旧大会名「バリラ・パスタ・ワールドチャンピオンシップ」)は、イタリアの食品会社バリラと、バリラが運営するイタリア食文化の教育機関「アカデミア・バリラ」が共催するパスタ料理の国際競技会です。イタリア食文化の継承を目的に、イタリア料理のシェフが世界の檜舞台で活躍するための登竜門となることを目指して開催されています。
2012年の第1回大会以来、今年で7年目を迎える今大会。昨年から出場資格を「満35歳以下、イタリアンレストランでの実務経験3年以上」と定め、若手の支援・育成に注力。2018年から大会の名称も変わって新たなスタートを切りました。
2018年大会は世界17カ国以上の代表18名が、10月にイタリア・ミラノで行われる本選に出場。料理の技・味・プレゼンテーションの評価で世界チャンピオンの座を競います。

初の実技審査が行われた「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」日本予選

6月4日に行われた「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」日本予選では、書類選考に加えて、第2次選考として初の実技審査を導入。ファイナリストに選ばれた3人のシェフが東京の会場に集まり、実技デモンストレーションと、英語またはイタリア語でのプレゼンテーションを披露しました。審査員は2017年の日本代表弓削啓太さん(「SALONE2007」料理長)、2016年の日本代表宮本義隆さん(「ICARO Miyamoto」オーナーシェフ)、第1回大会で本選に出場し見事世界チャンピオンに輝いたレストランコンサルタントの山田剛嗣さん、そしてバリラジャパン株式会社の堀込玲さんの4人が務めました。

平田シェフと審査員4名の写真

2018年大会日本予選の審査員、弓削啓太さん(写真右)、宮本義隆さん(右から2番目)、山田剛嗣さん(左から2番目)、堀込玲さん(左)。中央は日本代表に選ばれた平田シェフ

2018年大会の日本予選ファイナリストは、「Biodinamico(ビオディナミコ)」(東京都)スーシェフの浅賀直斗さん、「Ca’ del Viale(カ・デル・ヴィアーレ)」(京都府)スーシェフの川崎大輔さん、そして「Villa della Pace(ヴィラ・デラ・パ―チェ)」(石川県)オーナーシェフの平田明珠さん。
イタリア・ミラノの本選さながらに行われた実技審査の結果、日本代表は平田シェフに決まりました。

「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」日本予選ファイナリストの3人の写真

「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」日本予選ファイナリストの3人。平田明珠さん(中央)、浅賀直斗さん(右)、川崎大輔さん(左)

日本代表は平田シェフに決定!イタリア料理への思いと地方への情熱

「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」の日本代表、平田明珠さんの経歴をご紹介しましょう。
平田さんは1986年東京都生まれ。大学卒業後、一般企業で営業職を経験しますが「ものづくりをしたい」という気持ちがあり、もともと料理が好きだったこともあって都内のレストランで修業を始めます。知り合いのつてがあったため、たまたまイタリアンのジャンルでキャリアをスタートすることになりましたが、イタリア料理を知るにつれ、その魅力にはまっていったと言います。

エプロン姿の平田シェフの写真

「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」日本代表、平田明珠さん

「店で働き始めてからイタリア料理の奥深さを知ったんです。イタリア料理と一言で言っても、土地によって調理法も食材も全く違う。地元の食材や、土地に根付いた食文化を大事にしているというところに面白さを感じて、虜になりました」(平田さん)
平田さんは「Biodinamico」「CICADA」など都内の有名店で働きながら、イタリアに行くことを考えていました。一方で、仕事を通じて日本各地の生産者とのつながりができ、産地を巡る中で、イタリアで修業するよりも、日本の地方で店を持ちたいという気持ちが強くなります。海も山も近く、地元の食材が豊富な石川県七尾市の土地柄に惹かれた平田さんは、2016年9月に「Villa della Pace」をオープン。「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」の予選を勝ち抜いた料理も、石川県の食材を活かしたひと皿です。

日本予選を勝ち抜いた、甘エビを使ったパスタ料理

平田さんが日本予選で提供したパスタは、“Spaghetti alla Carbonara con Gamberetti(甘エビのカルボナーラ)”。
「ワールド・パスタ・マスターズ」の本選は、調理済みの素材は持ち込まずに、30分以内ですべての調理を終えるという制約があり、日本予選も同じ規定で進行しました。平田さんは「ブロード(出汁)の持ち込みも禁止されていたので、限られた時間でどうやってソースの旨味を出すかが課題でした」と振り返ります。短時間で味が引き出せる素材を探し、地元の乾物店で干し甘エビに出会いました。
「はじめは別の海産物を試していたんですが、能登産の干し甘エビでひいた出汁は旨味が凝縮して臭みがなかったんです。小麦の香りが印象的なバリラのパスタを活かせる味わいだと思いました」(平田さん)
干し甘エビは、頭から尻尾までを余すところなく乾燥させて仕上げたもので、市場で売るには規格外となってしまう甘エビや、刺身に加工する際に出る殻・頭なども材料にしており、食材のロスを減らすことに貢献しています。平田さんは今回の大会で掲げられた〝Eat Positive〟のテーマを深くとらえ、見た目に美しく、おいしく、そして健康にという一般的な解釈にとどまらず、生産者や環境にまで配慮した食のあり方を提案したかったと言います。

フライパンでパスタとえびがゆでられている写真

平田さんは、干し甘エビとパスタを一緒に茹でることで麺にエビの旨味を含ませた

パスタは、1.7㎜のバリラ スパゲッティNo.5をセレクト。「干し甘エビの出汁をひく時、同じ鍋にパスタを入れて一緒に茹でることで、甘エビの旨味を麺に含ませることができ、バリラのパスタの特徴である小麦の香りも逃さずに提供できると考えました」と平田さん。

平田シェフのパスタの写真

平田さんのパスタ“Spaghetti alla Carbonara con Gamberetti”

パスタが茹で上がった後に出汁を煮詰めて濃度を調節し、卵黄とオリーブオイルを加えてカルボナーラソースに。パスタとソースを和えた後、いろどりと清涼感を付加するためピンクペッパーを振り、爽やかな酸味のあるオキザリスを添えました。
濃厚な甲殻類の旨味とパスタの小麦の風味が楽しめるこの“Spaghetti alla Carbonara con Gamberetti(甘エビのカルボナーラ)”は、プレゼンテーションの内容も含めて審査員の高い評価を得ました。

10月の本選はイタリア・ミラノで開催

「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」の本選は、2018年10月24~25日にイタリア・ミラノで開催されます。参加国はイタリア、カナダ、米国、ブラジル、オーストラリアなど17カ国以上から合計18名を予定。世界の若手シェフが集まり、若手イタリアンシェフのワールドチャンピオンが決まります。

レストラン「Villa della Pace」の店内の写真

平田さんのレストラン「Villa della Pace」の店内

平田さんは本選に向け「世界中の若手シェフが集まる機会はなかなかないですから、勉強するチャンスですし、成長したいと思っています。地元・石川県の食文化を発信できる場でもあるので、世界に向けて存分にアピールしたいです」と語ってくれました。

平田さんが日本予選で提供した“Spaghetti alla Carbonara con Gamberetti(甘エビのカルボナーラ)”は、平田さんのレストランで食べることができます(要予約)。日本の若手ナンバーワンのパスタ料理と、石川県産の食材を使ったイタリア料理のコースをぜひ堪能してみてください。

パスタ界のW杯での、日本代表の活躍を期待しましょう!

写真提供/バリラジャパン株式会社

店舗名 Villa della Pace(ヴィラ・デラ・パーチェ)
住所 石川県七尾市白馬町36-4-2
TEL 0767-58-3001

※日本予選で提供したパスタ料理は、席予約にあわせて要予約。