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幅広い世代に「低糖質」は浸透!でも女性とシニアが満足する商品がない?!
まず「低糖質」について、一般消費者はどんなイメージを持っているのか、どういった性世代が高い関心を持っているのかを調べてみました。首都圏・関西圏・東海圏に住む20歳から69歳の男女約1万人を対象に、「ホットペッパーグルメ外食総研」が実施したアンケート調査が実施したアンケート結果をもとに、ひも解いてみます。
◆外食店の低糖質メニューを今後、食べてみたいですか?
全体の過半数となる52.6%が「食べてみたいと思う」と回答。「低糖質」=中高年男性のメタボ対策ワードのイメージがあったのですが、世代を超えて浸透していることが分かります。
関心が高いトップ3性世代は、1位:30代女性(65.7%)、2位:20代女性(65.0%)、3位:50代女性(61.7%)。今後、女性向けの低糖質メニューやスイーツの開発がさらに求められそうですね。
◆外食店の低糖質メニューを直近1年で食べたことがありますか?
一方で、実際に低糖質メニューを「食べたことがある」のは全体の14.7%。過半数を超えた関心度の高さと比べると、かなりの開きがあります。特に、50代・60代のシニア層に「食べてみたいとは思うが、実際に食べたことがない」という傾向があり、低糖質商品ニーズの伸びしろを感じます。
では、「食べてみたいと思わない」理由を探ってみましょう。
◆外食で「低糖質メニュー」を食べてみたいと思わない理由は?
一番多かった理由は、「おいしくなさそう」。実際に食べていない人が多いことから、「食べず嫌い」ともいえるでしょう。50代・60代女性に焦点をあてると、「外食では食事の制限をしたくない」「炭水化物や甘いものなど、糖質の高いものが好きだから」「成分や調味料・甘味料などが体に悪そう」といった意見が目立ちます。好きなものを我慢したくないという思い、低糖質食材への不安が浮き彫りになりました。

データ出典:ホットペッパーグルメ外食総研「外食店での低糖質メニューへの関心について」アンケート実施結果データより/外食で低糖質メニューを「食べてみたいと思わない」と回答した人が複数回答(2017年11月16日)
つまり、逆手にとれば「おいしい!と実感できる」「好きなものを我慢しなくてもいい」「素材へのこだわり・安心感が伝わる」低糖質メニューであれば、関心の高い女性とシニア層に幅広く受け入れられる可能性がありそうです!
京菓子の老舗から生まれた和菓子の新ブランド
「おいしい」「我慢せず食べられる」「安心できる素材」。そんな低糖質メニューの理想に早くから取り組み、商品化に成功した和菓子店が京都にあります。創業210余年を誇る京菓子の老舗「亀屋良長(かめやよしなが)」が、2016年に新しく立ち上げた新ブランド「吉村和菓子店」です。
新ブランドを立ち上げたのは「亀屋良長」八代目・吉村良和さんの妻でもある、吉村由依子さん。八代目の病気と糖質を気にする来店客の声がきっかけで、「体にも心にも優しい素材にこだわった和菓子を作りたい」という想いが芽生えたそうです。
「吉村和菓子店」の和菓子は、糖質の中でも体内でゆっくりと吸収される性質を持つ「スローカロリー」と呼ばれる「GI(グリセリン・インデックス)値」が低い食材にこだわっています。スローカロリー=低カロリーなのではなく、食べてからの血糖値の上がり方・糖分の体内吸収スピードがスロー(ゆるやか)で体への負担が少ないのが特徴です。玄米、豆類、ココナッツなど、食物繊維が多く、精製度が低いものがGI値も低い傾向にあります。
実は、和菓子作りに欠かせない白砂糖は、精製度が高くGI値が高め。「スローカロリーな和菓子の実現にあたり、最も苦労したのが白砂糖に替わる甘味料探し。精製度が低い食材は、玄米に代表されるように茶系の落ち着いた色合い、野趣あふれる素朴な風味が特徴。和菓子らしい上品な甘さ、季節感、華やかさを表現できるか正直とても不安でした」と由依子さんは振り返ります。
由依子さんと八代目はアイデアを出し合い、議論を重ね、気が遠くなるほどたくさんの素材で試作・試食を繰り返しました。「心折れそうになることもありましたが、和菓子を食べたいのに持病で食べられないというお客様が結構いらっしゃることを知り、そうしたお声にも応えたかった」と由依子さん。
そして試行錯誤の末、白砂糖に替わる理想の甘味料として、はちみつに含まれる成分のパラチノース®やココナッツシュガーなどの天然甘味料と出逢い、ついに商品化に成功します。

「吉村和菓子店」を立ち上げた吉村由依子さん(左)と、その想いが詰まった和菓子の商品化を210余年受け継がれてきた技で支えた「亀屋良長」八代目・吉村良和さん(右)。取材中も新商品のアイデアがお二人の間で飛び交っていました!(ライター撮影)
和菓子なのに白砂糖を使わない!新感覚・新食感のスローカロリースイーツが誕生
では、「吉村和菓子店」の代表スイーツを紹介しながら、原料や商品化に込められた想いに具体的に迫ってみましょう。
◆美甘玉(みかもだま)
商品化第1号スイーツで、「亀屋良長」代表銘菓である『烏羽玉(うばたま)』のヘルシーバージョン。ココナッツの花の蜜とココナッツミルクで作った飴玉(あん)を、ココナッツシュガーの寒天でコーティング。口いっぱいに、キャラメルのようなコクのある甘い香りが広がります。ココナッツシュガーの優しい甘さは、緑茶・ほうじ茶などの日本茶はもちろんのこと、紅茶やコーヒーにも合います!
◆焼き鳳瑞(やきほうずい)〜種まき〜
古くからある伝統的なお干菓子の一種「鳳瑞(ほうずい)」をヒントに誕生。ココナッツシュガーで泡立てた卵白を使い、低温でじっくり乾燥焼きすることで、驚くほど口どけがふわっふわのメレンゲ菓子に。有機発芽玄米、韃靼そばの実、抹茶、塩ポン菓子のトッピングも香ばしさのアクセント。「元気に育ちますように」との想いを込め、種まきをした畑をイメージした見た目も縁起を大切にする和菓子らしさを感じます。
◆焼き鳳瑞(やきほうずい)〜季節限定品〜
和菓子としての「季節感」にこだわり、夏・秋・バレンタインの季節限定バージョンの焼き鳳瑞を商品化。
秋限定の「実り」(写真左)は、収穫祭をイメージして、リンゴ、柚子、カカオ豆、ビーツ、トマトなどをトッピング。メレンゲ生地にもビーツで優しく色付けしてあり、とてもロマンチックです。
また、夏限定の「お茶畑」(写真右)は、プロの茶師が厳選した抹茶、煎茶、玉露、ほうじ茶など9種の茶葉とマリアージュ。京都らしさも感じられます。

左:秋限定「実り」9個入り・袋包装1100円・木箱包装1350円(税別)
右:夏限定「お茶畑」9個入り・袋包装1000円・木箱包装1250円(税別)
他にバレンタイン限定バージョン「待ち春」もあり。(写真提供:吉村和菓子店)
◆焼き鳳瑞(やきほうずい)〜あづき茶〜
2017年末に誕生した、「スローカロリー」和菓子の完成形ともいえる新作。砂糖だけでなく、卵白も不使用。卵白の代わりに、あづき茶(小豆の煮汁)を泡立てたメレンゲを使用しています。「小豆の煮汁が泡立つなんて私も驚きました」と由依子さん。食べてみると、きめが細かく、優しい味わいで、口の中で淡雪のようにとけてゆきます!
この新作は、海外で注目度が高まっている「ヴィーガン(完全菜食主義)」のことを、アメリカ出身のスタッフから聞いたのが発想のきっかけ。ヴィーガンの間で、ひよこ豆の煮汁を泡立てたメレンゲのスイーツが流行っていることを知り、同じ豆類の小豆でもメレンゲが作れるのでは?と思いついたそう。
「和菓子のあん作りで、小豆の煮汁は毎日のように作っています。小豆の煮汁にはポリフェノールやカリウムなどのミネラル成分が含まれているので、再利用できれば一石二鳥。和菓子店ならではのヴィーガンフードです」(由依子さん)
健康意識の高い客層に、ギフトや自分へのご褒美スイーツとして人気上昇中!
新ブランド立ち上げから約1年半。当初は「健康を気遣うシニア層」向けと考えていたそうですが、商品の見た目の愛らしさから20代・30代の若い女性客にも好評とのこと。
また、「種まき」「実り」といった縁起の良いネーミング、円満を連想する円い形、贈り物として負担にならない軽さ(「焼き鳳瑞・種まき」の袋包装で約39g、木箱包装で約118g:ライター実測値)、日持ちの良さ(常温で30日)から、開店や出産などの記念品としての注文も増えているそうです。
「毎日おやつに食べられる」「一度にぜんぶ食べても罪悪感がなく、胃がもたれない」と、大量に大人買いして帰る常連客もいるとか。まさに、「おいしい」「我慢せず食べられる」「安心できる素材」を兼ね備えた和のヘルシースイーツといえそうです。

左:ギフト専用木箱には、縁起が良く「亀屋良長」の紋でもある亀甲柄をデザイン。
右:「焼き鳳瑞」シリーズには、素材のこだわりを紹介するお菓子のプロフィールカードが添えられています。(写真提供:吉村和菓子店)
京都の本店でしか体験できないイートインのお楽しみも
「吉村和菓子店」の商品はオンラインショップからも購入可能ですが、店舗内にある茶房でしか味わえない限定スイーツ、さらにブランドの垣根を超えたコラボレーションメニューがあります。
イートイン限定メニューの一つは「わらび大納言」。国産の本わらび粉に低GI値のココナッツシュガー、パラチノース®を合わせて練り上げています。わらび餅に添えられているのは、丹波大納言小豆と甜菜(てんさい)糖で炊いた粒あん、国産無農薬大豆で作ったきなこ粉。ぷるぷると弾力のある食感で、「甘さ控えめでも食べ応えがある」と好評だそう。
さらに、2017年末から新メニューも登場! 「吉村和菓子店」の『美甘玉(みかもだま)』をはじめ、その発想の原点となった「亀屋良長」の代表銘菓である『烏羽玉(うばたま)』、さらに洋菓子パティシエとのコラボレーションが特徴の別ブランド「Satomi Fujita by KAMEYA YOSHINAGA」の『まろん』の3種類が一皿になり、味比べが楽しめるコラボレーションセットです。
女性の視点を生かした商品提案で、和菓子好きを増やしたい!
女性らしい感性×新食材×老舗和菓子の技のコラボーレーションから生まれた、「吉村和菓子店」のスローカロリースイーツ。和菓子の常識にとらわれない素材を取り入れつつも、和菓子らしい上品な甘みと奥深い風味がちゃんと感じられるのは、210余年にわたり連綿と受け継がれてきた伝統技術が息づいていればこそ。
「性別・年代・国籍の区別なく、より大勢の方に和菓子に親しんでほしい。そのためには伝統を守るだけでなく、新しいチャレンジも必要。老舗の亀屋良長としては難しいトライアルも、先入観なく自由にチャレンジできるのが吉村和菓子店のメリットだと思っています」と由依子さんは意欲をのぞかせます。
「ケーキやクッキーと同じように家庭でも和菓子を作ってほしい」との思いから、初心者でも簡単においしい粒あんスイーツが作れる、手作りキットも提案。家族やホームパーティで楽しめる分量をパッケージ化し、丁寧なレシピも付いています。

手作りあんこセット・1000円(税別)。てんさい糖で作る優しい甘さの粒あんが特徴。沸かしたお湯で簡単に作れる道明寺粉付きで、おはぎ10個、菊もなか6個、ぜんざい4人分が作れます。(写真提供:吉村和菓子店)
「お店の味にはない、手作りならではの出来立てのおいしさがあります。幼い頃にお母さんが炊いてくれたあんこを食べた記憶があると、大人になってからもずっと和菓子好きでいてくれる気がして」と優しく微笑む由依子さん。ご自身もママでもある由依子さんのインスピレーションの源は「日々の生活」にあるそう。家族の健康への気遣いやライフステージの変化を柔軟に受け入れる、女性ならではの視点を生かした新発想の和菓子に、これからも期待が高まります!
■取材協力
企業名 | 吉村和菓子店 |
URL | http://yoshimura-wagashiten.com |
所在地 | 京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19 亀屋良長店内 |
TEL | 075−221−2005 |