日本には、慢性的な人手不足や採用難に悩まされている企業が多くあります。特に飲食業界の人手不足は深刻。今後さらに少子高齢化が進む中で、労働力の確保は重要な課題です。
2018年8月にローンチした「Taimee(タイミー)」は、労働力不足の解消を目指し、「この時間だけ働いてほしい」という企業や雇用主と、「この時間だけ働きたい」という即戦力の働き手をマッチングするワークシェアリングアプリ。既存の労働力をフル活用するための、単発業務のマッチングプラットフォームです。
「Taimee(タイミー)」は、飲食業界の人手不足を解消するツールとなるか?サービス開始前に開かれた記者発表会の内容をレポートします。
目次
開発者は21歳現役大学生!「やることがない」暇な時間を豊かに使えるアプリってないの?
ワークシェアリングアプリ「Taimee(タイミー)」を運営する株式会社タイミー代表の小川嶺さんは、1997年生まれの現役大学生。「Taimee(タイミー)」は、小川さんの実体験から生まれたサービスです。
小川さんはもともと起業に強いモチベーションを持っていました。大学入学後はビジネスコンテストに挑戦し、優勝。コンテストの賞金を元手に株式会社を立ち上げスタッフを募り、アパレル関連のサービスを立案しました。
しかし、資金のメドが立ったタイミングで事業への迷いを覚え、断腸の思いでプロジェクトを断念することに。全力で取り組んでいた事業はストップし、チームも解散となります。
「それまでは24時間ずっと、そのアパレルのサービスのことを考えたり、営業にまわったり、とにかく忙しくしていました。でもそれがなくなったとたん、なにもやることがないな、という状況になったんです。それで、家でずっとYouTubeを見て過ごしたりして…。その時“時間が豊かじゃない”と感じました」(小川さん)
そこで小川さんは、「自分の暇な時間を入力すれば、その時間でできることをサジェストしてくれる便利なアプリってないの?」と思い、調べ始めたと言います。結果的に、それがワークシェアリングアプリ「Taimee(タイミー)」を開発するきっかけになりました。
「この時間だけ働きたい」働き手と、「この時間だけ働いてほしい」雇用主をマッチングする「Taimee(タイミー)」
小川さんは自身の経験を踏まえて、世の中の「無駄になっている時間」に着目。既存の労働力をフル活用する仕組みを考えました。
「Taimee(タイミー)」は、「この時間だけ働きたい」という働き手が時間や場所、持っているスキル等を投稿し、「この時間だけ働いてほしい」という企業や雇用主が詳細な条件を提示することで、お互いにニーズのあった人材や案件をマッチングするアプリ。これまで可視化されていなかったスキマ時間を有効に使えるサービスです。
では、「Taimee(タイミー)」のサービスの特徴を見ていきましょう。
■応募や面接の手間がない“オートマッチング”、掲載費無料でコスト減
働き手はプロフィールを登録します。時間が空いた時に働ける日時と場所を入力すると、企業や雇用主のオファーの中から、その日時・場所、働き手のプロフィールに合致した仕事がオートマッチングされ、提示されます。働き手は興味のある案件に対して自分の持っているスキルなどを追加で申告します。
企業・雇用主側は、自由入力でピンポイントに条件を提示できます。記者発表当日のデモンストレーションでは、「スターバックスで働いたことのある人」など、かなり具体性のあるフレーズが入力されました。求めている人物像や条件を詳細に示すことでミスマッチを最小限にし、即戦力で働いてもらえる人材とのマッチングが可能です。
働き手と企業・雇用主が入力した内容をもとにお互いに条件が合う相手とつながった後は、面接なしで、アプリ上で契約が成立します。採用にかかわる負担は労使双方で軽減。企業・雇用主の求人掲載費や登録料は無料で(システム利用料は日給の30%)、採用コストも抑えられます。
■相互レビュー評価の導入でミスマッチを防止
「Taimee(タイミー)」は、仕事をした後に、働き手と企業・雇用主が相互レビュー評価をする仕組みになっているため、働き手の仕事ぶりや、職場の状況も前もって確認できます。面接がないため、想定と違った働き手が来てしまうのではないか、または、出勤してみないと職場のムードがつかめない、等の懸念が生じますが、このレビューを見れば実態がわかります。
■ドタキャン防止の工夫
「Taimee(タイミー)」では独自の助け合い機能を実装し、万が一時間になっても働き手が来ない場合は同じ日時を指定している働き手に自動で通知が届き、代わりの働き手をオファーできるシステムになっています。
また、これまでにドタキャンや遅刻などしたことがない、信頼できる働き手かどうかは、相互レビュー評価の情報でも確認することができます。
ギグエコノミーは、飲食業界の人手不足を解消できるか?
記者発表当日には、「Taimee(タイミー)」の支援者も駆けつけ、支援の背景などをスピーチしました。
ソーシャルメディアやシェアリングエコノミーに注力し、起業家への投資にも力を入れている、株式会社GAIAX代表執行役社長で、一般社団法人シェアリングエコノミー協会代表理事の上田祐司さんは、「『Taimee(タイミー)』は、ギグエコノミー(ネットを通じて単発・または短期の仕事を請け負うこと)のど真ん中のサービス。利用者は、例えばUBERのドライバーの感覚と非常に近い。働く人がいかに働きやすいところ、働くスタイルを、自由に選ぶか。今必要とされているサービスであり、働き手にとって使い勝手のいいアプリだと思います」とスピーチ。
外食産業発展のための事業を展開する、株式会社フードリンクグループ代表取締役の安田正明さんは「外食業界は人がいないと成り立たない。業界にとってアルバイトスタッフというのは非常に大事な人手で、アルバイトの人材を増やすことができるのがこの『Taimee(タイミー)』というサービス。単発の仕事依頼では、単純作業しか任せられないだろうとも考えますが、サービスが浸透してその働き手のレビューがたまっていくことでプロ化していくのではないか、という期待もある。例えば接客を極めたプロフェッショナルな人がこういうアプリを使って、全国を旅しながら仕事するという生活もできるかもしれない」と、飲食業界での「Taimee(タイミー)」の広がりを期待するコメントをしました。
目指すのは信用経済やフィンテックの領域
小川さんが現在クライアントを開拓しているジャンルはおもに、コンビニ業界、イベント業界、リサーチ業界、そして飲食業界です。
小川さんは飲食業界での「Taimee(タイミー)」のサービスの在り方について「接客マニュアルがあり、同じメニューを扱うチェーン店では、その店で働いた経験のあるOB、OGであれば即戦力の働き手としてマッチングしやすいですし、そもそもメニューが少ない店などでは、導入していただきやすいサービスだと思っています。営業した感触もとてもいいです」と語ってくれました。
「でも、単発の仕事でどれだけ店に貢献できるか。どうフィットさせていくかは、これからの課題として考えていきたいです」と、もてなしと接客技術、キッチンでは調理技術が要求される飲食業界ならではの人材登用の難しさについても指摘しました。
小川さんが最終的に目指しているのは、信用経済やフィンテック(FinanceとTechnologyを合わせた造語。金融テクノロジー)の領域にまで踏み込んだ、世の中を変えるサービスを作ることです。
「Taimee(タイミー)」を利用して働くことで、働き手の勤務姿勢や職歴、スキルに対して第3者からの評価がなされ、個人の信用にまつわるデータが蓄積されること。信用度の高い働き手の報酬が上がって積極的な労働者がきちんと評価される経済圏が構築されること。また、AIを利用し、必要な人材に対して自動でアプローチを行う機能の実装など、小川さんの構想は膨らんでいます。
ワークシェアリングアプリ「Taimee(タイミー)」が始動することで、日本にキグエコノミーは広まるか?飲食業界の人手不足は解消するか? 今後の動向に注目です。
■取材協力
企業名 | 株式会社タイミ― |
企業専用ページ | https://taimee.co.jp |
ユーザー向けページ | https://taimee.co.jp/taimeestaff |