畑をバックに珈琲の豆とカップに入ったコーヒーの画像

サステナブル・コーヒー(sustainable coffee)」という言葉をご存知でしょうか?
サステナブル・コーヒー(sustainable coffee)は、自然環境や人々の生活を良い状態に保つことを目指して生産・流通されたコーヒーの総称です。現在さまざまな団体・企業が、それぞれの理念のもとに独自に設けた基準や方法にしたがってコーヒー生産者や流通業者とともに取り組んでいます。

そもそも、なぜ「サステナブル・コーヒー」が求められているのか?

日本をはじめ、世界中で多くの人に親しまれているコーヒーですが、近年「コーヒーの2050年問題」と呼ばれる世界規模の課題に直面しています。

これまで中国やインドなど、主にお茶を楽しんでいた国やその他の地域も次々とコーヒーを愛飲するようになり、年々世界のコーヒー消費量は右肩上がりが続いています。ですが一方で、農作物であるコーヒーの栽培は、環境の変化の影響を受けやすく、特に気候変動の影響は問題視されています。気温や湿度が上昇すると、さび病というコーヒーにとって深刻な病気が発生しやすくなり、収穫量の減少や品質低下を招いてしまいます。

コーヒーの栽培地は北緯25度~南緯25度の「コーヒーベルト」に限られていますが、気候変動で環境変化が続くと、2050年にはコーヒーの栽培適地が4割減少するとも言われています。

サステナブル・コーヒー・チャレンジのロゴ画像

需要と供給のバランス問題以外にも、小さな農場による「供給構造の問題」や、コーヒーツリーの老化や病気、害虫などによる「生産や品質低下の問題」、生産コストを上回る買取価格が市場で確保されていない「マーケットの問題」、生産国における移民問題や統治の欠如による「ガバナンスの問題」など、コーヒー栽培を取り巻く環境には課題が山積しています。

企業や団体が参加する「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」とは

サステナブル・コーヒー・チャレンジ」は、コーヒー産業全体を真に持続可能な産業へと転換させるため、透明性の強化・持続化に向けた枠組みの共有や、参加者による新たな取り組み・協働を促進するため、国際NGOコンサベーション・インターナショナルとスターバックス コーヒーが共同で立ち上げたプラットフォームです。

現在までに「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」には、スターバックス コーヒー以外にもマクドナルドやネスカフェなどといった世界規模の企業をはじめとする、161の組織や政府が加盟しています。

SDGsの正式名とコーヒー豆の画像

それぞれの企業や団体では、さまざまなレベルでサステイナビリティーを目指していることでは共通していますが、活動内容やアプローチは多岐に渡ります。生産地域の自然環境の保護や再生、減農薬・無農薬栽培の推進、生産者の収入の安定化、トランスパレンシー(お金の流れの透明性)の確保、農園労働者の人権保護や生活環境の改善など、重視事項やカバー範囲にそれぞれ特徴があります。

「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」におけるSDGs

SDGs」(エスディージーズ)とは、Sustainable Development Goals の略語で、2015年9月の国連サミットで採択された国際目標のこと。

国連開発計画駐日代表事務所によれば、「いま正しい選択をすることで、将来の世代の暮らしを持続可能な形で改善することを目指す」指針で、2016年~2030年までの国際社会共通の目標とされています。
「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」では、「SDGs」(エスディージーズ)の目標に即し、自然資源を土台とする社会・経済の発展と持続可能な仕組み「SDGs“ウエディング・ケーキ”」を指針として掲げています。

SDGsのウェディングケーキの画像

SDGsは、17のゴール(世界を変えるための17の目標)、169のターゲットから構成されます。

各企業が行っている「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」

6月22日に開催された、「コーヒーを通して考えるSDGs」in大阪では、「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」に参加する各企業の取り組みの共有がなされました。
いくつかご紹介します!

◆株式会社ミカフェートの取り組み

2016年11月に日本企業として初めて「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」に誓約した株式会社ミカフェートは、「2020年までに個々の農園から調達するコーヒー豆の100%を、ミカフェートのサステナブルガイドラインに沿って確実に調達し、販売する」という取り組みを行なっています。
コーヒーの生産国に対して明確な品質基準に基づくコーヒー生産支援を行い、さまざまなグレードのコーヒーに正当な対価を支払うことを明確化し、SDGsの17の目標のうち10項目に直接的に関与しています。
コロンビアのフェダール農園では、知的障がい者による高品質でサステナブルなコーヒー生産を指導・商品化も行っています。また、タイ王国ドイトゥンプロジェクトでは、タイ北部山岳地帯「ゴールデントライアングル」での少数民族支援として、アヘン栽培の負の連鎖から脱却し、コーヒー栽培に根ざした村づくりにも貢献しています。

◆株式会社ベルシステム24ホールディングスの取り組み

多様な人材による多様な働き方の実現を目的としたSDGsならびに、多様な人材の活躍機会を提供する「多様性プロジェクト」の新たな取り組みを発表した株式会社ベルシステム24ホールディングス。
株式会社ミカフェートプロデュースのもと、ベルシステム24の本社オフィスラウンジに障がい者がコーヒーを抽出し提供するカフェを開設。来客者への提供、社員へのコーヒーサービスをスタートさせています。
これまで掲げていたSDGsの17の目標のうち「1.貧困をなくそう」「13.気候変動に具体的な対策を」「16.平和と平等をすべての人に」に加え、「12.つくる責任 つかう責任」も新たに追加し、今後も意欲的にSDGsを推進する方針が共有されました。

Aoyagi Coffee Factoryの青柳さんがスライドを見せながら話している写真

そのほか、愛知県日進市にあるAoyagi Coffee Factoryは東ティモールやコロンビアで栽培されたフェアトレード&オーガニックのコーヒー豆の販売実績紹介や、株式会社ホロニックからはコミュニティホテルとしての特色を活かし、客室アメニティとしてミカフェートのオリジナルブランドコーヒーの採用や物販としての販売、売り上げの一部を現地の就学支援金として寄付するなどの取り組みが共有されました。

個人でも可能!サステナブル・コーヒーへの貢献

企業や政府レベルだけではなく、個人レベルでもサステナブル・コーヒーの取り組みには貢献することができます。

例えば、熱帯林の環境・生態系を保全するとともに、労働者に適切な労働条件を与えている農園を認証する「レインフォレスト・アライアンス」や、生産者や環境に配慮しながら、生産・加工が行われていることを認証する「UTZ Certified」のロゴやマークの入ったコーヒー豆を購入することで、環境保護・社会的公正・経済的競争力のすべてに対して一翼を担うことができます。個人でも、ひとつひとつの消費活動によって、サステナブル・コーヒーを支持・支援することができるのです。

今後ますます広がりを見せる「サステナブル・コーヒー」や、各企業や団体が行う「サステナブル・コーヒー・チャレンジ」に注目したいですね。

◆取材協力

企業名 日本サステナブルコーヒー協会