
2012年より始まり、今年で8回目を迎えた「SAKE COMPETITION」。
「ブランドによらず消費者が本当に美味しい日本酒にもっと巡り会えるように」という理念のもとで作られたコンペティションなので、審査対象は市販日本酒のみという点が大きな特徴です。鑑評会用の特別なお酒と違って、一般の人でも比較的手に入りやすいのは嬉しいですね! 日本酒初心者にとっては、どんな日本酒を飲めばいいのか分かりやすい指標になります。
今回の「SAKE COMPETITION 2019」は、昨年と同様「純米酒部門」「純米吟醸部門」「純米大吟醸部門」「吟醸部門(大吟醸含む)」「Super Premium部門」「スパークリング部門」「海外出品酒部門」の7部門で審査されました。出品蔵数は全国+海外から426蔵、昨年を大幅に上回る1919点の出品がありました。
技術指導者、有識者、蔵元からなる予審48名、決審52名の審査員によって完全ブラインドで審査。また今年より、90名の蔵元が審査する「おつまみグランプリ」というユニークな賞も加わり、ますます注目が集まっています。ザ・ペニンシュラ東京にて行われた表彰式には報道関係者も多く集まり、会場では立ち見が出るほどでした。
では、さっそく6月10日の表彰式の様子をレポートします。
■2019年の上位入賞酒を発表
◎純米酒部門
(出品数:495点/ 予選通過:170点)
1位 「宝剣 純米酒 レトロラベル」宝剣酒造株式会社(広島県)
2位 「美丈夫 特別純米酒」有限会社濵川商店 (高知県)
3位 「宝剣 純米酒 広島夢酵母」宝剣酒造株式会社(広島県)
実は4位も有限会社濵川商店の「美丈夫 純米 慎太郎」。2社での甲乙付け難い僅差の戦いだったことが想像されます。優勝した宝剣酒造の土井鉄也さんは「苦しかった…」と一言。感極まり言葉に詰まる様子が印象的でした。
また、10位と8位にランクインした奈良の今西酒造は、純米吟醸部門でも10位に食い込んでおり、今後の飛躍が期待される注目の酒蔵です。
◎純米吟醸部門
(出品数:578点/ 予選通過:201点)
1位 「飛露喜 純米吟醸」合資会社廣木酒造本店(福島県)
2位 「磯自慢 純米吟醸」磯自慢酒造株式会社(静岡県)
3位 「鈴鹿川 純米吟醸」清水清三郎商店株式会社(三重県)
純米吟醸酒は主力商品として力を入れている蔵元も多く、出品数も最多。そんな中で選ばれたベスト3は、誰もが納得の強力な安定感のある3蔵となりました。1位の廣木酒造の杜氏、廣木健司さんは「自己採点ではそんなにいい点数を付けていなかったので、本当に驚きました」。
そして4位にランクインしたのが栃木の虎屋本店「七水 純米吟醸55 雄町」。創業230年の歴史を持ち、宇都宮の街中にある、生産量200~250石という小さな酒蔵。各種の品評会で近年続々と入賞を果たしている、大変勢いのある酒蔵です。
◎純米大吟醸部門
(出品数:480点/ 予選通過:148点)
1位 「作 朝日米」清水清三郎商店株式会社(三重県)
2位 「太平山 純米大吟醸 天巧35」小玉醸造株式会社(秋田県)
3位 「萩の鶴 純米大吟醸」萩野酒造株式会社(宮城県)
◎吟醸部門
(出品数:480点/ 予選通過:148点)
1位 「天上夢幻 大吟醸 山田錦」株式会社中勇酒造店(宮城県)
2位 「極聖 大吟醸」宮下酒造株式会社(岡山県)
3位 「白菊 特別限定 大吟醸」合資会社廣瀬商店(茨城県)
◎Super Premium部門
(出品数:64点)
Super Premium部門とは、特定名称酒に限らず720mlで小売価格が10,000円(外税)以上、1800mlで15,000円(外税)以上の清酒。「日本の食が世界を席巻する今日において、切り離せない日本酒の世界における地位向上を目的とし、味わいはもちろん外見でも価格でも全てにおいて他の酒類に勝る最高の日本酒を決めるために」創設された部門です。
1位 「十四代 龍泉」高木酒造株式会社(山形県)
2位 「刈穂 滄溟海 純米大吟醸」秋田清酒株式会社(秋田県)
3位 「作 智」清水清三郎商店株式会社(三重県)
◎スパークリング部門
(出品数:68点)
清酒ベースで、飲用時に炭酸ガスを感じることができる活性清酒で、概ね3.0ガスボリューム以上が目安。(果実・果汁エキスの添加、使用したもの、香料・酵母由来の天然色素以外の化学的着色料の添加があるものは除く)
スパークリングは特に女性に人気が高く、あまりお酒を飲めない人、初心者でも手に取りやすいお酒のため、今後も広く注目される部門でしょう。
1位 「出羽鶴 awa酒 明日へ」秋田清酒株式会社(秋田県)
2位 「SPARKLING RAIFUKU」来福酒造株式会社(茨城県)
3位 「八鹿 スパークリング Niji」八鹿酒造株式会社(大分県)
◎海外出品酒部門
(出品数:28点)
海外にある醸造所で製造した米を原料とする醸造酒。海外産日本酒の出品は、年々増えています。
1位 「Coastal Ginjo」Sequoia Sake Company (アメリカ)
2位 「Momokawa Diamond」SakeOne (アメリカ)
3位 「Coastal Genshu」Sequoia Sake Company (アメリカ)
Sequoia Sake Companyは、カリフォルニアにて、家族で経営する小さな酒蔵。地元産のうるち米を使い、生産量は約100石。今回の出品酒は輸送の関係で火入れのものですが、現地では8割を生酒として販売。夫婦揃って日本酒好きな上、元々味噌やバター、ビールなど、手作りすることが大好きで、日本酒造りも最初は趣味で始めたそうです。「今回の賞は、妻、家族を始め、周りの皆さんのおかげ。今後もさらに勉強を続け、世界中の人に日本酒の美味しさを伝えられるような酒を造りたい」とJake Myrickさん。
◎特別賞
ダイナースクラブ若手奨励賞
次世代の造り手を応援するために創設。40歳以下の「純米酒」「純米吟醸」「純米大吟醸」「吟醸」の最上位受賞蔵の醸造責任者に授与され、ダイナーズクラブから販促やPRのバックアップ支援を受けることができます。
純米大吟醸部門3位:萩野酒造株式会社(宮城県)
製造責任者 佐藤善之氏
「製造責任者の善之は、私の実の弟です。数年前に酒造技能士、南部杜氏の試験に受かり、晴れて杜氏と名乗れるようになりました。非常に真面目で僕の至らないところをいつも穴埋めしてくれる、頼りになる存在。実力はあると思っていましたが、まさか賞をいただけるとは。本当に驚きました。本人が一番喜ぶと思うので、これからもいい酒造りに専念していけるよう、みんなでサポートしながら続けていきたいです」(萩野酒造 佐藤曜平さん)
◎特別賞
JAL空飛ぶSAKE賞 ※新設
日本酒の魅力を海外に発信するために創設。「純米酒」「純米吟醸」「純米大吟醸」の3部門の日本酒を対象に、出荷量に限りがある貴重なお酒から選定。受賞酒は2020年6月から8月の期間に、日本航空国際線ビジネスクラスで提供され、海外進出のサポートを受けることができます。
純米吟醸部門7位:「御慶事 純米吟醸 雄町」青木酒造株式会社(茨城県)
「いきなり呼ばれて、とてもびっくりしました。お酒は派手なタイプではないですが、柔らかくしみじみとした味わいで、燗酒にもおすすめです。いつもおいしいと言ってくれるお客様に、賞が取れたことを報告するのがなにより嬉しい」と青木さん。蔵元に生まれ育ちましたが、大人になってから、お酒の味わいの多様さ、酒蔵の仕事の素晴らしさに気付いたそうです。今は造り手も同世代が増え、女性も多くなったので仕事がしやすく楽しい、とのこと。
◎おつまみグランプリ
(出品数:84点)
日本酒と一緒に合わせたいおつまみを審査。一般消費者が購入可能な商品の中から、「SAKE COMPETITION 2019」の審査会に参加した90名の蔵元によって選定されました。初開催の今回は、お菓子やドライフルーツなど幅広いカテゴリーからエントリーされています。
1位:「九十九里浜 蛤酒蒸し」株式会社正上
2位タイ:「たまり漬けチーズ」株式会社山久チーズファクトリー
2位タイ:「佐賀海苔 塩のり極」三福海苔株式会社
株式会社正上は、千葉県香取市佐原にて創業200年の元は醤油蔵。佃煮を始めとする和食を販売しており、ワカサギを甘辛く煮上げた「いかだ焼」なども人気です。
「和の真髄を極めている日本酒の蔵元さんが選んでくれたことに感慨深いです。これを機にさらに和食作りを頑張っていきたいと思います」(正上 加瀬 幸一郎さん)
おつまみグランプリという賞が新たに創設されたことからも、日本酒の食中酒としての楽しみ方が注目されていることが伺えます。今後日本酒と食事とのマリアージュは、より一層重要視されていくことを大きく印象付けました。
まとめ
各賞を受賞されたみなさま、本当におめでとうございます。
お酒選びで迷ったら、「SAKE COMPETITION」の受賞酒をぜひ参考にしてみてください。
最新の「SAKE COMPETITION 2019」受賞酒はこちらを確認ください。
■取材協力
イベント名 | SAKE COMPETITION |