RED U-35 授業シーン

RED U-35」(RYORININ’s EMERGING DREAM)は、35歳以下の、新時代の若き才能ある料理人の発掘・応援を目的とした日本最大級の料理人コンペティション。今年で6回目を迎える大会ですが、その審査方法は毎年大きく変わります。2018年大会は、書類審査の後の一次審査で「あぶら」をテーマにしたメニューの考案、二次審査は「あぶら」についての考えを動画で発信する映像審査、三次審査は60分制限の調理審査でした。

そして、その三次審査を勝ち抜いたファイナリスト“ゴールドエッグ”6人が臨んだ最終審査の課題は、「未来の料理人に伝えたいこと」というテーマで「食の授業をすること」。
若手料理人たちは“未来の料理人”である調理師学校の学生を前に、何を語ったのでしょうか。その内容からは、新世代の料理人たちが思い描いている未来の食の在り方や、新たな料理人の役割・料理人像が浮かび上がってきました。プレゼンテーションの方法や演出にも工夫が凝らされた、「RED U-35 2018」ファイナリストたちの「授業」をレポートします。

【開校式】「RED U-35 2018」最終審査オープニング 若手料理人たちによる「授業」が始まる!

「RED U-35 2018」最終審査は、東京ミッドタウン日比谷「BASE Q」で、一般客を招いて開催。「開校式」と題されたオープニングセレモニーは、「RED U-35」総合プロデュ―サーの放送作家・小山薫堂さんによるスピーチで幕を開けました。

RED U-35の開校式でスピーチする小山薫堂氏

「開校式」でスピーチする小山薫堂さん。

「今大会は、料理の上手い人ではなく、未来にバトンを渡せる人を選びたい。その思いから、最終審査は料理の審査にしませんでした」(小山さん)

RED U-35の最終審査の課題を発表する小山薫堂氏

小山さんから発表された最終審査の課題は「食の授業をすること」。ファイナリストは「未来の料理人に伝えたいこと」というテーマに沿って、辻調理師専門学校1年生の学生21名に授業を行います。各人の持ち時間は20分。10分は授業、10分は質疑応答です。審査員団は授業会場からの中継映像を、別室のモニターで見てジャッジ。一般の観客も、客席に設けられた巨大スクリーンで授業を見届けます。

審査員長の脇屋シェフのリードでくじ引きしているところ

審査員長 脇屋友詞さん(「Wakiya 一笑美茶樓」オーナーシェフ )のリードでくじ引きが行われ、ファイナリストが「授業」を行う順番が決まりました(写真上)。

RED U-35 審査スタート(料理人たち一堂礼をしているシーン)

いよいよ審査がスタート。1日限定、「RED U-35 2018」最終審査の“学校”が開校しました。授業は、号令係による「起立、気をつけ、礼」の掛け声とともに始業。学生たちの「よろしくお願いします」という大きな声が会場に響きます(写真上)。

初々しい料理人の卵たちを前に、ファイナリストたちは何を語り、どのようなプレゼンテーションをしたのでしょうか。審査の順にそって、サマリーをお伝えします。
※料理人の情報は氏名、(年齢)、専門ジャンル、「所属店舗」、【店舗地域】、役職を表記しています。

【一限】料理を学ぶということは、文化を学ぶということ

最終審査トップバッターは
小林珠季さん(32歳)フランス料理「Restaurant Peir PIERRE GAGNAIRE」【フランス】スーシェフ(副料理長)

小林珠季さんが”授業”しているシーン
調理師学校卒業後、フランスのレストランで経験を積んできた小林さん。「皆さんは普段、身近な人と一緒にゆっくりと食事を楽しむ機会がありますか?」と学生に問います。

フランスでは、なにかにつけて家族や友人が集まり、食事をとります。子供も大人も食を楽しみ、世代を超えて交流し、食の知識・マナー、地域の食文化などを知る場でもあり、小林さんは「こういうフランス人の習慣のなかに、私が思う料理人の仕事の魅力が詰まっています」と言います。

小林さんは「料理を学ぶということは、文化を学ぶということ。料理人の役割は、おいしい料理を作ってお客様に食べていただくことだけではないと思います。学んだことを伝えることも、料理人にとって大事な仕事です」と語りました。

質疑応答のパートで学生から、海外の職場でネガティブな問題が生じた時にどう解決しているか、と質問されると「最初は、失敗するたびにくよくよしていたけれど、そのことが仕事に影響している、と気づいたんです。フランス人は、怒られてもすぐにケロっと忘れる。反省する部分は反省して、頭のスイッチを切り替えて次に進むことがとても大事なのだとわかって、それを見習いました」と小林さん。文化を理解することに時間をかけて、どうしてその人がそういう考え方をするのか、様々な場面を思い出しながら探ることが重要だと説きました。

【二限】「料理人になるな!」

2番目は、
川嶋亨さん(34歳)日本料理「日本の宿 のと楽 宵待」【石川県】シェフ(料理長)

RED U-35 川嶋さんが授業をしているところ
川嶋さんは冒頭から「まずは皆さんに、『料理人になるな』と言いたい」と発言。「料理を作ることに留まるのではなく、食を通じてもっと広く活躍して欲しいんです」と続けます。

川嶋さんは、故郷でもあり、現在料理長を務める店がある石川県能登半島の風景を映した写真を示し「能登には、問題・課題が山積みです」と言います。
七尾湾に浮かぶ能登島ではイノシシが増え続け、田畑を荒らす被害が発生しています。そのイノシシを捕獲し、食肉として活用することで害獣から特産品へ転換しようと、川嶋さんは「イノシシメンチカツ」のレシピを考案。地元のイベントで販売して好評を得た事例を紹介しました。

能登に限らず各地方には様々な課題があり、「料理人だからこそできる、地域の課題への取り組みがあるはず。料理人には無限の可能性がある」と川嶋さん。
「このプロジェクトも、僕1人でやったことではなく、能登島の人とのかかわりがあって実現したこと。人と人とのつながりを大事にして、ご縁をつなげる人になろう」とスピーチしました。

【三限】中国料理はますます発展していく

3番手は、
立岩幸四郎さん(33歳)中国料理「Wakiya一笑美茶樓」【東京都】料理人

RED U-35 立岩さんが授業しているところ
立岩さんは「この中で、中国料理を志している人いますか?」と学生たちに問いました。学生たちの手は上がらず、「ゼロ!じゃあ、この授業が終わったら、中国料理を目指したいと思う人が出るように」と、中国料理の魅力についてプレゼンしました。

立岩さんは、フカヒレ、干しナマコ、干し貝柱など、中国料理ならではの高級食材である乾物を持ち込み、学生たちは実際に食材に触れ、香りをかぐ体験をしました。
「料理人をしていると、日本の食材って素晴らしいと感じます」と立岩さん。持ち込んだ乾物はすべて国産の物でした。立岩さんは、干し貝柱の産地・北海道猿払村を訪れた時のことを学生たちに共有。学生たちは、手間暇かけて作られた干し貝柱を味わいました。

質疑応答で中国料理の歴史についての質問があり、立岩さんは「中国は4000年の歴史があると言いますが、中国料理の劇的な変化があったのは、ここ100年、200年。英国の植民地であった香港が西洋の文化を取り込んで、ヌーベルシノワが広まった。僕はこの先も、中国料理はどんどん変化していくと思う。特に日本の中国料理人はさらに発展していけると思っています」と語りました。

【四限】人に対して、食材に対して、想いやりをもつ

4番手は、
山本紗希さん(35歳)フランス料理「コンラッド東京」【東京都】料理人

RED U-35 山本さんが授業しているシーン
「4限目で疲れも出てきていると思うので、気軽な感じで、紙芝居のようなものを用意してきました」と山本さん。これまで料理をしてしてきて、大切なことは「想いやり」だと思う、と説きます。

「食は五感、味覚・聴覚・嗅覚・視覚・触覚を使って楽しむもの。どうしたらお客様が料理を楽しめるか、料理人は相手を見て、想像することが大事。それが『想いやり』です」。想いやりが料理をおいしくし、料理で人を幸せにすることができる。それは食材に対しても同じことで、「○○さんが獲った、有機栽培された等、食材にはストーリーがあり、生産者の心が詰まっています。余すことなく、最大限においしさを引き出すことが、食材を想いやるということです」と語りました。

質疑応答では、周りの人にどう「想いやり」を届けているかという質問に対し「まず一番想いやりを向けているのは、一緒に働いている料理人やスタッフ。今、調理師学校を出た後、10年経って料理人を続けている人はどれだけいるか?仕事を楽しいと思ってもらえるように、まず身近な人たちを想いやることが大事だと考えています」と回答しました。

【五限】人を幸せにすることで、自分が幸せになれる

5番目に登壇したのは、
糸井章太さん(26歳)フランス料理「Maison de Taka Ashiya」【兵庫県】料理人

糸井さんの授業シーン
「音楽が好きなので、BGMを流して、リラックスしてやりたいと思います」と、糸井さんは音楽をバックにプレゼンを始めます。

「今日は『RED U-35』の最終選考ですが、せっかくみなさんがこうやって来てくださったわけですから、僕はみなさんのためにこの時間を使いたいと思います」と糸井さん。「今日はお店でマッシュルームのコンソメを準備してきました。これを飲んでもらいながら授業を進めたいと思います」と、コンソメを仕上げつつ話を続けます。

「僕が今日話したいことは、料理人というのは世界で一番幸せな仕事だということ。それはなぜか。このコンソメを飲みながら聞いてほしい」。糸井さんは5キロのマッシュルームを香味野菜などと一緒に5時間炊いて作ったというコンソメを、学生たちに振る舞います。ずっと座り続けて緊張しながら授業を受けてきた学生たちは、丁寧に調理された温かいコンソメを飲んで笑顔に。

「人は何に幸せを感じるか?誰かに何かをしてもらった時。何かができるようになった時。そしてもうひとつは、自分が人を幸せにしてあげた時。人を幸せにすると、自分も幸せになるんです。これはまさに、料理人の仕事です」。これから仕事をしていくうえで嫌なこと、辛いことがあったら、そのことを思い出してほしいと語りました。

【六限】この先の未来、料理人は必要とされるか?

最後に登壇したのは、
本岡将さん(25歳)フランス料理「レストランBio-s」【静岡県】シェフ(料理長)

RED U-35 本岡さんの授業シーン
本岡さんは学生たちに1点の画像を見せ、「どちらのほうがおいしそうに見えますか」と質問します。写っているのはお皿の上にきちんと置かれたおにぎりと、横に倒れたおにぎり。実はその画像は動画のラストシーンで、逆再生すると、きちんと置かれたおにぎりはコンビニで買ったもの。倒れたほうは、手で握った手作りのおにぎりでした。

さらに、料理をサーブするパフォーマンスを2パターン披露。最初は、料理名だけを告げて。次に、使っている食材やその生産者、調理法などを説明しながらテーブルにお皿を置きます。「僕の伝えたいことが、少しわかっていただけたでしょうか。料理は、人の感情とか気持ち、思いというものが伝わるものだということです」と本岡さん。リンゴを半分に切り、一方に罵声を浴びせ、一方にポジティブな言葉を掛けると、罵声を浴びせたリンゴは早く腐っていった、という実験を例に挙げて、「メカニズムは解明されていないけれど、思いは伝わるということです」と説きます。

未来に向けて料理界で何が起こるかと考えると、AIの普及や調理器具の発展が挙げられる、と本岡さんは言います。「昔は熟練した料理人にしかできなかったことが、今は調理家電でできるようになっている。じゃあこの先、料理人というのはどこで必要とされるのか」。本岡さんは「それは“思い”の力だと思う。地方で仕事をしていると、その土地でとれた素材を自分で見て感じて、その思いを伝えることができる。それは理想の形だなと思っています」と語りました。

一般客を前にしたディスカッション、公開面談

6人のファイナリストたちによる「授業」の後、一般客の来場している会場で、公開ディスカッションと面談が行われました。

RED U-35 檀上で6名でディスカッションしているシーン
ディスカッション(写真上)のテーマは「2020年東京五輪の選手村の料理を6人で担当することに。どんな料理を提供しますか?」

RED U-35 審査員団
ディスカッションの後は公開面談。
審査員団(写真上)は、ファイナリストひとりひとりの回答に注意深く耳を傾けます。

史上最年少王者が誕生!審査員団の総評

最終審査の結果、5限目の授業を担当した糸井章太さんがグランプリを獲得。糸井さんは歴代最年少のグランプリ“レッドエッグ”となりました。
グランプリ発表後の各審査員の総評をご紹介しましょう。

審査員長 脇屋友詞さん (「Wakiya 一笑美茶樓」オーナーシェフ )
「無事、第6回目の大会を終えました。毎回毎回、自分のことのように感動する大会で、涙をこらえる場面もありました。それにしても、小山薫堂さんの、毎年変えていくこの審査のやり方。どこまでも料理人を追い詰めるなあと。アイデアや発想がすごくて、審査方法を聞くのが楽しみでした。今後も、世界各国から集まる参加者の顔ぶれをしっかり見ていきたいと思います」

落合務さん(「LA BETTOLA」オーナーシェフ )
「びっくりしたのは、26歳、25歳、そういう世代がグランプリ・準グランプリに選ばれるという……もう、私にとっては孫の年齢ですよね。審査については激論が交わされていました。全体を通して本当にレベルの高い大会だったなと思います」

田崎真也さん(ソムリエ)
「6年間審査にあたってきましたが、年々参加者が増えている。RED U-35の大会自体が、日本の料理業界の資質向上に貢献しているのではないかと感じます」

德岡邦夫さん(「京都吉兆」総料理長)
「審査員の皆さんが真剣に悩み、切磋琢磨している様子を見て、またそれを真摯に受け止めて応募され、勝ち抜いてこられた皆さんを前にして、この大会に参加させていただくことに意義を感じています。ファイナリストの皆さんの今後の活躍に期待します」

千住明さん(作曲家
「ジャンルは違いますが、同じ職人としてクリエイターとしてアーティストとして、大変刺激になりました。基礎と努力、夢、活気、それを改めて思い出すことができて、僕はまた新たな創作に入れると感じています。ここで出会えた若い才能たちに心から感謝しています」

辻芳樹さん(学校法人 辻料理学館 辻調理師専門学校事長・校長 )
「断言できるのは、時代が変わったということ。それだけのとてつもない才能が、既にこの国に生まれてきている。完全にニュージェネレーションになってきた。それは簡単なことのようで、実はこの日本の飲食業界で100年くらいかかって成し遂げたこと。ようやくそのステージに立てたと思っています」

鎧塚俊彦さん(「Toshi Yoroizuka」オーナーシェフ)
「『RED U-35』というのは、料理の腕だけではなく、何か秘めた可能性のようなものを発掘しようという大会です。ファイナリストとしてこのステージに上がっているだけでも、567人のなかから選ばれた6人。胸を張って欲しいと思います」

狐野扶実子さん (料理プロデューサー)
「社会問題への意識が高いシェフがぐっと増えていることが印象的でした。それが応募の文章の中だけではなく、レシピに反映されていて、そのおいしさで食べる人に感動を与えることができるということは、料理のなせる業だなと感じ、感銘を受けました」

生江史伸さん (「レフェルヴソンス」シェフ )
「ファイナリストの6人は既に才能を持っていて、順位をつけるのは心苦しいところもあるんです。ただ、人よりも勝るアピールをできたということは、おいしいものを作る技術と、高いマインド、この両方の面を網羅して結果が出ているんだと思います。どちらに偏っても、この業界というのは良い事がありません。おいしいものを通じて、明るい未来、良い業界を作っていけるように。そんなことを感じたコンペティションでした」

黒木純さん (「くろぎ」主人)
「僕らの時代には考えられなかった、20代の活躍。将棋界、スポーツ界に続いて料理界も、と。10年の経験というのは、料理界ではものすごく大事なこととされてきましたが、今回、それを覆すものを見させていただきました」

学生たちの声

RED U-35 ファイナリストの写真パネルが並んでいるところ
最終審査の「授業」が終わった後、授業を受けた学生たちが、フロアに設置されたメッセージボードにファイナリストへの一言を書き込んでいました(写真上)。「地方の良さを強く感じることができました」、「AIなど、今の食の現状をしっかりととらえ、自分の考えをもっていることに感動しました」、「食材の旨味をこんなに感じたのは初めてでした」、「フランスでの話がとても勉強になりました」、「目の前の人に対するホスピタリティの姿勢に感動しました」など、授業で学んだことが率直に書かれています。

RED U-35のファイナリストと審査員一堂との記念撮影シーン
今回、質疑応答で学生たちからファイナリストに向けられた質問の内容が素晴らしかったと、審査員が口をそろえて発言していました。AIと料理人の未来、料理人の社会貢献、情報発信、異文化理解、地方のシェフに対しては集客方法やインバウンドへの対応など、“未来の料理人”は既に新しい料理人像を見据えていると感じる質問が多くありました。コンペティションの審査とはいえ、ファイナリストのみならず学生にも、新しい世代の料理人の姿を見ることができた「授業」でした。

白熱の三次審査の様子は「「RED U-35 2018」ファイナリスト6名が決定!緊張感あふれる三次審査に潜入!!」でご覧ください。

この「RED U-35 2018」の、半年間に及ぶ審査や、ファイナルの熱戦を追った完全密着ドキュメント番組が2夜に渡って放送されます!

放送局:BSフジ「RED U-35 2018 特別番組」
放送日:
【Part 1】2018年11月24日(土)24時〜24時30分(12/1再放送)
【Part 2】2018年12月8日(土)24時〜24時30分(12/15再放送)
若手料理人の奮闘ぶりやスター誕生の瞬間を、ぜひ見届けてください!

■取材協力

主催 ED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM) 実行委員会
URL RED U-35公式サイト