
35歳以下の、新時代の若き才能ある料理人の発掘・応援を目的とした日本最大級の料理人コンペティション、「RED U-35」(RYORININ’s EMERGING DREAM)。2018年大会は過去最多の567名が参加し、若手料理人の頂点“レッドエッグ”を目指して半年間に渡って戦ってきました。
書類審査、映像による二次審査、テーマ食材を60分で調理する三次審査を勝ち抜いたファイナリスト“ゴールドエッグ”6名は、11月4日、東京ミッドタウン日比谷で行われた最終審査に臨み、ついにグランプリが決定!
最終審査は、「RED U-35」史上初、一般のオーディエンスを招いての公開審査となりました。課題は「未来の料理人に伝えたいこと」をテーマに、調理師学校の学生に20分間の授業をする、というもの。授業の後はオーディエンスを前にした公開面談も行われました。
スター性と将来性を見極めるというこのユニークな課題を乗り越え、見事グランプリを手にしたのは誰なのか?各賞の受賞者を、受賞後のコメントとともにお伝えし、授賞式後の取材で審査員長が語った審査の裏側もレポートします。
※受賞者は、氏名、(年齢)、専門ジャンル、「所属店舗」、【店舗地域】、役職を表記しています。
目次
「RED U-35 2018」グランプリ“レッドエッグ“に輝いた若手料理人は?
「RED U-35 2018」最終審査を制し、“レッドエッグ“に輝いたのは
糸井章太さん(26歳)フランス料理「Maison de Taka Ashiya」【兵庫県】料理人
「『RED U-35』に出て良かったなと思っています。グランプリをとれたこともそうですし、ファイナリストの6人や、審査員の方々、いろんな人に出会えて刺激をいただきました。一番感謝したいのは、この半年間支えてくださった、店のシェフ(「Maison de Taka Ashiya」料理長・高山英紀さん)とスタッフ。早く店に帰ってこの結果を報告したいです。そして今後は、たくさんの仲間と、日本の料理業界を発展させていけるように全力を尽くしたいと思います」(糸井さん)
授賞式の後の取材で、審査員長の脇屋友詞さん(「Wakiya一笑美茶樓」オーナーシェフ)は、「26歳という若さにもかかわらず、彼は難しい課題にきちんと対応して、しっかりと演出できていた。例えば音楽。スープ。学生たちの表情が自然に笑顔になって、ハートをつかんでいた。そういう点が、誰よりも優れていました」と、糸井さんがグランプリに選ばれた理由を語ってくれました。
糸井さんは最終審査で、「音楽が好きなので」とBGMをかけ、審査に参加する学生たちにコンソメを振る舞いました。「料理人は世界で一番幸せな仕事」とし、人を幸せにすることで自分が幸せになる、とスピーチ。学生たちは長時間座り続けて疲れがでているなか、手間をかけて調理された温かいコンソメを飲むことで、糸井さんの説くテーマを体感していたようでした。最終審査での糸井さんのパフォーマンスは、学生にとっても審査員にとっても強いインパクトがありました。
準グランプリの受賞者は2人!
「RED U-35 2018」準ブランプリには、2人の料理人が選ばれました。
最初にコールされたのは、
立岩幸四郎さん(33歳)中国料理「Wakiya一笑美茶樓」【東京都】料理人
「私が料理の世界に入ったきっかけ。それは、私が働いている会社の社長であり、憧れのシェフである脇屋友詞にあります。そのシェフの背中を追ってきましたが、時が経つにつれ、その背中はどんどん遠いものになっていった気がします。この受賞で、大会の審査員長である脇屋さんに、自分がちょっと成長した姿を見せることができたんじゃないかな、と思っています」(立岩さん)
立岩さんの受賞後のコメントに、審査員団や会場は沸きました。脇屋さんは立岩さんについて、「ディスカッションではもうちょっと、リーダーシップをとって欲しかった」「まだまだ足りない。今、ちょうど鳥が育ってきて、巣から飛び立つ準備をしているところ」と、師の立場で厳しく語る一方、「でも、いずれは飛び立っていくと感じた。ヤツは、休日に食材の産地に行ったり自分で調味料を作ったりしている。そういうところは感心しますね。『鍛錬千日 勝負一瞬』というけれど、普段の過ごし方が今回の評価につながったのかなと思う」と、弟子をねぎらいました。
もう一人の準グランプリ受賞者は、
本岡将さん(25歳)フランス料理「レストランBio-s」【静岡県】シェフ(料理長)
「最初は、ブロンズエッグ(一次審査通過者)に残るかどうかもわからないと思ってドキドキしていました。自分の若さで料理長に抜擢してくださった『レストランBio-s』の松木一浩オーナーに感謝の気持ちを伝えるためにも、この大会に出て静岡を盛り上げようと考えていました。少しでも恩が返せたらいいなと思っています」(本岡さん)
審査員長脇屋さんは、「本当は、準グランプリは1人、と考えていました。審査も割れました。でも、彼のプレゼンテーションも良かった。誰か落とすということよりも、才能を評価する方を取りました」と、準グランプリを2人選出した理由を説明。「彼は今回のファイナリストのなかで最年少。でも、静岡のアクセスのよくない店を盛り立て、もう一度来店してもらうようにちゃんと考えている。良い方向に行けば、あと3年、5年ですごいシェフになると思います」と期待を寄せました。
本岡さんは一般のお客様からの支持も厚く、ブロンズエッグ、グランプリ予想の応援投票でいずれもトップの成績。得票数もずば抜けていました。
「2018 岸朝子賞」、新設された「滝久雄賞」、そしてサプライズも!!
■岸朝子賞
「岸朝子賞」は、「RED U-35」発起人である故・岸朝子さんが、食生活ジャーナリストとして日本の食の発展に寄与された功績を讃え、最上位の女性料理人に贈る賞です。
「2018岸朝子賞」受賞者は
山本紗希さん(35歳)フランス料理「コンラッド東京」【東京都】料理人
「『RED U-35』に参加して、一番欲しかった賞がこの『岸朝子賞』でした。上司にも、『岸朝子賞』を取るために頑張ります、と言ってあります。ですから、こうして受賞できたことは本当に光栄です」(山本さん)
■滝久雄賞
今大会から新設された「滝久雄賞」は、「RED U-35」発起人であり、次世代の若者や留学生らを支援する滝久雄さん(株式会社ぐるなび 代表取締役会長 CEO・創業者)が、日本人として海外で奮闘し、今後さらなる活躍が期待される若手料理人に贈る賞です。[アメリカ・オセアニアブロック][ヨーロッパブロック][アジアブロック]の、3つのブロックごとに選出されます。
※受賞者は、氏名、(専門ジャンル)、「所属店舗」、【店舗地域・都市名】を表記しています。
「2018 滝久雄賞」[アジアブロック]受賞者は
本多淳一さん(日本料理)「SUN with AQUA Japanese Dining」【中国・上海】
「中国では日本の米のおいしさが評価されていますが、日本国内では米の消費量が減っています。日本の食材の良さをまず日本人が知ることが大事だと、海外に出ることによって強く感じています。食文化を通じて、日本の良さを海外に広められる料理人になりたいと思っています」(本多さん)
「2018滝久雄賞」 [ヨーロッパブロック]受賞者は
小林珠季さん(フランス料理)「Restaurant Peir PIERRE GAGNAIRE」【フランス・ゴルド】
「私は、料理人の社会的地位向上をはかりたいという、滝久雄会長のメッセージに心を動かされて、このコンクールに参加しました。そんな滝会長から直々にこういった賞をいただけて、大変光栄に思います。少しでも日本の社会に貢献できる料理人になれるよう、これからも努力してまいります」(小林さん)
「2018滝久雄賞」[アメリカ・オセアニアブロック]受賞者は
浅沼学さん(日本料理)「MIFUNE NY」【アメリカ・ニューヨーク】
「今ニューヨークで、日本料理、フレンチ、鮨など様々なジャンルを融合した料理を提供する店で働いています。日本料理人が海外で何をして、日本の食をどう伝えていくべきなのか。日々悩みながら仕事をしていますが、今後も情報発信していきたいと思っています」(浅沼さん)
そして、全ての受賞者が発表になった後、審査員団のひとりひとりから総評が述べられるなかで、鎧塚俊彦さん(「Toshi Yoroizuka」オーナーシェフ)からこんな発言がありました。
「僕は勝手に、『Toshi Yoroizuka賞』を発表したいと思います。受賞者は川嶋亨さん。今日は「卵」をテーマに、ファイナリストが審査員のお弁当を作ってきてくれたんです。川嶋さんは三次審査で、テーマ食材の打ち出しが弱いと言われていたんですね。それを気にしてか、今回の川嶋さんのお弁当の中身は9種類の茹で卵。素直過ぎませんか?」(鎧塚さん)
鎧塚さんは、「川嶋さんは何度も選考から落ちそうになっていました。でもなんかいい、もう一度見てみよう、と勝ち上がってきた。『RED U-35』は料理の腕や技術の巧みさに加えて、何かしらの可能性を秘めた人を発掘するプロジェクトなんです」として、川嶋さんを評価。この授与が最初で最後になるかもしれない、アドリブで飛び出した「Toshi Yoroizuka賞」は、
川嶋亨さん(34歳)日本料理「日本の宿 のと楽 宵待」【石川県】シェフ(料理長)
に贈られました。
今大会のキーワードは“ニュージェネレーション”
「RED U-35 2018」のグランプリ“レッドエッグ”を手にした糸井さんは、「RED U-35」王者のなかで史上最年少の26歳。審査員の総評では、20代の料理人の活躍や、新たな料理人の在り方に言及するコメントが多く聞かれました。
審査員の辻芳樹さん(学校法人 辻料理学館 辻調理師専門学校理事長・校長)は、
「審査員を6年やってきて確実に言えるのは、時代が変わったということ。完全に、ニュージェネレーションになってきている」と語りました。
最終審査の「授業をする」という課題で、「未来の料理人たちに伝えたいこと」として、「RED U-35」のファイナリストたちが何をプレゼンテーションしたのか。その内容や、各審査員の総評をまとめた記事を、後日「クックビズ総研」で配信します。そちらもチェックしてください!
■取材協力
主催 | ED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM) 実行委員会 |
URL | RED U-35公式サイト |