RED35受賞者

「RED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)」(以下 「RED U-35」)は、35歳未満の新時代の若き才能ある料理人の発掘・応援を目的とした日本最大級の料理人コンペティション。その三次審査・最終審査が11月5日・6日に行われました。審査員には日本料理界を代表する巨匠たちが名を連ね、優勝賞金は破格の500万円。優勝は誰の手に?最終決戦の2日間の様子をレポートします。

若き料理人の頂点を決める、6カ月にわたる5段階の審査

優勝賞金、審査員などあらゆる面で注目を集める大会「RED U-35」ですが、最も注目すべきはその審査方法かもしれません。
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集合写真
2017、18年度審査員長は「Wakiya一笑美茶樓」オーナーシェフの脇屋友詞氏(前列右)、総合プロデューサーは小山薫堂氏(後列左)。

2017年度は5月8日に募集開始。「糖」をテーマにしたレシピと論文という課題に国内外から448名の応募があり、この中から予備審査で119名へと絞られました(ノミネーション)。

7月の一次審査では、ノミネーション119名について審査員団が一同に会して協議、一次審査通過者(ブロンズエッグ)59名が選出されました。

第3ステップである二次審査は「私と信頼する生産者とのつながり」について選手自らが撮影した映像を提出するというもの。二次審査通過者(シルバーエッグ)の22名には三次審査のテーマが発表され、約1か月の準備期間が与えられました。

準決勝にあたる三次審査が11月5日。そこから5名の三次審査通過者(ゴールドエッグ)を選出。すぐに最終テーマが課され、翌11月6日に決戦、グランプリが決まるという流れです。

初の公開審査で試される“人間力”や“伝達力”

三次審査には、敗者復活戦通過者3名を追加した計25名がチャレンジしました。
今回ユニークだったのは、「RED U-35」史上初の試みとして一般公開の「学園祭審査」形式が取られたこと。

学園祭審査

会場となった武蔵野調理師専門学校が学園祭会場に見立てられ、2フロアに25の模擬店が並びました。各選手は自分の模擬店のプレゼンテーション、料理、さらに接客対応までトータルで審査されるのです。

三次審査のテーマは「旬のアミューズ」。
与えられた主なルールは、来場者が今の季節を存分に楽しむことが出来るよう、選手が思う“旬の味覚”を表現。“東京の秋”でも“故郷の秋”でも自由。

  • 原価は容器代込みで1食300円以内
  • アミューズ1種を100食分
  • 調理時間は店舗装飾を含めて150分
  • アシスタントは1人まで可

というもの。

旬のアミューズ1

「旬=秋」がテーマなので、模擬店の装飾には木の葉や枝が多く用いられ、食材にはきのこ類、さんま、栗、イチジクなどが登場していました。中には希少野菜、すっぽん、イノシシ、鹿などを用いた意欲作も。

故郷や店を構える地域の食材を使用する選手も多く、地元食材の魅力を広く伝えたい、伝統の味を引き継ぎたい、といった言葉をよく耳にしました。

旬のアミューズ2

肉厚の原木しいたけをほうれん草で包んだ見た目もユニークなアミューズを、「せっかくなら来場者の心に残るものを」と持ち帰り可能なボックスで料理を供した藤木千夏さん。来場者評価も高く決勝進出は逃したものの、女性料理人のトップに贈られる「岸朝子賞」を受賞。

旬のアミューズ3

(左)山口 智也さん(くず米と栗のリゾット)は通常は捨ててしまうくず米を使用するアイディアが秀逸でした。
(右)崎 楓真さん(竹で炊いた米と鹿肉)はシルバーエッグ最年少の19歳。明るく丁寧な接客でお客さんを引きつけていました。

旬のアミューズ4

薬師神陸さん(秋茸と土佐ジローのコンソメロワイヤル)は個性的なプレゼンテーションで注目を集めていました。

旬のアミューズ5

(左)一般来場者の人気が群を抜いて高かった、音羽創さんの秋刀魚となすを使ったアミューズ。味、芸術的なビジュアル、長時間室温に置いても乾かない工夫など、細やかな気配りがさすが。
(右)地元の食材にこだわった赤井顕治さん。うまれてから一度も卵を産んだことのない牡蠣「ヴァージンオイスター」と鹿肉にコンソメを合わせた、素材の旨味が際立つ逸品。

投票パネル

180名の一般来場者(事前申込制)は支給されたチケットで最大7品を味わうことができ、応援したいと思った選手を3名まで投票可能。審査に直接反映はされませんが、選手たちにとって大きな気づき、励ましになりました。
集まる来場者ににこやかに料理説明する選手、100食があっという間になくなる選手がいる一方、客足がなくぽつりと立ち尽くす選手もいました。その差は店舗の装飾なのか、盛り付けなのか、はたまたアピール下手なのか。プレゼンテーション能力、料理内容、接客まで、すべてが問われる審査の厳しさを目の当たりにしました。

最終審査は“ひとりの生産者”とのディスカッションからスタート

学園祭審査終了2時間後には、最終審査に進む5名のゴールドエッグが発表されました。ほっとしたのも束の間、ファイナリストたちはすぐにある生産者と引き合わされ、どんな食材を、どんな想いで作っているかを自分たち自身で聞き出すよう言われます。なんと決勝はもうスタートしていたのです!

これが「RED U-35」の「RED U-35」たる所以。昨年の決勝は事前提出したレシピでコース料理を作ったそうですが、今年求められたのは料理の技術だけでなく、ヒアリング力、理解力、相手を慮る力、即興力、ダンドリ力。まさに「マンネリを防ぐため審査方法は毎年変更している」(総合プロデューサー小山薫堂氏)の言葉通りでした。

今回の最終審査のテーマは「塩」。塩をテーマとしたレストランのシェフとして「スペシャリテ(看板料理)」を提案するという課題です。

塩職人・松本さん

最終審査にご協力いただいた生産者は、塩づくりに適した日本中の浜を歩き回った末、熊本県・天草諸島を選んだという塩の職人・松本明生さん(写真右)。松本さんが作った釜で炊き上げた煎熬(せんごう)と天日干しの二種類の塩が、今回のテーマ食材なのです。

二種類の塩

選手たちは生産者の松本さんからヒアリングした後、一晩で料理を考案。翌朝7時に築地に集合して食材を調達(材料費5万4000円、買い物時間は2時間)、その後揃って会場入りし最終審査に挑みます。

センスと度胸が試させれる、制限時間90分の一発勝負

いよいよ最終審査!くじ引きで決まった順に選手がひとりずつ調理。アシスタントなし、制限時間90分で15人分の「塩」をテーマとした料理を作ります。調理後はすぐに審査員に供され、30分の実食・面談による審査となります。

見出し4 審査員

初めてのキッチンで火加減も道具の使い勝手も分からない中での本番一発勝負。調理中は終始カメラに取り囲まれ、審査員の視線も間近に感じる特殊な状況。こういった中でも実力を出せるかが問われる、それが決勝です!

最終審査2

取材陣から「一人で15皿は大変?」と聞かれ「盛り付けが凝ったものは難しいですね」「1皿目と15皿目で温度差が出ないようしないと」と答えていた選手たち。それらをすべて踏まえた上で調理に臨みます。

最終審査3

調理中に審査員たちに質問を投げかけられても、選手たちは決して作業の手を止めることなく、にこやかに対応。しかし終了時間が迫ってくると、料理の出来上がり時間を確認する給仕スタッフの声が走り、一気に高まる緊張感。どの選手たちも持ち時間ギリギリまで使って仕上げていました。

審査員団

キッチンを見守る審査員団。審査の場ではありますが、「自分だったらこの食材でどう作るかなって考えちゃうよね」「最近この食材は洋菓子でも使いますか?」など料理人としての好奇心が止まらない様子でした。

実食タイム

日本を代表する食のプロフェッショナルに自分の料理を味わってもらい、直接フィードバックがもらえる夢のような機会。サービスは田崎真也氏のお店のスタッフ陣が協力。

実食タイム 松本さん

実食タイム中には、塩の生産者・松本さんから伺った話をどのように受け止め、理解し、どう料理に反映させたのかを選手がプレゼンし、審査員との質疑応答となります。

「レシピはいつ閃いたの?」「テーマを聞いた時、どう思った?」「世界は意識する?」「もし優勝したら何がしたい?」このあたりは料理人のコンクールとしては想定内の質問でしょう。

しかし「決勝では技術力だけでなく、その人の人間性をいちばん評価する」というだけあり、こんな質問も出ました。

「あなたにとって最高の贅沢は?欲しい才能は?今までに後悔したことは?」
「あなたが考える、人間の好きなところ、嫌いなところは?」
「男性と女性、それぞれが持っているいちばんのクオリティは何だと思う?」
選手たちはひとつひとつに対して、真摯に答えていました。

ゴールドエッグたちが寝ずに考えた「塩」の逸品は?

レシピ考案に費やせた時間は、実質12時間程度。夜も寝ずに考え抜いた、ゴールドエッグ5名が創り出した「塩」をテーマにした渾身の料理をご紹介します。

音羽 創さん(フランス料理)

音羽 創さん(フランス料理)
テーマ「天草の海、その背景」 天草のクロムツの下は、天草の海に見立てた青菜のフランと天草のアサリ、海苔のコンソメ。

崎 楓真さん(日本料理)

崎 楓真さん(日本料理)
テーマ「恩恵」 水と塩だけで炊いたノドグロと天草の海の景色をイメージした海老芋、人参やかぶ。梅やすだちなどで味を変化させていく一品。

薬師神 陸さん(フランス料理)

薬師神 陸さん(フランス料理)
テーマ「てしおにかけて」 フランス料理のビスクにヒントを得、塩にエビの風味を加え再構築。

山口智也さん(イタリア料理)

山口智也さん(イタリア料理)
テーマ「天草の塩のパン」 小さな子供からお年寄りまで食べてもらえる、天草の生活に溶け込むような形を目指した。

赤井顕治さん(フランス料理)

赤井顕治さん(フランス料理)
テーマ「私たち ~生きるということ」 “人間の血の成分は海の成分に似ている”という生産者・松本さんの言葉をヒントに血を連想させる赤身の鴨をチョイス。受け取った言葉をつなぎ合わせコンセプトを決めた後は、食材購入から調理までライブ感覚で進めていった。

審査でのプレゼン・質疑応答の様子から、ぶっつけ本番で思うようにいかない点もあったものの、全員、全力を出し切って戦い抜いたことがよく伝わってきました。

落合氏、山口さん

自分の番の前に、落合氏に言葉をかけられるゴールドエッグの山口さん(イタリア料理)。こんなに近い距離で言葉を交わすチャンスは貴重に違いありません。

見出し5

最終審査後、うまくいった?何を聞かれた?など情報共有。同世代が頑張る姿は刺激になるとのこと。

総評で繰り返された“謙虚”という言葉

優勝者(ゴールドエッグ)の発表は決勝同日の夜、日本橋三井ホールで行われました。受賞セレモニーは千住明さんが「RED U-35」のために作曲したオリジナル曲の演奏からスタート!

受賞セレモニー1

生産者・松本さんとファイナリスト5人がステージに上がり、全審査のプロセスと終わったばかりの決勝の様子が映像で紹介されます。

松本さんと選手

そしていよいよ、審査委員長の脇屋友詞氏(Wakiya一笑美茶樓オーナーシェフ)からグランプリ(レッドエッグ)が発表!
◎準グランプリは音羽 創さん(フランス料理・34歳)
◎グランプリは赤井顕治さん(フランス料理・34歳)
が選ばれました。

レッドエッグ発表

具体的な審査結果は非公開ですが、審査員総評の中で赤井さんを評する際に幾度となく繰り返されたのが“謙虚”という言葉でした。その謙虚な姿勢を表す事例として、

  • 決勝はアシスタントなし、すべて一人でこなさなくてはいけない状況だったが、赤井さんはプレゼン時に「一人ではない、生産者の松本さんと一緒に戦うことが出来て光栄だ」と言った。
  • 最終審査が最後組だった赤井さんは、それまでに4皿食べた審査員を配慮して料理の量を減らした方がよいか確認した。

といったエピソードも審査員の方々が挙げていたことから、赤井さんの周囲を慮る謙虚な人柄が料理人としての高評価につながったことは確かなようです。

「決勝では技術力だけでなく、その人の人間性をいちばん評価する」の言葉通りとなったわけですが、なぜ今、若き料理人たちに改めて“人間性”を求めるのでしょうか。

振り返れば第二審査の課題は「私と信頼する生産者とのつながり」、最終審査は“ひとりの生産者”と対面しその想いや情熱を汲むこと、どちらも生産者がテーマでした。

料理人は料理さえ作ればいいというものではない。独りよがりにならず、常にお客様、生産者、自分を助けてくれる人達のことを想うこと。料理する人というよりも、人と人を繋いだり、何かを代弁したりする存在であるべきではないか。それが今後の料理人のあり方ではないか。そんなメッセージが大会全体を通して発せられているように思いました。

赤井さん

赤井さん自身、審査時のプレゼンや受賞後のインタビューで「これからの料理人に必要なものはバックグラウンド。一方通行ではいけない。生産者をはじめいろいろな人を繋ぎ、そこから生まれたものをアウトプットする。それが料理人にできる新たな提案」と話していました。

赤井さんの夢は、フランス料理をベースに地元広島から国内外に発信していくこと。「日本全国から足を運んでもらえるレストランを作って、世界に出たい。広島からでは難しいとよく言われますが、いろんな人と繋がればきっとできるはず!」

審査員 VS 挑戦者の構図になってしまいがちな決勝の場で、審査員に「よろしくお願いします」ではなく、気持ちを込めて「どうぞ召し上ってください」と言った赤井さんならきっと夢を実現できるに違いありません。

ラスト受賞者

来年度の「RED U-35 2018」は、脇屋友詞(Wakiya一笑美茶樓オーナーシェフ)審査員長のもと、本年度同様の審査員メンバーで開催、春頃募集開始予定です。来年はどんな課題、審査方式で、料理界に風を吹き込むか。ますます目が離せない大会になりそうです。

写真協力/「RED U-35実行委員会」

「RED U-35 (RYORININ’s EMERGING DREAM)」
公式HP http://www.redu35.jp/
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