イメージ写真:手のひらでもちあげた植物の芽

近年、SDGs(持続可能な開発目標)の環境保全の取り組みは重要視され、プラスチックの利用に対する社会の関心が高まっています。それにともない、飲食店でも環境に配慮した資材を使用するお店が増えてきています。

自分のお店でも環境のために取り組めることはないかと、模索している経営者の方も多いのではないでしょうか。

飲食店がプラスチック削減のためにできる取り組みはどのようなものが挙げられるのか、具体例を紹介します。

飲食店でプラスチック廃止の動きがトレンドに

イメージ写真:白いテーブルの上に置かれたアイスコーヒーのグラスにプラスチックストローが刺さっている

プラスチック削減に向けた社会の動きを受けて、飲食店でもプラスチック廃止への取り組みが始まっています。その取り組みの例をみていきましょう。

プラスチックから紙へ

飲食店で大量消費されているプラスチック製品の代表格のひとつがストローです。そのプラスチック製ストローを廃止しようという動きが、世界各地で加速しています。

プラスチック製ストローの廃止の取り組みの中心となっているのが、アメリカやイギリスです。

アメリカの大手コーヒーチェーン店のスターバックス・コーヒーでは、2020年末までに世界全店でプラスチック製ストローの使用を全廃すると、既に2018年7月に発表しています。日本国内でも、2020年1月からプラスチック製から紙製への切り替えが始まっています。

マクドナルドも、2018年9月からイギリスとアイルランドの店舗でプラスチック製から紙製への切り替えを開始しました。2025年までに世界各地の全店舗でプラスチック製ストローを廃止すると発表しています。

日本でも大手飲食チェーンを中心に、プラスチック製から紙製のストローに変更する動きが広がっています。

ガストやジョナサンなどのファミリーレストランを運営しているすかいらーくでは、2020年までに国内、海外すべての店舗でプラスチック製ストローを廃止することを発表しました。

定食チェーンの大戸屋では、2018年11月から一部店舗でプラスチック製ストローの撤去が開始され、2019年4月には直営146店舗で実施されています。

レジ袋有料化も後押し

エコに取り組む企業が増えたことに加えて、レジ袋の有料化もプラスチック削減を後押ししています。

2020年7月から全国一斉にレジ袋の有料化が始まりました。これはプラスチックごみの削減を目的に始まったものです。

これまで無料だったレジ袋が有料になったことで、エコバッグを持ち運ぶ人も増えており、消費者自身のエコへの関心も高まってきていきます。このような消費者側のエコへの関心の高さもプラスチック廃止の動きにつながっているといえるでしょう。

プラスチックに関する社会の動き

イメージ写真:画面いっぱいの緑の木々

プラスチック廃止への社会の関心は、ここ数年の間に一気に大きくなりました。このような動きが進んだ背景をみていきましょう。

プラスチック資源循環促進法案

2022年の施行が予定されている、プラスチックごみの削減を飲食店などに義務化する内容の新法案が「プラスチック資源循環促進法案」です。

プラスチック製のストロー、スプーン、フォークなどの提供削減を義務付けることで、プラスチックごみの排出を抑え、リサイクルを促進することを目指しています。

プラスチック資源循環促進法案に関連して、政府はメーカー向けにプラスチック製品の軽量化や代替素材の活用など、環境に配慮するための指針を策定しました。

すでに、ストローをプラスチック製から紙製に変更したり、ストロー自体を撤去したりする取り組みを行っている企業もあります。

法案が成立することで、プラスチック製品の使用削減に積極的に取り組む企業がさらに増えていくことでしょう。

SDGsの考え方

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、日本語に訳すと「持続可能な開発目標」ということです。

2015年に国連のサミットで世界のリーダーによって採択された国際社会共通の目標で、2030年までの15年間で達成していくことになっています。

SDGsには17の大きな目標があり、それら目標を達成するための169の具体的なターゲットが設定されています。

基本的なSDGsの考え方は、経済・社会・環境の3つの側面でバランスを取りながら持続可能な開発を目指していくというものです。

プラスチックごみの削減に関係しているのは、SDGsの目標12「つくる責任つかう責任」と目標14「海の豊かさを守ろう」になります。

目標12「つくる責任つかう責任」では、生産者と消費者の双方が地球の環境と人々の健康を守ることを目指しています。

具体的なターゲットとして設定されているのが、2030年までにごみが出ることを防いだり、減らしたり、リサイクル・リユースをしてごみの発生する量を大きく減らすことです。

目標14「海の豊かさを守ろう」では、最初のターゲットとして、2025年までに海洋ごみや富栄養化など、あらゆる海の汚染を防ぎ、大きく減らすことを設定しています。

現在、ペットボトルやビニール袋、ストローなどのプラスチックごみが年間800万トンも海に流れ出ていると報告されているので、早急に対策をしていかなければなりません。

プラスチックごみの削減はSDGsの目標12と14を達成に貢献するものになります。そのため、SDGsに取り組んでいる世界中の企業は、今後プラスチック製品の削減の方向にシフトしていくことでしょう。

飲食店でできるプラスチック削減の取り組み

テイクアウト用の紙袋や容器、フォーク、紙コップの写真

個人の飲食店でもプラスチック削減のためにできることは多くあります。まずは小さなことから環境に配慮した取り組みを行いましょう。

テイクアウトは紙容器で

プラスチック製が多いテイクアウト容器ですが、最近では環境への配慮のために、紙製の質感を生かした目新しいデザインやおしゃれな紙容器の種類が増えてきています。

紙容器は、プラスチック製と比べて耐久性が劣るのではと感じる方もいるかもしれませんが、加工の仕方やフィルムなどを貼ることで、十分な耐久性を持たせることが可能です。

またほかにも、紙の柔らかさを生かして料理の提供時に食品の形をきれいにキープしたり、結露や余計な水分を紙容器に吸わせて、湿気がこもらないようにすることもできます。

大手コンビニチェーンのセブンイレブンでは2020年6月から、チルド弁当の容器をプラスチック製から紙容器に切り替えています。

テイクアウトメニューを提供している飲食店の方は、プラスチック製から紙製の容器に変更することができないか検討してみると良いでしょう。

現時点で、プラスチック製から紙製へ容器を変更することが難しいという場合でも、別のところでプラスチックごみの削減に取り組めます。

たとえば、割りばしをプラスチックの袋に入ったものではなく、紙の袋に入っているものを使うなどです。まずは、できる範囲で小さなところから取り組みましょう。

バイオマスレジ袋の活用

2020年7月からレジ袋の有料化が始まりましたが、バイオマス素材の配合率が25%以上のレジ袋については有料化の対象になっていません。

そのため、テイクアウトなどでレジ袋を無料で提供したいという場合は、バイオマスレジ袋の活用を検討してみると良いでしょう。

中華料理チェーンの餃子の王将や回転寿司チェーンのくら寿司も、2020年7月からテイクアウトの商品を入れるレジ袋をバイオマスレジ袋に切り替えています。

バイオマスレジ袋を導入することで、環境に配慮している店であるという好印象をお客様に与えることもできますので、検討してみる価値はあるでしょう。

飲食店でプラスチックごみをさらに削減する方法やほかのお店の取り組みを知りたいなら、飲食業界の最新情報が発信されているアプリ「ククロ」がおすすめです。

飲食業界を取り巻く環境は変化が激しいので、最新情報を掴んでおく必要があります。「ククロ」で情報を取り入れて、飲食店の経営にお役立てください。

編集後記

プラスチック廃止の動きは日本国内だけではなく、世界のトレンドとなっており、消費者のエコへの意識も高まっているのが実情です。

大手飲食店やスーパーでは、プラスチック製のストローを紙製にしたり、プラスチックのレジ袋をバイオマスレジ袋に変えたりと、脱プラスチックに向けた動きが進んでいます。

個人の飲食店では、プラスチック削減のために一気に資材を変えるのは現実的ではないかもしれません。まずは、わりばしの袋を紙製のものに変更するなど、小さなことから始めましょう。ほかの飲食店の情報を取り入れつつ、無理なくできることから始めることが大切です。