「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ2018」の会場前の写真

2018年9月(9月13~15日の3日間)、米国最大級規模のナチュラル・オーガニック・健康関連の展示会「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ・イースト(Natural Products Expo East)2018」が開催されました。会場は、米国の首都ワシントンDCの近隣都市で人口65万人の街・ボルティモアにある「ボルティモア・コンベンションセンター」です。

この大規模な自然食品(オーガニックや健康食品)の展示会は、東海岸と西海岸でそれぞれ1回ずつ、年2回開催されています。3月に西海岸のロサンゼルス近郊のアナハイムで「West」、9月に東海岸のボルティモアで「East」という計2回。「East」は出展企業2000社、「West」は3000社の出展がありますが、後者は日本の食品展示会では「FOODEX(フーデックス)」と同規模の展示会になります。

今回の展示会を現地レポートするにあたり、いくつかのキーワードがありました。まずは、そちらからご紹介していきます。

米国での注目健康キーワードは「糖」と「脂」

現在、米国では健康志向な人たちの間で「糖化」が注目されています。「ナチュラル・プロダクツ・エキスポ・イースト(Natural Products Expo East)2018」でも、「糖化」を新たな潮流として発表しており、今後の健康業界でさらに注目を集めるトレンドになるといえるでしょう。

「糖化」とは?

糖化の研究は、100年前(1918年頃)フランスの科学者 Louis-Camille Maillard が食品の褐変化現象をアミノ酸と糖の非酵素的反応であることを解明してから始まりました。2001年には、抗加齢医学会が日本に発足。10回日本抗加齢医学会総会(京都)では、糖化対策の意義に関する学会初のシンポジウム「加齢性疾患における AGEs の意義」が開催され、アンチエイジング医学分野においても抗糖化の重要性が知られるようになりました。

ここで簡単に説明すると、「糖化」とは、医学的には“糖化反応”といいます。糖が体内に余るとメイラード反応を起こして細胞の機能を低下させるため、体の各器官が老化してしまうことを指します。肌ではコラーゲンが硬化してハリが無くなってしまうことになります。これを防ぐためには、糖の摂取を減らした食事と適度な運動が必要です。そこで、糖や炭水化物を含まない食品が推奨されているのです。

日本以上に米国では、食品企業が「脂は良くて糖はダメ」「fat is back, sugar is out(脂は大丈夫、糖よさらば)」をスローガンに、「糖をいかに減らしているか」を訴求する食品を多数展開しています。

fat is back, sugar is outとかかれた垂れ幕と商品の画像

「ケトジェニックダイエット」とは?

また、「ケトジェニック」という言葉もかなり一般化しています。
糖質削減ダイエットの発展形として注目される「ケトジェニックダイエット」は、糖質をできるだけセーブして、タンパク質、食物繊維、ミネラルを多く摂る食事法です。糖摂取を減らして体内の糖をケトン体に変えることで脂肪燃焼を促し、脂肪燃焼型へと体質改善させる考え方のダイエット法です。

今までのダイエットは食べないで痩せる方式でしたが、現在の主流は糖質摂取を限りなくゼロを目指しながら、他のタンパク質、ミネラル、食物繊維、脂肪を十分摂っていくダイエット法です。機能性医学をもとに指導するので栄養不足にはならず、健康的に痩せることができます。糖質不足の状態になるとケトン体を放出し始めます。今まで糖を分解してエネルギーを作っていた体が、糖不足となり脂やケトン体を分解してエネルギーを作るようになります。これで、体内の脂をエネルギーに分解する体質になるというわけです。

「オメガ3」とは?

ダイエットの敵として「脂」は敬遠されがちですが、不飽和脂肪酸のような液体で体内の脂肪を溶かして対外へ出すものと、飽和脂肪酸のように固まって体内にとどまり血流を妨げるものの2種類があります。この不飽和脂肪酸のように“良い脂”を摂取することは健康に良いと奨励されています。

なかでも現在、「オメガ3」を含有する動物性油脂食品が米国ではトレンドとなっています。「オメガ3」とはEPAやDHAなど魚の脂で、血液がサラサラになる脂です。体内では作ることができないため、外部から摂取しなければなりません。不飽和脂肪酸には、この他オメガ6とオメガ9があり、オメガ9は、体内でも生産されます。

なかでも、バター、ヨーグルトといった乳製品でも、牧草で育った牛からできるグラスフェッドビーフ製品(Grass Fed Beef Food)にオメガ3の含有が多いということがわかっているので、牧草牛由来の乳製品は体に良いということで、出展数が年々増加傾向にあります。
グラスフェッドバター、グラスフェッドヨーグルトなどの食品を讃えて、「Grass Fed Goodness(グラスフェッドは神)」とキャッチフレーズをつけるほど!その人気の高さが伺えます。

グラスフェッドビーフ製品のコーナーに女性が立っている写真

「グラスフェッドビーフ」とは?

豚や鶏は、オメガ3を含む餌を与えれば体内の含有量を増やすことができますが、牛についてはそうはいきません。現時点の研究では、牛の場合は、放牧して牧草を与えなければオメガ3の含有量が増えないとされています。そのため、自然に生えている牧草を放牧して与える「グラスフェッドビーフ(牧草飼育牛肉、牧草牛)」「グレインフェッドビーフ(穀物牛)」は区別されています。

牧草牛はオメガ3が多いですが、穀物牛には肉質が柔らかくて食べやすい利点があるため、近年は牛の飼育方法として、牧草牛として成長させて、出荷前1カ月に穀物を与えるやり方も増えているとのことです。ちなみに鶏卵は、飼育の際にオメガ3含有量の多い餌を与えることで、オメガ3を増やすことができるそうです。

オメガ3と書かれたたまごのパックの画像
健康志向の米国人は今まで、「肉をやめて、野菜や炭水化物を摂ること」を健康的だと捉えていましたが、まったく真逆の「肉を摂取して、炭水化物や糖を制限すること」が健康的だと考え方がシフトしています。もともと肉食の食生活である米国人にとって、食生活に取り入れるハードルが低いこともあって、この考え方は一気に浸透しているようです。

「糖の削減」と「良質な脂の摂取」を奨励する食品が目白押し

今回の展示会では、糖の摂取を減らして、良質な脂を摂取することを推奨する食品ラインナップがかなり充実していました。いくつかご紹介しましょう。

スナック菓子のブースでは、「Keto Friendly, Flato Friendly」というフレーズが見られました。日本語でいうと「ケトン体を増やして、原始時代みたいな食生活をしよう」という意味になるでしょうか。「Flato」は原始的という意味です。
これは糖質の極めて少ない食材を亜麻仁油などで揚げて調理したスナック菓子の宣伝文句ですが、原始時代は炭水化物の摂取が難しく、ナッツ類や肉、魚を食べる食生活だったことに由来して、(このスナックで)体に良い原始時代のような食生活を!というふれ込みのようです。

nushと書かれた赤と黄色の壁に商品が描かれている写真

コーヒー用のクリームでは、ココナッツオイルや良質脂を使うことを訴求しています。砂糖を加えず、良質な脂を使った「ケトジェニック・ダイエットコーヒー」という食品もありました。
「良い脂は体内脂肪を燃焼させる」、言い換えると「良い脂で悪い脂をなくす」という考え方が定着しつつあることがわかります。

「ケトジェニック・ダイエットコーヒー」のコーナーの写真

注目は「低糖」「良質な脂」そして「高タンパク質」

今回の展示会では、糖の摂取を減らして、良質な脂を摂取することを推奨する食品ラインナップの他に、「高タンパク質」を訴求する食品も充実していました。

たとえば、「ハイプロテインウォーター」という商品は、乳清のタンパク質を加えた水です。加糖されていないので、カロリーも抑えられています。高タンパク質の水は乳糖を含まないので、糖は摂らずにタンパク質を摂取する水ということで、ケトジェニックダイエット中でも水分とタンパク質を摂取できる飲み物としてアピールしています。

「ハイプロテインウォーター」のコーナーの写真

また、番外編としてご紹介したいのが、昆虫食です。
新しい食品といえるかは未だ難しいと思いますが、新たなトレンドになるかもしれません。何といってもタンパク質を安価に摂る方法の一つになりそうです。

写真で紹介しているのは、コオロギのプロテインバーです。昆虫のタンパク質を摂取できる食品としては、以前から昆虫パスタはありましたが、プロテインバーは初登場。既に日本の総合商社から引き合いがあるそうです。

昆虫の原形がわからない状態で食せるメリットはありますが、原形が分からない状態でも食べられない人が依然多い中、今後どのように普及するかは注目したいところです。
昆虫食のレストランは、ずっと未来のお話となるのでしょうか?!

世界の食品供給に限界があるため、効率的な供給方法として昆虫食が注目を集めていますが、いかに効率的にアミノ酸またはタンパク質を摂取できるかについては、今後さらに研究が深まっていくことでしょう。

まとめ

米国「ナチュラル・プロダクツ・エキクスポ・イースト(Natural Products Expo East)2018」で見た、健康食品のトレンド情報をピックアップしてご紹介しました。

今後、食のトレンドとしては、「糖質・炭水化物を(なるべく)避けて、良い脂を積極的に摂取する」という動きをおさえておく必要があるでしょう。
キーワードは、ローカーボ(Low Carbon)ケトン体(ketone)ケトジェニック(ketogenic)グラスフェッドビーフ(Grass Fed Beef 牧草飼育牛肉、牧草牛)などになりそうです。
飲食店のメニュー開発や、商品開発のヒントになれば幸いです。