
東京の厳選した飲食店・レストラン、宿泊施設を紹介するガイドブック「ミシュランガイド東京2020」の掲載店が発表になりました。
今回掲載された飲食店・レストランは464軒。そのうち星が付いたのは226軒。〝価格以上の満足感が得られる料理〟を提供する店を選ぶビブグルマンは238軒となりました。
目次
「ミシュランガイド東京2020」のセレクション概要
「ミシュランガイド東京2020」飲食店・レストラン部門のセレクション概要です。
- 三つ星 11軒(うち、評価の上がった店1軒)
- 二つ星 48軒(うち、新規店1軒、評価の上がった店2軒)
- 一つ星 167軒(うち、新規店19軒)
- ビブグルマン 238軒(うち、新規店35軒)
※三つ星店、新規に星を獲得した店、評価が上がった店のリストは、記事の最後にご紹介します。
■三つ星店のラインナップが大きく変化、ビブグルマンの価格設定は「6,000円以下」に
今回のセレクションでは、評価の枠組みに若干の変化がありました。
これまで東京の三つ星店の常連だった「すきやばし 次郎 本店」と「鮨 さいとう」は一般予約ができなくなったとして、“掲載対象外”となりました。
また、2019年10月から消費税率が上がったことから、ビブグルマンの価格設定はこれまでの「5,000円以下」から「6,000円以下」に変更に。このことで、セレクションの対象店舗が増えたとも言えます。
セレクション内容とは関連しませんが、掲載店舗の関係者が招かれる出版記念パーティーは、今回、インターネット上でライブ配信されました。書籍やWEBページだけでなく動画で新規掲載店店主のコメントや登壇時の様子などを見聞きできることになり、ミシュランガイドの楽しみ方や店からの発信のバリエーションが増えました。
では、評価ごとに今回のセレクション内容を見ていきましょう。
今年も東京に新たな三つ星店が誕生
「ミシュランガイド東京2020」の三つ星店は11軒。今回の三つ星店のラインナップは、先述したように“掲載対象外”となった店があったことで大きく変わりました。
「ミシュランガイド東京」発売以来三つ星を維持し続けているのは「かんだ」(日本料理/港区)、「カンテサンス」(フランス料理/品川区)、「ジョエル・ロブション」(フランス料理/目黒区)の3軒です。
■12年間二つ星を維持し、新たに三つ星の評価を得た「かどわき」
「かどわき」(港区/日本料理)は2009年の初掲載以来12年間二つ星を維持し続け、今回新たに三つ星の評価を得ました。「かどわき」は、店主の門脇俊哉さんが、豊かな発想で記憶に残る料理を提供する日本料理店です。掲載店発表後にコメントをいただきました。
「三つ星をいただいて身が引き締まる思いです。従業員が頑張ってくれている中で、若い子たちの励みになればと。
ずっと二つ星をいただいていて、万年二つ星、と思っていました。何かを大きく変えたということはなく、より良いものを、お客様がまた来てくださるようにと、それだけを積み重ねてきました。
お客様は浮気したりするんです。他の店に行かれることもある。でもしばらくして戻ってきてくださった時に、やっぱりここは間違いないなと感じていただけたら嬉しいですね。そこで味が大きく変わってしまっていることなく、でもずっと同じだなと感じさせることもなく、わざわざ店に足を運んでくれたお客様に来てよかったと言ってもらえる、期待を裏切らない店でありたいです」(門脇さん)
話題の店が初掲載で二つ星に!日本で唯一となるイタリア料理の二つ星店も
二つ星は48軒。
一つ星から評価を上げた店は「銀座 しのはら」(中央区/日本料理)と「プリズマ」(港区/イタリア料理)。「プリズマ」は現在日本で唯一の、イタリア料理のジャンルでの二つ星店となりました。東京でイタリア料理が二つ星の評価を得たのは「ミシュランガイド東京2011」以降ではじめてのこととなります。
■オープン当初から話題の「Inua」はいきなり二つ星
世界のレストランランキングの常連、デンマーク・コペンハーゲンの「noma」がプロデュースする「Inua」(千代田区/イノベーティブ)は、初掲載で二つ星となりました。
シェフのトーマス・フレベルさんは、壇上で「日本のお客様にどんな印象をもっているか」という質問に対してコメントしました。
「日本の皆さんは、世界のなかでも食べ物を愛している人たち。そういうお客様を店でお迎えできることをうれしく感じています」(フレベルさん)
一つ星の新規掲載店には、ベテランシェフの店やイタリアで活躍するシェフの店も
新たに一つ星にセレクションされたのは、熟成させた魚を中心にしたコースを提供する「サンプリシテ」(千代田区/フランス料理)、鳥羽周作シェフが新たに開業した「Sio」(渋谷区/フランス料理)、京都出身で、京都で研さんを積んだ藤山貴朗さんが京都の食材を中心に料理する「銀座 ふじやま」(中央区/日本料理)ほか、19軒の店でした。
■ベテランシェフの新店「ラフィナージュ」が一つ星の評価
フランス料理の名店「銀座レカン」の総料理長を務めた高良康之さんが独立し2018年10月に開業した「ラフィナージュ」(中央区/フランス料理)も、今回の一つ星の新規掲載店となりました。高良さんにコメントをいただきました。
「素直に嬉しいです。昨年のオープン以来スタッフも一生懸命取り組んでくれて、そのご褒美として星をいただけたことが嬉しいし、励みになります。でも、まだまだ。店名の『ラフィナージュ』は熟成という意味の言葉です。それは今、結果として熟成しているのではなくて、これからということ。自分の目標に向かっていきたいです」(高良さん)
■日本の素材を活かしたイタリア料理店「アルテレーゴ」も新一つ星店に
イタリア・ミラノの「Ristorante TOKUYOSHI」オーナーシェフ徳吉洋二さんが2019年2月に東京で開業した、「アルテレーゴ」(千代田区/イタリア料理)も一つ星となりました。
徳吉さんは、イタリアで、日本人オーナーシェフとしてはじめて一つ星の評価を得ており、ミラノでも東京でも星を持つことになりました。
「アルテレーゴ」のシェフを務めるのは「Ristorante TOKUYOSHI」でスーシェフだった平山秀仁さん。平山さんと徳吉さんにコメントをいただきました。
「僕たちがやっていることを評価していただけて、率直に嬉しいです。オープンから1年目で、こんなに早い段階で星をいただけるとは思っていませんでした。これからさらに成長していきたいです。
評価を求めるのではなく、まずはお客様に満足して帰っていただくことを大事にしています。ジャンルはイタリア料理ですが、日本の食材を使って日本のテイストのある料理をお出ししていますので、海外のお客様にも、ここにしかないイタリア料理を楽しんでいただけると思っています。日本のイタリア料理を盛り上げていけたらいいですね」(平山さん)
「日本の素材を使ってどうやってイタリア料理を表現していくか、そこに興味がありました。日本のイタリア料理を見ていて、僕ならこうアプローチしてみたい、というものがずっとあったんです。イタリアの料理は足し算で積み上げていきますが、日本の食材を使って、引き算の料理でイタリアンを表現したらもっと面白いんじゃないかと。
料理は今後、もっと複雑なものになっていくかもしれません。お店はどんどん進化して変わっていくものです。評価を狙うと凝り固まってしまいますから、まずは自分たちのやりたいものを表現していくこと、それが第一だと思っています」(徳吉さん)
新ジャンルの追加はなかったものの、注目店が目白押しのビブグルマン
ビブグルマンは、掲載店238軒。そのうち新規掲載店は35軒でした。
毎回新ジャンルの追加が話題になるビブグルマンですが、今回は新しいジャンルは加わりませんでした。
自然派ワインが楽しめるビストロとして既に人気が定着している「ル・キャバレ」(渋谷区/フランス料理)が新規掲載。「焼鳥 今井」(渋谷区/焼鳥)と、「焼鳥 今井」の店主今井充史さんが店の隣に開業した「とんかつ 七井戸」(渋谷区/とんかつ)は、2店揃ってビブグルマン初掲載となりました。
■独創的なスパイスカレー、本場インド料理の店が初掲載
今回ビブグルマン初掲載となった「スパイシー カレー 魯珈」(新宿区/カレー)は、スパイスカレーに魅了された齋藤絵理さんの店。
「名だたる名店のなかでカレーのジャンルで認められたことが嬉しいです。カレーの業界を盛り上げるひとつのきっかけになればいいなと思います。
私はもともと無類のカレー好きで、いろんな店を食べ歩くなかで、自分がおいしいと感じる味を信じて提供し続けてきました。カレーに対する情熱を認めていただけたのではないかと思います」(齋藤さん)
南インドの港湾都市、マンガロールの郷土料理を提供する「バンゲラズキッチン」(中央区/インド料理)も新規掲載。シェフのバンゲラ・プラシャント・ノナッヤさんは日本に来て10年。授賞のコメントをいただきました。
「とても嬉しいです。これからも頑張らなければと思っています。マンガロールは魚介類が豊富に獲れる地域。日本はおいしい魚が手に入るので、マンガロールの郷土料理のレシピは日本の素材にぴったり合っていると思います」(ノナッヤさん)
複数の店が評価されるオーナーが続出
今回のセレクションでは、同じオーナーが経営する店舗がそれぞれに評価されるケースが目立ちました。
ビブグルマン新規掲載の「焼鳥 今井」と「とんかつ 七井戸」、2つ星の「豪龍久保」とビブグルマン新規掲載の「神宮の蕎麦」、2つ星の「オマージュ」とビブグルマン新規掲載の「Noura」など。
高価格帯の店とカジュアルな店を経営したり、ジャンルの違う店を出店して、いすれも高い評価を得ているようです。
「ミシュランガイド東京2020」セレクションリスト
三つ星店、新規に星を獲得した店、評価が上がった店のセレクションリストです。
※リストは店名の50音順
■三つ星
「麻布 幸村」日本料理
「神楽坂 石かわ」日本料理
「かどわき」日本料理(※昨年から評価が上がった店)
「かんだ」日本料理
「カンテサンス」フランス料理
「虎白」日本料理
「ジョエル・ロブション」フランス料理
「鮨 よしたけ」寿司
「まき村」日本料理
「龍吟」日本料理
「ロオジエ」フランス料理
■二つ星
・新規掲載店
「Inua」イノベーティブ
・評価が上がった店
「銀座 しのはら」日本料理
「プリズマ」イタリア料理
■一つ星
・新規掲載店
「あき山」日本料理
「アサヒナガストロノーム」フランス料理
「アルテレーゴ」イタリア料理
「神楽坂 阿部」日本料理
「霞町 やまがみ」日本料理
「銀座 ふじやま」日本料理
「サンプリシテ」フランス料理
「Sio」フランス料理
「地蔵鮓」寿司
「熟成鮨 万」寿司
「旬恵庵 あら垣」天ぷら
「鮨 はしもと」寿司
「高柿の鮨」寿司
「匠 鮨 おわな」寿司
「てのしま」日本料理
「天婦羅 みやしろ」天ぷら
「常」日本料理
「焼鳥 おみ乃」焼鳥
「ラフィナージュ」フランス料理
「ミシュランガイド東京2020」の書籍は2019年11月29日(金)より、全国の主要書店で発売となります。
全ての掲載店のリストは、ミシュランガイド公式WEBサイト「クラブミシュラン(Club MICHELIN)」で閲覧できます。