二人のOLが休日のランチを楽しんでいる写真

会社の昼休みや友人同士の集まりなどで、ランチを外食して楽しんでいる人は多いのではないでしょうか?
「同じ飲食店でも、ランチはディナーに比べてリーズナブル」「お財布に優しい価格帯で提供されているおいしいランチを探すのが楽しい」、と考えている方も少なくないでしょう。

ディナーが5,000円以上の価格帯のレストランや割烹が、1,000円~2,000円台のリーズナブルなセットメニューをランチタイムに提供していることもありますよね。
そんな時、こんなにお得な値段のランチメニューを提供していて、お店は本当に商売が成り立つの?大丈夫かしら?と思った経験はないでしょうか?
お手頃とはいえ、ランチで使っている食材も、ディナーメニューに遜色ない食材レベルだったり、副菜やサラダが充実していたり、デザートが選べたり。内容に対する満足度も高ければ、なおさら気になります。

では実際、飲食店はランチにどれくらいの原価をかけているのでしょうか?
どの飲食店でも、ランチは赤字覚悟で運営されているものなのでしょうか?
こうした疑問について、日本全国の飲食店を対象に「ランチ営業の実態調査アンケート」をクックビズ総研が実施、結果をレポートします!

85.4%の飲食店全体がランチ営業を実施している

今回のアンケートに回答した飲食店185店舗のうち、ランチ営業をしているのは全体の85.4%でした。やはりランチ営業をしている店舗は多数派のようです。

Q.ランチ営業を行っていますか?

ランチ営業をしているかを表した円グラフ「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

ランチの原価率平均は32.3%だが、高級店はさらに高い原価率!

では、ランチにどれくらいの原価をかけているのでしょうか?
ランチ営業をしている飲食店では、ランチの原価率は平均32.3%という結果でした。
一般的な飲食店では、フードコストは原価率30%前後、ドリンクやアルコールのコストが原価率10%~25%と言われています。アルコールがあまり出ないこともあり、夜に比べてランチタイムは原価率が全体的に高くなりがちです。

さらに、ランチメニューの価格によって原価率に違いがないか、検証しました。
ランチの一人当たり平均単価が4,000円以下の飲食店では、原価率が約32%前後であるのに対し、一人当たり平均単価4,000円以上のランチの飲食店では、原価率が38.3%と一気に跳ね上がる結果。

高級店の高価格帯ランチは売値が高価であると同時に、お客様の満足度を高めるために、使用食材にコストをしっかりかけていることが、理由にあるようです。

Q.ランチの原価率はいくらですか?(一人当たりのランチ単価別)

ランチの原価率を表した棒グラフ「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

ランチ営業が赤字の店は全体の16.5%!高級店では業績が二極化

アンケートでは、ランチ営業を行っている飲食店のうち、黒字店は44.3%、利益も損も出ていない店は39.2%、赤字店は16.5%という結果が出ています。シビアな数字ではありますが、8割以上のお店はランチ営業で損を出していないことがわかります。

ただし、ランチの一人当たり平均単価を4,000円以上で設定している高級店では、黒字店が50.0%、赤字店が37.5%と、収益面での明暗がくっきりとわかれ、二極化しています。通常よりも赤字店が多いのは、ランチの原価が高い分、ドタキャンや売れ残りの売り上げに対する影響が大きいことが理由として考えられます。

Q.ランチ営業で利益を出していますか?

ランチ営業で利益を出しているかをあわらした棒グラフ「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

ランチ営業のねらいは売上だけではなく、クチコミ拡散や集客力強化も

飲食店がランチ営業に取り組む具体的な理由としては、「稼働率を上げ、売り上げを伸ばす」がもっとも多く58.2%、続いて「口コミを広げ、人気を集める」が32.9%、「ディナー営業の宣伝」が23.4%、「食材ロスを削減する」が18.4%という結果でした。

ディナーでは入店しにくいと敬遠されがちな店は、ランチで敷居を下げ、幅広い客層へアピールすることで得られる集客効果に期待をしているようです。

Q.ランチ営業をする理由は何ですか?

ランチ営業をする理由をまとめた棒グラフ「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

アンケートでは、ランチ営業についての狙いについて、具体的なコメントをいただきましたので、いくつかご紹介します。

  • 「ランチとディナーでは、客層がまったく異なります。ランチは主婦層を中心にご来店いただき、口コミによる評価もいただいています。」(京都府/中華料理/平均客単価: ランチ3,000円、ディナー11,000円)
  • 「昔はディナー営業へ(の集客に)つなげることを意識して、ランチに原価をかけて提供していましたが、今は、ランチとディナーのお客様でニーズが異なる為、昼と夜の違いをしっかり打ち出さないと売上げにつながりません。」(東京都/フレンチ/平均客単価: ランチ3,000円、ディナー8,000円)

ランチとディナーでは客層がまったく異なるという声も多く、ランチとディナーそれぞれのターゲットに合わせた営業をしている店が多いようです。

女性3人が乾杯している画像

また、スタッフの稼働率をあげ、店全体の人件費と固定費率を抑えるためにランチ営業をしている店もあります。

  • 「毎日かかる社員の人件費と店の固定費は変わらないので、全体の稼働率をあげて、(トータル的に利益が出る)仕組みを作っています。」(東京都/洋食全般/平均客単価: ランチ900円、ディナー4,500円)

そして、店の立地によっては、あえてランチで勝負しているお店や、地域活性化のためにランチ営業をしているお店もあるようです。

  • 「マグネット店舗が近隣には無く、飲食エリアではないため、コンセプトを明確にしてランチで集客をしています。ディナーは集客が難しく、今はランチ営業のみです。」(愛知県/イタリアン/平均客単価:ランチ1,700円)
  • 「地域の活性化! 商店街に店舗があり、ディナーのみよりも、ランチを営業することにより、 活気ある街造りを意識しております。」(静岡県/イタリアン/平均客単価:ランチ1,150円、ディナー3,000円)

パーティーの食卓の様子の写真

また、ランチ営業をしない店にその理由を尋ねてみたところ、
「採算が取れない」(40.7%)「スタッフの確保ができない」(37.0%)などマイナスの理由ばかりではなく、「ディナーだけで経営が成り立つ」(29.6%)などの意見もありました。

Q.ランチ営業を行わない理由は何ですか?

ランチ営業をしない理由をまとめた棒グラフ「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店のランチ営業に関する実態調査」クックビズ総研調べ(2018年)

ほかには、安易なランチ営業に危機感を持つべきだとする意見もありました。いくつか紹介します。

  • 「以前はディナーの宣伝のために毎日ランチ営業をしていたが、長時間労働になり、ディナー営業も安定してきたので、現在は完全予約制にしている。昼の需要がある立地であれば、ランチ営業はしてもいいが、そうでなければ夜の営業に注力すべき。安易な考えで結局どちらも中途半端にすべきではない。」(沖縄県/創作・ダイニング/平均客単価:ディナー8,000円)
  • 「ディナーメインの業態の不用意なランチ営業は、長時間労働の温床になり、メインの質が下がります」(京都府/焼肉/平均客単価:ディナー5,000円)

まとめ

飲食店のランチ営業の実態について、アンケート結果からは次のようなことがわかりました。

  • 85.4%の飲食店がランチ営業を展開している
  • ランチの原価率は平均32.3%
  • 赤字を出していない飲食店は全体の83.5%
  • 高級店であればあるほどランチの原価率が高く、収益にも明暗がわかれ二極化する傾向がある

ランチ営業の目的は、売上や利益を上げるだけではありません。クチコミ拡散による人気アップや話題作りを狙う店や、ディナー営業の宣伝のためにランチをやるというスタンスの店もあれば、昼と夜の客層が完全に異なるため、ランチとディナーを異なるコンセプトで運営している店もあり、多様な考え方がありました。

■調査概要

調査名 「飲食店のランチ営業に関する実態調査」
調査対象 全国の飲食店
有効回答数 185
立地内訳 首都圏80、中京圏21、近畿圏45、地方圏39
展開店舗数内訳 1店舗:54、2−10店舗:75、11−100店舗:37、101店舗以上:19
調査期間 2018年7月6日~2018年7月13日
調査方法 インターネット調査