日本酒を愛する飲食店と蔵元がそれぞれタッグを組み、こだわりの料理と酒を楽しむ日本酒イベント「上方日本酒ワールド」。このイベントは2010年に始まり、今回で9回目の開催となります。

毎年ゴールデンウィークに開催されるイベントですが、今回は全部で20店舗の酒蔵と屋台が参加。さまざまな料理と日本酒のマリアージュをその場で味わえる、日本酒好きにはたまらないイベントです!

そして今回の注目はやはり日本酒のグローバル化。海外からの参加です。
昨年よりシンガポールの飲食店がイベント参加していますが、今年はフランスの日本酒蔵が初参加!日本からはるか遠くの地で醸された日本酒を味わえると注目が集まります。

ピンクと黄土色の本イベントのチラシ

「上方日本酒ワールド2018」公式ポスター

日本酒をとことん楽しむ野外開催の酒フェス

「上方日本酒ワールド」を主催するのは、日本酒の魅力を伝道する居酒屋「蔵朱」「酒や肴 よしむら」「味酒 かむなび」の店主3名によって結成された『日本酒卍固め』という組合。
発足したのは08年3月で、「日本酒の魅力をより多くの人に知ってもらうため、日本酒を美味しく飲める場を提供したい」という想いから結成されました。(参考:「関西食文化研究会 料理人の集い」)

昨年の第8回目に過去最高となる約6200人を動員。
それまでは大阪天満宮にてイベントを行ってきていましたが、参加者の増加に伴って今年から難波の湊町リバープレイスに会場を移し、スケールアップしての開催となっています!

では、さっそく会場の様子をレポートしていきます。

難波の湊町リバープレイスの会場入口の様子の写真

開催当日はゴールデンウィークの初日。天気も穏やかに晴れて、まさにお出かけ日和。
イベントを楽しむには最高のコンディションということもあって、すでに開場前には行列ができ始めていましたよ。

当日の会場の様子とパンフレットの写真

まずは受付で前売りチケット(500円)を提示して、オリジナルおちょこと公式パンフレットを受け取ります。当日チケット(800円)も販売されているので、イベントに飛び入りで参加することも可能です。

料理や日本酒は、それぞれの屋台での現金払いとなっています。オリジナルおちょこに日本酒を注いでもらい、会場内に設置されたテーブルでゆっくり料理と一緒にいただくことができます。グラスはもちろん持ち帰りOK。

受付を済ませた頃、イベント開始のアナウンスが流れ、ついに上方日本酒ワールド2018がスタート!!楽しそうな乾杯の声が、会場のあちこちで次々に上がりました。

会場をぐるりと見て回ると、日本酒好きの中心層である50代・60代の方以外にも、若い世代の団体やカップル、そして子どもと一緒に参加するご夫婦の方々まで、実に幅広い層がイベントに参加していました。外国人の姿もたくさんありましたよ!

日本酒はただの一過性のブームではなく、いまや世界中で愛されるお酒になったことが実感できます。

老若男女のファンがうなる日本酒と料理のペアリング!

では、続いてイベントの目玉、美味しい料理と美味しい日本酒をレポートします!

まずは受付で配布されている公式パンフレットを参考に、今回初参加の屋台を目指します。

一軒目に訪れたのは・・・
岡山から初参加の「中華料理 はすのみ」と、香川の丸尾本店が造る銘酒「悦凱陣」のタッグ店です。

お酒と料理、出店先のテントと酒瓶の写真

【中国料理 はすのみ&悦凱陣(香川)】
薩摩赤どりの蓮の葉包み旨辛醤蒸し&悦凱陣 純米 丸尾神力28BY

料理は「薩摩赤どりの蓮の葉包み旨辛醤蒸し」。薩摩赤どりを15種類の調味料とスパイスで味付けして蓮の葉で包み、ほっくりジューシーに蒸しあげた一品です。
そこに組み合わせるのは、悦凱陣の「純米 丸尾神力28BY」です。ひやでも燗でも美味しい悦凱陣の純米酒は、一年寝かせているため米本来の美味さがギュッと凝縮した味わいとなっています。

日本酒の美味さに中華のスパイスが持つ複雑な味わいが混ざり合い、口いっぱいに香りが爆発します!日本酒と中華料理の組み合わせだからこそ生まれる、最高の美味しさです!

続いて、二軒目に訪れたのは・・・

一軒目と打って変わって、王道と言える和食×日本酒の組み合わせ。
大阪の心斎橋に店を構える「日本料理 翠」と、滋賀の富田酒造が造る銘酒「七本槍」のタッグ店です。

料理とテントの構えと茶色のビンの日本酒の写真

【日本料理 翠&七本鎗(滋賀)】
鴨のネギ味噌焼&七本鎗 純米 玉栄

料理は、鴨肉とネギを使った「鴨のネギ味噌焼き」。相性抜群の食材ですから、食べずとも美味しさがわかる一品です。この完成されたハーモニーに、酒米「玉栄」を使用した七本槍の純米酒がさらに組み合わさります!

柔らかい口当たりでありながらもしっかりとした旨味を持ち、適度な酸もあるバランスの良い日本酒と、和の食材たちが組み合わされば、美味しさがさらに際立つこと間違いなし。
料理と日本酒がそれぞれの素材を引き立て合い、すばらしいマリアージュが生み出されていました。マリアージュのお手本のような完成度です。

さらに三軒目は・・・・・・
昨年から上方日本酒ワールドに出店しているシンガポールの料理店「柳’s」と、神亀酒造が造る銘酒「神亀」のタッグ店です。

辛そうなヌードルとお店のテントと緑色のビンの日本酒の写真

【柳‘s(りゅうず)&神亀(埼玉)】
ラクサヌードル&神亀 山廃 2015 ブラックラベル上方日本酒ワールド限定酒

常夏の国から提供される料理は、ココナッツスープの味わいが特徴的なシンガポール名物のラクサヌードル。日本ではあまり馴染みのないシンガポール料理ですが、意外にも日本酒との相性は抜群!

組み合わせる日本酒は、神亀酒造の山廃2015。熟成された山廃の味わいとラクサヌードルの濃厚なココナッツスープの組み合わせは、私たち日本人が今まで知らなかった極上の相性でした。

美味しい料理と日本酒を提供してくれた店舗の若いスタッフさんたちにお話を伺ったところ、
「最近では飲みやすい日本酒だけでなく、しっかりとした米の旨味を持つ日本酒を好む若い人たちが増えていますね。このイベント自体も年々参加者が増えていて、毎回全ての店舗で800食もの料理を用意していますが、いつも全店売り切れになるくらいです(笑)」
と語ってくれました。

こういった魅力的な日本酒イベントを通して、新しい日本酒ファンがさらに増えていくのは間違いないですね!

海外発!海の向こうからやってきた日本酒とは?

今回のイベントで最も注目されていたのが、フランス初の日本酒です。
日本で生まれたお酒「日本酒」が遠く離れた異国の地でフランス人によって醸造され、日本に再び舞い戻ってくるなんて。壮大なロマンを感じます。

今回はフランスで初めて日本酒を手がけた蔵元である、フランス人のグレゴイワ・ブフ(Grégoire BOEUF)さん(通称グレッグさん)が来日されていましたので、お話をうかがいました!

テントの前で半そで姿のフランス人蔵元が経っている写真

フランス人蔵元のグレゴイワ・ブフさん

グレッグさんと日本酒の出会いは、今から5年前の2013年。その年に訪日した際、日本酒の美味しさと魅力に感銘を受け、すぐにフランスで酒蔵を開く決意をしたとのこと。

2015年には鳥取の梅津酒造で1年間酒造りを学び、2016年には梅津酒造のスタッフとして「上方日本酒ワールド」にも参加されていたそうです!

そして2017年にフランスへ戻り、ペリュサンという地で「レラルムデュルバン」(日本語名・昇涙酒造)を創業。

今回は自分が蔵元として参加することや、「上方日本酒ワールド」自体が開催地を変えたということもあって不安も多かったようですが、イベントの盛り上がりをみて、大変驚かれていました。

お酒とポテト、テントの様子と濃い緑の酒瓶の写真

【にほん酒や&Les Larmes昇涙(フランス)】
チーズたっぷりフレンチフライ&Les Larmes 昇涙 雷

今回のイベントで振舞われた昇涙酒造の日本酒は、「昇涙 雷(かみなり)」。
酒米は日本から輸入したものを使用していますが、仕込み水はペリュサンのピラ山から湧き出る地下水(ヨーロッパでは珍しい軟水)を使用しています。

実際に味わってみたところ、フランスで醸造された日本酒ではありますが、その香りは華やか!しっかりとした日本酒らしい味わいを持っていました。フランスで作られた日本酒の味には、日本酒への愛と直向きな努力が込められているようにも感じました。

そしてもちろん、昇涙酒造とタッグを組んだ「にほん酒や」が提供するチーズたっぷりフレンチフライとの相性も良く、発酵食品同士の間違いない組み合わせでした!

グレッグさんは、
「私たち昇涙酒造の目標はすでに決まっています。5年以内にフランスで作った酒米とフランスの水を使い、無添加・純米大吟醸・生酛造りの『純フランス産日本酒』を作ることです。すでにその試みを始めています。」
と語ってくれました。

近い将来にグレッグさんの夢が実現すれば、「上方日本酒ワールド」で昇涙酒造が造り上げた純フランス産の日本酒を楽しめるかもしれませんね。
その日本酒がどんな味わいとなるのか、今から楽しみで仕方ありません!

「上方日本酒ワールド」の見据える“未来”とは?!

かなりの盛り上がりを見せる「上方日本酒ワールド」は、イベントスタートから1時間で会場は超満員!時間の経過とともに熱気はますます高まり、日本酒好きの飲兵衛たちの楽しそうな声が開場に響き渡りました。

人で埋め尽くされた会場内の写真

昨今は海外で日本酒がブームとなっていますが、海外の日本酒ファンの関心は「日本酒を楽しむ」というレベルから、さらに「日本酒を学びたい」という深いレベルへと進化しているようです。
日本酒は「SAKE」として世界中に浸透し、ますます日本酒愛が世界的に広がっていくことを予感させます。

日本酒好きによる日本酒好きのためのイベント、それが「上方日本酒ワールド」。
今回は前年よりも会場を変え、さらにスケールアップして開催されましたが、世界の日本酒愛の高まりと共に、このイベントもさらなる進化が期待されます!

<上方日本酒ワールド2018 参加店舗&蔵元 リスト>

【大阪】
1.大阪まんぷく堂&花泉(福島)
2.からほり きぬ川&津島屋(岐阜)
3.燗の美穂&辨天娘(鳥取)
4.炭火焼とり えんや&扶桑鶴(島根)
5.日本酒と和の薬膳 ソラマメ食堂&いづみ橋(神奈川)
6.日本酒餐昧うつつよ&民宿とおの どぶろく(岩手)
7.日本料理 翠&七本鎗(滋賀)
8.日本料理 華喜&北島(滋賀)

【神戸】
9.日本料理 輪&るみ子の酒(三重)

【北海道】
10.高雄&二世古(北海道)

【東京】
11.青二才&酒屋八兵衛(三重)
12.地酒や もっと&竹鶴(広島)
13.にほん酒や& Les Larmes昇涙(フランス)
14.麺屋燗酒屋 がらーじ&杜の蔵(福岡)

【静岡】
15.お燗と中華 華音&杉錦(静岡)

【岡山】
16.中国料理 はすのみ&悦凱陣(香川)

【広島】
17.居酒屋いぶしぎん&玉櫻(島根)

【福岡】
18.食と酒 なかむた&旭菊(福岡)
19.膾炙&篠峯(奈良)

【シンガポール】
20.柳‘s &神亀(埼玉)

以上20の屋台

公式サイト

イベント名 上方日本酒ワールド
主催 日本酒卍固め