ジャパン・サステナブルシーフード・アワードのロゴ

(以下、プレスリリースより)

サステナブル・シーフード(持続可能な水産物)の普及や日本の水産業の持続可能性に貢献したプロジェクトを表彰する第2回「ジャパン・サステナブルシーフード・アワード」のチャンピオンが11月6日(金)、東京サステナブルシーフード・シンポジウム2020会期中の授賞式にて発表されました。

新しい取り組みで業界のパイオニア的な存在となったプロジェクトを表彰するリーダーシップ部門、複数の企業、組織、もしくは個人がノウハウを共有して実現した意欲的なプロジェクトを表彰するコラボレーション部門からそれぞれ4つのファイナリストが選ばれ、その中からもっとも優れた取り組み1つずつがチャンピオンとして選ばれました。

コラボレーション部門には海光物産株式会社、日本IBM株式会社、アイエックス・ナレッジ株式会社、株式会社ライトハウスの「ブロックチェーンを活用した非対面型ビジネスモデルの構築~Ocean to Table~」が、リーダーシップ部門には株式会社きじまの「美味しい和食と豊かな海を、未来もずっと。」が選ばれました。さらに株式会社臼福本店が、今回実行委員会により特別に設置された「特別賞」を受賞しました。

各部門受賞

<コラボレーション部門>

「ブロックチェーンを活用した非対面型ビジネスモデルへの転換」(海光物産株式会社、日本IBM株式会社、アイエックス・ナレッジ株式会社、株式会社ライトハウス)

「ブロックチェーンを活用した非対面型ビジネスモデルへの転換」のイメージ画像

プロジェクト概要:

日本で初めて漁業改善プロジェクト*1に取り組む海光物産株式会社が収集するスズキの漁獲情報を、ブロックチェーンの技術と組み合わせ、陸上のサプライチェーンにつなげるトレーサビリティ構築プロジェクト。アプリを通じて水揚げから最終消費地に到着するまでの漁獲・流通データを確認することができるほか、消費者は漁業者の思いを知ったり、Web上で魚を購入できるシステムも構築。サプライチェーンを網羅するトレーサビリティを新たな価値としつつ、コロナ禍に求められている非対面型ビジネスも可能にしているシステムです。

受賞理由:

昨年、海光物産(株)とライトハウス(株)はIoT技術を利用して漁獲データを効率的かつ正確に記録、管理できるようになったことでトレーサビリティの向上や資源調査に貢献したとして昨年、本アワードのチャンピオンを受賞しました。今年はその成果を一段と進化させ、小売りや食卓までのトレーサビリティを確保したこと、また、それをユーザーフレンドリーに見せる技術を開発したことが高く評価されました。4社の連携力、海産物の来歴の見える化のためのブロックチェーン技術適用の日本初のケースであり、今後のモデルケースになることが期待されています。

海光物産株式会社 大野和彦代表取締役社長からのコメント:

海光物産株式会社の大野和彦氏がトロフィーを手に持っている写真

海光物産株式会社 代表取締役社長 大野和彦氏

魚だってきっと自分の価値は伝えたいはずです。しかし残念ながらそれを伝える術がありません。だったら「獲った漁師が伝える義務があるんじゃないか」「消費者の皆さんもそれを求めているんじゃないか」「そこに価値が産まれるんじゃないか」、そう信じてこの取り組みを始めました。チャンピオンアワード有言実行のV2は、〝自称サステナブル・シーフードの伝道師〟としてはとても嬉しいことです。

<リーダーシップ部門>

「美味しい和食と豊かな海を、未来もずっと。」(株式会社きじま)

「美味しい和食と豊かな海を、未来もずっと。」のイメージ画像

プロジェクト概要:

「美味しい和食と豊かな海を、未来もずっと。」をスローガンに、海の抱える課題に多角的なアプローチで取り組んでいます。昨年度は、日本の和食店として初めてASC*2/MSC*3認証水産物の提供を開始。2020年には「きじまオーガニックチャレンジ」と題し、水産物のみならず農産物なども含めて認証商品の取り扱いにおける数値目標を設け、包括的なアプローチで年間40万人もの顧客に美味しくて安心安全、そしてサステナブルな和食を提供しています。

受賞理由:

すでに日本の外食業界内でも環境への配慮に対して高いレベルで取り組みを進める中、水産物におけるサステナビリティはもちろん、さらなる高みを目指して水産物以外にもトータルでサステナビリティに取り組んでいることが、日本の和食レストランのサステナビリティにおけるベストプラクティスとして高く評価されました。また、外食産業に深刻な打撃を与えているコロナ禍の中でもこうした取り組みを加速させる、日本の外食業界を勇気づける存在でもあります。

株式会社きじま 事業戦略室長 杵島弘晃氏からのコメント:

株式会社きじまの杵島弘晃氏がトロフィーを手に持っている写真

株式会社きじま 事業戦略室長 杵島弘晃氏

この度はこのような素晴らしい賞を頂戴し大変光栄です。いつもきじまを支えて下さる浜や漁師の方々、農家の方々、生産者の方々、そしていつもきじまをご愛顧くださるお客様に、深く御礼申し上げます。きじまは今後も「食を通じて持続可能な共同体の創造と発展に寄与する」という企業理念のもと、持続可能な海を将来世代に残すため、様々な取り組みを推進して参ります。

<特別賞>

株式会社臼福本店
(この賞は実行委員会の審査により選出されています。)

株式会社臼福本店の方6名がMSC認証を取得した写真

株式会社臼福本店

受賞理由:

東大西洋に生息するタイセイヨウクロマグロは過去20年間国際的に資源保護されていましたが、その資源量が回復傾向に転じていました*4。その中でも持続可能な漁業を行ってきた同社の取り組みが認められ、今年8月に世界で初めてタイセイヨウクロマグロのはえ縄漁業でMSC認証を取得し、業界に大きなインパクトを与えました。さらに新艇・第一昭福丸の造船に際して、船員の働きやすさや快適性を考慮した設計とデザインが、グッドデザイン賞の受賞につながりました。

株式会社臼福本店 代表取締役社長 臼井壯太朗からのコメント:

株式会社臼福本店の臼井壯太朗氏がトロフィーを持っている写真

株式会社臼福本店 代表取締役社長 臼井壯太朗氏

この度は、特別賞をいただきまして、誠にありがとうございました。審査員と言う立場で、まさかこのような賞をいただけるものとは思っておりませんでした。伝統ある日本の漁業を、もう一度世界と闘える漁業にするために、そして人が集まる魅力ある産業へと変えて行くために、これからも責任と自覚を持って、自分たちのお役目を果たしていきたいと思います。皆さまに於かれましては、今後とも温かいご支援ご協力の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

トロフィーについて

株式会社サワヤ スタジオリライト制作の100%リサイクルガラスを使用したトロフィーがファイナリスト、チャンピオンに贈呈されました。原材料となる廃蛍光灯は長年土壌汚染を招く一因として問題視されていましたが、同社は、各素材のリサイクルと蛍光灯に含まれる脱水銀化処理を実現。これにより、使用済み蛍光灯の廃棄による環境汚染防止を目指しています。

審査員 (*順不同、敬称略)

足立直樹(株式会社レスポンスアビリティ代表取締役)、井田徹治(共同通信社編集委員・論説委員環境・開発・エネルギー問題担当)、臼井壯太朗(株式会社臼福本店代表取締役社長)、河口真理子(不二製油グループ本社株式会社CEO補佐、立教大学21世紀社会デザイン研究科特任教授)、山口真奈美(一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会代表理事)、舘岡志保(Navire noir代表、水産庁「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」メンバー)、藤田香(日経ESGシニアエディター)、ライアン・ビゲロ(米・シーフードウォッチ シニアプログラムマネジャー)、花岡和佳男(シーフードレガシー代表取締役社長)

詳細は公式サイトをご覧ください。

*1 漁業改善プロジェクト:FIP(Fishery Improvment Project )とも呼ばれる。漁業者、サプライチェーン上の企業、NGOなどが協力し、持続可能性な漁業の確立をめざす組織的な取り組み。一般的にはこの取り組みを通してMSC認証の取得を目指す。
*2 ASC認証:ASC(水産養殖管理協議会)が運営する養殖水産物の認証制度。養殖水産物が社会的、環境的要素に配慮し、責任ある方法で育てられ、漁獲されたことを証明する。
*3 MSC認証:MSC(海洋管理協議会)が運営する天然水産物の認証。海のエコラベル」と呼ばれ、水産物が持続可能な漁業によって獲られたことを証明する。
*4「日本のタイセイヨウクロマグロ漁業が、世界初のMSC認証取得の見込み」(MSCプレスリリース、2020/7/31発行)

ジャパン・サステナブルシーフード・アワード実行委員会プロフィール

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)

人と自然が調和して生きられる未来を築くため、100カ国以上で活動している地球環境保全団体で、1961年にスイスで設立されました。現在は、森や海などの生物多様性を保全すること、自然資源の利用を持続可能なものにすること、地球温暖化を防ぐことに力を注いでいます。

MSC(海洋管理協議会)日本事務所

将来の世代まで水産資源を残していくために、認証制度と水産エコラベルを通じて、持続可能で適切に管理された漁業の普及に努める国際非営利団体です。本部をロンドンとし1997年に設立され、現在は約20か国に事務所をおき世界中で活動しています。日本事務所は2007年に設立。2019年4月から2020年3月までの期間で、世界約100カ国で18,000品目以上のMSC「海のエコラベル」の付いた水産品が販売されています。日本では約900品目が登録されており、イオングループ、生協・コープ、西友、セブン&アイグループ、マクドナルドなどで販売されています。

ASC(水産養殖管理協議会)ジャパン

ASC(水産養殖管理協議会)は、環境や地域社会や人々に配慮した、責任ある養殖により生産された水産物を対象とする国際的な認証制度です。厳格な審査により認証された養殖水産物は、加工・流通の過程でもCoC認証(MSCと共有)によってトレーサビリティーを担保しています。ASC ロゴは、消費者の方々に自分の購入する商品が持続可能な水産物であると知らせる力強いメッセージとなります。

■一般社団法人セイラーズフォーザシー日本支局

米国ロックフェラー家当主であるディビッド・ロックフェラーJr.が設立した海洋環境保護NGOの日本支局として2011年に発足、その後日本の一般社団法人として独立運営の形をとり、世界最大の海洋環境NGOでワシントンD.C.に本部を置くOceanaとアフィリエイト契約を結んでいます。活動は、「ブルーシーフードガイド」の発行を中心に水産資源の持続可能な消費の啓発、クリーンレガッタプログラムの運営による海洋スポーツの環境保全基準値設定とプラスチックゴミの削減、KELPプログラムによる子供達の海洋教育の3つのプログラムを基軸に広範に及びます。

株式会社シーフードレガシー

シーフードレガシーは、社会・経済・環境におけるサステナビリティを念頭に、海と人をつなぐ象徴としての水産物(シーフード)を豊かな状態で未来世代に継ぐ(レガシー)ことを目指すソーシャル・ベンチャーです。世界を網羅する幅広いネットワークや専門知識を活かし、国内外の漁業者、水産企業、NGO、政府等と協働して日本の水産業に適した解決策を描きます。