居酒屋甲子園とスクリーンに映し出されている様子

「共に学び、共に成長し、共に勝つ」を理念におき、“居酒屋から日本を元気にする”ことを目的として開催されている「居酒屋甲子園」。
地方大会を勝ち抜いた店舗が結集して、磨き上げたプレゼンテーションを披露する全国大会は、業界内では知る人ぞ知る超人気イベント。2018年11月13日に行われた第13回大会は、昨年大会(前回大会のレポート記事)に続き、5000人を収容するパシフィコ横浜 国立大ホールがほぼ満席になるほどの熱狂ぶりでした。第13回居酒屋甲子園を制したのはどの店舗か?気になる優勝店の発表と、外食業界に携わるすべての人にとって店舗運営における“学び”と“気づき”が得られる、プレゼンテーションの内容をレポートします。

観客動員数約5000人!外食業界で働く人が輝ける場を提供する「居酒屋甲子園」

■年々規模が拡大している居酒屋甲子園

居酒屋甲子園は、NPO法人居酒屋甲子園が主催するイベント。外食業界で働く人が輝ける場を提供しようと2006年にスタートし、年々参加店舗を増やしています。今回は北海道から沖縄まで、全国各地から1766店舗の参加がありました。

司会者の男女二人がスクリーンに映し出されている

居酒屋甲子園全国大会は、巨大なスクリーンでエンタメ要素あふれる映像を流し、音楽を効果的に使った演出が特徴。各店のプレゼンも、パフォーマンスに工夫が凝らされる

■第13回大会の選考方法

第13回大会の選方法は次の通りです ※【 】内は第13回大会の対象店舗数
1次予選【1766店舗】 申し込み全店舗を対象とした覆面調査(2回)
2次予選【355店舗】  1次予選各地区上位20%の店舗を対象とした覆面調査(1回)
地区大会【74店舗】  2次予選各地区上位5~7店舗によるプレゼン審査
最終審査【12店舗】  地区大会優勝店舗による面談とプレゼン審査
全国大会【5店舗】 最終審査進出店舗の中から選出された5店舗によるプレゼン審査

全国大会では出場各店舗が、地域や居酒屋業界の活性化に貢献すると思われる具体的な取り組み・仕組み、店舗の魅力、想いを、映像やパフォーマンスを駆使してプレゼンテーションします。プレゼンの制限時間は20分。

コインを片手に投票に向かう来場者の様子

来場者全員にコインが配られ、5店舗すべてのプレゼンテーションを観覧した来場者が「最も学びが得られた」「最も気づきが多かった」と思う店舗に投票(写真上)。その得票数によって優勝店舗が決まります。

第13回「居酒屋甲子園」全国大会の頂点に立ったのは?

来場者の投票によって選ばれた、第13回「居酒屋甲子園」全国大会優勝店舗は

ベジテジや Soi新潟万代店」(新潟県)

優勝旗を手に喜ぶ「ベジテジや Soi新潟万代店」の写真

「ベジテジや Soi新潟万代店」は、豚バラ肉を焼いてサンチュなどの野菜で巻いて食べる韓国料理、サムギョプサルの専門店。店の従業員の9割はアルバイトスタッフです。プレゼンテーションのメインテーマは、人材教育でした。

「主役はアルバイト」と映し出されたスクリーンの写真

アルバイトがアルバイトを育てる「共育」

アルバイトスタッフ同士が「共に学び、共に育つ」。アルバイトがアルバイトを育てる「共育」を掲げ、アルバイトスタッフが自ら考案した独自の教育ツールを使って人材を育成。ツールは、全てのオぺレーションをまとめたマニュアルシート、自己評価シートを導入し、自己評価のレベルによって、先輩アルバイトスタッフが到達レベルを判断します。現在はアルバイトのみで店を回すことができるようになり、売り上げも3年連続で上昇しています。

求人を出さずに43人のバイト希望者が!「全員人事部」の取り組み

「ベジテジや Soi新潟万代店」では、求人広告を出さずに、この1年間で43人のバイト希望者の面接を行うことができました。それは、客として来店し店の雰囲気や接客に憧れて入店を希望するケースが多いということ。「働く姿でお客様を魅了すること」によって人材を呼び寄せる、「全員人事部」という取り組みの成果です。

「ベジテジや Soi新潟万代店」のチームメンバーの集合写真

「ベジテジや Soi新潟万代店」のチームメンバー。前列中央は代表の山﨑聡さん。前列左から2番目は店長の吉原陽介さん

「ベジテジや Soi新潟万代店」は、第9回全国大会に出場した「Soi」の姉妹店で、昨年全国大会に出場した「ベジデジや」のFC店。優勝が決まった後、店長の吉原陽介さんは「スタッフのみんなに、もっと自信をもっていいんだということに気づいてほしくて。それを証明できるのがこの大会なので、日本一をとるのが目標でした」と語り、代表の山﨑聡さんは「本当にうれしい限り。夢心地です」とコメントしました。

“学び”と“気づき”にあふれた、全国大会出場店舗のプレゼンテーション

全国大会に出場した店舗のプレゼンテーションはどれも、飲食業界で働く人々にとって参考になるトピックスを提供していました。優勝は逃したものの、地方大会を勝ち抜いて全国大会のステージに上がった4店舗のプレゼン内容を見ていきましょう。

■この店の強みはなんだ?生産性の向上と、付加価値の創造

Beer&wine 石山GRILL」(滋賀県)は、ドライエイジングで熟成させた肉を看板メニューとする肉バル。効率化・合理化によって生産性の向上に努め、それによって生まれた余力で付加価値のある仕事をすることで店を軌道に乗せました。

「Beer&wine 石山GRILL」のスタッフと熟成肉が焼かれている様子がスクリーンに映し出されている

「Beer&wine 石山GRILL」のスタッフは、店の売り上げが低迷したとき、まず店の看板商品である熟成肉の生産者を訪ねました。改めて熟成肉の魅力を知り、スタッフにはそれをお客様に伝える使命感が芽生えました。

それまで80品あったメニューは、熟成肉にフォーカスする方向で43品まで削減。仕込みのサイクルを徹底管理し、仕込み時間を大幅に削減することで、熟成肉の火入れにとことんこだわる余裕が生まれました。
ホールスタッフはメニュー説明を熟成肉のみに絞りこみ、熟成肉のオーダー率が70%から92%に上昇。店の特徴を打ち出すことに成功し、今では、熟成肉を求めて来店するリピーター客が増え続けています。さらに説明時間の短縮によって、ラテアートのようにビールの泡にイラストを描くなど、プラスαのサービスができるようになりました。
メニューを見直し、徹底的に無駄をカットして生産性を向上させることで、本当に大事なことに時間と活力をつぎ込む。「飲食店だから仕方がない」「何かを犠牲にするのは当たり前だ」とあきらめていた課題に向き合うことで、店が明るい方向へシフトして行きました。

■居酒屋にできる社会貢献「生しらすプロジェクト」

魚と酒はなたれ 横浜東口店」(神奈川県)は、横浜駅から5分ほどのロケーションに店を構える海鮮居酒屋。
「1つでも多くの旨いを 正しく食の場へ」を理念とし、毎日原付バイクで往復3時間かけて三浦半島佐島港まで行き、その日の朝に水揚げされた魚を仕入れます。主力商品は「朝どり湘南生しらす」。しかしそのしらすが、全くとれなくなってしまった時期がありました。日本の近海では、地魚の水揚げが減っており、大きな社会課題となっています。その状況をなんとかしようと、外食業界ができる社会貢献活動として始まったのが「生しらすプロジェクト」です。

「生しらすプロジェクト」がスクリーンに映し出されている

「生しらすプロジェクト」は、ビーチの掃除から始まりました。もっと多くの人を巻き込もうと、2011年に「一夜限りの200人居酒屋」を開催。収益の一部を魚の稚魚代に充て、スタッフ自らが相模湾に稚魚を放流しました。その後、横浜大さん橋ホールを会場に「一夜限りの1000人居酒屋」も成功させます。居酒屋にできる社会貢献活動の1つとして、現在も「生しらすプロジェクト」は続いています。

■焼肉とおせっかいを焼く、「日本一もう一度来たい店」

かわちどん 柏原店」(愛知県)は、ファミリー層を第一のターゲットとする焼き肉店。「日本一もう一度来たい店」というビジョンを掲げ、「焼肉とおせっかいを焼く」をテーマに、地元密着型の店舗として実績を上げています。

スタッフとミニーちゃんでお肉のケーキが映し出されている

「おせっかい」をテーマとしたサービスは、とことんお客様目線に立った顧客ニーズの分析をベースにしています。例えば、お誕生日のお祝いで来店した子供連れの常連のお客様に、お肉で作ったミニーちゃんのケーキを準備。服装や持ち物などを普段からチェックし、お子さんはミニーちゃんが好きだということを把握した上でのサービスです。
母の日には「母の日テスト」を用意し、お母さんのことをどれだけ知っているか、お子さんに回答してもらって家族のコミュ二ケーションに一役買っています。「かわちどん」での食事が、特別な家族の団らんの場になるように、「おせっかい」を焼いて取り組んでいます。

■お客様の喜びのために、不満を満足に変えるサービス

炉端焼き 一歩一歩 本店」(東京都)は、北千住に店を展開する炉端焼き店。「すべてはお客様の喜びのために」という理念は、代表の大谷順一さんの祖母の言葉。その経営理念は、お客様の不満を満足に変えるための数々の工夫に活かされています。

スタッフさんと、全店舗日替わり試食会の写真が映し出されている

お客様からオーダーをおうかがいし、ドリンクを提供するまでの間にお待たせすることがあると、お客様は不満を感じます。そこで考え出したのが「野菜籠」。料理に使う新鮮な野菜を籠に盛って席まで行き、生産者の情報などを伝えることで、お客様は待ち時間を意識しなくなります。
場合によっては料理の提供が遅れることもありますが、その時間を埋めてくれるのがお通しの「肉味噌キュウリ」。キュウリはお代わり自由。当初、待ち時間の埋め合わせとして考えていた「野菜籠」も「肉味噌キュウリ」も、今では「炉端焼き 一歩一歩」の名物になっています。
また、店舗スタッフ全員で月に一回試食会を開き、店のメニューを試食。味も知らない、説明もできない料理をお客様におすすめすることができるか?料理人も接客係も、みんなが味を知り、料理を理解することではじめて、自分なりにその料理をおすすめできるようになる。それも、すべてお客様の喜びのために取り組んでいます。

2018年の「全国優秀店長」、店長認定制度三つ星獲得店長発表!

居酒屋甲子園では、第7 回大会から店長認定制度を発足し、覆面調査で優秀な成績を収めた店長を評価してきました。第13回大会では「志があり成果を残せる店長」として代表者を2名選出。全国大会の場で「具体的な店舗の取り組みと思い」が映像によって発表されました。

■全国優秀店長「鉄板バルサンパチキッチン」(福岡県)関かすみさん

関さんがスクリーンに映し出されている

関かすみさん(写真上)は、2017年8月、ALL380円の均一料金メニューを提供する大衆イタリアン居酒屋「鉄板バルサンパチキッチン」の店長に就任。売り上げ昨年対比105%越えの成果を出しました。「ファースト案内」の強化でお客様との会話を増やし、導入研修や、入店2カ月後の研修で、スタッフの接客の様子を動画に撮って検証するなどの工夫が実績につながっています。

■全国優秀店長「獅子丸 海老名店」(神奈川県)中川ひとみさん

中川さんがスクリーンに映し出されている

小田急海老名駅近くにある「獅子丸 海老名店」は、もつ鍋などの九州料理を楽しめる店。中川ひとみさん(写真上)はアルバイト、社員としてこの店で働いた後、別店舗に異動。2016年10月に店長として戻りました。中川さんは、マンパワーによる営業からの脱却を目指し、オペレーション力の強化、愛嬌、商品知識という具体的な成長段階を設定して、スキルアップの仕組みづくりを進めることで、売り上げをV字回復させました。

■店長認定制度・認定ランク三つ星獲得店長

覆面調査の成績と地区大会の成績による店長認定制度で、第13回大会で認定ランク三つ星を獲得した店長は、全国でただひとり。「CHARCOAL GRILL 勝男」(東京都)金子幸裕さん(写真下)です。

金子さんがスクリーンに映し出されている

三つ星は、覆面調査での平均点が195点から200点に達し、さらに、地区大会に進出し、地区大会の審査員の推薦を80%以上獲得、「居酒屋甲子園」の考える繁盛店指数をクリアしている店の店長が認定の対象となります。

新たなステージに向けて!既に動き出している第14回大会

映像や音楽を駆使し、趣向を凝らした各店のプレゼンテーションが展開され、独特のムードの中進行する「居酒屋甲子園」。ロビーには各店舗のブースが並び、関連グッズやTシャツも販売されていました(写真下)。

ブースにたくさん人が集まっている様子

新たなステージに向けて、第14回大会の参加店舗募集もはじまっています。
詳しくは公式ホームページをチェックしてください!

■取材協力

主催 NPO法人居酒屋甲子園事務局
URL 居酒屋甲子園公式ホームページ