青空に向かって紙飛行機を飛ばしている女性の手の写真

2021年もコロナ禍が続き、緊急事態宣言、営業自粛と再び厳しい局面を迎えた飲食業界。
クックビズでは、飲食業界で働く方と定期的にオンライン座談会を開催し、知恵や情報を共有しあって、この難局を共に乗り越えたいと考えています。

ご登場いただくのは、新潟県 越後湯沢にある和食炉端「湯沢釜蔵」で店長を務める関 智也さん。人材確保、集客アップにつながる自慢の取り組みを教えていただきました。マネしたくなる成功事例です。

クックビズからは、座談会運営の世古、方城が参加しました。 

和食炉端「湯沢釜蔵」のカウンター越しの店内の写真

関さんが勤務する和食炉端「湯沢釜蔵」は、魚沼の豊かな食文化を楽しめる炉端焼き店。「八海山」「鶴齢」「高千代」など新潟が誇る地酒も豊富です。

紹介制度はアルバイトの人材確保に重宝!卒業前に高3生が後輩を紹介

クックビズ世古:今日は、そちらは大変な大雪ですね。お忙しい中、ご参加いただきありがとうございます。早速、会社で独自に行っている取り組みについてお聞きしていきたいと思います。

関さん:今日は当社で行っている取り組みを2つご紹介します。

  • スタッフ紹介制度
  • 自店舗飲食利用時10%商品券バック

まず「スタッフ紹介制度」について。
そもそも地方では費用をかけて求人広告を出しても応募が芳しくないことが多くて。

クックビズ世古:地方では若者の人口も少ないですし…。

関さん:それで既存のスタッフから紹介してもらうという紹介制度を設けました。入社後も知り合いがいるので、現場に入りやすくなじみやすいというメリットがあります。
また紹介してくれた既存スタッフには、紹介料として面接終了時・採用決定時・雇用して30日経過で、3回にわたりキャッシュバックがあります。

笑顔で話す関さんのアップの写真

関 智也さん/和食炉端「湯沢釜蔵」店長
新潟県の和食炉端「湯沢釜蔵」(画像上)で店長を務める。第13回「S-1サーバーグランプリ」北信越地区代表。株式会社S・E・P INTERNATIONAL所属。

クックビズ世古:段階的にもらえるんですね。社員、アルバイト同じ額ですか?

関さん:はい、トータルで報酬5万円になります。
主に高校生のアルバイト採用に使っています。会社が求人募集をかけるより、彼らのネットワークで知り合いに声をかけてもらうほうが、当店に合った人材が獲得できるんですよ。
そして紹介すれば臨時収入が入るのでうれしいという…。

クックビズ世古:高校生で臨時収入5万円は大きいですもんね(笑)。

関さん:はい。これまでだと、例えば3月で高校3年生がアルバイトを卒業する大きなタイミングなんですが、この制度ができてからは後輩を紹介してくれるようになり、アルバイトが足りなくて困るということがなくなりました。
ちょうどこれからがシーズンです。

クックビズ世古:デメリットはありますか?紹介された手前、辞めにくいということは?

関さん:辞めにくいという声は聞いたことがないですね。しいて言えば勤務時間中に私語をしたり、“仲良しこよし”になることはあるかな。
一方で、新しく入ってきたスタッフが「思っていた職場と違った」と感じている場合、紹介したほうがフォローや悩みを聞いてあげたり、上司に速やかに情報を共有してくれたり、ケアが自然と成り立っていますね。

クックビズ世古:近隣の飲食店の様子はいかがでしょうか。バイトの人材確保に苦戦しているんですか?

関さん:ツテがないと難しいと聞きます。

クックビズ世古:紹介された人が成長して、また紹介したい人を連れてきてくれる…。どんどん人がつながっていくっていいですね。人材確保にかける労力・費用が軽減された分、集客に専念できそうです。
では次の「自店舗飲食利用時10%商品券バック」についてお聞かせください。

ただの社員割引ではなかった!集客UPに貢献。飲食店の月の売上80万円になることも

関さん:「自店舗飲食利用時10%商品券バック」は、スタッフに気軽に自分の店を利用してもらい、同時に会社の売り上げにつながるように考えた制度です。スタッフには1ヶ月の合計利用金額の10%が商品券になってかえってきます。

刺身の盛り合わせの写真

和食炉端「湯沢釜蔵」では、魚介類は佐渡の漁師からの直送!米はその名を全国にとどろかせている地元・魚沼産。「一食に感動を」の言葉通り、店が惚れこんだ食材をふんだんに使って、食べた人の心に残る料理を提供しています。

利用する人は、自分自身じゃなくてもいいというのがポイントなんです。友人、家族、お客様でもいいんです。
「自分に声をかけてくれたら、商品券を進呈できますよ」と知り合いに声をかけることで認知度アップにつながります。この制度で懇意にしてくださるお客様を増やそうという狙いもあります。

クックビズ世古:なるほど。社員割引制度と思っていましたが、集客効果もあるとは。リピーター獲得に直結していますね。

関さん:若手スタッフも、先輩スタッフが知人を招待し、直接もてなしているのをみて「僕も友人を誘ってみようかな。この店で飲んでもらいたいな」と思うようです。
自分がいるときに来店してくれたら「サービスもできて、割安にできて、格好もつく」なんて思えるんですよね。

クックビズ世古:そうですね(笑)。

関さん:この制度の効果は大きく、私の記憶では月の売上が80万円になった店もあります。店長クラスになると顔も広いので特に効果的。以前、この制度を利用して企業の忘年会を片っ端からとってきた強者もいました。

クックビズ世古:そういうサービスは聞いたことがなかったので新鮮です。新規の来店者数が多い大都市圏より、地方だからハマったという気もしますね。

話をしている関さんの横顔の写真

関さん:そうかもしれません。ただ越後湯沢は、地方ではありますが飲食店が密集しているエリアなんです。だから店を選ぶときに「知り合いがいるからそこで飲もう」と思ってもらった方が足を運びやすく、来店動機になるのではないかと。

スタッフの紹介による飲食店ならコロナ禍も安心と好評!

クックビズ世古:「自店舗飲食利用時10%商品券バック」での利用なら、スタッフからの紹介なのでコロナ禍でも安心感がありそうですね。

関さん:そうですね。SNSでつながっている方も多く、「コロナ禍で大変な時だけど、今のお店の状況はどう?」「混雑具合は?〇人で行きたいのだけど」など予約のハードルが下がるというのもメリットかもしれません。

クックビズ世古:確かにそうですね。ところでこのアイデアはどこから?

関さん:社長ですね。フットワークが軽く、いろんな会合や知り合いから情報をキャッチし、それを店長クラスに共有してくれます。それは社内制度だったり、キャンペーン企画だったりいろいろですね。

クックビズ世古:これからはそういう情報を取りにいくことが、さらに重要になりそうですね。

関さん:情報網は新潟に限らずです。ここ7~8年ほど「居酒屋甲子園」に出場しています。「居酒屋甲子園」とは、“居酒屋から日本を、世界を元気にしよう”と全国から居酒屋がエントリーし、自分たちの取り組みやおもてなしを発表し、日本一の店舗を決定する大会です。
そういった場で、各社・各店の代表同士のつながりも生まれています。

クックビズ世古:全国からエントリーする大会なら、貴店と同じ地域性、業態、客層など似た店との出会いもありそうです。互いの取り組みや情報は参考になりますし。

関さん:そうですね。全国に情報のパイプがあるのは強みです。

クックビズ世古:これは売上や集客に大きく貢献する制度ですね。マネしたくなるお店もありそうです。
今日はありがとうございました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。

※リファラル採用(自社スタッフの紹介による採用)を行う場合、法的な制度整備が必要です。インセンティブを賃金や給料の形で支払うため、支払い時期や支給額、その他の支払い条件を就業規則に明記しておくことが必要です。

まとめ

若手が都会に流出しがちな地方は、人材確保に困る店舗も多いと聞きます。リファラル採用なら、面接から入社に至る確率も高く内定辞退も少なそうです。
またコロナ禍でどこのお店も来店数で悩むことが多い昨今、アイデアで常連さんを獲得しつづける会社があるんですね。
コロナの感染拡大の状況が落ち着いたら、新潟・越後湯沢へ温泉旅に、もちろん夕食は和食炉端「湯沢釜蔵」へ行ってみたいと思いました(その時はぜひ関店長の紹介でお願いします!)。