12月8日に開催されたクックビズオンライン座談会。今回は、コロナ感染拡大・第三波の影響で外出自粛要請が出ている北海道、東京、大阪から、飲食店のシェフ・経営者が集まりました。
本格的な医療崩壊が起きようとしている地域もあり、飲食業界も日増しにひっ迫する中、今の状況と2021年の飲食業界についてお聞きしました。
目次
コロナ禍で迎える年末年始。外出自粛要請で予約はキャンセル続出
クックビズ世古:今年は世界的なコロナ感染拡大の影響で、飲食業界にとって例年にない一年になりました。北海道は特に大変な状況かと思いますが、周囲の飲食店の様子はいかがですか?
藤井さん:秋からずいぶん盛り返していましたが、札幌市内でいえば、11月の第三波の影響で年末に向けての予約がすべてなくなりました。札幌駅前の飲食店で1日で250名のキャンセルが出たとも聞いています。
一同:えっ…。
藤井さん:札幌市内の繁華街…特に観光客、会社のご利用が多かった大規模の店ほど痛手が大きいようです。
私の店は、郊外にある30席程度のお店です。年末年始の予約は入らないものの常連さんが来店し、おかげさまでいつもの日常が送れています。
白竹さん:大阪も12月3日の不要不急の外出自粛の呼びかけで、ドッカンと吹き飛んだ感じです。「Go To トラベル」も停止になったので、12月15日まで入っていた予約があっという間にすべてキャンセルになりました。
クックビズ世古:白竹さんの店は大阪のベッドタウンにありますよね?観光客のご利用が多いのですか?
白竹さん:いわゆるここは帰省する場所なんですよね。「Go To トラベル」を使って地元に帰ってきた方が、家族や友人と集まって食事を楽しむというようなご利用です。もともと席数12の店なので、貸切が多かったんですよ。
15日までの自粛要請ですので、16日~お正月にかけては予約が入っているんですけど、もし自粛期間が延びたら、またすべてふき飛ぶでしょう。みんなちゃんと自粛してる感じです。
藤井さん:そうですよね。例えばすすきのの繁華街は、ほんとに誰も歩いていない。飲食関係者もリアルに「いつまで店がもつか」「これを乗り越えて、次に自粛がきたら無理かな」とか、会話もシビアになってきています。
浅賀さん:私は東京・六本木でイタリアンのお店をしているのですが、六本木、西麻布というのは、ある意味、特殊な街なのかなと思います。
このあたりはクラブなど同伴のお客様のご利用も多いんです。客数は減っているものの、夜の接待を伴う飲食店が開いているので、今はそこまで影響がないというのが正直な感想です。
年末年始はジタバタしない。しっかり休んで次に備える
藤井さん:年末年始はコロナが落ち着いても、町や店に人がくりだすとも思えないのでたっぷり休みます。昨年は3日間でしたが、今年は7日間の休暇です。
おせちやオードブルも当店ではしないことにしました。仲間や先輩の会社や店のおせちを代行販売します。規模の大きいところほど、コロナの影響は大きく大変そうなんです。だから利益目的ではなく助け合う気持ちです。当店は静かに2020年をフェードアウトします(苦笑)。
一同:(笑)
白竹さん:私が最近行ったことは、テーブルを一卓減らし、ランチをなくし…。この際、やりたくないこと、迷いが生じていたものはいったんゼロにしようと。
クックビズ世古:コロナを機に“断捨離”ですね。
白竹さん:おせちは昨年まで同業者で集まって作っていたんですけど、今年はコロナの影響で「おせち」や「オードブル」を提供する店が急増するので控えます。
大阪・北新地の店にいるオーナーシェフが通販で鍋料理を販売する予定なので、そちらを手伝いにいくつもり。
例年は29~31日に休み、元日から営業していましたが、今年は28日~1月7日休みます。あいだで2日ほど仕事の予定がありますが、店自体は閉めます。
浅賀さん:当店も、年末年始は接待がほぼないですね。接待以外でも会社利用はなくなりました。フリーや個人で働いている方はご来店されますが、大手の企業さまほどいらっしゃいませんね。
私は報道の仕方も気になります。必要な報道はすべきですが、やはりメディアの影響は大きいので。
コロナ禍の飲食店の新たな試み!営業は短縮でなく延長、シェフは店から外へ!?
クックビズ世古:今後のコロナ禍で、新たにトライすることがあれば教えてください。
藤井さん:私はワクチンができて、今のインフルエンザと同等レベルになるまで、この状況は変わらないと考えています。
感染リスクを避けるために、アルコール消毒やパーテーション、ウィルスを殺菌してくれる無駄に高いマシンとか(苦笑)、そんなのが当たり前になっていくでしょう。
だから、これまでの「おもてなし」だけでは不十分で、より「安心」を用意していかないと、お客様が入る店にはならないと思っています。周りと差別化しながら対策をしていきたいですね。
一同:(うなづく)
藤井さん:自分の場合、もしこのままコロナの収束が見えなかったら、営業時間を短縮するのではなく、延長したらどうだろう?とも思っています。今は18時~24時で営業していますが、例えば17時~翌1時とか。
で、ただ延ばすだけでなく、入店時間を2時間おき(1部:17時~、2部:19時~…)と分けて、時間あたりに入れるお客様の数を制限させていただく、といったことも考え方のひとつなのではないかな、と思っています。
クックビズ世古:まるで映画館のよう。入れ替え制ですね。
藤井さん:それなら安全は保てると思うんですよ。
クックビズ世古:確かに国や自治体は、営業時間の短縮ばかり要請しますが、短い時間にお客様が集中するより、長く店を開けて分散させればかえって安全です。
白竹さんは、新しい動きやアイデアはありますか?
白竹さん:私は、コロナで足が遠のいたお客様を待ちながら店を運営するより、積極的に外に発信していこうと思っています。集客に悩んで店に引きこもっててもしょうがないかなと。
だから新年明けて少ししたら、また1ヶ月ほど閉めて、阪急梅田本店の催事「バレンタインチョコレート博覧会2021」に参画する予定です。
クックビズ世古:阪急梅田本店なら会社の近所です。ぜひ立ち寄ります!
白竹さん:はい、いらしてください。チョコレートを使ったスイーツを会場でお作りして1プレートにしてご提供していますんで(笑)。
幸い当店の料理人は2名だけなんで、こういった柔軟な動きもしやすいんです。1ミリでも可能性のあるところに出向き、店の認知度を上げるために自分たちが広告塔になります。
クックビズ世古:お客様に選んでもらえるための発信ですね。そのために1ヶ月休むということですが不安は?
白竹さん:こんなご時世なんで懇意にしてるお客様も許してくれるでしょう(笑)。
クックビズ世古:そうなんですね。平常だったら考えつかないですよね。
白竹さん:平常だったら、手がかかるのでやらないです。
だからこれまで断ってきた仕事…例えば今、依頼が来ているのは、農林水産省から「サステナブル(地球環境を保全しつつ持続が可能な産業や開発など)」をテーマにしたメニュー開発の依頼がきているんですが、そういった仕事も積極的に対応していきます。
2021年、飲食業界はどう変わるのか
クックビズ世古:2021年以降、飲食業界はどう変わっていくのかお考えをお聞かせください。
浅賀さん:デリバリー事業は増えると思いますね。冬場は特に寒いし、感染リスクの高さも考えて重宝されるのではと思います。
白竹さん:今後、ビジネスでの利用は減るでしょう。そもそも失業する人が増えるから外食する人の数も減る。
でも「記念日にはレストランで美味しいものを食べよう」という人はいると思うんです。私はハレの日使いのお客様は増えるのではと思っています。“増えてほしい!”という願望も含んでるんですけど(笑)。
一同:(笑)
藤井さん:2021年以降、人は『コロナ禍での外食は控える』という意識を持ってはいるものの、また少し治まるとワラワラと街に繰り出し、外出しては感染者が増え、自粛して治まっては増え…というように。ワクチンができるまでは繰り返すと思っています。
クックビズ世古:なるほど、そうですね。
藤井さん:でも「コロナだから一生外食はしない」という人はいないと思うんですよ。白竹さんが言うように、ハレの日には外食するでしょう。
そのときにいかに自分の店を選んでもらえるか、「あの店なら安心できる」と思ってもらえるかが大事かなと思っています。
クックビズ世古:では2021年以降、飲食店にいらっしゃるお客様は、仕事でのご利用から、大切な人との時間を過ごすためのプライベートなご利用へとシフトしていくということでしょうか。
まだまだ大変な状況は続きそうです。そんな中でお時間いただき、ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願いします。
<座談会 参加者紹介>
■白竹 俊貴さん
大阪市内のフランス料理店や、北新地の人気フレンチ「弘屋」に5年間勤務したのち、2016年大阪府豊中市にて「フランス料理 PERTICA(ペルティカ)」オープン時のシェフに就任。「RED U-35」2019年 BRONZE EGG受賞。料理人でありソムリエとしても活躍。
■浅賀 直斗さん
2013年より九段下の「トルッキオ」の林シェフの下で修業を開始。2016年には「SALONE2007」(横浜)や「バカリ ダ ポルタ ポルテーゼ」(渋谷)などを経て、2018年より「ビオディナミコ」(渋谷)でスーシェフに就任。現在は六本木の「サッカパウ」のシェフを務める。「2018パスタワールドマスターズ」ファイナリスト。
■藤井 将一さん
2012年7月、株式会社ラフダイニングにアルバイトとして入社後、約3ヶ月で本店店長へ。後に5店舗での店長経験を経て、第13回「S-1サーバーグランプリ」最優秀賞を獲得。同年12月に独立し、現在は札幌「和酒・旬菜・心 ひょうきん顔」のオーナー。NPO法人「繁盛店の道」北海道地区本部長を務め、講演活動も行う。
まとめ
これまで飲食店の方々が集まる座談会にいろいろ参加し、年末年始の売上対策についてお伺いしてきました。そんな中「年末年始は休み、2021年にむけての準備期間にする」という声は、今回初めてでした。
「店を入れ替え制に」「シェフが店外で仕事をする」。これまでにない新しい発想がいくつも飛び出しました。
2021年、飲食業界の形はどんどん進化していく予感がします。
<協力>
店名 | サッカパウ |
店名 | フランス料理 PERTICA(ペルティカ) |
店名 | 和酒・旬菜・心 ひょうきん顔 |