座談会全体の様子

忘年会シーズンにしてコロナ第3波にある飲食業界
クックビズでは、12月7日に『コロナでどうなる?!年末商戦と2021年』をテーマにオンライン座談会を開催しました。
参加したのは、神戸にあるフレンチの名店でスーシェフとして活躍する森下さん、「S-1サーバーグランプリ」で北信越地区代表を務めたサーバー・関さん、東京の有名ラグジュアリーホテルで料理人を務める細田さんという異色のトリオ。

第3波到来後もコロナの影響がまだまだ続くいま、それぞれの仕事場で今、どういう状況?これからどうしていく?外食業界はどう変わっていく?などをリアルな声でお話しいただきました。

<参加者のプロフィール>

■森下 裕介さん
神戸・三宮の中でも異国情緒あふれる北野にお店を構えるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」で勤務。現在29歳という若さながらスーシェフを務める。「RED U-35」2019にて「BRONZE EGG」受賞。

■関 智也さん
和食炉端「湯沢釜蔵」店長(31歳・新潟県湯沢町)
第13回「S-1サーバーグランプリ」北信越地区代表。

■細田 隆広さん
日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」において、2019年度の「BRONZE EGG」を受賞。中国料理を専門に、「和魂漢菜」を自身の料理スタイルとして現在は、東京にある「hyatt regency tokyo」内の「中国料理 翡翠宮」にて腕を振るう。

第3波の報道から埋まらない年末・クリスマス予約

クックビズ世古:今年はコロナの影響で、例年にない1年でした。繁忙期の年末の予約の入りやお客様の状況など例年との違いってありますか?

黒のダウンを着用した森下さんの写真

森下さん:フレンチレストランの予約自体はそこそこ入っているものの、例年に比べると圧倒的に少ないですね。例年なら12月に入ったら、23日から26日はすでに満席になっていますが、今年はまだ満席の日はないです。
例年だとお断りだとかキャンセル待ちだったのですが、クリスマス自体が埋まらないです。前倒しで予約してくださる方は多くて、早めのクリスマスという感覚で予約が入っている感じですね。

関さん:僕のいる和食居酒屋では「Go To トラベル」と「Go To Eat」の良い反響がありました。年末は予約が入り始めていたんですが、例年に比べると弱いですね。

口ひげを生やした関さんの写真

例年だと12月26日から1月5日くらいまでは予約でいっぱいな状況ですが、第3波の報道でバタバタとキャンセルが相次ぎました。肌感覚でのキャンセルは3割くらいでしょうか。「今年はちょっと読み切れないな」というのが年末年始の状況です。

細田さん:うちはホテルなので、忘年会シーズンは一番の繁忙期です。企業の大規模な宴会場の予約が、すべてキャンセルになっています。宴会部門はほぼゼロに等しい状況です。レストランは10名以下の宴席の予約は入っています。

どしっと構えた雰囲気の細田さんの写真

オードブル、折詰、おせち、食品ロス対策。アイデアいろいろ

クックビズ世古:新しいメニューなど、お客様に向けて、今年ならではの対策ありますか?

森下さん:衛生面の徹底と、2部制だったのを1部だけにしたり、時間帯の制限はしています。それ以外は特にこれというのはやっていないです。毎年20日からはクリスマスのメニューを出していて、ありがたいことに常連様の予約はいただいています。
最近は、テイクアウトの問い合わせが多いですね。たくさんの飲食店が今年は、「そうざい製造業許可」の免許を駆け込みで取って、テイクアウト・デリバリーに取り組んでいると思うのですが、当店も5月から始めて好評です。

笑顔で話す森下さんの写真

お客様からは、「クリスマスにお店に行けないから、オードブルのテイクアウトやっていますか」という問い合わせがありますね。通常の営業と並行でテイクアウトしてもいいかなと考えています。通常営業と同時なので、衛生面の管理を徹底していきたいです。

関さん:コロナの安全面・衛生面でいえば、もともとあった飲み放題付プランで、大皿盛りをなくし、個別で料理を盛り付けた「取り分け不要コース」を打ち出しました。これが時代に合っていて分かりやすかったからか手ごたえがあって、3~4名の宴会のお客様にご好評いただきました。

クックビズ世古:今の時期、例年はお鍋が多いですが、出ていますか?

関さん:出ています。いま、お客様はご家族やカップルが多く、親密な関係の少数の方たちは、そこまで気になさっていない印象です。それが会社の集いだと気になさるのかなとは思うのですが。

地元の企業様のなかには、忘年会ができないから、「折詰(おりづめ)」を希望されるところが増えました。仕事納めの日に「今年は忘年会できなかったから、各自持って帰ってね」というような企業様ですね。忘年会と同じくらいの予算で、1人前5,000~6,000円の折詰です。
第3波の影響で、極端に人の動きが落ちた12月初めにはこの特製の折詰をFAXのDMで案内させていただいて、問い合わせや予約が伸びていますね。

聞き入る様子の関さんの写真

うちはもうずっと、12月31日の大晦日は営業せずに仕出のみの営業をしているのですが、持ち帰って食べる時に蓋を開けた瞬間の笑顔と驚きをイメージしながらスタッフ総出で作っています。お酒のおつまみにもなって、夕食にも盛り込むことができるよね、と。毎年の仕出しの実績があったので、それらを踏まえて企業様向けの折詰め商品にたどり着きました。

細田さん:ホテルではテイクアウトと「おせち」は、今年はたくさん予約が入っていますね。例年やっていますが、例年よりプラス20~30%を超えてきています。10月~11月くらいから予約を受け付けていますが、もうほぼ埋まっています。

嬉しそうに話す細田さんの写真

レストランは2~5名のご予約がメインです。多くても10名ですね。通常は年末年始に海外旅行に行く富裕層の方が、国内で食事されて、うちのホテルに来ていただけるのではないかと思っています。その要因でおせちの受注も増えているのではと予想しています。

いま、当ホテルでの一番のテーマは、コスト・食品ロスの削減です。何種類もあるメニューの使う食材をなるべく同じにしようと試みています。中華は味付けが豊富で、材料は同じでも調理法で味付けをいろいろ変えられるので、お客様に喜んでいただけるように工夫しています。

強まる“1回の外食”への想い。どう対峙するか

クックビズ世古:2021年から、今までの日常が変わってくると言われますが、飲食業界は、お客様の動向ふくめ、どのように変わってくるとお考えでしょうか。

森下さん:テイクアウトやデリバリーが増えて、いろんなニーズ、需要が出てくると思います。
でも第2波、第3波が起きる中で僕が一番思ったのは、「外食の良さ」が見直されていることです。「レストランっていいな」という方も、今までより増えていくと思います。

微笑みながら話す森下さんの写真

8月から10月にかけての予約はお誕生日会、結婚記念日が99%だったんですね。コロナでできなかった記念日を、「どうしても行きたい」と時期をずらして来られるんです。フレンチレストランには「特別な時間を過ごしたい」という方がやっぱり来るんだ思いました。テイクアウトを使ってくださるリピーターのお客様でも、状況が落ち着くとすぐにお店に来ていただいています。
だからフレンチに対する考え方が変わるというよりは、より深く思ってくださる方が増えていくんじゃないかと。普段使いで行く外食ではなく、「ちょっと特別な場」なんだというのを、お客様を見ていて改めて感じます。

関さん:森下さんのお話のとおりで、これからはお客様の利用動機は間違いなく変わってきます。「1回の外食」に対する思い入れが強まって、特別な日に、特別な人と外食をする流れになっていくのかなと。

笑顔で話す関さんの写真

それとは反面、世の中がテイクアウトに力を入れていく中で、「おうちの中で特別な時間を過ごしたい」という方たちも同じくらい増えていくのかなとも思っています。
また、スタッフとの会話だったり、外食ならではの雰囲気が好きな方も間違いなくいると思うので、今の状況が落ち着けば、そういった方たちが店に戻ってくるという肌感覚もあります。
だからこそ今できることとして、自分たちが1日のなかで、お客様と対峙するとき、1品をお出しするとき、よりチカラを入れていく必要があるのを感じます。

細田さん:お二人が仰ったように、外食がより「大切な行事になる」っていうのは、確かにそうだなと思いますね。

真剣な表情の細田さんの写真

当ホテルでも、サービス部門や料理長から新しいメニューの紹介など、お客様へのアプローチを行っています。外食業界が大打撃といわれ、来年は今年以上に危ぶまれる状況のなかで、むしろそんな風に「外食は大事な行事」にしていかないとならないと思いますね。

まとめ

コロナ禍の飲食業界が、2021年を迎えるにあたってどう舵取りしていくかは、業界内だけでなく社会的な課題ともいえます。店舗運営と社会動向の狭間で現実に直面する第一線の方たちの声はまさにその“解”。ライフスタイル、人生、さまざまな価値が問われつつあるいま、「食事をする」という価値がどう見直されていくのか。世界中で関心が高まっています。

<協力>

店名 Recette(ルセット)
店名 湯沢釜蔵
店名 中国料理 翡翠宮