神戸の街の人気フレンチレストラン「Recette(ルセット)」に18歳の若さ入社以降、10年間経験を積み、現在スーシェフのポジションで活躍されている森下さんの「ぜひ紹介したい人」、一体どんな方なんでしょうか?
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フレンチ料理人が紹介したいのは同じ地元・神戸の花屋さん
クックビズ世古:森下さん、本日もよろしくお願いいたします!今回は、「森下さんの周りにいる、ぜひ紹介したい人」というテーマを出させていただきましたが、どんな方についてお聞かせいただけるのでしょうか?
森下さん:僕がこのお話をいただいた時にまずひらめいた方なんですが、神戸市内にある「flower shop Jardin Clair(フラワーショップ ジャルダン・クレール)」の小森 美樹さんです。
クックビズ世古:フラワーショップ…お花屋さんですね!森下さんやお店とどういったかかわりがあるんでしょうか?
森下さん:僕がいま働いている神戸・三宮にあるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」の店内の中央部分に、大きな生け花をディスプレイとして飾っているんです。その花をいつも生けに来ていただいている花屋さんのオーナーさんです。
新型コロナウイルスの影響を受けているのは飲食店だけではなかった
クックビズ世古:料理人の方が花屋さんを紹介される、というのが意外な感じがしました。今回紹介してみようと思った理由からお聞かせいただいてもいいでしょうか?
森下さん:ですよね(笑)。お客様に足を運んでいただいて、「おいしい」や「楽しい」と感じる要素って、料理やドリンク、サービスなどさまざまあると思いますが、それらに加えて「ルセット」では「花」もお客様に食事を楽しんでいただく演出として、非常に大きな役割を担っているんです。
食材の旬と同じで、季節ごとに花って変わるじゃないですか。足を運んでいただいたお客様には、料理とあわせてお店の雰囲気でもその季節感を感じていただきたいと思っています。
クックビズ世古:なるほど。たしかに「ルセット」の店内にある花、存在感ありますよね!
森下さん:そうなんです。だいたい高さ1.5mぐらいですかね?お店のインテリアやレイアウトは少し変わってもこの花の位置を変えることはないですね。そのぐらい、小森さんに生けていただく花はお店にとって大きな存在なんです。
また、「ジャルダン・クレール」さんは、うちのお店以外の多くの飲食店やホテルなどにも花を提供されているのですが、最近の新型コロナウイルスの影響もあり、われわれ飲食店と同様に厳しい状況であると聞きました。
なので少しでもこういった形でいろんな方に知っていただけたらと思い、今回あげさせていただきました。
クックビズ世古:なるほど。飲食店やホテルの状況などはニュースなどでも多く目にしますが…飲食店やホテル向けに花を多く提供されている、となると、今なかなか従来通り営業することが難しい中では、影響を受けてらっしゃるんですね。
随所に「プロフェッショナル」を感じる気さくなお姉さん
クックビズ世古:「ルセット」にとっても大きな存在である「花」。そんな花を生けに来てくれる小森さん、どんな方なんでしょうか?
森下さん:とっても気さくなお姉さんという感じですかね。お店に花を持ってきてくれた時に、すごく話しやすい方ですね。花のことも僕たちにもわかりやすく説明してくれますし、仕事以外のお話もよくしますね。そのあたりは僕が入社した時からそれは全然変わっていないです!
ただ、お店に花の入れ替えやメンテナンスで来ていただいて、花と向き合っている時は一転、ひとつひとつの動作を見たりや会話をしていると、やはりプロフェッショナルだな、と感じます。
クックビズ世古:森下さんが入社した際にはいらっしゃったとのことですが、小森さんのお店はお付き合いとしてはどのぐらいあるんでしょう?
森下さん:僕が「ルセット」で働きだした時にはすでに小森さんをお見かけしたことがあったので、15年ぐらいお付き合いはあるとおもいます。
クックビズ世古:15年!ではもう「ルセット」にとって欠かせない存在ですね。
森下さん:そうしたこともあってか、何度かお食事で来店いただいたり、逆に自分達スタッフは何かプライベートでの記念日やお祝いで花を買う時は「ジャルダン・クレール」さんに行かせていただいたり、公私ともにすごく良くしてくださっています。
お客様とのコミュニケーションにも欠かせない
クックビズ世古:お店の花を生けに来ていただいている、とのことでしたがどのぐらいの頻度でお願いされているんですか?
森下さん:週1回ごとに花は入れ替えていただいています。
季節ごと、とはいっても見頃の花の種類はたくさんあり、来店いただくお客様には、いつ来ても違った雰囲気を楽しんでいただけるように、ということでこのぐらいのサイクルで花は入れ替えていただいています。
あわせて、花を生けてもらった後も、次の交換までに、一度お水の交換などメンテナンスにも来ていただいています。なので、ひと月でもかなりの日数、お店ではお世話になっています。
クックビズ世古:花もいわば生ものですし、交換に加えて手入れも大変ですもんね。
実際、お客様の反応などはいかがですか?
森下さん:お客様の中にも花が好きな方は多く、料理をお出しする際に「きれいですね」「あの花珍しいですね」と声をかけてくださったりすることが多いです。
なので、サービススタッフや自分もお客様に「あのきれいな花、なんていう名前なんですか?」と聞かれることもあるので、花を生けに来ていただいた際には、自分も名前や特徴などを教えてもらうようにしています。
しかも小森さんがもってきてくださる花は、その季節のメジャーな花もあれば、今までみたこともないような珍しいものも多く「なんだこれは!?」というものたくさんあるので、毎回そこは確認してちゃんとお客様に説明できるようにしていますよ。
クックビズ世古:ちなみにこれまで森下さんが見た中でインパクトあった花ってあります?
森下さん:そうですね…「フォックスフェイス(ツノナス)」っていう花を一度持ってきてもらったんですが…その名の通りキツネの顔みたいなかわいい形をしてるんですよね。
これはけっこうインパクトもあって、お客様の反応も僕みたいな感じで驚かれる方が多かったです(笑)。
クックビズ世古:こんな花があるんですね!たしかにこれは自分も初めて見ました。
森下さんも料理人でありながら、花にもどんどん詳しくなっていってますね(笑)。
森下さん:はい、「ルセット」に入った時に比べたら種類とか季節とか詳しくなりましたね(笑)。
料理人として必要な「季節感」が養われる
クックビズ世古:森下さんのお店から、小森さんの方に何か花に関してオーダーを出されたりすることもあるんでしょうか?
森下さん:これだけ長くやっていただいていることもあり、基本はおまかせですね。
たまに自分の方から「最近他のお店でこういう花見たんですがあります?」というようなお話をして、お店に生けていただくこともありますが、基本的にはおまかせでお願いさせてもらっています。取り扱っている種類も数もすごく多いので、お店側としても毎回すごく楽しみにさせていただいています。
クックビズ世古:料理人として見たときにこの花だったり、小森さんは、どういった存在なのでしょうか?
森下さん:そうですね。料理と花、一見関わりがなさそうに見えるんですが、実は通ずるものが結構あるんだなと感じています。
クックビズ世古:それはどいった点なのでしょう?
森下さん:先ほどもお話しましたが、食材にも季節ごとの旬のものがあり、料理人の手によって、その時期に一番おいしい食べ方で、お客様にお出しし、召し上がっていただく。
そしてお客様には「季節感」を感じていただき、それらも含めて「おいしい」「楽しい」と感じていただきたいと思っています。
クックビズ世古:たしかに私たち一般層が季節の変化を感じる要素のひとつに「料理」は大きなウェイトを占めている気がします。ごはんを食べに行って「あー、もうこんなメニューが出てくる季節なのかー」のような。
そう考えると、一般消費者に対して季節の変化を教えてくれるのは料理人さんや飲食業界にいる人達の影響は大きいかもしれません。
森下さん:ですよね。そのためには料理人自身も「季節感」に関して敏感でいないといけないのですが、飲食業界にいると忙しく、なかなか季節の変化に対して鈍くなってしまうんです。
クックビズ世古:あー、休みもなかなか取れなくて、お店と家の往復だけしかできないみたいな。
森下さん:そうですそうです(笑)。
そんな中でも小森さんが持ってきてくださる季節ごとの花は、自分が季節感を養う上で欠かせないですよね。
自分が知っている京都の和食屋さんでも、若手の料理人さん達が庭の掃き掃除をして自然に触れる機会を作ったり、「八寸」に添える食材を裏山に取りに行ったりと、「自然」「季節」を感じられる時間を普段の業務の中に取り入れていたりするそうですし、料理人はジャンルは異なっても、季節の変化や旬に対して敏感でないといけないと思います。
クックビズ世古:なるほど。料理人にとって「季節感を養う」ってものすごく大事なんですね。
森下さん:そうですね。
また、そういった季節感を表現するために、小森さんが生けてくださった花の中から、枝や花びらを少し取らせていただいて、アクセントとしてお皿に添えてお客様にお出ししたり、といったこともやっていますね。
クックビズ世古:では小森さんの花は「ルセット」の料理の盛り付けにも一躍買われているんですね。
独創的な生け花の表現は盛り付けのヒントにも
森下さん:料理の「盛り付け」に関して言えば、そこも料理と花の共通点がありますね。
クックビズ世古:それは、どういう部分でしょう?
森下さん:どちらも「立体物」というんでしょうか。料理も生け花も、どちらも平面的なものではなく、どの角度から見ても美しく仕上げないといけないので、考えた配置・レイアウトされている生け花は、盛り付けのアイデアやヒントにつながってきます。
その点、小森さんが生けてくださる花はいつも独創的で、ふと目にした時にインスピレーションが湧いてくる感じがしますね!
クックビズ世古:そういうことなんですね。料理もそうだと思いますが、生け花に関してもどこにどんな花を配置して、など緻密(ちみつ)にレイアウトを計算されてるというイメージがありますもんね。
森下さん:なので、自分が知っている料理人の先輩の中には、そういった感性やセンスを磨くために、小森さんのフラワーアレンジメント教室に一時期通っていた、という方も知っています。
クックビズ世古:料理人さんがフラワーアレンジメント教室に!でも、普段と違うものを扱って考えたりするには、おもしろいかもしれませんね。
今お聞きしただけでも、料理と花って実は通じる部分がたくさんあるだな、と感じました。
森下さん:そうですね。ここ最近でいえば、ハーブだったり、エディブルフラワーなどは食材としてもかなり認知されてきていますよね。
また、東京ではさまざまな著名な巨匠の生け花をレイアウトしたレストランもできていたり、飲食と花はどんどん密接な関係になってきていると感じてます。
もはや店内を彩る存在以上の役割を果たす小森さんの生け花
クックビズ世古:なるほど。今後もまだまだ「料理×花」の新しい融合の仕方が出てきて、楽しめるようになってくるかもしれませんね。
では改めて今回、ご紹介いただいた「ジャルダン・クレール」の小森さん、森下さんやにとって、どんな存在なのでしょうか?
森下さん:そうですね。本当に10年以上、週1日~2日の頻度でお世話になっていることもあり、「ルセット」の一部という感じでしょうか。
常連のお客様の中でも、毎回お食事に加えて、店内の生け花も楽しみにしていらっしゃる方も多くいるので、非常に大きな存在でこれからもきれいな花をたくさん届けていただきたいですね。
まとめ
今回、森下さんがぜひ「紹介してみたい人」ということで、花屋さん「ジャルダン・クレール」の小森さんについて色々とお聞かせいただきましたが、お店にとっても、森下さん自身にとっても、小森さんが手がける「生け花」がすごく重要な役割を担っているのが伝わってきました。
決して、店内を華やかに彩るだけでなく、料理人の方にとっては、自身のアイデアや可能性を普段とは別の角度から広げてくれる存在なんですね。
次回はぜひ、「ジャルダン・クレール」の小森さんのお話も花へのこだわり、小森さんからみた飲食店・レストランとお花のかかわり等、うかがってみたいと思います!
<森下 裕介さんプロフィール>
神戸・三宮の中でも異国情緒あふれる北野にお店を構えるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」で勤務。現在29歳という若さながらスーシェフを務める。「RED U-35」2019にて2019 BRONZE EGG受賞。
<森下さんが務めるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」をご紹介!>
神戸・三宮の北野の路地を一本入り、階段降りた地下1階にお店をかまえるフレンチレストラン「Resette(ルセット)」。
地下階でありながら、穏やかな光につつまれた店内では、クラシックなレシピにモダンな要素も取り入れたこだわりのフランス料理をおもてなし。
本場・フランスより直輸入するお肉フォアグラのほか、春にはホワイトアスパラや、夏に淡路の鱧(ハモ)、秋に京都・丹波の野菜、冬にはジビエなど、四季折々の旬の食材使ったメニューをご用意。
ミシュランガイド・兵庫2016年特別版にも取り上げられるなど、高い評価を受けた自慢の料理の数々は何度も来訪されるファンも多い人気のレストラン。
お店情報は下記からご確認ください!
<取材協力>
店名 | Recette(ルセット) |
店名 | flower shop Jardin Clair(フラワーショップ ジャルダン・クレール) |