座談会の参加者全員の写真

今回のテーマは『やってしまった仕事の失敗』。クックビズオンライン座談会に参加したのは、神戸にあるフレンチの名店でスーシェフとして活躍する次代のホープ・森下さん、そして「S-1サーバーグランプリ」で北信越地区代表を務めた鬼才のサーバー・関さんという異色のお二人。
“アラサー”という共通点を持つお二人に、ご自身の失敗体験を通した、失敗の活かし方、学び方について、語っていただきました。

<参加者のプロフィール>

■森下 裕介さん
神戸・三宮の中でも異国情緒あふれる北野にお店を構えるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」で勤務。現在29歳という若さながらスーシェフを務める。「RED U-35」2019にて2019 BRONZE EGG受賞。

■関 智也さん
和食炉端「湯沢釜蔵」店長(31歳・新潟県湯沢町)
第13回「S-1サーバーグランプリ」北信越地区代表。
株式会社S・E・P INTERNATIONAL所属

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知らないことは「知らない」でいい

クックビズ世古:まずは森下さん、いかがでしょう。盛大な失敗というと。

森下さん:いっぱいありますね。印象に残っているのが、まだ見習いで1年目のころの出来事です。

笑顔の森下さんの写真

当時、お店のおすすめのチーズをお客様に選んでいただくワゴンフロマージュをやっていました。その時、オーナーに「森下君はチーズ詳しいから、お出ししておいで」と言われたんです。それで、オーナーにほめてもらったのもあって自信満々に、チーズの説明をしに行ったんですね。

そのお客様は、いいワインを開けてくださっていたんですが、僕の説明に対して「キミは本当に、このワインにこのチーズが合うと思っておすすめしてくれているの?」と言われたんです。

そのお客様はお医者様で、ワインにとても詳しい方でした。いっぽう僕は、ワインには詳しくなくて、うまく答えられなかったんです。それでお客様に「もう結構です。キミは下がってください」とお叱りを受けました。そのときはとてもへこみました。

クックビズ世古:お客様はどういう意図でおっしゃったんですか?

森下さん:たぶん、分からないなら分からないで、よかったんだと思うんです。普通に説明してどうぞで良かったのを、舞い上がっていたというか、知識もないのに知ったような風におすすめしてしまいました。「美味しいですよ!」という単純な想いだけで、もっと深いところまで頭になかったんです。

クックビズ世古:お客様にはどうお答えしたんですか?

森下さん:何も言えなかったです。というか、そんなこと考えてもいなかったんです。その後に、そのワインとチーズの相性を調べたら、とても悪いことが分かりました。

クックビズ世古:その事実は、さらに落ち込みますね。

森下さん:ほんとに(笑)。プロよりも詳しいお客様っています。それからずっとワインやチーズの勉強は続けているんですが、できないことをできないと認めることも大事ですし、お客様がどういう状況で、どういう方なのかというのを見なければいけないなと思いました。

クックビズ世古:関さんは今のお話聞いていかがでしょう。

笑みをこぼす関さんの写真

関さん:洋食の森下さんと、和食の僕とは、ジャンルは違いますが、同じようなケースがあるんだなと思いました。

僕らは日本酒を扱っていますが、日本酒も辛い・甘いの違い、口当たりの違い、余韻の違いなどまで幅広くあります。料理との相性も、お刺身に合う、お肉に合う、味が濃いのに合う、などさまざまな組み合わせがあります。僕もこの業界に入ってから学んだことです。

クックビズ世古:関さんはお客様にどう説明を?

関さん:僕は説明の最後に「あくまで僕はこの組み合わせが好きです」と伝えています。

ネット社会になりいろいろな事がパソコンで調べられるようになって、今の森下さんのお話じゃないですが、チーズとワインの相性、料理と日本酒の相性も調べたら無数にあります。全部を鵜呑みにしていいのかな?お客様に届けていいのかな?という疑問を感じたことがあって、うちの学生アルバイトの子たちにも、お客様への伝え方はそこを注意してもらっています。

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何度も失敗しないと分からないこともある

座談会参加メンバーの全体写真

クックビズ世古:そもそも人によって好みって違いますからね。関さんご自身の失敗もありますか。

関さん:僕の失敗は、これは本当に何度もあるのですが、ドリンクを運ぶときの失敗です。

僕らは、お盆を使うんですが、お盆に載せられるかぎりの、たくさんのドリンクジョッキを載せて、お客様のところに向かいます。そうすると入口付近のお客様が気を利かせて、お盆のジョッキを取ってくださるんですね。すごくありがたいんですが、お盆のバランスが急にくずれるんです(笑)。

自分なりのいい感じのバランスで一つずつお渡ししていくはずだったのが、ふいに手元のバランスがくずれて、載っていたジョッキを全部ひっくり返し、お客様にもかかってしまうという。そんな失敗を何度も経験しました。

クックビズ世古:運ぶ量が多かったからですか?

関さん:崩れるときはジョッキ3本でも崩れますね。ジョッキを1つお渡しして、残りの2つでバランスを取る。それをお客様が1本とったときに、残されたもうひとつのジョッキのバランスが崩れてしまうんです。もうお盆の上がてんやわんやです(笑)。助からないときもあれば、助かるときもあるんですけどね。

幾度となく経験したので、もう僕自身は今は失敗しないですけれども。入ったばかりの高校生のアルバイトの子たちや、1~2年経った子たちでも、必ずこの失敗はします。何度も経験しないと分からないこともあるので。

座談会の途中の様子

クックビズ世古:コツはありますか?慣れですかね?

関さん:いちばんは慣れでしょうか。マニュアルじゃない部分だと思います。お客様の前に出てもらう前に、一応、気を付けるように伝えはするんですけれども、失敗をしたことがない子たちは「お盆に載せているんだから、大丈夫でしょ」とだいたい考えるんです。お盆への信頼感が半端じゃない(笑)。

クックビズ世古:じゃあ、失敗して学んでいくしかないですね(笑)。

関さん:そうです。僕らは結局、その失敗のフォローは必ずするから、というスタンスでいます。失敗は何度もしないと、若い子たちの成長につながらないと感じますね。

クックビズ世古:一度経験したことをケース想定していくという。

関さん:口じゃ伝わらないですね。余裕があるときはトレーニングします。からのジョッキを4つくらいお盆に載せて、お客様役を別のスタッフがやって、バランスが崩れるグラスの取り方をワザとするんです。サッと取って、グラスがガシャガシャっと転がってしまって、その難しさが分かります。

クックビズ世古:森下さんはどうですか?ワイングラスは薄いので割れませんか?

森下さん:割れますね。うちの店でもトレイに7本くらいまではワイングラスを載せて持っていきますね。ボトルも。値段的に高いものとか、今でも持っていくのは怖いです(笑)。

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誰も傷つかない解決策を導き出せるか

クックビズ世古:お二人はサービスの失敗が多いですか?料理では?

関さん:仕込みの失敗もあります。煮込みを仕込んでいる最中に、火をかけっぱなしにして、炒め物になっちゃったりとか(笑)。あげればキリがないくらいです。

森下さん:僕も料理人がしてきた失敗は全部してきていると思います。ものをこぼしたり、発注ミス、過発注、発注し忘れていたり、料理を間違えていたりとか、多いですよ。

照れくさそうに笑う森下さんの写真

クックビズ世古:過発注って数を間違えるってことですよね。

森下さん:僕らの店は予約だけじゃなく席があればご案内するので、当日のお客様も多いんですね。ですので予約分とプラスアルファで発注するんですが、足りなくなるのが怖くて、つい多めに発注するんです。それが明らかに多すぎて、「どうするねん、これ」と怒られます(笑)。

クックビズ世古:どうするんですか?

森下さん:ほかの料理に使ったり、できる限りロスが出ないように回してはいきます。本当にどうしようもない時は、シェフに謝って、まかないで使います。

クックビズ世古:その辺も、経験ですよね。

森下さん:そうですね。やっぱり数をこなすこと。長く店にいないと、そのあたりも見当つかないので。

クックビズ世古:関さんもありますか?

関さん:僕は頼んだつもりが届いていない方が怖いです(笑)。

満面の笑みの関さんの写真

クックビズ世古:その場合は?

関さん:ほかの食材で代用したり、もしメイン食材がないのであれば、その日はオーダーを通さないようにします。
お客様には「今日、この食材が来ていないんですよ」と説明はします。「業者さんから届かない」と、誰のせいでもない、そこを追究しない、ざっくりとした言い回しをします。

本当は発注ミスですが、あえて誰も傷つかない伝え方を選んでいます。それで「食べたかったのに」というお客様に対しては、「次回は用意します」というのと、類似商品がある場合はご紹介をします。

ほかに「牛肉のステーキが食べたかったのに」という方には、「メニューにはないですが特別に豚肉ならご用意できます」と特別感を加えてお話することもあります。

クックビズ世古:アクシデントは起きた時じゃないと教えるの難しいですね。

関さん:そういうのは、年に数回のめったにないことです。だから、経験をして身につけていくんだと思います。

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まとめ

何度も失敗をしてきていると朗らかに語っていただきました。経験を通して身につけた知識、知恵、技術の豊かさこそが、今のお二人の柔らかさや感性をかたち作ってきたんだと感じます。一緒に働く新人や若手スタッフが、時に失敗しながら、そして仕事を楽しみながら、成長している姿が目に浮かびます。

<協力>

店名 Recette(ルセット)
店名 湯沢釜蔵
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