自身が愛用する「鱗トル(ウロコトル)」の箱のパッケージを手に説明をしている森下さん

クックビズでは、飲食業界で活躍するみなさまにお声がけし、定期的な座談会を開催中。
今回、神戸・三宮にあるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」で29歳という年齢ながら、スーシェフとして活躍されている森下 裕介さんに、普段愛用している調理器具やいま気になっている器具についてお聞かせいただきました。

クックビズ株式会社からは、座談会運営の世古、川田、中西が参加いたしました。

■「Recette(ルセット)」でスーシェフを務める森下さん愛用の道具たち~全3選

  • 鱗トル(ウロコトル)
  • 医療用ピンセット
  • 食品乾燥機

プロフィール

■森下 裕介さん

神戸・三宮の中でも異国情緒あふれる北野にお店を構えるフレンチレストラン「Recette(ルセット)」で勤務。現在29歳という若さながらスーシェフを務める。「RED U-35」2019にて「2019 BRONZE EGG」受賞。

クックビズ世古:はじめまして。本日はご参加いただきありがとうございます。
今回は森下さんご自身のことや、普段愛用している道具のことなどお聞かせいただけるとのこと、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

森下さん:よろしくお願いします!

卒業以来10年間フレンチ一筋、でももとはバリスタ志望だった

クックビズ世古:では早速なのですが、森下さんが飲食業界や料理人の道を進もうと思ったきっかけは何だったんですか?

森下さん:高校の時に「バリスタ」ってかっこいいなと思ったのがきっかけですね。一度はバリスタをめざしてレコール・バンタンに入学して、ドリンクなどを学んでいたのですが、だんだん料理を作る職人の方に興味が出てきまして…。

また、その頃に、実はクックビズさんでイタリアンのアルバイト先を紹介いただいたこともあり、「自分には料理人の道しかない!」ということで本格的にめざそうと決めました。

クックビズ世古:なんと!すでにクックビズの人材サービスをご利用いただいていたんですね、ありがとうございます(笑)。

でもアルバイトとしてはイタリアンのお店でしたが、フレンチに進むことにしたのは何かきっかけがあったのですか?

森下さん:勉強のためにもいろんなお店の食べ歩きをしていたんですが、その中でフレンチが好きになっていき、「よし自分はフレンチで料理人をめざす!」と決めました。

クックビズ世古:なるほど。そこから今のお店に至るまではいくつか修業されてきたんでしょうか?

オンライン座談会でご自身の経歴について笑顔で語る森下さんの写真

森下さん:いえ、レコール・バンタン卒業後から、もう今の「Recette(ルセット)」で働いてます。10年ぐらいになりますかね。

クックビズ世古:ずっと今のお店なんですね!飲食業界は人の出入りが非常に激しい業界ですが、森下さんはかなり長くこのお店にいらっしゃるんですね。

森下さん:そうですね。働き始めてからはしんどいことも多くて、3年ぐらいで辞めようかなとも思っていました。ただ、もともと負けず嫌いなところもあり、25歳ぐらいまで根性でだけでやってきました(笑)。

クックビズ世古:根性で(笑)。その後は?

森下さん:周りの同期もいなくなっちゃってモチベーションが下がることもありましたが、入って3年を超えたぐらい逆に自分の周りで同じ料理の世界で頑張っている友達も増えてきてすごく楽しくなってきたんですよね。

クックビズ世古:続けていたからこそできた人とのつながりが、森下さんのモチベーションにつながったんですね。これからの夢などありますか?

森下さん:将来的には独立など考えていた時期もありましたが、今は「Recette(ルセット)」をもっともっとたくさんのお客様に愛していただけるお店にしたい、という想いが強いですね。

クックビズ世古:なるほど。ではご自身でお店を持つよりも、今自分がいるお店を盛り上げていきたいという想いがおありなんですね。ありがとうございます。

魚の鱗取り専用のアイテム、その名も…

クックビズ世古:ではここから、そんな森下さんが普段愛用されている道具についておうかがいしたいと思います。今日お持ちいただいた道具は何がありますか?

森下さん:自分は道具が好きでいろいろ持っているんですけど、まずはこれですね。

森下さんが愛用している魚のウロコを取る道具「鱗トル(ウロコトル)」の写真

クックビズ世古:!?これは…なんでしょう?

森下さん:「鱗トル(ウロコトル)」といいます。文字通り魚の鱗を取るための専用の道具なんですが、かなり便利で使っています。

クックビズ世古:魚の鱗を取る専用の道具ですか!名前がそのまんまですね(笑)。

森下さん:そのまんまです(笑)。たしか2019年に明石漁港に研修で行った際に教えてもらいました。

みなさん金属性の刃がついたものはよく目にすると思います。あれって魚をガリガリこするように使うんですが、鱗が飛び散ったり、身を傷つけてしまったりしてしまうんです。

ただ、「鱗トル」だと、この平面でザーっとこすっていくだけで、一気に鱗が取れるんですよ。しかも台所に飛び散らないし、やさしくこするので魚の身も傷つけないので、すごくいいですよ!

※「鱗トル(新潟キッチン webサイト)」参照

オンライン座談会で愛用の「鱗トル(ウロコトル)」を手に取り使い方や便利さを解説する森下さん

クックビズ世古:なるほど!では今までの魚の鱗取りを考えたら、数段スピーディに鱗が取れて、掃除も楽になるってことはいいことづくしじゃないですか。

森下さん:そうなんですよ。飲食店用の調理道具屋さんなどに置いててどこでも買えると思うので、下積みしている料理人の方にぜひ使ってもらいたいですね。ただ、経験のためにまずは金属でガリガリやる方もやってみてもらいたいですけど(笑)。

クックビズ世古:ガリガリやる方を経験してからの「鱗トル」ですね(笑)。ありがとうございます。他にはいかがでしょう?

もう他のものは使えない!と思うほど惚れ込んだ医療器具

森下さん:あとはピンセットですね。

森下さんが愛用している医療用ピンセットの写真

クックビズ世古:ほう、ピンセット。変わった形をしていますが調理用なんですか?

森下さん:いえ、実は「医療用」なんです。

知り合いのシェフからいただいたものなんですが、すごく特殊な形をしているんです。歯医者さん専用の、ということで聞いています。

クックビズ世古:歯医者さんが使っているものなんですね。たしかに特殊な形をしていますね。主にどういった使い方をされますか?

森下さん:主に盛り付けやハーブなどの仕分けですかね。フレンチでは繊細な盛り付けが多いんですが、この形が自分にとってすごくフィットしています。

クックビズ世古:使い心地などはいかがでしょう?

ピンセットを手にもつ森下さんの写真

森下さん:とにかくつかみやすいですし、曲がりにくい。これにしてから他のピンセットは使えなくなりましたね。

ちなみに調べてみたんですが、医療道具ってケタ違いに高いらしく2万円ぐらいするものでした(笑)。
一般的なものだと1,000円~2,000円ぐらいで買えますが、医療用のピンセットは本当におすすめです。

クックビズ世古:ピンセット1つでもそんなに使い勝手が変わってくるんですね。ありがとうございます。その他にもありますか?

時短かつ衛生的に食品を乾燥できる「食品乾燥機」

森下さん:ちょっと大きくて本体は今日持ってこれなかったんですが、お店では「食品乾燥機」はよく使ってますね。

食品乾燥機のトレイを手にもつ森下さん

クックビズ世古:食品を乾燥させる機械ですか?どのように使われているのでしょうか。

森下さん:はい。この網になっているトレイの上に食材を並べて、乾燥機の中に入れておくと、食材を乾燥させることができるんです。乾燥食品だったり、チップを作ったり。あとは生ものを乾物化して、それをミールにかけてパウダーにして使ったり、色んな使い方ができるので便利ですよ。

森下さんが愛用している、赤い本体の食品乾燥機の写真

クックビズ世古:なるほど。食品の水分をその機械の中で飛ばすことができるんですね。

森下さん:通常だと外に出して自然乾燥させることが多く、1日~2日、長いと1週間ほどかかったりしますが、この食品乾燥機だと「温度」と「時間」を設定できるので、同じ乾燥させるにしてもかなり時短にも衛生的にも安心なので重宝しています。

次に気になるのは「化学的」なあの機材

クックビズ世古:ありがとうございます。では、今は使ったことないけど今後森下さんが使ってみたい道具や機材などはありますか?

森下さん:知り合いのシェフが使っているのを見て少し気になっているのは「ガストロバック(減圧調理器)」ですね。

クックビズ世古:「減圧調理」ですか?「真空調理」とは異なるんですかね?

オンライン座談会にて森下裕介さんが楽しそうに語っている写真

森下さん:僕も詳しくはわからないんですが、真空調理は下処理をした食材を調味料と一緒にパックで真空包装して、提供時の時短が主な利用目的となります。

ただ、減圧調理はパッキング等はせず、鍋に直接食材や調味料を入れて使います。
その際に、鍋の中の空気を減圧させると食材の細胞が膨らみ、また、鍋の中の大気圧を元に戻す際に、食材の中に一気に味が浸透していく作用が働くんです。なので、短時間で食材の中まで味をしみこませることができると言われています。

クックビズ世古:そういうことですか。化学の世界ですね。こういった情報ってどのように得ることが多いですか?

森下さん:ガストロバック自体は数年前からシェフの間で話題になってましたね。あとは、自分が他店に行った際に、そのお店のシェフに「どうやって作ってるんですか?」と聞いてみて知ることが多いですね。

こういった機材を使いこなすシェフ達は、作りたい料理のイメージがあって導入していると思うのですが、自分達にはまだそんな考えにいたることもないので、すごいと思いますね。

ほかでは「月刊専門料理」や「料理王国」の特集で取り上げられているお店などを見て、「こういう機材を使うとこんな料理が作れるんだ!」と学ぶことも多いですね。

クックビズ世古:森下さん自身でも日々、まだまだ気づきが多いんですね。今回は非常におもしろいお話をありがとうございました。

森下さん:こちらこそありがとうございました!よかったんですかね、めっちゃマニアックな内容でしたけど(笑)。

クックビズ世古:いえいえ、こういった他の料理人の方が使っている・気になっている道具や機材はきっとみなさん興味があると思いますので!

オンライン座談会でクックビズの川田・中西・世古と森下 裕介さんが笑っている写真

まとめ

今回、森下さんからお聞かせいただいた、調理道具や機材。
一般消費者の自分達の生活便利グッズ的なものから、料理人世界の中での最新・トレンドの機材まで幅広くお聞かせいただきました。
過去にも、いろんな料理人の方が愛用する道具についてお話を聞かせていただきましたが、どの料理人さんも共通で愛用しているものであったり、独自性があったり非常に興味深いテーマだと感じました。

今後もぜひご期待ください。

<協力>

店名 Recette(ルセット)