
クックビズでは、飲食業界で活躍するみなさまにお声がけし、定期的な座談会を開催中。
今回は「S-1サーバーグランプリ」受賞者の3名に参加いただき、「自分が他店に食事に行った際に、どうしても気になってしまう接客・サービスとは?」をテーマにさまざまな意見・考えを聞かせていただきました。
クックビズ株式会社からは、座談会運営の世古、川田、中西が参加いたしました。

藤井 将一さん(下段左):「和酒・旬菜・心 ひょうきん顔」オーナー・S-1サーバーグランプリを運営するNPO法人「繁盛店の道」北海道地区本部長
高橋 夏穂さん(下段中央):株式会社絶好調 人財採用・人財教育担当
鈴木 志麻さん(下段右):東京レストランツファクトリー株式会社 新卒社員教育担当および店舗勤務
目次
多岐にわたる気になるポイントはさすがプロ
クックビズ世古:本日はお集まりいただきありがとうございます。
今回は「自分が他店に食事に行った際に、どうしても気になってしまう接客・サービスとは?」という点について、接客・サービスのプロはどんな部分を見ているか、色々とお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。
一同:よろしくお願いします!
クックビズ世古:それでは早速、お聞きします。普段みなさんが飲食店でお客様をおもてなししたり、スタッフ教育をしている中で、他店に食事に出かけた際、どういった所が気になりますか?
鈴木さん:私の場合、「あいさつ」を常日頃すごく大切にしていることもあるので、まず一歩お店に入った時の第一声ですね。
クックビズ世古:なるほど、入った瞬間から気になるポイントがあるわけですね。第一声というと店員さんの表情や笑顔などですか?
鈴木さん:そうですね。笑顔も重要ですが、特に「どれぐらいで来店したことに気づくのか」という部分です。お客様をお待たせすることなく、いかにスムーズに席までご案内できるか、ここがまず最初に大切だと思っています。
クックビズ世古:たしかに、お店に入った時に店員さんに気づいてもらえないと、とまどいますもんね。声の掛け方など気になる部分はありますか?
鈴木さん:そうですね。「いらっしゃいませ!」に何か一言プラスして声を掛けてくれる店員さんを見ると「お客様のことをよく見ているな」と思います。
以前、平日の20時頃に入店した際に、「今日もお仕事おつかれさまです!」と声を掛けていただいたことがあったんです。その時、私はお休みの日ではあったものの、店員さんが「平日のこの時間だから仕事帰りのお客様が多い」ということを念頭に入れながら接客していることが伝わって、うれしくなりました。
クックビズ世古:言われたことだけでなく、ちゃんとお客様をお迎えしようとする姿勢がわかるわけですね。一方でまだ仕事に慣れず、ぎこちない店員さんも対応の仕方でわかりますか?
鈴木さん:そうですね。笑顔がちょっとぎこちないなと思う店員さんがいると、そんな時はむしろ自分の中で「今日帰るまでに絶対この店員さんを笑顔にしてやるぞ!」って思って接したりもします(笑)。
クックビズ世古:そうなんですね!普段育成をしていらっしゃるので、そういった形で出てしまうんですね!藤井さんはいかがですか?
藤井さん:自分の場合は、接客というところ以外でも、常に何か自分のお店で取り入れられるものがないか360°見てますね(笑)。
クックビズ世古:全方位ですか!例えばどんな部分に目がいくのでしょう?
藤井さん:接客もそうですが、このコロナ禍でいえば、入ってすぐのアルコール消毒のお願いの書き方1つとってもそうですね。強制なのかお願いなのか…。
あとは、見送りの際のマスクの着用について。ソーシャルディスタンスをとった上ですが、マスクを外して、笑顔で見送ってくれたりする店員さんはすごく印象がいいですよね。
クックビズ世古:ウィズコロナにおいて、「接客・サービス」に対してどう取り組んでいるかは各店舗により、いろんな取り組みがありそうですね。ちなみに他にも何か気になるところはありますか?
藤井さん:店員さんが、その日のおすすめなどメニューの説明をちゃんとしてくれるかどうかだったり、料理を提供する際に、流れ作業ではなく、ちゃんとお客様の目を見て提供できているかなどは気になったりします。
自分としては、職務上、サービス向上への想いが強いあまり、どうしても気になる場合は、会計時に店長さんに伝えて帰ったりします。お店側からしたらすごくいやなお客様かもしれないですね(笑)。
クックビズ世古:いや、でもそういった部分は、私も気になります。お店としてもすごくありがたい声だと思いますよ!続いて高橋さんはいかがでしょう?
高橋さん:そうですね。私の場合は、入店時のお店の清潔感でしょうか。店内のゴミ、入口の整理整頓など、どこまで掃除が行き届いているのかが気になりますね。
クックビズ世古:お店の清潔感と、接客・サービス…、あまり関連性がなさそうに感じますが…?
高橋さん:実はけっこう関連すると思っていて、店内をきれいに保とうとしているお店は、店員さんがしっかり接客できているんです。
足を運んでくださるお客様を心から迎え入れたいという想いが、店内の清潔感に大きく反映されると思います。汚れたお店だとキラキラ働くことはできません。良い接客をするための環境を作っているお店は、店員さんの接客にも表れますね。
クックビズ世古:なるほど。たしかに自分がこれまで行ったお店を思い返してみると、「きれいな店内」と「丁寧な接客」はリンクしている気がします。お店・店員さんのそういった想いが反映されているんですね。
店員さんの「動き」という点ではどうですか?
高橋さん:アイコンタクトですかね。「注文したいな」と思ったときに、すぐにこちらに気づいてくれたりすると、店員さんがちゃんと周りを見ながらお仕事できているんだなと思いますね。
クックビズ世古:いわゆる「気づき」ですね。声を掛ける前に店員さんがこちらの伝えたいことを察してもらえるとすごくうれしくなります。
高橋さん:すべて「気づき」ですね。お箸を落としてしまった時、取り皿を交換してほしい時…声を掛けなくてもテーブルの様子を見て行動できる人は、お客様の気持ちに気づける人だと思います。
クックビズ世古:ありがとうございます。みなさん、さすが細かい部分まで見ていらっしゃるんですね。
こちらの想像を超えた「気づき」が感動につながる
クックビズ世古:少しテーマを変えて、みなさんがお店にいって「この接客はよかった!感動した!」といったものをお聞かせいただけますでしょうか。鈴木さん、いかがでしょう?
鈴木さん:2年ほど前ですかね。息子の誕生日のお祝いをするのにランチにいったお店での出来事なのですが、その時は特にお店の方に息子の誕生日のことはお伝えせず、私たちだけで食事しながらお祝いしていたんです。
食事も終わりかけたころに、店員さんが「お誕生日おめでとうございます!」と子供用の小さなデザートプレートを運んできてくださって。最初はテーブルを間違ったのかな?と思い、確認したんです。
クックビズ世古:間違いではなかったんですか?
鈴木さん:はい、たしかに私たちのテーブルとのこと。ただ、私たちは事前にお伝えしていたわけでもなく、その時に注文してもいないので不思議に思っていたんです。
よくよくお話を聞いてみると「お誕生日おめでとうという声が聞こえてきたので、お祝いさせていただこうと思いましてご用意させていただきました。」とのこと。
クックビズ世古:なんと、お店側が様子を知って用意してくれたんですか!
鈴木さん:そうだったんです。息子もですが、その場にいたみんなが「すごいねー」って感動しましたね。さきほどの高橋さんのお話ではないですが、店員さんがしっかりお客様のことを見ていて、行動できているお店なんだな、と感動したことを覚えていますね。
クックビズ世古:それはたしかにうれしいですね。ある意味、本当のサプライズ!そういったことってずっと覚えていますもんね。高橋さんはいかがでしょう?
高橋さん:私がいる店舗では、新しく入社したスタッフを連れて、勉強もかねて定期的に行くお店があるんです。そこのお店はオープンキッチンなんですが、中で調理している料理人さんと、サービスの店員さん、そしてお客様も巻き込んでいつもトークしているんですね。
高橋さん:その日のおすすめのメニューなんかは、キッチンまで聞こえるぐらいの声でお客様におすすめしているんですが、それを厨房の料理人さんもしっかり聞いていて、お客様が料理を注文し、オーダーを通したまさにその瞬間に料理が出てきたりするんです(笑)。
クックビズ世古:オーダー通した瞬間に!それは速すぎます(笑)。
高橋さん:ですよね(笑)。 私たちも接客を行う上で、お客様の一歩先をいくサービスをという意識はありますが、そのお店は私たちの想像をはるかに超えるサービスを提供しているといつも感じます。お客様一人ひとりをちゃんと覚えていてくれることもあり、それも相まって、いつも満席ですね。
クックビズ世古:お客様と店員さんが、親しい関わりになっているんですね。想像を超える楽しませ方、もはやエンターテインメントのようです。藤井さんはお二人のお話を受けていかがでしょうか?
藤井さん:飲食業界に入った時には知らないことばかりだったこともあり、驚き・感動の連続でした。色んな店を見て学んで取り入れてきましたが、最近ではあまり自分の中ではないですね。
飲食店のサービスにおける「究極の形」はもしかしたら
藤井さん:ただ、いまひとつ考えていることがありまして。
クックビズ世古:ほう、なんでしょうか。
藤井さん:ナイト系のお店って、トイレに行って出てくるとおしぼりが出てくるじゃないですか。過去、ふらっと入ったいわゆる普通の居酒屋さんで、同様にトイレから出てきた時におしぼりを出してくれたんですね。店員さんもお客様も大学生ぐらいの子達でにぎわっているような居酒屋さんで、このサービスがあった時に「こういうのもありかもしれないな」と思いましたね。
よくも悪くも居酒屋の接客ってこんな感じというのがあると思うんですが、自分の場合はそれを超えた接客・サービスを提供していきたいと考えています。特別感を感じてもらえるような接客を追及していきたいですね。
クックビズ世古:なるほど。お客様の想像を超える接客・サービス、たしかにお客様側からすると印象に残るかもしれません。
藤井さん:逆に、ちょっと話がずれるかもしれませんが、オープンしてから数十年ぐらい続いてる小さな商店街の飲食店ってあるじゃないですか。店主がずっと厨房の中のイスに座ってテレビの野球中継見てるような感じの。
で、常連のお客様が、自分で飲みたいものがあったら自分で瓶ビール取りに行って、伝票つけて…。お客様が料理の注文したら店主がサーッと作って、またイスに座ってテレビ見てる、みたいな。
クックビズ世古:ありますね。ちょっと怖い店主だけど、何十年も地元に根づいて愛されているような感じのお店。
藤井さん:そうですそうです。あれってある意味「サービスの究極の形」だなと思いますよね(笑)。お客様はそのお店に対して、丁寧な接客とか、行き届いたサービスを期待しているのではなく、その空間が好きで、心地よくて通い続けるわけなので。
クックビズ世古:地域に密着できてお客様との関係性も築けているからこその形ですね。
藤井さん:この「究極の形」もいつかは取り入れてみたいですけどね(笑)。
やはり、お客様によって「心地よい接客・サービス」というものが異なって当然だと思います。だから自分達がいいと思う接客・サービスを行うのも大事ですが、来店いただくお客様が自分のお店にどういった心地良さを求めて来店いただいたのか?ということにどう気づけるかが必要なんじゃないかと思います。
クックビズ世古:「お店がいいと思う接客・サービス」が必ずしもお客様が求めている「心地よい接客・サービス」とはイコールではないということですね。たしかに、店員さんとたくさん話をしたい時もあれば、仲間内だけで食事したい時など、その時の気分や目的によっても異なってきますもんね。
そこを汲み取っていただけるようになるとお客様側からすると「このお店にまた来たいな」という気持ちになるのかもしれません。
本日も貴重なお話、ありがとうございました!
<座談会参加者紹介>
■藤井 将一さん
2012年7月、株式会社ラフダイニングにアルバイトとして入社。約3ヶ月で本店店長、その後、5店舗での店長を経験する。第13回「S-1サーバーグランプリ」北海道地区代表となり、全国大会優勝。
2018年12月、和食業態で独立し、札幌市南区にある「和酒・旬菜・心 ひょうきん顔」のオーナーとなる。「S-1サーバーグランプリ」を運営しているNPO法⼈「繁盛店の道」北海道地区本部長を務め、講演活動も行っており、2020年9月の外食ビジネスウィークではセミナー講師としても登壇。
■鈴木 志麻さん
大手ファストフード企業にて10年勤務し、人材育成に携わった後、2017年8月、東京レストランツファクトリー株式会社にアルバイト入社。2019年3月の第14回「S-1サーバーグランプリ」において、審査員特別賞を受賞。2019年4月、チーフホスピタリティートレーナーに就任。現在は新卒社員の教育を担当しながら、店舗業務も行っている。
■高橋 夏穂さん
2011年、服部栄養専門学校卒業後、株式会社絶好調に入社。入社2年目の21歳で、立候補により店長に就任。新店立ち上げから繁盛店へと成長させる。
2019年3月開催の第14回「S-1サーバーグランプリ」において、関東代表となり、最優秀賞を獲得。現在は入社9年目、社内初となる人財育成統括のポジションに就任し、人財採用や人財教育を担当する。
まとめ
今回、「S-1サーバーグランプリ」で受賞された方々ということで、「接客・サービス」に関して色々とお話を聞かせていただきましたが、つい見てしまう範囲の広さとその細かさにすごく驚かされました。
それと同時に接客・サービスにおける「気づき」は、来店したお客様が今後、そのお店のリピーターやファンになるためには欠かせないものであることも改めて感じました。
また今後も、深いお話をお聞かせいただけることを楽しみにしております!
<協力>
店名 | 和酒・旬菜・心 ひょうきん顔 |
店名 | 東京レストランツファクトリー株式会社 |
店名 | 株式会社絶好調 |