飲食店で接客している様子

クックビズでは、飲食業界で活躍する方とのオンライン座談会を定期的に開催しています。
今回のテーマは『他店でつい見てしまう接客・サービス』について。飲食業界のサービス業務日本一を選ぶ大会「S1サーバーグランプリ」で受賞した名サーバーと、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」受賞のシェフによる、優しくも厳しい目で「気になる接客」についてお話をいただきました。

今をときめくプロたちの失敗談もとびだすなど、貴重なトークが満載の会となりました。接客のスペシャリスト、一人前のサービススタッフを目指す方は必見です!

座談会の様子

関 智也さん(中段中央):和食炉端「湯沢釜蔵」(新潟)、荘田 洋介さん(中段・右):フレンチ「ヴェール・パール・ナオミ オオガキ」(神奈川)、荒川 その美さん(下段中央):和食居酒屋「空」およびカフェほか(愛知)

ファーストコンタクト!まず接客のどこをチェックする?!

クックビズ世古:本日は、「S1サーバーグランプリ」に出場経験もある関さん(第13回・北信越地区代表)、荒川さん(第13回・東海地区代表:全国大会準優勝)という接客のプロの方と、横浜市でフレンチの名店を任されている荘田さんに、スバリ「他店でつい見てしまう接客・サービス」についてお聞きしていきたいと思います。

まずは関さん、接客のプロとして、他店に行った時につい見てしまうところはどんなところでしょう。

関さん:そうですね。まず気になるのはスタッフの表情ですね。当店にも高校生がたくさん勤務していますので、特に若い方、学生アルバイトの表情が気になります。

関さんが話しているアップの写真

クックビズ世古:若い方の表情ですか?

関さん:はい。一人ひとり笑顔で接客してほしい。でもそれは自分自身が充実した仕事をしていないとそういう表情にはなりにくいんですよ。

クックビズ世古:充実していない方って、わかるんですか?

関さん:やっぱりわかっちゃいますね。

クックビズ世古:荒川さんは、今の話を聞いていかがですか?

荒川さん:私も他店を利用する時、接客している方の表情や、お客様の方に心が向いているのかというところは、無意識に見てしまいますね。若い方が、自主性を持ってノビノビ働いているお店は上司が上手に教育されていると感じますね。活気もありますよ。逆に若いスタッフが萎縮しているお店もすぐわかります…。

一同:あぁ…(苦笑)。

荒川さん:意識的にしてしまうのは、「今日のおすすめは?」の質問。これを聞いてパッと答えていただけると「あぁ、ここは教育も行き届いてるし、厨房とホールの連携が取れている店だな」と感じますね。

荒川さんが話しているアップの写真

クックビズ世古:なるほど。料理人の立場として、荘田さんはいかがですか?

荘田さん:私はふだんオープンキッチンの厨房にいますので、ホールの様子はいつも見ています。「今日のおすすめは?」と聞かれた時の大事なポイントは、『わかりやすく伝える』ことですね。
スタッフが長々と話したり、コース料理なのに、メインディッシュではなく、付け合わせの説明で終わったり…。(なんでそこ!)と心の中で突っ込みをいれることも(笑)。

でも一生懸命に自分の言葉で話す努力をしていると、お客様も聞いてくれるものです。

クックビズ世古:では所作やふるまいについて、気になることは?

関さん:私は、旅館業界を経てこの業界に入ったので、目につく所作はあります。例えば、いま働いている居酒屋で、スタッフがお客様をお座敷席にご案内した後に、立ったままオーダーをとったりしていると、「そこは座ろうね」と思ってしまいます。
求めすぎないようにしようと思っているんですけれどね。

荒川さん・荘田さん:あぁ、わかります。

荘田さんが話してるアップの写真

人のフリみて我がフリ直そう!日本一のサーバー&名シェフの失敗談

クックビズ世古:みなさんも失敗の経験はあると思うのですが、いかがですか?

荒川さん:ありますよ。お客様の誕生日やお祝いの席で、スタッフがサプライズの演出をしている店がありますよね。当店でもそれを取り入れたんですが、それで大失敗をしたことがあります。

お客様の目の前に意気揚々と「おめでとうございます!」と元気に登場したのはいいですが、お客様がシャイな方で微妙な空気に。
でも後輩が歌い始めたんで、もう引っ込みがつかなくて。お客様がどんどん引いている感じが伝わってきて…。でも途中で歌うのを止めるわけにもいかず。
芸人さんがスベるというのは、こういうことだなと感じました(苦笑)。

手をほほにあて話している荒川さんの写真

クックビズ世古:光景が思い浮かびます。双方、地獄ですね(笑)。

荒川さん:もう完全に事故ですよ(笑)。それからはご予約の際に、お祝いの席だとお聞きしたら、「演出はどんな雰囲気を望まれるのか」「人柄」などをお聞きするようにしています。

関さん:私も経験があります。常連さんとは、「いつもどうも!」「いや~、また来たよ」なんてあいさつを交わすんですが、ある時、常連さんがいらっしゃって、普段どおり「いつもどうも~」と言ったら、「状況をみて!」と怒られました。
お連れ様が女性の方だったんですよ。

クックビズ世古:“いつも…”とは言ってはいけなかったんですね。
荘田さんは料理人ですが、接客で失敗なんてあるんでしょうか。

荘田さん:私はお会計で大きな失敗したことがあります。
ある時、何度かご来店いただいているリピーターの方が、その方のお客様を伴って5~6人で来店されました。で、同伴のお客様がトイレで席を立ったついでに、「お会計を…」とおっしゃいましたので対応したんです。
そしたらホストは同伴の方ではなく、リピーターの方で、「勝手にお客様にごちそうしてもらっていたなんてあり得ないっ!!!」と相当怒られましたね。

クックビズ世古:それは難しいですね。複数のご来店で、誰がホストなのかを見極められるでしょうか。

荘田さん:それからお会計は特に気をつかっていますね。

ファーストコンタクトで知っておきたい接客情報はこれ!

クックビズ世古:みなさん、大ベテランでも失敗談ってあるんですね。
今の話でいえば、失敗しないためには、やはり情報が大切だということになると思うのですが、みなさん、情報はどうやってキャッチしていますか?ファンづくりにも役立ちそうですね。

すこし右向きな関さんの写真

関さん:私は、新潟の越後湯沢という温泉とスキーが目玉の観光地で居酒屋を運営しています。観光地って、一見さんが多く、お住まいが遠方にあるので、情報のキャッチやリピーター作りが難しいんですよ。私は手書きの顧客ノートをつけていますね。
お名前、来店日時、オーダー内容のほか出身地など。あとはお好みのお酒ほか、わかる範囲で書いています。

荒川さん:私も手書きで顧客ノートを13~14年つけています。あとはmixiも活用。
でも9月から思い切って大改革をしました。姉妹店も増えてきたので、自分だけでなく、全スタッフに情報を共有できるようにしたかったんです。

クックビズ世古:どんなシステムですか?

荒川さん:iPadで「TORETA(トレタ)」という予約システムで管理しています。あとmixiを変わらず利用。
商品知識を共有したり、お客様の情報…例えば、明日予約が入っているお客様が、いつからご利用いただいている方で、前回どんなお酒や料理をオーダーして、何が好みだったのかなどを入力してみんなに共有します。

mixiの画面

mixiでメニュー内容や商品知識を共有

クックビズ世古:来店された時に、覚えてもらって対応してもらうとお客様もうれしいでしょうね。

荒川さん:そうですね。また、その日出勤した全スタッフが、まかないの時間などに、mixiに日報を入力。お客様の感想やご指摘などをみんなで共有することで、全体の接客知識がアップしたり、クレームを減らすことができます。

クックビズ世古:すごいですね。店舗数が増えてくると、全員共有が大事になってくるんですね。お客様の信頼や安心感につながりますね。
ではお客様との距離を縮めるために必要な最初の情報ってなんでしょうか。

関さん:「今日、なぜ当店を、このメンバーでご利用になったのか」ですね。

荒川さん:私も同じく。その情報があれば、幹事さんやVIPの方へのあいさつに始まり、それに寄せたおもてなしができます。

笑顔の荒川さんの写真

荘田さん:そういう情報って、帰りぎわやお会計の時に話してくださる方が多いんですよ。「先に言ってくだされば…」と思うこともしばしば(苦笑)。
横浜は意外にヨコのつながりが濃いんですよ。「○○さんから、ここを教えてもらったので」と言われることも多い。だから私は、はじめにさりげなく来店理由を聞くほうですね。

料理を活かすも殺すも、接客サービスの力!

クックビズ世古:今日は、『接客・サービス』について話しましたが、いかがでしたか?

関さん:そうですね。失敗した話が出ましたが、失敗談って、みんな持っていますよね。今日の話でもあるように、お客様にとって良かれと思ってしたことが失敗につながることもあります。
今、第一線で活躍している方々は、その数々の失敗から学び、糧にしてきたと思うんですよね。だから失敗を若いスタッフに共有していくのは有意義なんじゃないかと思いますね。

クックビズ世古:「失敗から得た学び」は大事ですね。荘田さんはいかがですか?

荘田さん:私は料理人だからこそ思うのですが、サービス業務ってとても大事です。
日本の専門学校には、製菓や調理の専門学校はありますが、サービスの専門学校はありません。ヨーロッパでは、サービスを学びたくて専門学校に入る方もいます。

伏目がちな荘田さんの写真

私は料理をより良くすることも、悪くすることもサービスの力だと思っています。料理が良くてもサービスが悪ければ、もうお客様は二度と足を運んではくれません。逆にそこそこの料理でも、サービスの力でお店を輝かせることもできます。

クックビズ世古:確かにそうですね。飲食業界では、ソムリエなどの職業もありますが、料理人がスポットを浴びることの方が多いかもしれません。荘田さんがおっしゃるように、今後、接客業務がもっと注目されるようになるといいですね。

今日はみなさんの体験談もお聞きでき、有意義な座談会となりました。ありがとうございます。今後も引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

<プロフィール>

■関 智也さん
和食炉端「湯沢釜蔵」店長(31歳・新潟県湯沢町)
第13回「S1サーバーグランプリ」北信越地区代表。
株式会社S・E・P INTERNATIONAL所属

■荒川 その美さん
和食居酒屋「空」およびカフェなど 統括サービスリーダー(36歳・愛知県名古屋市)
第13回「S1サーバーグランプリ」東海地区代表。全国大会準優勝。
株式会社満月所属

■荘田 洋介さん
フレンチ「ヴェール・パール・ナオミ オオガキ」店長兼料理長(35歳・神奈川県横浜市)
「RED U-35」2019年 bronze egg受賞。辻調理師専門学校卒業後、留学。研修先の当時三つ星レストランで生涯の恩師・大垣氏と出会う。帰国後、大垣氏の独立にともない、同氏の右腕として活躍。現在に至る。

まとめ

名だたる店に名シェフは欠かせない存在ですが、今回、接客サービスをテーマに座談会を開催し、いかにおもてなしの良し悪しが店の輝きに関わってくるのかを改めて感じました。
ご参加いただいた関さん、荒川さんは、飲食業界のサービス業日本一を選ぶ大会「S1サーバーグランプリ」にも出場経験のあるプロ中のプロ。名店でシェフを務める荘田さんの「料理・店を輝かせるのは、サービスの力」という言葉が印象に残りました。

これからも飲食業界を応援するコンテンツを配信していきますので、お楽しみに。

<協力>

店名 ヴェール・パール・ナオミ オオガキ
店名 株式会社S・E・P INTERNATIONAL
店名 株式会社満月