イタリアでも有名なワイナリー「GAJA(ガヤ)」の前で立っている川崎 大輔さん

クックビズでは、いま飲食業界で活躍されている方との定期的な座談会・インタビューを開催中。今回、イタリアで料理人として活躍されている川崎大輔さんに2回目のインタビュー。
前回の「イタリアの若き料理人に聞く日本と海外の飲食業界の違い」に続いて、愛用している「仕事道具」について、イタリアと日本の違いなども交えてお話を聞かせていただきました。

クックビズ株式会社からは、座談会運営の世古、川田、中西が参加いたしました。

■イタリアで活躍する川崎さんが愛用するこだわりの道具たち~全3選

  • ピンセット
  • ペティナイフ
  • パスタカッター

クックビズ世古:本日もお忙しい中ご参加いただきましてありがとうございます。今回は、プロの料理人の方が愛用している「仕事道具」についてのこだわりや、日本とイタリアで使う道具の違いなど聞かせていただければと思います。よろしくお願いします!

川崎さん:よろしくお願いします。

クックビズ世古:さて、川崎さんが普段愛用している道具、まずはどういったものがありますか?

イタリアで活躍する料理人・川崎大輔さんが愛用する調理器具の一部。上からパスタカッター、ペティナイフ、ピンセットが並んでいる写真。

川崎さん:僕が普段使っている中でも、今回はこの3つを持ってきました。パスタカッター、ペティナイフ、ピンセットです。

精密機器を扱うピンセットは本場の繊細な盛り付けにも最適!?

クックビズ世古:まず気になったピンセットからお伺いしてもいいでしょうか?料理でなかなかピンセットを使っている光景を見たことがないんですが、どういった時に使っているんですか?

川崎さん:主にパスタの盛り付けで使ってますね。日本ではあまり使わないかもしれませんが、イタリアではパスタの盛り付けにはピンセットをよく使うんです。

パスタをお皿に盛り付ける様子。日本ではトングを使って“円錐状”に盛り付けるのに対し、イタリアではピンセットとおたま(レードル)を使い、「円柱状」に盛り付ける。

特に、ミシュランの星付きレストランでは、ピンセットとおたま(レードル)を使って「円柱状」に盛り付けるのが主流で、モダンな盛り付け方とされています。

日本の場合はトングを用いることが多く、その場合、多くの盛り付けの形は“円錐状”になっているお店が多いと思います。

クックビズ世古:使う道具で盛り付けの形も変わるんですね。ピンセットというと細かい作業に特化してそうですが、そういったシーンでも使いますか?

川崎さん:そうですね。前菜やデザートなど、繊細な盛り付けの際に使っているシェフは多いと思います。和食・日本料理の料理人の方々が菜箸を使って細かな盛り付けを行う感覚に近いんだと思います。

クックビズ世古:ちなみにこのピンセットって、個人的なイメージだと工具のイメージが強いんですが、調理専用のものがあるんでしょうか?

イタリアンの料理の盛り付け風景。日本とは違い、ピンセットで繊細な盛り付けを行っている様子。

川崎さん:ありますよ!調理専用のピンセットとして調理道具屋さんにもごくごく普通に店頭で販売されています。パスタ用に使うサイズのほか、加熱した食材を返す用など、用途によって3種類ほどのサイズがあります。耐熱処理もされているので変形しにくく、重宝しています。

クックビズ世古:結構細かく種類があるんですね。お気に入りのブランドもあったりするんでしょうか?

川崎さん:僕は「Piazza(ピアッツァ)」というイタリアのブランドのピンセットを使っています。2015年ぐらいにミラノにある「Medaliani(メダリアーニ)」という調理器具専門店で、たしか15€(約1,800円)ぐらいで買ったと思います。

料理人人生を一緒に歩んできた相棒のペティナイフ

クックビズ世古:ではかれこれ5年ぐらい愛用されているんですね。続いてはペティナイフについてお聞かせください。

イタリアで活躍する料理人・川崎大輔さんのペティナイフの写真。日本の専門学校時代から10年ほど愛用。研ぎ続けてきたことで、刀の真ん中がくぼんだ形になっている。

川崎さん:こちらは大阪の辻調理師専門学校に通ってた際に購入したもので、もう10年ぐらい使っています。一般的なペティナイフだと15cmぐらいのサイズが主流ですが、僕が使っているサイズは8cmぐらいの小さめを使っています。

クックビズ世古:一般的なサイズよりかなり小ぶりですが、どういった点がいいのでしょうか。

川崎さん:やはり使い勝手の面でしょうか。握って刃先までの感覚が指とほぼ同じになるので、細かい作業をする際に非常に使いやすいです。厨房では、ものすごい量の玉ねぎの芯をくりぬいたり、野菜のヘタを取ったりするんですが、作業がとてもしやすいので気に入っています。同僚は一般的なサイズを使っているんですが、ある時、貸してあげたらその彼も「すごく使いやすかった!」と話していましたね。

クックビズ世古:しかし専門学校の頃からずっと使っているということは、かなり長く愛用されていますよね。

川崎さん:そうですね。僕は包丁を週に1回研いでいるので、購入時に比べてナイフの腹の部分がくぼんでいますが、そういう部分も含めて自分の歴史が積み重なっているような感じもするので愛着が湧いている道具です。

切れ味が命。パスタカッターにもこだわりあり

クックビズ世古:ありがとうございます。では3つ目のパスタカッター。こちらはいかがでしょう。

川崎さん︓これは昨年フィレンツェで買いました。安いものだとだいたい8€(約1,000円)ぐらいからありますが、こちらはちょっとお⾼めの50€(約6,500円)ほどした気がします。

5年前に買った8€のものと比べると、ものすごく切れ味が鋭く、昨年フィレンツェのレストランでパスタを担当した時に、特にラビオリなどのショートパスタを作る際は欠かせない道具でしたね。やはり切れ味が悪いと生地の下まで刃が通らず、ミシン目のようになってしまい、手でちぎることになります。そうすると見た目もいびつになってしまうんです。その点、このパスタカッターはしっかり刃が通るのですごく重宝していますね。

クックビズ世古:なるほど。道具1つで、見た目も仕上がりも大きく変わってくるんですね。ありがとうございます。

イタリアの料理人からの信頼も厚い“Made in Japan”

クックビズ世古:ちなみにイタリアでは、やはりイタリア製の調理道具が多く使われているんでしょうか?

川崎さん:いえ、日本製の包丁が実は人気があるんです。今のお店には5名ほど調理スタッフがいて、僕が毎週包丁を研ぐついでに、全員のものを一緒に研いであげることがあるんですが、その時に5人が5人とも、みんな日本製の包丁を使っていたんです(笑)。

クックビズ世古:それはすごいですね。日本製はイタリアの料理人の方からも評価が高いということでしょうか。

川崎さん:だと思います。“Made in Japan”ということがブランドのようになっているからではないでしょうか。

クックビズ世古:それは日本人としては誇らしい部分ですね。最後にいま川崎さんが気になっている調理器具などあればうかがいたいのですが何かありますか?

川崎さん:パスタマシーンですかね。日本にいる時は手動式が主流だったんですが、イタリアに来て思ったのが、パスタマシーンが電動式なんですよ。

クックビズ世古:ほほう。それはやはり効率化といった部分なんでしょうか?

川崎さん:それもあると思いますが、手動だと練り込んだ生地を伸ばす時に、ある程度水分が含まれていないと伸ばせない、もしくは生地に余分なストレスがかかりボロボロになるんです。

クックビズ世古:そうなんですね。

川崎さん:それが電動だと機械の力で伸ばすために、最小限の水分量で伸ばすことが可能なんです。またパスタ生地は、一般的に小麦粉+全卵 or 水が主流なんですが、今、僕が住んでいるピエモンテ州という地域では、卵黄しか入れないパスタがあります。

となると、より生地にコシがでて、伸ばす際に強い力が必要になります。そういった理由で僕の住んでいる地域のシェフ達は、電動のパスタマシンを使っている方が多いんです。

クックビズ世古:ほほう!手動と電動ではパスタの仕上がりにも大きく影響するんですね!すごく興味深いお話をありがとうございました。

川崎さん:ありがとうございました。

<川崎 大輔さんプロフィール>

川崎 大輔さんの調理している様子

北イタリアのピエモンテ州在住。白トリュフで有名なアルバ近郊にある人口300人ほどの小さな村・セッラヴァッレ・ランゲにあるトラットリア「La Coccinella(ラ・コッチネッラ)」で現在、料理人として前菜とデザートを担当。2018年「ワールド・パスタ・マスターズ」(※)ファイナリスト。

(※)クックビズ総研「パスタ界のW杯日本代表が決定!「ワールド・パスタ・マスターズ 2018」日本予選」参照

まとめ

今回、川崎さんにはご自身が愛用する調理器具や、気になる道具についてお聞かせいただきましたが、話の随所にはイタリアと日本での違いなども垣間見えて、非常に興味深い内容となりました。
また、日本で作られた包丁が遠く海を渡り、イタリアのレストランで活躍しているとのこと、日本で生活している私たちも何か誇らしい気持ちになった、そんなインタビューでした。
今後はまた日本と海外の飲食業界の違い等も含めてお話を聞かせていただけたら、またこちらでご紹介させていただきますね!


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