オンライン座談会の様子

クックビズでは、「飲食業界が好きでこれからもこの業界を盛り上げていきたい!」という想いを持った人といっしょに、さらに成長、発展していきたいと考えています。
特に新型コロナウィルスが感染拡大する中、同じ業界で働く人が何を考え、どんな取り組みをしているのか…。こんな時だからこそ情報を共有しあって、より強い業界にしていきたいですね。
今回は、「S-1サーバーグランプリ」の受賞者と、日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」受賞のシェフにお集まりいただき、座談会を開催。活躍するエリアも、北は新潟から南は大分まで日本各地から飲食人4名が参加。その模様をお伝えします。

座談会参加者紹介

■荘田 洋介さん

黒の制服姿の荘田 洋介さんの写真

35歳。神奈川県横浜市・フレンチ「ヴェール・パール・ナオミ オオガキ」店長兼料理長
「RED U-35」2019年 bronze egg受賞。辻調理師専門学校卒業後、留学。研修先の当時三つ星レストランで生涯の恩師・大垣氏と出会う。帰国後、大垣氏の独立にともない、同氏の右腕として活躍。現在に至る。

■関 智也さん

お酒をお盆に乗せて運んでいる関 智也さんの写真

31歳。新潟県・和食炉端「湯沢釜蔵」店長
第13回「S-1サーバーグランプリ」北信越地区代表。
株式会社S・E・P INTERNATIONAL所属

■花苑 麗さん

マイクを片手に持つ花苑 麗さんの写真

25歳。大分県・もつ鍋炉端の店「陽はまたのぼる 竹田はなれ店」「フルーツパーラー 陽はまたのぼる」統括店長
第14回「S-1サーバーグランプリ」九州地区代表となり、全国大会準優勝。2014年「居酒屋甲子園」最優秀店長受賞。
WOODHOUSE株式会社所属

■荒川 その美さん

メーカーズマークを拭く荒川 その美さんの写真

36歳。愛知県名古屋市・和食居酒屋「空」およびカフェなど5店舗のサービスリーダー
第13回「S-1サーバーグランプリ」東海地区代表。全国大会準優勝。
株式会社満月所属

クックビズ株式会社からは、座談会運営の世古、川田、中西、杉谷が参加いたしました。

飲食業をめざしたきっかけ

クックビズ世古:本日はお集まりいただきありがとうございます。今回は、フレンチの料理人、居酒屋のサービスリーダー、統括店長など、さまざまな職業の方にお集まりいただきました。いろんな意見や声を聞かせていただき、皆さまも情報を仕入れてお持ち帰りいただければと思っています。

ではさっそくですが、まず飲食業界に入ったきっかけを教えてください。

荘田さん:私が飲食業界をめざすようになったのは、中学生の頃からですね。母の手伝いでキッチンに立つことが多くて、卒業文集ではすでに将来の夢は料理人と書いていました。フレンチを一生の仕事にしようと思ったのは、留学先のフランスで現在の「ヴェール・パール・ナオミ オオガキ」のオーナーに出会ったこと。これが大きかったですね。

関さん:私は、「生涯のあいだに世界中のいろんな人に会いたい。その近道が飲食業界だ」と思ったのがきっかけ。最初は旅館の仲居として5年間勤務。お客様と接するうちに、もっと身近に目の前の人を楽しませたいと居酒屋業態に転職しました。

花苑さん:うちは家が裕福ではなかったので早く親孝行がしたかった!バイトで入った居酒屋が飲食業界のスタート。そしたら入っていきなり、お客様に「あなたでなく、かわいい女の子をテーブル担当にしてくれ」といわれ、悔しくて泣いて帰りました。
それから見返すつもりで純粋に目の前のお客様に喜んでいただける接客を追求。今に至ります(笑)。

クックビズ世古:アルバイト時代の苦い経験が自分を奮い立たせて、それをバネしてがんばったんですね。

花苑さん:そうですね。サービスは人間力=人間形成の場だと思っています。今の会社、WOODHOUSE株式会社への入社も、第9回「居酒屋甲子園」(※)で優勝した店と知り、この店で働きたいと思ったんです。
※「居酒屋甲子園」=“居酒屋から日本を元気にしたい”という想いを持つ全国の同志により開催。外食業界に働く人がより誇りを持ち、学びを共有できる場を提供する大会

荒川さん:私は、皆さんのような夢や目標を持てずに、学生時代を過ごしました。唯一、家庭科が得意だったので、服飾に興味を持ちアパレルから社会人スタート。それが異動でドッグカフェで勤務することに…。ワンちゃんの服とかも販売してはいましたが、それが飲食業界に入ったきっかけです。

そこでは、スイーツなどの調理も行っていました。だから、今の株式会社満月に転職したときは、スイーツ系の調理職で入社したんです。でも働くうちに、社長からの「あなたはサービスのほうが向いているよ」というアドバイスで今に至ります。

あれから10年以上経ちましたが、やっと最近になって、楽しいなと思えるようになりました(笑)。辛いこともいろいろありましたが、それは充実した仕事ができるようになるまでの伏線だったのかなと、今となっては思えます。

クックビズ世古:サービスの原点は、アパレルの販売だったんですね。調理職を経て、またサービス業務に戻ってきたという…。皆さま、いろんなきっかけがありますね。
一通りこれまでのお話を聞かせていただいたところで、次の話題に行きたいと思います。

飲食人が思うウィズコロナで変わったこと

クックビズ世古:いま、飲食業界では、コロナの影響で生活や働き方に大きな変化が出ていると思います。業界を取り巻く環境は大きくダメージを受けましたが、どのように変化したでしょうか。

荘田さん:まぁ、集客は下がりましたよ。ワインもオーダーされなくなったのが痛かったですね。これまでランチはしていなかったんですが、テイクアウトとともにスタートさせました。悩みは、朝から晩までの長時間労働なのに利益がそれほど上がらないこと。見合わないなあと。

クックビズ世古:ランチやテイクアウトで貴店を知ったお客様が、ディナーにやってくることは?

荘田さん:ほんの少しですね。ただ良いこともあって、ランチでは、これまでのメニューにないものにトライ!思い切って楽しむことにしたんです。そしたら…。

クックビズ世古:そしたら…?

荘田さん:凝りすぎて仕込み量がハンパない手間と量に!!!(泣)

(一同:笑)

クックビズ世古:いろいろご苦労がありますよね。関さんは?

関さん:そうですね、当店は約4カ月店を閉めることになったんです。系列のお店で社員のみ勤務。4月からテイクアウトをスタートさせました。
ただ「お店に来れなくても、お店と同じ味を届けたい」とスタッフみんなが思っていました。直接のおもてなしはできなくても、何か少しでも当店の心意気を感じながら食事をしていただきたいと。だから食材にはワンランク上のものを使い、付加価値をつけて販売しました。

クックビズ世古:なるほど、いろんな工夫がありますね。花苑さんはいかがですか?

花苑さん:大分県ではコロナ感染リスクの第一波が落ち着いた後、街はけっこうな賑わいを取り戻していたんです。県内では感染者もゼロが続いていましたし。
ですが、7月の大分県豪雨災害でピタリと客足が止まりました。一番難しかったのは、お店が暇なのでスタッフのモチベーションを維持すること。そしてそういうときに限ってスタッフ間のトラブルも。

ただ当社ではドミナント戦略を行っており、単価がそこそこ高い大箱の店は壊滅的でも、近隣の店には客が戻ってきてたりするので、そこへスタッフをヘルプで入れるなどして回避。

そして、こんなときだからこそ、弊社ではじっと待つ姿勢をとりました。「コレだ!」と思う戦略が見つかれば、それに集中していこうと。それが「フルーツパーラー」の出店です。
8月に、果物を使ったサンドイッチなどのフルーツパーラーを開店させましたが、おかげさまで、いい感じで軌道にのってきています。テイクアウト中心の店です。これがまさに「コレだ!」という感じ(笑)。

ニュースで流れているような都会のコロナの状況や飲食店の対策は、大分など地方にはあてはまらないことも多いです。コロナ禍での「大分のコレだ!」を見出すまでパワーがいりました。

クックビズ世古:コロナに加えて、この夏は豪雨災害もありました。大変なご苦労だったことでしょう。店舗の自粛やスタッフの稼働など、いろんな変化と対策をお聞きしましたが、荒川さんはいかがでしょうか。

荒川さん:株式会社満月は社員12~13人のこじんまりした会社です。社長から全スタッフに「最悪のことも考えなければいけない」と伝えられたときは、なんともいえない気持ちでしたね。
家族を養わなければならないスタッフもいますし…。しかし、先の見通しが立たない中、最悪のことも念頭におきつつも、みんな残りました。
会社は27年以上、地域に愛され、お客様に育ててもらい、ここまでやってきました。だから今、自分たちの仕事の姿勢が試されていると思っています。

愛知県も県独自の緊急事態宣言が出されるなど、非日常の暮らしが続きましたが、そうなるとお客様って「変わらないもの」「変わらない安心できる場所」を求めていらっしゃる…。

「変わらないサービス」
「変わらない美味しい料理」

お客様が求める「変わらないもの」を守り続けるために、私たちは変わり続け、成長し続け、考え続けることが大切だということを、今強く実感しています。

荘田さん:そうですね。「変わらないもの」を提供し続けることの大切さは、私も共感します。また「安心」も考えていかないといけない。当店でもテイクアウトでは、店と変わらず、家庭でもおいしく召し上がってほしいと真空パック包装にするなど工夫を続けています。

クックビズ世古:なるほど。

荘田さん:コロナの感染拡大が続く中、今後、料理レシピを外に発信していきたいとも考えるようになりました。それまではご来店いただくお客様に、料理のほんのちょっとした工夫や手順をお伝えすることも多く、とても喜ばれていました。まぁ料理人としては「当たり前」の工夫だったりするんですけど。

しかしコロナの影響で、それも状況によって叶わない今、料理教室という感じなのか…まだ不確定ですが、より多くの人に新しい形で「変わらないサービス」として伝えていければと思います。

クックビズ世古:ありがとうございます。サービスのあり方、料理の提供の仕方など、変わらないものをお客様に届けるために行動されている様子が伝わってきました。
今日は、いろんなお話をお聞かせいただき、長時間ありがとうございました。

まとめ

新型コロナウィルスの感染拡大が続く今、非日常だからこそ、人はいつもと同じものを求めたくなる…とのこと。とても印象的でした。
コロナ禍でこれまでの常識が常識でなくなっていく中、それぞれ工夫をしていらっしゃる様子が伝わってきました。

今回、特に東北から関東、中部、九州と、日本各地で活躍される飲食業界の方とお話ができました。今後、クックビズでは、定期的な座談会を開催し、飲食業界で働く皆さまからアイデアなどいただきながら、得た学びを広くお伝えしていきます。
次回もお楽しみに~♪

<協力>

店名 ヴェール・パール・ナオミ オオガキ
店名 株式会社S・E・P INTERNATIONAL
店名 WOODHOUSE株式会社
店名 株式会社満月