オンライン座談会の様子

クックビズでは、飲食業界で活躍するみなさまにお声がけし、定期的な座談会を行っております。
東京や横浜、京都など都市部で活躍している日本料理・中華・イタリアンの料理人やバリスタなどバラエティ豊かなメンバーにさまざまなお話を聞かせていただきましたのでその一部をご紹介いたします。

座談会参加者紹介

■浅賀 直斗さん

「サッカパウ」の店内でカウンターの向こうでポーズを決めるエプロン姿の浅賀直人シェフ

2013年より九段下の「トルッキオ」の林シェフの下で修業を開始。2016年には「SALONE2007」(横浜)や「バカリ ダ ポルタ ポルテーゼ」(渋谷)などを経て、2018年より「ビオディナミコ」(渋谷)でスーシェフに就任。現在は六本木の「サッカパウ」のシェフを務める。2019年には「パスタ・ワールド・チャンピオンシップ2019」にも出場を果たす。

■細田 隆広さん

コックコート姿でピースをしている細田 隆広さんの写真

日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」において、2019年度のbronze eggを受賞。中国料理を専門に、「和魂漢菜」を自身の料理スタイルとして現在は、東京にある「hyatt regency tokyo」内の「中国料理 翡翠宮」にて腕を振るう。

■酒井 研野さん

コックコート姿の酒井 研野さんの写真

「RED U-35」2019のbronze egg受賞者。2009年に京都の老舗料亭「菊乃井 本店」で勤務。2017年には「菊乃井 無碍山房」の立ち上げに伴い、料理長に就任。その後、ニューヨークの「Shoji at 69 Leonard Street」、京都の「LURRA°」を経て、現在は中華料理「京、静華」でその腕を振るっています。

■成田 陽平さん

京都の料亭「菊乃井」の前でコック服を着て笑顔で立っている成田陽平さん

東京・西麻布の「ル・ブルギニオン」を経て、25歳でフランスに渡る。「ル・ジャルダン・デ・サンス」(モンペリエ)や「アラン・デュカス・オ・プラザ・アテネ」(パリ)で経験を積み、2013年の帰国後は京都の老舗料亭「菊乃井 本店」に勤務。
「RED U-35」2016にて準グランプリ受賞、「RED U-35」2019において、準グランプリ&gold eggを受賞。

■加藤 由希奈さん

カウンターで制服姿でトロフィを手に笑顔の加藤由希奈さんの写真

2016年モンテ物産主催の「KIMBO バリスタ競技会2016」、2017年度「バリスタグランプリ」で優勝。現在は自身でコーヒー豆を取り扱うECサイト「coffee and spice.」の立ち上げ・運営とともに、表参道にあるコーヒー豆店に勤務。来年にはもう1店舗をオープン予定。

飲食業界にいく!と決めたきっかけは?

クックビズ世古:本日はみなさま、突然お声がけさせていただいたにも関わらずオンライン座談会にお集まりいただきありがとうございます。飲食業界で活躍されるみなさんが今、思うこと・考えることをいろいろおうかがいさせていただきたいと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

まずはあらためて飲食業界に入ったきっかけからそれぞれお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。

成田さん:小学生のころ、家のすぐ隣にお蕎麦屋さんができたんです。そこの店主が、東京で修業し、その後、ニューヨークで活躍して、自分の家の近くにお店を出したことを知り、単純に「かっこいいな」と思ったのが始まりですかね。自分が高校にいっても海外で活躍したいという想いはずっとありました。その時に「食」という道なら自分もがんばればチャンスがあるんじゃないかと閃いて、料理の道に進むことを決意しました。その後、20歳で東京のフレンチのお店で4年修業し、フランスでも2年間経験を積むことができました。そのころに日本料理との出会いがあり、いまのお店に至ります。

浅賀さん:自分の場合、子供のころから父親が和食の料理人をやっていたんですが、スポーツをやっていたこともあり、整体師の学校を出て一度は整体師の道に進んだものの合わずに辞めてしまったんです。その当時テレビに出て活躍しているイタリアンの落合シェフや片岡シェフの姿を見て、イタリアンの料理人ってかっこいいなあ…と感じたのが始まりです。そこから飲食店でバイトをはじめ、24歳の時に本格的にイタリアンの世界に飛び込みました。

細田さん:きっかけはものすごくシンプルなのですが、自分は「食べること」が大好きだったんです。特に中華料理が小さい時から大好きだったのと、人に喜んでもらうことが昔から好きなこともあって、18歳で専門学校を卒業した後はレストランや婚礼などもあるホテルに就職しました。

加藤さん:もともとは事務をやっていたのですが、あまり楽しくなくて…。そんな時に東日本大震災があり、地元も大きな被害を受けた中で、自分の人生を考えるようになったんです。その時に、このままだとこの先後悔すると思い「自分が楽しみながらできるお仕事」って何だろうと改めて考えたときに浮かんだのが、当時地元で行きつけだったカレー屋さん。自分にとっては「お店ではたらいているスタッフさんに会いたい」と思える素敵なお店で、「自分もここで働きたい」と思うようになり、働きだしたのが始まりです。

酒井さん:自分も細田さんと同じで子供の頃から「人に喜んでもらう」ことが好きだったのと、漫画の「味いちもんめ」や「どっちの料理ショー」のような料理番組が好きだったんです。あとは祖母が畑で野菜を育てていたりと、今思えば「食」に触れる機会が非常に多かったと感じます。
母親には一般企業への就職を勧められていましたが、「自分の好きな事」を線で結んでいくと、自然と飲食業界へとつながったんです。

クックビズ世古:ありがとうございます。「飲食業界を盛り上げたい!」という同じ想いを持っていても、みなさんがこの飲食業界に入ったルーツ、本当にさまざまありますね。

飲食業界で感じる「やりがい」と「むずかしさ」

クックビズ世古:みなさんの経歴についてお聞かせいただきましたが、続いてこの飲食業界において「やっててよかった!」ということや「むずかしいな…」と思うもの、どういったものがありますか?

浅賀さん:やっててよかった!という点でいくと、まずはお客様からの評価ですね。「美味しい」と言われたら素直にうれしくなります。ただ、基本的に「まずい」と言うお客様は実はいないんですよね。「美味しい」と言うだけではなく、その後、リピーターとして再度ご来店いただいた時に、本当に美味しいと思ってもらえたんだ、とうれしくなります。

難しいと思った点では、料理人として始めたばかりの頃は、先輩についていくだけで毎日必死でした。自分自身のレベルも低かったのですごく大変でした。今だと、今度は教える立場なので教育だったり、料理のクオリティ、あとは利益なども考えないといけないので日々悩んでます。

細田さん:お店自体の料理をお客様に高い評価をいただいた時に、自分に対しての評価にもつながっている気がして喜びにつながっていると感じてますし、さらに追及して、もっと美味しい料理をお客様に提供したいとモチベーションにもつながりますね。

難しいのは…やはり利益の出し方。良いものを作ろうとすると、食材費も高くなりがちですが、そのバランスをとるのが難しいですね。あとはやはり新型コロナウィルスの影響。新宿にあるホテルということもあり、インバウンドの観光客がコロナを機にゼロに。飲食業界やホテル業界の先が見えない状況で、コロナとどう付き合っていけばいいのか、非常に難しく悩んでおります。

酒井さん:「菊乃井」で働いている時は、インバウンドのお客様はじめ世界中の方がいらっしゃっていました。その時に「美味しい」というのは国籍だったり、性別や年齢など関係なく全世界共通であることがおもしろいと感じました。たとえ言葉が通じなくても「美味しい」でつながれるすてきな仕事だと感じています。

一方、日本の飲食業界は長時間労働が問題になってます。料理人として、プロとして、お客様に美味しい料理を提供していく役割がある以上、どうしても時間的な拘束が発生してきてしまうものの、労働環境を改善していくことがスタッフの幸せに繋がると思っています。

成田さん:みなさんもおっしゃってますが、料理人としては何よりも「お客様が喜ぶ顔」が一番のモチベーションにつながりますね。

難しさでは、料理人は長い時間、安い給与で働くというスタイルは今も昔も変わらない部分もあります。そこは自分たちから変えていきたいと考えているし、飲食に携わる人みんなが充実した生活を送る必要があると思っています。そんな充実した生活と、地域に根付いた料理人としてこれから生きていきたいですね。

加藤さん:お客様と仲良くなれた時やよろこんでいただけた時もうれしいですが、何度も通っていただくリピーターのお客様の好みをしっかり把握してアドバイスできた時ですね。その時のお客様の反応が一番うれしいです。

難しさでは、今インターネットでコーヒー豆の販売を行っていますが、他店との差別化が非常に難しいと感じています。ネット上だけど、店頭で直接お話を聞かせてもらいながら、ぴったりな商品を提案できるような仕組みを作っていきたいと考えてます。

また、自分自身では世界中で活躍しているバリスタの方はBarのスキルも持っているため、知識や技術の習得も含め、ドリンクと料理のペアリングもしていきたいですし、日本でもっと普及していきたいと考えてます。

クックビズ世古:ありがとうございます。みなさんやはり、お客様の笑顔のため、というのは職種やジャンルが違えど、共通して持っていらっしゃることがすごく伝わりました。新型コロナウイルスの感染拡大の収束がまだ見えず、そんな中でも足を運んでくださるお客様に対してはよりその想いが強くなったのようですね。

それぞれの「食」に関する情報収集方法

クックビズ世古:ところでみなさん、こうしたコロナ禍政府からの営業時間短縮や外食自粛要請などある中で、「時間ができた」という方も少なくないとうかがいましたが、「食」に関する情報収集いおいては、どのような形で、どういったコンテンツを見たり、情報を入手することが多いのでしょうか?

浅賀さん:Youtubeの「ChefSteps」というチャンネルはよく見てます。ソース専門やピューレ専門など専門的な動画で知識を得ています。あとはNetflixの「シェフズテーブル」。コロナで家にいることも多く、奥さんに「また見てる!」と言われるので、気を使いながら見てます(笑)

他では、今のお店の総料理長が、海外経験が長いこともあり、その人が影響を受けた人をSNSでよくチェックしています。また、以前パスタのワールドカップに出た前職の上司が世界チャンピオンで、YouTubeのチャンネル登録数も多かったですね。個人的には、料理写真などもそうですが、その料理に込められた「想い」や「背景」にすごく興味があります。

細田さん:コロナ前だと、他のお店に食べ歩きに行くことが多かったですね。他、中華の料理人のコミュニティがあり、意見交換等できる場所があったので、積極的に参加して勉強していました。

WEBでは自分も動画コンテンツはよく見ますね。本場中国の料理人の方が調理している様子だったり、マニアックな料理を作っているのをずっと見ています。食に関するコンテンツを発信しているような人は、積極的にチャンネル登録して見ています。

酒井さん:SNSが多いですかね。Instagramで情報収集することが多いです。一方ではネット上にある情報よりも、お客様だったり、同業の方だったり、業者さんだったりから直接聞かせてもらう生の情報が一番多いと思います。

成田さん:コロナ前は気になるお店を調べて食べに行ったり、料理人の方に実際にあってお話したり、直接目で見たり、聞いたりという形の情報収集が多かったです。
最近では、Instagramはよく見ていますね。あとは気になった料理人やシェフの方をけっこうフォローしていったりしています。あとは、「月刊 専門料理」という雑誌はよく読みます。

加藤さん:コロナ前までは上京したばかりだったので、食べ歩きをして情報を集めることが多かったですね。私生活では、全国の農家さんの野菜を買えるアプリ「ポケットマルシェ」を使って野菜を買ったりしています。

SNSでは、いままでInstagramだけでしたが、ECサイトをはじめることでTwitterもはじめました。情報の温度の高さというか、反応の良さではTwitterが一番温度が高いと感じています。逆にInstagramだと写真の並びなどセルフブランディングに気を使う人が多いのかな…とも思います。写真がない分、Twitterは気軽に短い文章でつぶやけるので発言のハードルが低いのかもしれません。感度が高い人は、自分が興味ある写真だけが流れてくるPinterest(ピンテレスト)なんかもよく使っている印象です。

クックビズ世古:みなさんけっこうSNSをメインで使って情報収集されることが多いんですね。情報の「鮮度」といった部分でもSNSの情報は非常に重要視されていることがわかりました。

この業界にいるからこそ知りたい情報

クックビズ世古:そんな中で特に「飲食業界の中にいるからこそ」知りたい情報ってなんでしょう?

浅賀さん:できあがった料理の写真を載せているサイトはあるけど、食材やその料理ができあがるまでのルーツのようなもの、一品に込められた想いみたいなものは興味がありますね。

酒井さん:たしかに、料理が出来上がるまでの過程や想いだったり、作り手の人の背景みたいなものが見れたら面白いですよね。
あとは、自分は友達の店に遊びにいったときに、厨房を見せてもらって、中の導線や器具を見せてもらったりとかしてるのでそのあたりも興味があります。(笑)

クックビズ世古:キッチンの導線や調理器具はかなりマニアックですね。でも、そういった部分も含めてひとつの料理に関わるいろんな情報を得たいと考えてらっしゃるんですね。

浅賀さん:もっと料理人にフォーカスされたコンテストがあってもいいですよね。「RED U-35」はそういう点ではスポットは当たるものの、まだ業界内での認知にとどまってしまっているように思います。

細田さん:中華料理のコンテストもだいだい年に2回ぐらいありますが、正直、中華をやっている人にしか知られていなくて。どうしてもまだまだ内輪の中でやっている感があるので、そのコンテストの歴史とか権威も含めて一般層に認知されていけば、もっと飲食業界で働く人が評価されていくと思います。

クックビズ世古:なるほど…コンテスト自体はレベルが高いのに業界の一部や、一般層に対してそのコンテストのや存在が認知されていない現状があるということですね。本日は貴重なお話お聞かせいただきありがとうございました。

まとめ

今回は、和洋中さまざまな料理人の方やバリスタとして活躍されている方にご参加いただき、「日々の情報収集」をテーマの1つにお話を聞かせていただきましたが、それだけでも新たな気づきが非常にたくさんあった座談会となりました。

<協力>

店名 サッカパウ
店名 Hyatt regency tokyo 中国料理 翡翠宮
店名 中国料理 京、静華
店名 菊乃井 本店
店名 coffee and spice.