司会の女性とスピーカーの男性が座って話しているセミナーの様子

Webや雑誌・新聞・テレビなどのメディアに取り上げられることは、どんな事業であっても顧客に対して大きなインパクトがあります。飲食店にとっても、メディアを通じた集客効果・宣伝効果は絶大。店を軌道に乗せるために、メディアの力を借りたいと考えるオーナーは多いでしょう。

クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」は、“食”をテーマにした連続セミナー「CAMPFIRE CAMP(キャンプファイヤーキャンプ)」を企画。2018年7月18日に行われた第3弾のセミナーでは「日本茶エンターテインメントCHABAKKAに学ぶコンセプト店舗の作り方・進め方」と題し、オープン前から多くのメディアが注目した日本茶専門店「CHABAKKA TEA PARKS(チャバッカ ティー パークス)」のオーナー三浦健さんに、情報発信のコツ・PRのノウハウを聞くトークセッションを開催しました。

今回は、「CAMPFIRE CAMP(キャンプファイヤーキャンプ)」のセミナー内容に三浦さんへの追加取材も加えてレポート、各メディアに「取り上げたい!」と思わせる効果的・戦略的な情報発信の方法に迫ります!

なぜ“日本茶専門店”を開業したのか?日本の伝統、文化、モノづくりの魅力

まずは、三浦健さんのこれまでのキャリアを紹介しましょう。

笑顔のオーナー三浦さんの写真

株式会社Third Bay代表 「CHABAKKA TEA PARKS」オーナー・三浦健さん 写真/クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」プロジェクトページより

■三浦さんのこれまでのキャリア

三浦さんは、小さいころからファッション業界での仕事に憧れ、専門学校卒業後にアパレル企業立ち上げの中心メンバーとして参画。店舗運営・商品企画・人材育成・新店舗の立ち上げなどあらゆるタスクに携わり、会社は東証一部上場を果たしました。
会社のコンセプトは“日本発ファションスタイルを世界へ”。このコンセプトをベースに、三浦さんは日本各地で活躍するデニム、ニット、レザーなどの職人に出会い、共に仕事をするようになります。
三浦さんは次第に、日本に古くからある産業や伝統工芸に傾倒。アパレルというジャンルにこだわらずに、日本の伝統、文化、モノづくりを新しい切り口で世の中に発信していきたいと考えるようになりました。

■“日本茶専門店”オープンの経緯

もともと自分で事業をやると決めていた三浦さん。やりたい方向性が見え、年齢的にも30歳を過ぎて、独り立ちするタイミングだと感じていた時に、三浦さんは実家に帰省して、母親が淹れてくれた日本茶を飲みます。
三浦さんは日本一の緑茶の生産地・静岡県出身。そのお茶は一般的なブレンド茶ではなく、単一品種仕上げの高級茶葉で淹れた一杯でした。三浦さんはおいしさに衝撃を受け、日本茶の魅力を再認識したと言います。

緑茶は、古くから日本で親しまれてきたもの。方向性は見えているけれど、何をやるか、具体的に決めかねていた三浦さんは、このことをきっかけに日本茶にフォーカスした事業を計画し始めました。
2017年10月に会社を退社し、2018年1月に株式会社Third Bayをスタート。4月には鎌倉に日本茶専門店「CHABAKKA TEA PARKS」をオープンして、現在、主に店舗経営と通販事業をしながら、経営・営業コンサルタント、シェアリング事業の企画・運営を行っています。

白い器に茶葉が入っている写真

「CHABAKKA TEA PARKS」で扱う茶葉は、単一品種・単一農園のシングルオリジン
写真/「CAMPFIRE」プロジェクトページより

「CHABAKKA TEA PARKS」は、厳選した茶葉で淹れたお茶を店頭で飲めるほか、ビールサーバーを使い、お茶にたっぷりの窒素を含ませてクリーミーな泡を立てた、日本初の「ドラフトティー」の提供、月額定額制(サブスクリプション)飲み放題サービスなどを展開。日本の伝統工芸の技術が活きた急須やティーサーバーの販売も行い、多くのお客様の支持を集めています。

PRはオープン前から仕掛ける!事前準備で9割は決まる

日本茶専門店「CHABAKKA TEA PARKS」は、開店以降、現在もなおWebやテレビなどのメディアの露出が絶えません。三浦さんは、メディアへのPRをどのように進めてきたのでしょうか。

マイクを片手に三浦さんがスピーチをしている写真

CAMPFIRE主催セミナー「CAMPFIRE CAMP」第3弾「日本茶エンターテインメントCHABAKKAに学ぶコンセプト店舗の作り方・進め方」のトークセッションで登壇する三浦さん

■開店してからでは遅すぎる!オープン前にどれだけ仕掛けられるかが勝負

前職を辞めてから、起業、店のオープンに向けて、三浦さんは計画的に仕事を進めました。「販促」「商品開発」「ブランディング」…といくつかの軸を設定し、そこに時間軸を重ね合わせて「何を、いつまでにやるか」というスケジュールをきっちりと立てて実行しました。
それは、メディアを意識したPR戦略も同様。
「店がオープンする前に、どれだけ事前準備ができるか。結果の9割は、始まる前に決まってしまっていると言えるかもしれない。開業前にどれだけ仕掛けられるかが勝負だと思います」(三浦さん)

青色が印象的なCHABAKKA TEA PARKSのお店の写真

「CHABAKKA TEA PARKS」の店舗
写真/「CHABAKKA TEA PARKS」インスタグラムより

■メディア各社へのリリース送付は1度きりではなく、進捗の報告も含めて複数回

三浦さんは店がオープンする前に、各メディアにプレスリリースを送りました。
「リリースは300社ほどに送りました。どういうメディアに取り上げてもらいたいか、ということを考えるのも大事です。こちらが掲載して欲しいと思っているメディアに、ダイレクトにメールや電話で連絡をとりました」(三浦さん)

しかも、1回だけ送るのではなく、①起業時、②PRの一環として行ったクラウドファンディングのスタート時、②クラウドファンディングの途中経過(目標金額達成時)、④店のオープン時、の4回のタイミングでプレスリリースを送りました。店のオープンから逆算して、事業の進捗を複数回報告できるように計画したのです。
「1度伝えただけで終わってはだめ。自分がやろうとしていることや進捗状況を、きちんと知ってもらうことが重要です」(三浦さん)

さらに、メールを送る時にはメールの件名を工夫したと言います。多くのメールが届く中で埋もれずに読んでもらえるよう心掛け、簡潔に、件名を読んだだけでメールの趣旨がわかるようにしました。

コンセプトと事業モデルを10秒で説明できるか?伝える工夫と言葉・文章の書き方

約300社ものメディア企業に4回にわたってプレスリリースを送る、そのこと自体かなりタフな仕事ですが、各メディアには毎日何十、何百通と情報が寄せられていることを考えると、やはり重要なのは目に留まる内容。三浦さんはどんなことを心掛けてPRの文章を書き、言葉を選んだのでしょうか。

ビールサーバーでお茶を入れている写真

「CHABAKKA TEA PARKS」で提供される「ドラフトティー」はビールサーバーで淹れる緑茶
写真/「CHABAKKA TEA PARKS」インスタグラムより

■コンセプトを簡潔に表現するキャッチコピー「日本茶エンターテインメント」が生まれるまで

三浦さんは、まず周りの人に自分の考えを話してみることで反応を見て、店のコンセプトを磨き上げました。
「自分の事業について人に話すときに、10秒で核心を伝えられるように準備していました」(三浦さん)
そのくらいわかりやすいコンセプトや、明確な事業モデルがなければ印象に残らないと考えたのです。

「CHABAKKA TEA PARKS」のキャッチコピー「日本茶エンターテインメント」は、すぐに思いついたものではありませんでした。三浦さんが実現しようとしているコンセプトは、日本の伝統文化や産業において新たな価値やサービスを見出し、世の中に提供すること。それを短いフレーズに込めようと試行錯誤しました。
「はじめは、いろいろ候補がありました。自分のやりたい事を一言で表すには、日本茶という少し古い、伝統のある、敷居の高いイメージの言葉に、真逆の価値を持つ言葉を合わせようと思って、最終的にエンターテインメントという言葉を選びました」(三浦さん)

言葉の選び方としては、誰もがよく知っているワード、わかりやすさ、キャッチーさを基準にしました。
「言葉を組み合わせた時に、意味がわかるようでわからないような。意外な組み合わせだけど、よく知っている言葉が並んでいる、というコピーにしました」(三浦さん)

■言葉はわかりやすく、5W1Hを意識した文章

プレスリリースの文章は「5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どうやって)」を常に意識して、 丁寧に文章を書きました。
「伝わりやすさを重視しました。丁寧に書くと長文になることもありますが、後から添削して、削って仕上げました」(三浦さん)
三浦さんのリリースや商品説明には「日本初」「業界初」といった、ニュースに取り上げられやすいワードが見られるのも特徴でしょう。

プレスリリースはビジュアルにもこだわり、三浦さんが自ら写真の撮影も行いました。ここでは、アパレルの仕事をしていた時代の経験が活きたと言います。
「まず目に留めてもらえるように、なるべく見やすく、どんな商品なのかがわかりやすいように画像をつけて訴求するようにしました。産地で茶畑を撮影したり、お茶はシズル感にこだわって撮影しました」(三浦さん)。

■SNSは定期的に配信!受け取る側の状況を考えた内容を

メディア各社にも、一般のお客様にも店舗のことを知ってもらうために、SNSを上手く活用することは大事です。三浦さんは、SNSでの情報発信もかなり戦略的に行いました。

「CHABAKKA TEA PARKS」Instagramのページの写真

「CHABAKKA TEA PARKS」のインスタグラム

■インスタグラムは朝、昼、夜、1日3回更新

三浦さんは、SNSの中でも特にインスタグラムを重視して情報発信をしています。
「店のオープンまでは、朝・昼・夜の3回、毎日決まった時間にアップすると決めて、自分の個人アカウントで頻繁に事業の進捗状況を投稿していました」(三浦さん)
それは、三浦さんが店舗の客層として見込んでいる20~30代の男女がスマホを見る時間帯に合わせた設定です。

■ターゲットは20~30代、時間によって内容も変える

「ガッツリ働いている20~30代の人たちの1日・1週間の過ごし方を考えて、時間帯や曜日によって投稿する内容も工夫していました」(三浦さん)
朝は8~9時の間に投稿。この時間は通勤中で、電車の中でスマホを見ているだろうと想定し、イメージ的な写真をメインに。
昼は12~13時のランチ時間に投稿。店で扱う商品やクラウドファンディングのリターンなどについての内容。
夜は19~20時。一番じっくり読んでもらえる時間帯なので、コンセプトや商品にまつわるストーリーなどについて書くようにしました。
土曜の夜は、少しゆったり過ごしているだろうと考え、クラウドファンディングの進捗などを投稿して、参加を促すこともありました。

PRツールとしてのクラウドファンディング

三浦さんは、PRツールとしてクラウドファンディングを活用しました。
クラウドファンディングは資金を集めるだけではなく、多くの人に事業を知ってもらい、事業開始前からお客様やファンを獲得することができる有効な手段です。
「CAMPFIRE」の「CHABAKKA TEA PARKS」プロジェクトページ

「CAMPFIRE」の「CHABAKKA TEA PARKS」プロジェクトページの写真

クラウドファンディングプラットフォーム「CAMPFIRE」の「CHABAKKA TEA PARKS」プロジェクトページ

■プロジェクトを知ってもらうためのノウハウ

会社を立ち上げてから、店のPR・宣伝、メディアへのアピールの一環としてクラウドファンディングを始めた三浦さん。自分の身近な人脈だけではなく、もっと多くの人にアプローチするため、メディアに直接働きかけた情報戦略と同じように「始まる前にどれだけ仕掛けられるか」に重きをおき、プロジェクト開始前から着々と準備をしました。
「クラウドファンディングを始めたのは2018年2月。その2カ月から1か月半ぐらい前には、連絡が取れる方には全員、だいたい3000人くらいの人にメールなどで連絡をしました」(三浦さん)
3000人という数字に驚かされますが、三浦さんはその3000人に、まず「クラウドファンディングを始める」ということを伝えて、その後、プロジェクトの中盤・終盤と進捗状況を数回に渡って報告しました。

スライドを見ながら話す三浦さんの写真

クラウドファンディングは開始直後に目標金額に達した。支援金額の推移を示しながら話す三浦さん

地道で丁寧な情報発信が功を奏し、三浦さんのプロジェクトは開始わずか4日ほどで目標金額100万円の資金集めに成功。その後も支援者が増え続け、結果的に220万円以上の資金が集まりました。
クラウドファンディングの成功はメディアに取り上げられ、一石二鳥の効果に。ファンディングのリターンは、ドリンクの提供など、来店を促す内容のものを多くセッティングしていたため、オープン後の集客にも大いに効果がありました。

■クラウドファンディング「3分の1の法則」

三浦さんが利用しているクラウドファンディングプラットフォーム「CAMFIRE」のコミュニティマネージャー山中直子さんによると、クラウドファンディングには「3分の1の法則」があるといいます。

それは、まず目標金額の3分の1を知り合いなど身近な人の支援で達成し、さらに3分の1を知り合いのSNSでの拡散やメディア掲載、もともとそのジャンルに興味を持っていた人による反応で達成。そこから波及して、プロジェクトやジャンルに全く興味を持っていなかった・知らなかった人に情報が届いて、残りの3分の1が埋まっていく、というもの。

「クラウドファンディングに参加すれば、自然とこれまでリーチできなかった未知の人たちに情報が広がっていくと考えている方がいますが、そういうことはほぼないんです。三浦さんのように、情報を積極的に発信していくことが必要です」(山中さん)

店のオープン後もメディア取材が絶えない理由

戦略的にPRを行った結果、「CHABAKKA TEA PARKS 」は、店のオープン前後に、約70~80のメディアに取り上げられました。
4月のオープン以降、三浦さんはメディアにプレスリリースを送っていませんが、オープン前に送付していたリリースが今も効果を発揮して、取材のオファーは絶えないと言います。三浦さんは緻密でタフなPR戦略によって、メディアやクラウドファンディングを十二分に活用し、事業の成功につなげたと言えるでしょう。
今後は、日本茶に限らずさまざまな日本の伝統産業に新しい価値やサービスを見出していきたいと三浦さんは言います。

戦略を立て、情報発信を丁寧に粘り強く積み上げていくことが効果的なPR方法だどいうことが、三浦さんの体験談からわかりました。そして何より、強いコンセプトと、それを伝える言葉の選択が非常に重要です。プレスリリースの作成やキャッチコピーの考案など、自分のやりたい事を文章にし、それを磨き上げる作業を通して、三浦さんは事業のコンセプトをより確固たるものにしていった過程がたどれます。

これから飲食店を開業、もしくは事業を始めようとしている方は、三浦さんのPR戦略を参考にして、早速行動に移してみてはいかがでしょうか。

■取材協力

店舗名 CHABAKKA TEA PARKS
クラウドファンディングプラットフォーム CAMPFIRE