外国人客を積極的に誘致する政府の政策に後押しされ、2018年の訪日外国人観光客数は台風や震災の影響があったにもかかわらず、前年比8.7%増の3,100万人を超えました。(データ出典:日本政府観光局)
政府が掲げた年間4,000万人のインバウンド客の誘致目標は2020年に達成を見込まれており、今後さらに訪日外国人観光客は増えることが予想されています。
各飲食店もこうした外国人客の増加を実感しているに違いありません。実際に他店では外国人客がどの程度の頻度で来店しているのか、どのような外国人向けサービスを提供し、どんな課題を抱えているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
今回、クックビズ総研は日本全国の飲食店を対象に「飲食店における外国人客の受け入れ実態 アンケート調査」を実施。その結果をレポートします!
目次
44%の飲食店に外国人客がほぼ毎日来店
外国人客の来店頻度について、「ほぼ毎日」と回答した飲食店は44%でした。「週2、3回程度」は19%、「週1回程度」が7%も入れると、外国人客の来店が週に1回以上ある飲食店は全体の70%。「まったく来店しない」と回答した飲食店は12%のみですから、外国人客の飲食店利用が日常的になっているとことが分かります。
<飲食店への外国人客の来店頻度(単一選択)>
「ふらっと入店」が主流!予約なし来店が65%
外国人客の来店経路については、予約なしの「飛び込み客(ウォークイン)」が全体の65%でした。「代理店予約経由(16%)」、「ホテル予約経由(9%)」、「ダイレクト予約(10%)」など、事前予約した上での来店は全体の35%でした。
観光がてらのふらっと入店にもしっかり対応できるように、飲食店の大小規模を問わず、万全な体制が求められます。
<外国人客の主な来店経路(単一選択)>
来店きっかけは「知人の紹介」と「Webサイト」
外国人の来店きっかけは、「知人の紹介」と「Webサイト」が最も多くなっています。「SNSがきっかけで来店」も16.8%あり、WebやSNSでの露出は軽視できません。個人が自力で情報収集をして飲食店選びをしていることから、外国人間の口コミも集客に大きく影響していることがわかる結果となりました。
<外国人客の主な来店きっかけ(複数選択)>
75%の飲食店が外国人向けのサービス対応を実施
外国人客向けのサービスを実施している飲食店のおよそ半数が、「外国語表記・写真付きのメニュー表を用意」しています。他のサービスとしては、「クレジットカード決済に対応している」が44%程度でした。日本国内でも加速しているキャッシュレス化の動きにより、今後さらに対応店舗が増える見通しです。
外国人客対応のため、「外国語の話せるスタッフを配置している」飲食店は現在36%程度ですが、2019年4月より改正される入国管理法が外食産業においての外国人就労を解禁するため、今後は外国人採用の動きがどこまで積極化していくのか、注目が集まります。
外国人客向けのサービスには、他にも「(ベジタリアン、ハラルなど)食事制限のある外国人向けのメニューを用意している」、「外国語対応のウェブサイトを用意している」、「外国の決済方法に対応している」、「外国語での予約受付に対応している」などが挙がりました。
全体の約75%の飲食店が何らかの形で外国人客向けのサービスを提供しています。
<外国人客向けに実施しているサービス内容 (複数選択)>
外国人客に向けての「メニューや使用食材の説明」に課題大
外国人客の対応で最も課題を感じるのは、「メニューや使用食材の説明」が55%で最多、外国人客とのコミュニケーションに課題を感じている飲食店が一番多いようです。次いで、「店内のマナー」(33%)、「食事制限の対応」(31%)、「電話予約の対応」(24%)が続きました。
<外国人客向けサービスで一番課題に感じていること>
最近は飲食店のこうした課題を解決するために、多言語メニューやウエブサイトを無料で作成できるウェブサービスや、外国人客対応マニュアルの無料ダウンロード、外国人客とのトラブル対応サポート、多言語対応の自動翻訳機など、飲食店のインバウンド客対応を充実させるためのサービスが各自治体、飲食店支援会社から次々にリリースされています。近い将来、言語の壁をハードルに感じる場面は減っていくでしょう。
言語以外の外国人向け対応では、例えばハラルフードやベジタリアンなど、多様な宗教や食習慣への理解と対応が求められています。これについては、まだ知識が浅い飲食店もあるようですが、今後インバウンド客がますます増えていきますので、外国人客からの細かなリクエストへの対応力がより求められるでしょう。
66%の飲食店が外国人客の来店促進に積極的
多くの飲食店は、外国人客の来店促進に向けて積極的です。「今後は外国人観光客の来店を積極的に誘致したいと思いますか?」という質問に対し、「はい」と答えた飲食店関係者が全体の66%でした。
<今後の外国人客集客への意欲>
外国人客を呼び込むメリットとしては、「閑散期の回転率の改善」や、比較的高単価な注文での「客単価アップ」、積極的な情報発信による「口コミの拡散」が挙がりました。
- 食事以外に、おみやげ、アルコール等よく出るため、高客単価が見込める。また世界中のお客様に来ていただくことにより、閑散期の業績改善が見込める。本来なら例年あまり良くない9月に、長期間の国民休日があるイスラエルからの客のおかげで売上がかなり助けられた。(京都/うどん・そば・ラーメン)
- もてなし、提供の仕方で店舗イメージがプラスになり、世界中に口コミ拡散の可能性がある。(大阪府/和食全般)
- 日本人客と違う行動パターンであるため、(ランチやディナー以外の)アイドルタイムで集客できるから、効率よく回せる。(大阪府/ステーキ・鉄板焼き)
まとめ
「飲食店における外国人客の受け入れ実態 アンケート調査」からは次のようなことがわかりました。
- ほぼ毎日外国人客の来店がある飲食店は全体の44%。
- 予約なしの「飛び込み客」が65%なので、いきなりな外国人客の入店にも応対可能な体制を求められる。
- 来店のきっかけは「知人の紹介」と「ウェブサイト」が最多。ウェブ露出が外国人客の集客に大きく影響。
- 約75%の飲食店が何らかの形で外国人客向けのサービスを提供している。ただし、一番の課題は「メニューや使用食材の説明」。
- 閑散期の回転率の改善や、客単価アップなどのメリットから、今後も積極的に外国人客を集客したいと考えている飲食店が全体の66%。
まだ外国人向けサービスの提供内容には課題もあるようですが、集客効果への期待も高いことから、飲食店関係者は外国人客の集客へ高い関心を寄せていることがわかります。国内市場の鈍化を補うインバウンド市場への取り組みが、今後飲食店のさらなる業績アップの鍵になることが予想されます。
■調査概要
調査名 | 「飲食店における外国人客の受け入れ実態 アンケート調査」 |
調査対象 | 日本全国の飲食店関係者 |
有効回答数 | 115 |
立地内訳 | 首都圏33、中京圏18、近畿圏41、その他地域23 |
展開店舗数内訳 | 1店舗:22、2−10店舗:50、11−100店舗:26、101店舗以上:17 |
調査期間 | 2018年9月27日~2018年10月10日 |
調査方法 | インターネット調査 |