福ごはんとかかれた木箱に野菜が入っている写真

生産者が、野菜や果物、加工品、工芸品等さまざまな品を販売する、マルシェ。今や空前のブームといっていいくらいに、多くのマルシェが各地で開催され、賑わいをみせています。
でも、もしマルシェで売れ残りがでたら、野菜などの生鮮食品はどうなるのでしょう。

東京日本橋・浜町で年4回開催される「浜町マルシェ」で発生するフードロスを削減しようという取り組み、「福ごはんプロジェクト」の発表会が、2019年7月2日に行われました。マルシェブームの陰にあるフードロス問題。マルシェで売れ残りが出る理由や、解決に向けてアクションを起こすプロジェクトの概要など、発表会で語られた内容をお伝えします。

すぐに「売り切れ」では閑散としてしまう…マルシェで売れ残りが出る背景

「福ごはんプロジェクト」を手掛けるのは、新しいかたちのマナー向上プロジェクトを推進する 社団法人Tokyo Good Manners Project(以下、TGMP)。TGMPは、“もったいない”という日本人の美徳に基づいたグッドマナーでフードロス削減へのアクションを起こそうと、「福ごはんプロジェクト」を開始しました。

TGMP理事の水代優さんの写真

「福ごはんプロジェクト」を主催するTGMP理事の水代優さん

飲食店の経営経験もあるTGMP理事の水代優さんは、開会式でこのプロジェクトを始めたきっかけについて語りました。

今は、バブルと言っていいくらいに、都内でも毎週あちこちでマルシェが開かれています。マルシェをオープンしてから早いうちに商品が売り切れて閑散としてしまうのは、主催者側としては避けたい。だから、商品をいっぱい持ってきてくださいとお願いするわけです。でも、売れ残りについては手を打っていない」(水代さん)

浜町マルシェの様子

日本橋・浜町で年4回開催される「浜町マルシェ」。とっておきの食材が揃うと評判だ
写真提供/「福ごはんプロジェクト」

『浜町マルシェ』では、北海道や九州から来てくださっている生産者さんもいらっしゃって、売れ残りを持って帰るのも大変です。生鮮食品や足の早い食材もありますから、どうしてもフードロスを出してしまう現実があります」(水代さん)

TGMPは「残り物には福がある」のことわざから着想を得て、日本橋・浜町で行われる「浜町マルシェ」で売れ残った食材を「福ごはん」と命名。「福ごはん」を近隣の料亭や飲食店、オフィスで活用してフードロスを削減しようと、「福ごはんプロジェクト」を立ちあげました。

マルシェで売れ残った食材を使った料理の写真

プロジェクトの発表会では、マルシェで売れ残った食材「福ごはん」を使ったメニューが振る舞われた

残り物には福がある―「福ごはんプロジェクト」の3つのアクション

2019年6月30日・7月1日の2日間開かれた「浜町マルシェ」の売れ残り食材への取り組みとして、「福ごはんプロジェクト」は、3つのアクションを起こしました。
概要をご紹介しましょう。

①近隣の企業で「福ごはん」を販売

マルシェが開催された翌日、売れ残った食材を、浜町にオフィスを構える企業で販売。今回の参加企業は、株式会社建設技術研究所、カゴメ株式会社、株式会社明治座の3社でした。

福ごはんと書かれた看板が置かれた会場の写真

株式会社建設技術研究所での「福ごはん」販売

各社ともお昼休みの時間帯に、共有スペースや食堂で「福ごはん」が販売されました。
価格もお手ごろになっているので、人気の野菜はオープンしてすぐに売り切れてしまいました」と販売スタッフ。
お昼の空き時間に産地直送の野菜や果物が買えるとあって、人気は上々でした。

カゴメ株式会社の飲食スペース写真

カゴメ株式会社の飲食スペースで販売された「福ごはん」

② 浜町の銭湯で「福ごはんの湯」を実施

浜町の銭湯「世界湯」では、「浜町マルシェ」で売れ残った、あるいは傷が付いたり形が規格外で販売が難しい果物を「入浴剤」として活用し、「福ごはんの湯」を企画。2019年7月2日、6日、7日に実施されました。

湯船に様々な柑橘類が浮かんでいる写真

湯船に様々な柑橘類が浮かぶ。見た目にもカラフルで香りが爽やかなお風呂
写真提供/「福ごはんプロジェクト」

今回「入浴剤」として使ったのは、甘夏、レモン、ジューシーオレンジの3種の柑橘。
見た目にも鮮やかで、爽やかな香りのするお風呂です。
来場者には湯あがりドリンクとして、数量限定で「福ごはん」を使った柑橘のジュースも配られ、「福ごはんの湯」オリジナルタオルもプレゼントされました。

湯あがりドリンクとタオルの写真

数量限定で配られた湯あがりドリンクとタオル

③人気の飲食店で「福ごはん料理」を提供

2019年7月2日、3日の夜には、浜町近隣の「富士屋本店日本橋」、「浜町かねこ」、「HAMACHO DINING&BAR SESSiON」の3軒の飲食店で、「福ごはん」を使ったメニューが提供されました。

「福ごはん」を使った「富士屋本店日本橋」のメニューの写真

「福ごはん」を使った「富士屋本店日本橋」のメニュー
写真提供/「福ごはんプロジェクト」

立飲みビストロ「富士屋本店日本橋」では、ミニトマトを使ったガスパチョやビーツのムースなど、売れ残った食材に合わせた料理が考案されました。

なぜ、アプリやITを活用しないのか?

最近では、フードロスへの取り組みとして、売りたい店舗と買いたい消費者をアプリを使ってマッチングするサービスが注目されています。
「福ごはんプロジェクト」では、アプリの活用を検討しなかったのでしょうか。
古くなってしまった食材をどう活用するか、ピクルスにしたらいいですよとか、新聞紙にくるんでから野菜室に入れると長持ちしますよとか、直接交わす会話の中で食材の活かし方を提案する機会が大事だと考えています」とスタッフ。
「福ごはん」販売スペースでは、フードロスの現状や、余った野菜の活用法が書かれた、TGMP制作のフライヤーが配られ、コミュニケーションが図られていました。

瓶詰のピクルスの写真

発表会会場では、余った野菜の活用法のひとつとしてピクルスがディスプレイされていた

マルシェで発生するフードロスへの取り組みを広げていきたい

水代さんは質疑応答のなかで、今回のプロジェクトへの反応を見ながら、次回10月に開催される「浜町マルシェ」でも「福ごはんプロジェクト」を実施したいと語りました。また、この企画をきっかけにして、都内のマルシェに活動を広げていくことも考えていきたいと言います。

食に高い関心をもつ消費者が買い物をするマルシェで、今後、フードロスへの取り組みが進んでいくことが期待されます。

■取材協力

企業名 一般社団法人 Tokyo Good Manners Project