夜の居酒屋街でケータイの照明が輝いている写真

インターネット上の情報が消費者の行動に大きな影響を及ぼしていることは、みなさんも日々体感されていると思います。アメリカ・コーネル大学の「ソーシャルメディアがホテル収益に及ぼす影響」(2012年)の報告書では、口コミサイトでホテルの評価点数が上がると、それに連動してホテルの収益も上がるというリサーチ結果が発表されています。
飲食店の集客にも、同様にグルメサイトが大きな影響を及ぼしていますから、グルメサイトをうまく活用して売上を向上させたいとどの飲食店も考えているのではないでしょうか。

2018年3月現在、日本の国内グルメサイト大手4社は「食べログ」、「ぐるなび」、「ホットペッパー」、「Retty」です。そこにアメリカ発のグルメサイト「Yelp!」、旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」、日本発のシェフ推奨型グルメサイト「ヒトサラ」などが参入。数多くあるグルメサイトが、月間閲覧数、ユーザー口コミ数、掲載店舗数、予約可能店舗数などさまざまな数字で競い合っています。

今回、「クックビズ総研」は、全国の飲食店を対象にグルメサイトの利用状況を調査しました。主な国内グルメサイト11媒体の利用と登録状況、各グルメサイトへの評価及び口コミ対策についてアンケートを実施。飲食店運営側の視点からグルメサイトの利用実態に迫りました。

目次

飲食店のグルメサイト利用率は約70%。利用率最多は関東エリアの84%

「グルメサイトを利用していますか」という質問に対し、約72%の飲食店がグルメサイトを利用していると答えました。
グループの展開店舗数が多いほど、利用率が高く、エリア別で見ると、関東エリアのグルメサイトの利用率がもっとも高く約84%、次いで関西、九州が75%、そして北海道、東海、東北の順に利用率が下がっていきます。

<飲食店のグルメサイトの利用状況>

飲食店のグルメサイトの利用状況を表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

グルメサイトの利用3大目的は「情報掲載」「認知度拡大」「予約管理」

グルメサイトを利用する目的については、「店舗情報やメニューなどの掲載」など基本情報の掲載目的が76%と最多。続いて「評価(レビュー)点数を上げ、認知度拡大」と集客目的が44%、グルメサイトの予約台帳機能などを「予約管理」のツールとして利用している飲食店も31%でした。

飲食店はグルメサイトを「情報発信」といったワン・ウェイ・コミュニケーションツールとして活用していますが、顧客とのコミュニケーションまでグルメサイト上で行う割合は10%にも満たないようです。Facebookが代表するソーシャルネットワークのようなツー・ウェイ・コミュニケーションツールとは、使い分けていることがわかります。

<飲食店のグルメサイト利用目的>

飲食店のグルメサイト利用目的を表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

食べログ利用84%!ぐるなび、ホットペッパーに大差を付けて利用率1位

現在利用しているグルメサイトについて質問したところ、飲食店の利用率が最も高かったのは、「食べログ」(利用率84%)でした。2位は「ぐるなび」(利用率66%)、3位は「ホットペッパー」(利用率35%)と続きます。

各グルメサイトが公表した月間アクティブユーザー数では、食べログが約1億449万人(2017年9月)、ぐるなびが6500万人(2017年12月)、ホットペッパーは月間アクティブユーザー数の公表はないが、年間予約件数が5153万件(2016年度)だということです。
食べログが、飲食店、一般ユーザー共にもっとも利用されているグルメサイトであることがわかります。

<飲食店のグルメサイト利用ランキング(複数回答)>

飲食店のグルメサイト利用ランキングを表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

2つ以上のグルメサイトを利用している飲食店が約半数

さらに、複数のグルメサイトを利用する飲食店は全体の半数にのぼることが分かりました。そのなかでも、3つ以上のグルメサイトを利用しているお店は全体の25%以上です。展開しているグループ店舗数が多いほど、複数のグルメサイトを併用する傾向が見られます。

ただし、複数のグルメサイト利用は労力もお金もかかるので飲食店にとっては負担になります。個人店や規模の小さい飲食店は、利用するグルメサイトを絞り込んで効果的な運用を目指す必要があるといえるでしょう。

<飲食店が利用するグルメサイト数(店舗規模別)>

飲食店が利用するグルメサイト数の割合を表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

グルメサイトの口コミは信頼できると肯定的な飲食店は47.7%、口コミ対応を実施している飲食店はわずか27%

グルメサイトに投稿された一般ユーザーの口コミの内容については、「信用できる(5.8%)」、「ある程度は信用できる(41.9%)」と肯定的に考える飲食店は全体の約50%です。一方、口コミは「あまり信用できない(16.3%)」、「全く信用できない(5.8%)」と否定的に考える飲食店は全体の約20%です。「個人の主観なので何とも言えない(26.7%)」という考え方も一定数いるようです。

口コミは鵜呑みにせず、取捨選択しながら適度に参考にする消費者が多いようですが、飲食店関係者でも、同様の傾向が見て取れます。

<グルメサイトに掲載されている口コミの信憑性について>

グルメサイトに掲載されている口コミの信憑性について表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

口コミにはポジティブとネガティブな反響の両方がありますが、内容によっては飲食店のイメージや集客に影響を与えかねません。では、飲食店は口コミ対応を行っているのでしょうか?
グルメサイトを利用している飲食店に聞いたところ、口コミ対応を行っている店舗はわずか27%にとどまり、大多数の店舗が口コミ対応を施していないことが分かりました。

<グルメサイトでの口コミ対応の実施有無>

グルメサイトでの口コミ対応の実施有無を表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

口コミ対応を意識した「サービスの見直し」やネガティブコメントへの「レビュー返信」を行う飲食店も

「口コミ対応をしている」と回答した飲食店に具体的な対応内容について聞くと、「サービスの見直し(66.7%)」が最も多く、次いで「レビュー内容の社内共有(38.9%)」があがりました。
飲食店がインターネット上の口コミを「顧客満足度調査」として検証し、サービス向上のために活用していることが分かります。

さらに「レビュー内容への返信」を行う飲食店が全体の17%あります。あえてネガティブな口コミへ直接コメントでレスポンスすることで、「顧客の声を大事にする」飲食店側の真摯な運営姿勢を伝えることができると考えているからです。
辛口なコメントを早期発見してスピーディに対応することは「風評被害」を最小限に留めるためにとても大切ですが、対応がよければ逆に飲食店のイメージアップにつながることもあります。

<飲食店が実施しているグルメサイトの口コミ対策>

飲食店が実施しているグルメサイトの口コミ対策を表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

さらに、「顧客にグルメサイトへのレビューを促す」、「影響力のあるレビュアーにレビューを書いてもらう」というかなり積極的なマーケティング戦略を取っている飲食店もわずかではありますが、6%ほどあります。
ただ、「影響力のあるレビュアーにレビューを書いてもらう」と回答した飲食店の中には、過去の一年の店の評価は上がっても売上は「横ばい」で費用対効果が認められないため、今後は積極的な口コミ促進策の実施頻度や予算は削減すると回答しているケースもありました。

積極的な口コミマーケティングをすることは、一時的に店舗の露出や評価を押し上げる効果があるかもしれません。ですが、あくまでも長期的にはサービスや料理品質の改善・維持といった地道な努力が不可欠なようです。

飲食店の7割はグルメサイトの口コミ評価の売上影響を実感

過去一年にグルメサイトでの評価点が上下した飲食店は全体の約25%(評価アップ22%、評価ダウン3%)になります。この飲食店の中で「過去一年で売上に変化があった」と答えた店は71%でした。
具体的にどのように売上が変化したか、具体的に見ていきましょう。

<グルメサイトでの評価点アップ:ポジティブな変化があった>

※括弧内は飲食店舗の基本情報:店舗所在地/業態/一人あたり平均単価/店舗数

  • リピート率が向上し、新規お客様が増えた。
    (北海道/居酒屋/1000円〜3000円/11〜50店舗展開)
  • 利幅が良いものや、売りたいものが出るようになった。
    (福島県/和食/5000円〜7000円/1店舗)
  • 来店予約が増えた。
    (東京都/和食/5000円〜7000円/2〜5店舗展開)
  • 新規の若年層のお客様が増えた。
    (東京都/和食/7000円〜10,000円/2〜5店舗展開)
  • 新規来店客が増え、売り上げがアップした。
    (静岡県/居酒屋/1000円〜3000円/2〜5店舗展開)

グルメサイトでのポジティブな評価が売上向上に繋がり、とりわけ新規顧客の獲得に効果的に働いたというコメントが多くありました。まだ固定ファンの少ない新規オープンのお店や、立地的に恵まれていない飲食店は、効果的なグルメサイトの運営で新規顧客の獲得を試みることができるかもしれませんね。

78%の飲食店が今後もグルメサイトを継続利用する意向

今後のグルメサイト利用について飲食店に聞いてみたところ、全体の78%の飲食店は今後も継続的にグルメサイトを利用すると回答しました。
「もっと積極的に利用」「いままで通りに利用」と回答した飲食店は68%、利用はするが「利用頻度・予算を削減」と回答した飲食店が10%でした。
また、新たなSNS媒体に移行する意向のある飲食店は6%ありますが、全体的にみて、飲食店がグルメサイトの宣伝力・集客力を見込んで今後も利用していく傾向が続くといえます。

<飲食店の今後グルメサイトの利用意向>

飲食店の今後グルメサイトの利用意向を表したグラフ

「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」クックビズ総研調べ(2017年)

まとめ

<飲食店のグルメサイト利用実態について>

  • 70%の被調査店舗がグルメサイトを利用し、エリア別では関東エリアが84%でもっとも利用率が高い。
  • 媒体別では「食べログ(約84%)」の利用数がもっとも多く、「ぐるなび(66%)」、「ホットペッパー(35%)」が続く。
  • グルメサイトの口コミに関して、半数の飲食店はその信憑性を肯定的に捉えている。口コミ対応を具体的に講じている店舗は3割弱に留まる。
  • 口コミ対応を講じている飲食店では、主に「サービスの見直し」と「口コミ内容の社内共有」を行っている。一部恣意的に評価を作り上げる店舗も存在するが、費用対効果が認められにくいケースも。
  • グルメサイトの評価が飲食店の売上に影響を与えると7割の店舗は考えている。口コミ評価がアップして売上増となった店舗の多くは「新規ユーザーの獲得」と「既存客のリピーター率の向上」を実現。

飲食店のグルメサイト利用実態をレポートしましたが、いかがでしたか?
グルメサイトを効果的に活用して、飲食店の売上にプラスに働かせることはできそうです。今後に向けてぜひ運用の見直しを検討してみてはいかがでしょうか?

■調査概要

調査名 「グルメサイトの利用状況に関するアンケート調査」
調査対象 全国(関東、関西、東海、九州、東北、北海道)の飲食店
有効回答数 87
調査期間 2017年12月15日~2017年12月22日
調査方法 インターネット調査