(出典:http://gigazine.net/news/20120920-replicator-2/

近年話題の「3Dプリンター」。プラスチックなどの素材を何層にも出力し重ねることによって立体物(3D)を作成するプリンターです。
安価なもので5万円ほどなので、個人でも購入する人が増えており、3Dプリンター市場はますます加熱しそうです。

しかし、これまで話題に上がってきたものはプラスチックや金属、樹脂などを出力するプリンターであり、もちろん食べることはできませんでした。
そこで、こういった”食べられない”ではなく、”食べられる”3Dプリンターが開発されました。巷では、「フードプリンター」とも呼ばれています。

NASAが出資

2013年の初めに、NASAがとある中小企業に出資を行いました。
出資先は中小企業の「システムアンドマテリアルズリサーチ社」で、出資額は12.5万ドル(約1億3600万円)。

出資の目的は「宇宙空間で宇宙飛行士が新鮮で美味しいものが食べられるような3Dプリンターを開発すること」でした。
理論的にはどんな料理であっても製造することができるフードプリンターは宇宙空間での使用も期待されています。

参考:http://toyokeizai.net/articles/-/54361

SXSWでも注目

毎年、3月中旬に米国テキサス州オースティンで開催されている音楽と映画、最新技術の祭典SXSW(サウスバイサウスウエスト)でもフードプリンターは多くの注目を浴びています。

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(出典:http://us.mullenlowe.com/mullen-at-sxsw/

世界の最新技術や革新的なテクノロジーが集まるインタラクティブ部門では「Future of Food」という区画が設けられ、各社が来場者に対して自社の「食」に関するプロダクトを紹介していました。
その中でもひときわ注目されていたのがピザを出力する「BeeHex」のフードプリンターです。

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(出典:http://beehex.com/

実際にデモが行われており会場は盛り上がっていた様子です。

参考:http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/030800018/031600021/?rt=nocnt

角砂糖の美しい造形

3Dシステムズの3Dプリンター「Chefjet Pro」は角砂糖を出力します。もちろん、単なる四角の角砂糖ではありません。

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(出典:http://www.wittystore.com/chefjet%E2%84%A2-pro.html-1

ご覧のように非常に複雑な造形の角砂糖を出力します。
もちろん食べられますので、カップに入れて溶けていく様を楽しむこともできます。
人の手では難しい形を作ることができるのもフードプリンターの素晴らしいところです。

参考:http://irorio.jp/umishimaakira/20160409/313820/

ミシュラン2つ星のレストランも使用

スペイン・バルセロナHotel Artsにある「La Enoteca」はミシュランの2つ星を獲得したこともある有名店ですが、そこでは「Foodini」という3Dプリンターを使用して既に新たな料理の開発に挑戦しています。

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(出典:https://www.naturalmachines.com/

数々のミシュラン獲得レストランを手がけるシェフ・Paco Perez氏は、「料理においてイノベーションがとても重要であると考えている。創造性というのは、テクノロジーで何ができるかということと深い関係がある。テクノロジーが料理にどのように貢献で切るかは大変興味深い」と語っています。

例えば、こちらの試作品ではマッシュポテトをサンゴ形に出力しています。

スクリーンショット 2016-04-30 10.47.13

この形を手で作るのはほとんど不可能です。

この様に、世界でもトップクラスのレストランにおいてもフードプリンターは新たな価値を提供しています。

参考:http://gigazine.net/news/20160302-3d-printer-food/

フードプリンターが導く料理の未来

フードプリンターで出力される料理はまだまだ荒削りな部分が多く、特定の形を出力することはできても実際に手で作った料理のようなクオリティを再現するには至っていません。

しかし、「料理は科学」という言葉が示すように、すべての調理可能な料理をデータ化することが可能です。
細かいデータとそれを出力する技術があれば家庭で高級フランス店の味を再現することも可能かもしれません。

もちろん、外食することの意味は料理だけでなく店の雰囲気やその雰囲気の中での会話を楽しむことでもありますが、ここ十数年の間に外食産業が大きく動くことが予想されます。
その動きが「飲食界を”良い意味”で根底からひっくり返す」ことであると願わずにはいられません。