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日本では、まだ食べられるのに廃棄される食品(食品ロス)が年間で632万トンあり(データ出典:政府広報オンライン(平成28年10月11日付))、そのうちの約半分が食品メーカーや小売店、飲食店から発生しています。
小売店や飲食店では、食べられるのにもったいない、誰かに食べて欲しいと思いながら、廃棄コストをかけて処分しているのが現状です。一方で、廃棄してしまうなら食品を分けて欲しいと思う人たちも存在します。
そんな両者をつなぐスマートフォンアプリ「Reduce Go」によるサービスが、2018年4月からスタートし話題となっています。運営するSHIFFT株式会社取締役の上村宗輔さんにお話をうかがいました。

なんとかして食品ロスをなくしたい!

日本の食品ロスの中でも、飲食店が廃棄する量はそのうちの一部ですが、「Reduce Go」は飲食店が余らせてしまって廃棄してしまう食品(もちろん提供時は売り物なので食べられる食品です)を、毎月定額で食べられるサービスです。
食品ロスにイノベーションを起こすアプリとして期待を集める「Reduce Go」ですが、まずはこのアプリを開発しようと思ったきっかけから聞いてみました。

ソファーに腰掛けた坊主にめがね姿の上村さんの写真

「Reduce Go」を運営するSHIFFT株式会社取締役の上村宗輔さん(ライター撮影)

サービスを運営するSHIFT株式会社(以下、SHIFT)の経営理念は「正善なる社会活動を推進し、価値ある次世代への変革を創造します」とありますが、「Reduce Go」は、まさに経営理念を具現化して食品ロスの問題に変革を起こせるアプリです。

「世のためになるサービスをやりたいという想いで、若い頃にweb制作会社で一緒に働いていた代表取締役の武宮正宜とふたりで、2014年に弊社を設立しました。設立時には『Reduce Go』の構想はありませんでした。
ただ、私が大の料理好きで、学生時代から調理場でバイトをしていたこともあり、食品が廃棄される現場を目の当たりにして、もったいないと常に思っていました。まだ食品ロスにイノベーションが起きていないなら、自分たちでやろう!とこのサービスを開発しました」
(上村さん)

「Reduce Go」はどんなサービス?

世界的に食品ロスが社会問題となる中、すでにデンマークの「Too Good To Go」や、アメリカの「Food for All」といった、廃棄される食品をディスカウント販売する仕組みが登場して脚光を浴びていますが、「Reduce Go」はそれとはまた異なるやり方で食品ロスにアプローチしています。

「Reduce Go」は、食品ロスを削減するプラットフォームとして、食品ロスを減らしたい小売店や飲食店と、食費を抑えたいユーザーをつなぎます
2018年4月にスタートしてから、ユーザーのアカウント数はすでに7月時点で3万人、登録店舗は首都圏を中心に133店を超えています。

食品ロスを循環させることを主眼にした仕組みの図式

食品ロスを循環させることを主眼にした仕組み(画像提供:SHIFT株式会社)

「Reduce Go」の使い方は簡単です。まず、ユーザーはアプリをダウンロードして、ユーザー登録をします。ログインをすると、登録加盟店(飲食店や小売店)で発生している余剰食品のリストを見ることができます。
食品リストには、お弁当、菓子パン、レストランのバイキングメニューなど、さまざまなものがあります。リストはユーザーの位置情報の近い順に表示され、商品内容は日々変化します。
ユーザーは、気に入った食品があればアプリ画面上で選択・注文をして、受取り時間内に店舗に行って商品をピックアップします。月額料金1,980円(定額)を支払うスタイルなので、毎月初回注文時にクレジットカード決済をすれば、各店舗での商品ピックアップ時に支払いは発生しません(交通費はユーザー各自負担となります)。

サイトの使い方の流れの図式の画像

表示された周辺店舗の余剰食品から好みの余剰食品を選択。受け取り時間内に店舗に行き、注文画面を提示して商品を受け取る。(画像提供:SHIFT株式会社)

「Reduce Go」の売上は、39%が運営側の収益となり、59%は還元金として各加盟店に均等に配分されます。2%はNPOなどに寄付され、社会還元への思いが色濃く反映された仕組みとなっていると言えます。

「Reduce Go」 のユニークさとは?

ユーザーは、余剰食品をピックアップするために店舗を実際訪れることになりますが、「Reduce Go」を介して、通常の購買行動でのやりとりとは異なる、新しいコミュニケーションが生み出されているといいます。

「商品をピックアップしに店舗に行くと、店の方が嬉しそうに迎えてくださいます。『食品が余るともったいないと思っていました。ありがとうございます』と言われ、食品を受け取って帰ります。今までにない体験です」(上村さん)

「Reduce Go」では、ユーザーと店舗のコミュニケーションに金銭の直接的なやりとりが介在しません。つまり、食べ物をもらうために店舗を訪れるという新しい行動が生まれていることがわかります。

また、それまで知らなかったお店を「Reduce Go」で発見し、余剰食品のピックアップで訪問したことをきっかけに、ユーザーが再訪するケースも少なくないそうです。「Reduce Go」は、短期スパンでは日々の食品ロスを解消しますが、それだけではなく、長期スパンでは店のイメージアップや新規顧客獲得に寄与する効果があるといえます。

実際、サービスのローンチ前には、ユーザーの商品受け取り範囲は1km圏だと想定していましたが、実際は自転車やバイクを使って店舗に訪れる方が多く、商圏が意外と広かったそうです。つまり、魅力を感じれば多少遠くからでもユーザーは商品をピックアップすることをいとわないので、飲食店にとっては商機につながる可能性がより高いと言えるのではないでしょうか。

月額1,980円という価格設定にした理由

ユーザーは「Reduce Go」のサービス利用料金として、定額1,980円(税別)を月初に支払います。利用条件として、注文は1日2回までという制限はありますが、毎日利用してもOK。つまり利用すればするほど、1回あたりの利用料が安くなることになり、ユーザーにとってはお得になるのです。

ビュフェの写真

特にビュフェスタイルは余剰食品が多くなるという(ライター撮影)

「Reduce Go」アプリのリリース前からSNSなどで話題となっていたのが、この1,980円という月額料金です。Reduce Go」を最大限利用すれば、1日2食の食事を1カ月間(30日)1,980円でまかなうことができることになります。これは1食あたり33円となります。理論上での計算ですが、この料金は驚きの安さです!

「料金がユーザー様に評価いただき、ありがたく思います。1日2回まで受け取り可能というルール設定になっていますが、余剰食品が発生してはじめて提供可能になるサービスなので、常に受け取りが保証されているわけではないことを踏まえた料金設定です。また、いくら店舗が食品ロスを解消したいと思っても、ユーザーとのマッチングができて受け取りが発生しなければ余剰食品はなくなりません。いかにユーザーに利用してもらえるか、そこを重視した価格設定にしました」(上村さん)

もし仮に月額2,980円だと、金額の元を取れないかもしれないと登録を躊躇するユーザーが増えてしまうかもしれません。登録ユーザーいなければ、結局、余剰食品はなくなりません。上村さんの、余剰食品の受け取りを加速する環境を作りたいという想いを反映して、ユーザーにとっての利用ハードルを下げた価格設定になっているのです。

現状課題は参加店舗を増やすこと

2018年8月末で、「Reduce Go」のユーザー登録は3万人を超え、好調な滑り出しのように見えますが、現在の店舗数は133店。アクティブ店舗が少ないことが課題です。
通常、飲食店からの余剰食品エントリーがアプリ上に出始めるのが15時以降。ランチ営業を終えて、食品ロスが発生したタイミングです。現在では、登録ユーザー数に比べ登録店舗数が少ないため、アプリにアップされた余剰食品はあっという間になくなり、常に画面をチェックしていないと注文すらできない状況になっています。

商品の残数が減っていることがわかるスマートフォン画面の写真

16時台に100個あった余剰食品(左)が、18時過ぎには6個に減っていました(右)(ライター撮影)

飲食店・小売店が「Reduce Go」に出品するにあたっては、初期費用や月額費用などコストは発生しないので、スマートフォンがあればすぐに利用が可能になります。
「Reduce Go」を利用するメリットとしては、まず第一に、食品廃棄量が削減することで廃棄物の処理費を抑えられることがあります。また、1日でも受け渡し実績がある登録店に対しては日割りで還元金が支払われ、受渡しの日数が多いほど還元金額が増える仕組みになっています。食品を廃棄するよりも、少額でも収入につながるメリットがあるのです。
こうした経済的なメリットを訴求することで、「Reduce Go」登録後もアクティブにサービス活用する店舗を増やしていきたいと上村さんは言います。

ただし、参加店舗数を増やすための課題について、次のような考えも。

「飲食店の業務の中で予約管理は必須ですが、『Reduce Go』は必須業務ではありません。現在の登録店舗は、食品ロスへの課題意識がある方を中心に積極的に活用していただいていますが、さらにアクティブにサービス活用いただくためには、業務負荷をできるだけ軽くする工夫が欠かせません。
あらかじめメニュー登録をしておけば、当日作業は在庫数だけを入力して公開するだけの運用で済むのですが、それでも、従来の店舗オペレーションに新しい追加ステップが入ることにはなってしまいます。こうした作業負荷があることが、なかなか拡大しない理由の1つと思っています」
(上村さん)

また、CSR(社会貢献事業)や倫理モラル的な動機があれば、意識の高い飲食店は「Reduce Go」に賛同してくれるだろうと考えていたところ、サービスをスタートしてから初めて見えてきた課題もあったと言います。

「そもそも廃棄食品をユーザーに渡すことが、ブランドイメージを損ねる可能性があると危惧する飲食店があったのです。これは特にチェーン店や、老舗の良店などにみられる心理的な障壁でした。」(上村さん)

楽観的に考えると、こうした全てのことはユーザーがサービスを支持しているからこそ発生する問題とも言えます。上村さんが「小さな店舗をコツコツ増やし、大きな社会変革の流れを作りたい」と今後の方針を語ってくれました。小さな流れが大きくなった時、食品ロスの現状にイノベーションが起きたことを誰もが実感するのでしょう。

SHIFTの社是に「誠実を旨とし、不当な儲け主義を廃する」とあります。上村さんのお話や「Reduce Go」の仕組みから、社会変革に対する思いの強さと誠実さが伝わってきました。日本の余剰食品をなくすために、頑張って欲しいです!

■取材協力

サービス名 Reduce Go