食べ物をゴミ箱に捨てている写真

食品ロス(フードロス)」とは、食べられるのに捨てられてしまう食品をいいます。
消費者庁と農林水産省のデータによると、日本で発生する食品ロスは年間約632万トン。わかりやすく換算すると、日本人全員が一人当たり毎日ごはん茶碗一杯分のごはんを捨てていることになります。
しかも全体の約5分の1に当たる120万トンの食品廃棄物は外食業界で発生しており、飲食店での食べ残しや売れ残った食材、賞味期限切れの商品などが多くを占めています。

多くの食材を他国から輸入しているにもかかわらず、大量に廃棄している日本の現状。環境面でもコスト面でも、多大な損失となる「食品ロス」の問題は、近年先進国を中心に多くの関心を集めています。
今回は「食品ロス」その問題をどのように受け止め、実際にどんな対策を取っているのか、日本全国の飲食店従事者を対象に実態調査アンケートをクックビズ総研が実施しました。

「お客様の食べ残した料理の持ち帰りサービス」実施店は33.5%

食品廃棄の大きな原因のひとつが「食べ残し」です。
では、飲食店で食べきれなかった料理を自宅に持ち帰ることができれば、問題は解決するのでは?と思う方も多いでしょう。アメリカなど海外では、食べ残しを客が持ち帰るための袋や容器を「ドギーバッグ」と呼び、一般的に持ち帰りが行われている国もあるようです。

男性が女性に紙袋を渡している写真

では、日本ではどうでしょうか?
株式会社リクルートライフスタイルが2018年5月に発表した消費者向けのアンケート調査では、消費者の87.6%が「食べ残した料理の持ち帰りに賛成」していましたが、今回のアンケート調査では、食べ残しの持ち帰りサービスを実施している飲食店は全体の33.5%に留まりました(ベーカリーやテイクアウト専門店を除く)。
消費者側の希望と飲食店側の実施状況との間に大きな差があることが分かります。

Q.あなたのお店では、食べ残しの「持ち帰りサービス」を実施していますか?

食べ残しの「持ち帰りサービス」を実施しているかを表した円グラフ「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

62.2%がお客様に「食べ残した料理の持ち帰りサービス」を提供したい

一方、現在「食べ残しの持ち帰りサービス」を実施しているかどうかにかかわらず、「食べ残した料理の持ち帰りに賛成」するかどうかを聞いたところ、62.2%の飲食店従事者が「賛成」と回答しました。
ポジション別で見てみると、飲食店経営者の81%、続いて、一般の店舗スタッフが59%、店長・エリアマネージャーが48%、食べ残しの持ち帰りサービスに賛成しています。

Q. あなた自身は食べ残しの持ち帰りサービス実施に賛同しますか?(全体)

食べ残しの持ち帰りサービス実施への賛否について表した円グラフ「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

Q.あなた自身は食べ残しの持ち帰りサービス実施に賛同しますか?(ポジション別)

ポジション別の持ち帰りサービスへの賛否を表した棒グラフ「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

この結果から、食べ残しの持ち帰りには、飲食店従事者が決して消極的ではないことが分かります。しかし、現実的にはいろいろなハードルがあってやむを得ず持ち帰りサービスを実施できていない店が多いのではないでしょうか。ここからは、実施ができない事情について、くわしく見ていきましょう。

食べ残し持ち帰りの最大の懸念点は「衛生問題」

食べ残しの持ち帰りサービスを実施していない飲食店にその理由について聞くと、「衛生上の懸念」が81.4%と圧倒的でした。続いて「お客様に告知していない」が13.2%、「詰め合わせの対応の手間」が10.1%、「容器や袋の購入コスト」が9.5%などとなっています。

Q.食べ残しの持ち帰りサービスを実施しない理由は何でしょうか? (複数選択)

食べ残しの持ち帰りサービスを実施しない理由を表した棒グラフ「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

衛生面を危惧する飲食店では、持ち帰った後の料理の品質管理・品質維持を懸念しているようです。持ち帰った後の食べ物の腐敗、保存状態の悪さが原因で起こる食中毒など、トラブル発生に不安を感じている店のコメントが目立ちました。

<食べ残しの持ち帰りサービスに対する懸念(飲食店からのコメント)>

  • 「持ち帰りは、持ち帰っても良いかたちで料理提供(調理)していればいいが、そうでない場合(生野菜、半生調理など、すぐ食べることを前提に調理しているものも持ち帰るとなると)、食中毒の危険性が高くなります。店舗の危機管理を考えると廃棄はやむをえない。」(東京都/ファストフード)
  • 「お持ち帰りして、変質してしまったものを食べたお客様からのクレーム処理、SNSなどの書き込みが心配です。」(京都府/カフェ)

また、店のブランドイメージを維持するために、あえて持ち帰りを断っているお店もあります。

  • 「(持ち帰りをすると)味が落ちます。持ち帰った料理を、まだ来店したことがない方に食べさせ、その方に味の落ちた料理で当店を判断されたくないです。」(東京都/居酒屋)

食品ロス対策を実施している飲食店が93.7%

食品ロス対策のひとつとして、食べ残しの持ち帰りサービスについてここまで取り上げてきましたが、これは顧客向けの取り組みです。ほかにも、売れ残り、期限切れ、過剰な仕入れ、仕入れミスなどによる食材廃棄を減らす取り組みは、店の運営改善努力で具体的に対策が可能でしょう。

Q.食品ロス対策を講じていますか?

食品ロス対策を講じているかどうかを表した円グラフ「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

食品ロスの削減に向けて対策を行っている店は飲食店全体の90%以上で、食品ロス問題への意識が高いことが分かります。

具体的にどんな対策を行っているかアンケートで聞いたところ、最も多く挙がった取り組みが「売れ行きを事前に予測し、仕込み量をコントロールする」(68.8%)でした。ほかにも、「余った食材をまかないで食べる」(59.1%)、「余剰食材の再加工」(30.8%)、「メニュー数を絞り込んで仕入れ対策をする」(21.2%)、「余った食材を従業員に持ち帰ってもらう」(20.7%)、「売れ残った商品をディスカウントして売り切る」(12.5%)などが続きました。

Q.具体的にどのような(食品ロス)対策を取っていますか?(複数選択)

具体的な食品ロス対策を表した棒グラフ「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

「飲食店の食品ロスに関する意識調査」クックビズ総研調べ(2018年)

ほかにも、各飲食店が実施している具体的な食品ロス対策をご紹介します。

<食べ残し削減の具体策>

  • 「お客様の事前情報をスタッフが共有することで、コース料理のボリュームを調整し、極力食べ残しの無いように対応しています。」(福岡県/洋食全般)
  • 「セットメニューのご飯や麺の量を減らし、おかわり無料としています。」(沖縄県/居酒屋)
  • 「食材端材の活用 ・ポーションの適正化 ・添え物の減量。下げ物を観察して、よく残る食材は使わない・減らすなどの対策をしています。」(新潟県/居酒屋)

<売れ残り削減の具体策>

  • 「仕入れ量を徹底管理しています。仕込み日別に材料は小分けで冷凍保存し、食材余りが出ないようにしています。」(愛知県/イタリアン)
  • 「(仕込み食材が長持ちできるよう)真空チルド・加熱殺菌・低圧調理法による殺菌調理などの応用。」(沖縄県/日本料理)

こうした飲食店側の努力以外にも、お客様との意思疎通、消費者への呼びかけも必要だという意見もありました。

<飲食店の思い>

  • 「食品衛生上問題が少なく、又はお客様との間で合意が得られれば、持ち帰りも可能かと考えています。まだ食べられるものを廃棄するのは、店としても気が重いです。」(埼玉県/和食)
  • 「経営の観点からも、倫理的な観点からも、(食品ロスに)良いことは何もないと考えます。極力ロスが出ないような仕入れ制限や、二次加工することで、店側の食品ロスは現在ほとんど出ていません。宴会等では残飯というロスが出てしまうのは否めませんが、保存料を使用していない以上、積極的にお持ち帰りいただくことはしていません。店側の努力や、消費者側のもったいない精神、双方の努力が無ければロスは減らないと考えます。」(愛知県/居酒屋)

パーティーの食卓の様子の写真

まとめ

今回のアンケートでは、飲食店側の食品ロスに関する意識を調査しました。
主なポイントとしては、

  • 食べ残しの持ち帰りサービスを提供する飲食店が全体の約3割。衛生上の懸念が同サービスの提供を阻む一番のハードルに。
  • 実際の店舗での実施可否に関わららず、食べ残しの持ち帰りサービス提供に賛同する飲食関係者は6割を超える。
  • 9割を超える飲食店は食品ロス対策を講じている。正確な売上予測を立て、仕入れをコントロールすることで売れ残りや期限切れを回避することが食品ロスの削減となる。

外食産業で食品ロスを減らすためには、飲食店側と消費側双方の理解と努力が必要です。今回のアンケート結果からは、飲食店側の意識や努力を具体的に紹介することができましたが、そうした取り組みが多くの消費者に伝わり、さらに社会全体で食品ロスの事態を改善していく動きにつなげていけたら幸いです。

■調査概要

調査名 「飲食店の食品ロスに関する意識調査」
調査対象 全国の飲食店
有効回答数 222
立地内訳 首都圏89、中京圏27、近畿圏57、地方圏49
展開店舗数内訳 1店舗:55、2−10店舗:85、11−100店舗:57、101店舗以上:25
調査期間 2018年6月14日~2018年6月21日
調査方法 インターネット調査