
コロナ禍において加速しているといわれている飲食店のDX化。飲食店を経営している方、もしくは飲食業界で働いている方であれば、一度はDXという言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この記事では、これからDXの導入を検討している飲食業界の方のために、DXとはどんなものなのか、どのように導入できるのかといったことを解説します。導入のポイントも紹介しますので、参考にしてみてください。
目次
そもそもDXとは?飲食店でも導入が進んでいる?
まず、「DX」という言葉を聞いたことはあるものの、よくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そんな方のために、まずはDXについての基本情報をお伝えします。
DXとは?
「DX」とは「Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)」の略称です。
デジタル技術を活かしてビジネスモデルを再構築する仕組みのことを指します。
身近なDX導入の例を挙げると、飲食店の支払い時に使用される電子マネーやPOSレジ、タブレットでのオーダーなどがあります。
飲食店でDXが進んでいる
飲食業界は慢性的な人手不足の問題を抱えています。そのため、飲食店のDXは人手不足、業務負担増加の解決策として注目を集めていました。
しかし、2020年コロナ禍において飲食店の状況は大きく変わりました。「密」を避けるためにスタッフの人数を減らし、人との接触を最小限に留めるための工夫が求められています。
そのため、飲食業界では、コロナウィルスと共生しながら「いかにして生き残るか」を考えることが必要になっています。
このような状況下で、飲食店の生き残りをかけてDX化はさらに注目されるようになりました。ほとんどの飲食店でITサービスが利用されるようになり、DXに着手し始めた飲食店も多くあります。
飲食店でDXを取り入れるメリット
飲食店でDXを取り入れることには、以下のようなメリットがあります。
業務負担の削減
予約や注文への対応などスタッフのオペレーションが自動化すれば、業務負担が減ります。そのため、1人のスタッフが抱える負担が減り、より少ない人数のスタッフでお店を回せるようになります。
集客力アップ
DXを導入することで、どの時間帯にどれくらいの年齢層の顧客が来店しているのか、また人気商品は何なのかといったデータを蓄積することができます。
このような顧客情報を収集し分析することで、効果的な販売促進に役立てることができるのもメリットです。
利便性の向上
コロナ禍において必要な情報を顧客がオンラインで受け取ることができれば、利便性が向上します。
3密を避けるために混雑していない時間帯にお店に行きたいと考えている人は少なくありません。顧客が店舗の混雑情報をオンラインで入手できるようにしておくと、店側・顧客側の双方にとって役に立ちます。
飲食店でDXを取り入れる方法
飲食店でDXを導入する場合、以下の手順を踏むのがおすすめです。
- 現状の店舗運営における課題を把握する
- 課題を解決できるITツールを選ぶ
- ITツールの活用方法や活用プロセスを明確化する
- 「2.」と「3.」をふまえ、最適なITツールを決定する
- 導入・実施
店舗の規模やビジネスモデルによって課題は異なるため、「1.」の現状の課題を把握することは大切です。その上で、「3.」のどのようにITツールを活用していくかという点を考えておきましょう。
そうしなければ、DXを導入したものの期待していたような効果が得られないということになるかもしれません。
他店の成功例が自店の成功につながるとは限らないため、まずは自店の課題を把握することから始めましょう。
飲食店のDX導入事例
実際にDXを導入した飲食店の事例を紹介しますので、課題と解決策を照らし合わせ、導入のヒントにしてみてください。
ゑびや大食堂
三重県伊勢市にある老舗飲食店「ゑびや大食堂」では、DX導入によって売り上げアップに成功しました。
ゑびや大食堂が行ったのは、画像解析AIと来店予測AIを組み合わせた来店客数の予測をもとに、食材の仕入れやシフトを作成することです。
その結果、食材の仕入れのロスを減らすことができ、混雑などに対して十分な食材の準備が可能になりました。また、適切な時間に適切な人数のスタッフを配置できるようになったことで食事の提供スピードが改善され、クレーム削減にもつながったと報告されています。
なお、具体的な導入内容や改善効果についてのインタビューはこちらをご覧ください。
CRISP SALAD WORKS(クリスプサラダワークス)
東京都を中心に展開しているカスタムサラダ専門店「CRISP SALAD WORKS(クリスプサラダワークス)」の事例も紹介します。
CRISP SALAD WORKSでは、「熱狂的なファンを作る」をコンセプトにモバイルオーダーやセルフレジを組み合わせた完全キャッシュレス・レジレス店舗を展開しています。
デジタル化できることをすべて機械に任せることで、接客など、人だからこそ提供できる価値を高めることができるようになりました。
スタッフが1人1人のお客様にていねいに接客できるため、CRISP SALAD WORKSの熱狂的なファンの増加につながっています。
飲食店でDXを導入するときのポイント
飲食店でDXを導入するときのポイントを紹介します。
課題の優先順位をきめる
DXの導入には費用や時間がかかるため、計画していることすべてを一度に行うことは難しいでしょう。
そのため、DXを取り入れるための課題抽出を行う際は、どの課題に先に着手するか優先順位を決めておくことが重要です。
優先順位を決めて段階的に導入することで、必要となる費用や時間を計画的に使うことができ、新しいシステムを覚えるといったスタッフの負担を分散することができます。
売上向上や業務効率化につながるかを検討する
それなりの費用をかけてDXを導入したものの、思うような成果につながらないこともあります。
そのため、ITツールの導入を検討する際は、
- 導入後に売上が向上するか?
- 導入することで業務効率が下がらないか?
などの観点が重要です。
あらゆる可能性を考えて導入が売上向上や業務効率化につながると判断した場合に導入を決めるのがおすすめです。
「体験的価値」を意識する
外食において、「家庭内ではできない貴重な体験」は大きな価値でした。
たとえば、国産のオーガニック食材にこだわった料理やヴィーガンメニューなどを自宅で食べるのは難しいでしょう。また、同じ料理でもプロの料理人による料理だからこそ出せる味わいもあります。
自炊が当たり前の時代でも、外食でしか味わえないような料理を提供することが消費者のニーズのひとつになっています。
近年のコロナ禍において外出する機会が減り、「おうちごはん」が当たり前になってきている今でも、その価値は重要だといえるでしょう。
本来、こうした実店舗の食体験やクオリティをデジタルで補完することはできないと言われています。
しかし、DXを活用することで、その体験的価値を可能な限り高めたり、自炊では再現できないようなクオリティのものを提供したりすることができるかもしれません。
例えば、自宅で飲食店の料理を食べたいという人向けにモバイルオーダーを導入したり、POSレジや注文システムなどから顧客情報を収集し、分析してお店の集客に活かすこともできます。
今後DXの導入が進んでいくことによって、これまで外食でのみ実現できていた「体験的価値」の形が変わっていくのかもしれません。
編集後記
コロナ禍において飲食業界の状況は大きく変化しました。日常生活の不要不急な外出が制限され、外で食事をする機会も大きく減った中で、外食に求められているニーズも変わってきています。
また、店舗内が密にならないような工夫、できるだけ人との接触を避けるための工夫も求められています。
飲食店におけるDXの導入は、コロナ禍での飲食店の生き残りのため少しずつ進んできました。業務負担を減らし、集客を高めるために役立つ顧客情報を蓄積することができ、利便性の向上が目指せます。
とはいえ、ITツールには多くの種類があり、どのITツールを導入するかは店舗の抱えている課題やビジネスモデルなどによって異なるという店を覚えておきましょう。
この記事で紹介した方法を参考に、自店にとって良いツールを段階的に導入することをおすすめします。