イメージ:テーブルの上に並べられた、唐揚げやポテトサラダなどのお惣菜

食事の形には、さまざまな種類があります。外で食事をする「外食」、自宅で料理をして食事をする「内食」、そして外食と内食の中間にある「中食」です。

中食はテイクアウトやデリバリーサービスの普及によって一般化しつつありましたが、近年、コロナ禍によってさらに注目を集めています。

この中食ブームはどのような要因で起こっているのでしょうか。

この記事では、中食ブームの要因と中食市場へ参入するメリット・デメリットに加え、参入する際のポイントについて紹介します。

中食はなぜブーム?

中食がブームとなっている背景にはさまざまな理由があり、コロナ禍における内食需要の高まりも一因です。

総務省が実施している「家計調査」によると、2018~2020年の期間において、調理食品(中食)の支出が伸びているという結果が出ています。

ここからは、中食とはどのような食事のことを指すのか、ブームのきっかけとなった理由はどのようなものがあるのかについて紹介します。

中食とは?

中食とは、外食と内食(自炊)の中間を意味する言葉です。飲食店やスーパーなどで購入した出来合いのものを、自宅に持ち帰って食べることを指します。

飲食店でのテイクアウトをはじめ、デパ地下などで購入したお惣菜や冷凍食品なども中食に分類されます。

また、テイクアウトだけでなく、デリバリーで注文したものを家で食べることも中食にあたります。

中食ブームのきっかけ

中食がブームとなったきっかけとして、2019年10月から導入された「軽減税率」が要因のひとつと考えられます。

軽減税率は消費税に適用され、店内飲食では消費税率が10%になるものの、テイクアウトであれば8%に軽減されるという税制度です。

消費者にとっては持ち帰って食べた方が費用を安く抑えられるメリットがあるため、テイクアウトによる中食を選択する人が増加しました。

最近では、コロナ禍における外出自粛やテレワークの増加、飲食店の時短営業などが重なったことも要因のひとつだといえます。

デリバリー事業者の増加やテイクアウトを取り扱う店舗の増加によって、多くの飲食店が中食の品質を争うようになりました。

消費者はより気軽に中食を選択できるようになり、中食ブームに拍車がかかっているといえるでしょう。

中食市場に参入するメリットとデメリット

イメージ:エプロンをつけた女性が悩んでいる

中食市場に飲食店が参入するメリットとデメリットについて解説します。

実際に参入に踏み切る前に、メリットを活かしてデメリットをカバーしながら営業する方法を模索しましょう。

メリット

中食のメリットのひとつは、コロナ禍がきっかけで一般化しつつある新しい生活様式にも対応できることです。

テイクアウトやデリバリーなどによって、外食に対する不安が消えない現在でも、お客様は飲食店の味を自宅で楽しむことができます。

中食に参入していなかった飲食店は、中食サービスを導入することで新規顧客の獲得が見込めるでしょう。

また、飲食店の中食への参入は現在もっているノウハウを活かせることもメリットです。現在あるメニューをテイクアウト用に変更するのであれば、新たな調理方法や技術を大きく変更する必要はありません。

導入にかかる負担は容器代やPOP・メニューの作成など、比較的抑えられることもあるでしょう。

このように、既存の飲食店から新たに参入しやすいことも、中食が注目されている理由のひとつでしょう。

デメリット

中食のデメリットは、店内飲食と違ってお客様に出来立てを食べてもらうことができない点です。

持ち帰ったり配達したりしている間に冷めてしまうため、再加熱してもおいしく食べられるメニューを考える必要があります。

また、店内飲食のように料理と一緒にドリンクやデザートの注文が入ることは少ないため、客単価が上がりにくいことにも注意しなければなりません。

ドリンクのように高い利益率のあるメニューの注文が少ないため、売上は上がっても利益が上がりにくい傾向があります。

利益を上げるために数を販売しながら、再加熱もしくは冷めてもおいしいメニューを提供できるように意識することが重要です。

飲食店が中食参入するときのポイント

イメージ:男性スタッフよりテイクアウト商品を受け取る女性客

既存の飲食店が中食に参入する場合には、どのようなポイントを押さえておくべきなのでしょうか。

ここからは、飲食店が中食事業を始める際に把握しておきたいポイントや注意点について紹介します。

営業許可の確認

飲食店を経営している事業者が中食に参入する場合、営業許可の種類について確認しておかなければなりません。

たとえば、惣菜のみのテイクアウトであれば「飲食店営業」の許可で対応できますが、ご飯付きのお弁当を販売する場合には「仕出し営業」の許可が必要です。

飲食に関する許可は、取り扱う商品・メニューの種類によって非常に細かく分類されています。

そのため、新たな事業展開を行うときや取り扱うメニューを変更する場合には、最寄りの保健所と相談しながら手続きを進めましょう。

衛生管理に注意

中食に参入する場合、調理したものをその場で食べてもらう店舗よりも、さらに衛生管理に注意する必要があります。

調理から食べるまでに時間が空くことから、食中毒のリスクがあるためです。

食中毒予防の3原則として「つけない」「ふやさない」「やっつける」の3つのポイントを押さえ、食中毒の原因菌が入らないように心掛けましょう。

それぞれのポイントは以下のとおりです。

「つけない」

器具を使い分けて生の肉や魚を扱うものと分離すること、こまめに手洗いを行い、手で食材に触れるときは手袋を使用することがポイントです。

「ふやさない」

食中毒の菌が繁殖する温度を避け、10℃以下もしくは65℃以上になるように食材の温度管理を行う必要があります。

「やっつける」

中心部まで食材を加熱し、食中毒菌を殺菌するように意識しなければなりません。

刺身などの生ものの提供は避け、サラダなどの生野菜を提供する場合は調理器具を分け、食品殺菌用の薬剤などを使用して殺菌処理したものを提供するなどの工夫を行いましょう。

カロリーや栄養バランスを考慮したメニュー

中食を利用する消費者の中には、カロリーや栄養バランスが気になるという人も多くいます。

サイドメニューに野菜を取り入れた一品を添える、カロリーに配慮するなど栄養バランスを考慮したメニューを検討してみましょう。

ヘルシーなものや栄養バランスに優れたメニューは、他店との差別化にも役立ちます。

環境への配慮

近年は、社会全体で環境問題への意識が高まりつつあります。

テイクアウトやデリバリーでは使い捨てのプラスチック容器の使用が増えるため、必要以上にプラスチックゴミが発生しないように配慮する必要があります。

紙製のお弁当箱やカップを使用する、必要な人のみに箸やストローを提供するなど、プラスチック製品の使用を抑える工夫はできないか、検討してみましょう。

編集後記

近年、軽減税率の導入や働き方の多様化によって、お店で購入した料理を自宅で楽しむ「中食」のニーズが高まっています。また、コロナ禍の影響でテイクアウトやデリバリーを導入する飲食店が増え、中食市場はさらに進化を遂げています。

飲食店が中食に参入するメリットは、これまでのノウハウを活かしながら導入できる点です。また、お客様は店舗で食べるよりも気軽に店の味を楽しめるため、これまで来店に至らなかった新規顧客の獲得につながる可能性もあります。

ただし、新たに中食サービスを提供する場合は、営業許可の確認や衛生管理は徹底するようにしましょう。