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今年で8回目を迎えたベルギービールの祭典
開催されるごとにその規模を拡大し、今や東京を含む8都市で計48日間開催される「BELGIAN BEER WEEKEND ベルギービールウィークエンド」。毎年恒例のイベントですが、やはり今年はユネスコの無形文化遺産認定直後の開催ということで期待が膨らみます!
お酒の量は飲めないけど、爽やか系、カクテルのようなフルーティ系などバリエーションに富み、喉越しの良いベルギービールは好きという人は多いのではないでしょうか。折しもこの日は日中蒸し暑く、夕方からは涼風、屋外でビールを愉しむには絶好のコンディション。15時半ごろ会場に着きましたが、既にかなりの人出でした。
まずはチケット売り場でスターターセット3,100円を購入。オリジナルグラス、飲食用コイン11枚、イベントガイド&ポケットガイド、記念バッジとおまけのフリスクが入っています。
このグラスをMYグラスとして、会場内に設置されたグラスリンサーで洗いながら飲んで回り、ビールやフードを買う際は専用コインを使用するという仕組みです。リンサーはグラスを置いて強めに押すと、下からシューっと水が出てきます。グラスは持ち帰りOK。
ベルギーは、人口約1,000万人の小さな国(参考までに東京都の人口は約1,300万人)。しかしビールの醸造所は200もあり、なんと1,500種類以上のビールが造られている世界トップクラスのビール大国。そこから選りすぐりの75種類+日時によってランダムに登場する32種類=計107種類がやって来ているわけですから、どう選んでいいか迷います。
そこで会場では全ビールを11タイプに分類して、販売テントやイベントガイドで色別に表示していました。
会場限定や新登場ビールに注目
せっかくの機会、ここでしか出会えないビールを飲まなければもったいない!とプレス資料とポケットガイドを熟読し、一杯目は今イベント初登場 兼 東京会場限定のビールをセレクト。
キュベ デ トロールス CUVÉE DES TROLLS
アルコール7.0% フランス語で『トロールのワイン』というかわいい名前のスペシャル・ビール(カテゴリー分類に当てはまらない、その土地や地域の風土が反映されたビール)。
ガイドの説明によれば、2000年にベルジャンクラフトの先駆けとして醸造されたビールで、フィルターを通していない無濾過ビール、霞がかったブロンド色、酵母とドライオレンジピールに由来する柑橘系の香りが特徴とあります。
早速グラスに鼻を近づけ深々吸い込んでみると、ほんの少し苦みばしった香ばしい香りが。しかし一口ゆっくり口に含むと、なんて柔らかでまろやか!後からオレンジピールの仕業と思われるほのかな甘みもやって来ますが、後味はさっと引いてさっぱり。トロールはなんて素敵なお酒を造ったのでしょう!
ちなみにベルギービールは日本のビールのように一気に飲んではNG。まずは香りを嗅ぎ、口に含んだらゆっくり舌の上で転がしながら味わうもの。そう、ワインと同じように時間をかけて味わうのが流儀なのです。
ドイツビールの原料が「麦芽・ホップ・水・酵母のみ」と厳しく決められているのに対し、ベルギービールはこの規制が緩く自由度が高いのが特徴。ゆえにフルーツを使ったビールがたくさんあります。バナナやマンゴーも捨て難かったですが、やはりピンクのビールが飲みたい!
リーフマンス LIEFMANS
アルコール3.8% チェリーをベースに18か月間熟成させた後、ストロベリー、ラズベリー、チェリー、ブルーベリー、エルダーベリーのフレッシュジュースをブレンドして造ったというまるでベリーのお祭りのような一杯。
ベリーの甘酸っぱい香りがぐわーっと鼻孔を襲い、香りがこんなに強いなら味はいかに?と口に含んでみると、甘いことは甘いが香りほどではなく、実に爽やかな飲み心地。キールやスパークリングの代わりに食前酒にいただきたいです。
最後に、ヨーロッパのビールの歴史を語る上で修道院系のビールは外せません。トラピスト・ビールかアビィ・ビールもいただきたい!
セント・ベルナデュス アブト ST.BERNADUS ABT
アルコール10.5% 東京会場限定のアビィ・ビール。元々世界一のビールと言われる銘柄を作っていた修道院からレシピを与えられ、1946年に醸造を開始したという謂れを持ち、ビール通や評論家の間では世界のベストビールの一つとして知られているそう。
そんなに凄いの?とまずは香りから。ビールらしい麦芽の渋めの香り、でも強すぎず非常に落ち着いています。口に含むと、渋みと深みのある分厚い味がふわぁっと口一杯に!日本のビールにありがちな妙な苦味や酸味は一切なく、ただひたすら旨味のみ。その後からほのかな甘みが訪れます。宣伝文句の「スパイシーな長い余韻」とはこのことでしょう。
種類の多さで群を抜くべルギービールですが、ただいたずらに銘柄が多いわけではなく、それぞれに個性があり、一本一本まったく味が違うという凄さを改めて感じさせられました。
食文化まで含めて世界無形文化遺産
イベントステージではベルギー人スタッフによるトークがスタート。流暢な日本語で観客の笑いを誘いつつ、ビールの発酵のしくみなど、ベルギービールの基礎知識をわかりやすく話してくれました。
次にオープンニングセレモニーがスタート。ベルギー大使をはじめ、林文科省大臣など豪華メンバーがずらり。大使のスピーチでは「世界遺産に登録されたのはビールだけではなく食文化も含めて。フードも選りすぐりをベルギーから持ってきているのでぜひ味わって!」とビールに欠かせない名物料理もアピール。
ベルギー大使の言葉にほだされ(笑)はちきれそうな本場ソーセージも追加購入。セント・ベルナデュス アブトは購入してから少し時間が経っていましたが、ソーセージと一緒に美味しくいただきました。ぬるくても美味しい(モノによってはぬるい方が美味しい)、一杯を時間をかけて味わえるというのもベルギービールの醍醐味!
このイベントのもう一つの楽しみはクールなライブ。初日はベルギー・アントワープ出身のラッパー DVTCH NORRIS(ダッチ・ノリス)が登場。まだ木曜だけど飲んじゃえ―!という雰囲気むんむんの会場に響き渡る重低音は最高!
ベルギービールの特徴は、何よりもその豊富な種類にあります。ベルギービールの原材料は一般的な大麦だけでなく、小麦、ハーブ、スパイス、フルーツなど多種多様。発酵方法も4つあり、野生酵母を使って自然発酵させるというものまで。
聖杯型、チューリップ型など違った形のグラスをビールに合わせて使い分け(イベントでは無理ですがビールレストランではおなじみ)、コースターも銘柄に合わせ趣向を凝らす。これらもその多様性の現れなのではないかと感じました。多様性をよしとするベルギーとベルギービールの懐の深さに酔いしれたイベントでした。