530weekのロゴ画像

毎年5月30日は「ごみゼロの日」とされていることを知っていますか?
5(ご)3(み)0(ゼロ)の語呂合わせがそもそもの始まりで、現在では環境省や自治体などがこの日を起点に環境美化のキャンペーンなどを行っています。

2019年5月30日「ごみゼロの日」に、「サーキュラーエコノミー」をテーマにしたイベント、「530week conference 2019」が開催されました。「サーキュラーエコノミー」とは何なのか?飲食業界はどのように関わっているのか?循環型ビジネスを実践している企業のメンバーが登壇した、トークセッションの内容を中心にレポートします。

「530week conference 2019」とは?

「530week conference 2019」は、有志によるコミュニティ「530week」が主催するカンファレンスイベントです。
「530week」は、渋谷と原宿を結ぶ路地・キャットストリートでの清掃活動「CAT street clean up」をきっかけに発足しました。

開会のスピーチをする中村さんの写真

「530week conference 2019」で開会のスピーチをする、中村元気さん

発起人の中村元気さんは、2014年にこの清掃活動を開始。消費の中心地とも言える東京・原宿で「消費」について考えよう、という思いから、通りのクリーンアップを始めました。2018年には「530week」を立ち上げ、イベントを開催。 “0waste(ゼロウェイスト)”をコアコンセプトに、「ゴミを出さない経済循環」を提案しています。

テーマは「サーキュラーエコノミー」、渋谷の2会場で行われたワークショップとセッション

「530week conference 2019」のテーマは「サーキュラーエコノミー」です。
イベントは、渋谷のブティックホテル「TRUNK(HOTEL)」と、明治通りとキャットストリートが交差するロケーションにある複合施設「SHIBUYA CAST.」の2会場で開催されました。
「TRUNK(HOTEL)」では、企業のビジネスモデル事案をサーキュラーエコノミー化させるプロセスを実践的に学ぶワークショップを開催。「SHIBUYA CAST.」では、サーキュラーエコノミー型のビジネスを展開する企業の代表者が登壇するトークセッションが行われました。

まずは、イベント開会に際して行われた基調講演の内容からご紹介しましょう。

■「サーキュラーエコノミー」とは?日本の現状は?

基調講演は、「サーキュラーエコノミーの潮流と日本企業のチャレンジ」と題し、社会価値の創造を踏まえた企業変革に取り組むコンサルティング会社Monitor Deloitteの日本リーダー・藤井剛さんがスピーチしました。

Monitor Deloitteの藤井さんによる講演の様子

Monitor Deloitteの日本リーダー・藤井剛さんによる基調講演

人口の爆発的な増加や気候変動等によって、人間が生活していくための資源が足りなくなる未来が予測されています。「2030年までには、地球が2個あっても足りない」(WWFインターナショナルのレポートより)という危機的なレベルです。
「サーキュラーエコノミー」とは、再生し続ける経済環境。これまで活用されず無駄になっていた資源を循環させて利益を生み出すビジネスモデルです。大量消費社会の限界が見えてきた今、生産と消費のあり方を変革することが必要であり、「サーキュラーエコノミー」は持続可能な経済を実現する可能性を秘めた概念です。

欧州ではプラスチックを中心に、再生材利用のルール作りが進み、NIKEやPHILIPS、IKEAなど、資源循環型のビジネスモデルを実践する企業も出てきています。
日本はこれまで、省エネ技術やペットボトルのリサイクル率の高さなど、他国に優位な面もありましたが、現在では、再生エネルギーの導入やマテリアルリサイクルの分野で立ち遅れているとも言えます。

藤井さんと坂野さんが舞台上でセッションしている様子

基調講演後は質疑応答も行われた。Monitor Deloitteの藤井剛さん(壇上左)とNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー 理事長・坂野晶さん(壇上右)

これまでは、ターゲットとなる顧客の課題解決を目指し、機能・品質・価格で競争する“エゴシステム”が主流でしたが、これからのビジネスは、社会が抱える課題の解決が求められます。機能・品質・価格に加えて、社会課題を解決する大義、ルールや新たな秩序を創造する“エコシステム”が望まれる。企業の戦い方が変わってきているんです」(藤井さん)

■循環型のビジネスモデルを考案する実践的なワークショップ

基調講演の後は、ワークショップとトークセッションが始まりました。

「TRUNK(HOTEL)」の外観の写真

ワークショップの会場となった「TRUNK(HOTEL)」

ワークショップの会場となった「TRUNK(HOTEL)」では、参加者とモデレーターがグループを作り、協力企業が提供した事例をサーキュラーエコノミー化させるアイデアを出し合いました。このワークショップを監修したのは、NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー 理事長・坂野晶さん。参加者はワークショップに参加することで、再生し続ける循環型経済の理解を深めました。

サーキュラーエコノミーに取り組む企業によるトークセッション

「SHIBUYA CAST.」では、サーキュラーエコノミー型ビジネスを展開する企業担当者によるトークセッションが行われました。

「SHIBUYA CAST.」の入り口の写真

トークセッションの会場となった「SHIBUYA CAST.」

■サーキュラーエコノミーの5つのビジネスモデル

トークセッションは、サーキュラーエコノミーの推進に注力するコンサルティング会社・アクセンチュアが提唱する、サーキュラーエコノミーの概念を事業化するためのビジネスモデルをテーマに掲げました。
そのビジネスモデルとは

  1. 再生型サプライ
  2. 回収とリサイクル
  3. 製品寿命の延長
  4. シェアリング・プラットフォーム
  5. サービスとしての製品

の5つ。登壇する企業はビジネスモデルによってグループ分けされ、全5回の構成で、取り組みや現状について話し合われました。

■企業の取り組みをシェアするトークセッション、飲食業界の現状は?

トークセッションの中で、飲食業界の企業の発言にフォーカスしてみましょう。
「1.再生型サプライ」のパートで登壇したスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 店舗衛生・環境推進チーム・チームマネージャーの普川玲さんは、抽出後のコーヒー豆や、ミルクの紙パックの再利用についてスピーチしました。

平間さんと大川さんと普川さんがセッションしている写真

「再生型サプライ」についてのトークセッション。モデレーターは株式会社4Nature 代表取締役社長・平間亮太さん(写真左)。登壇者は株式会社大川印刷 代表取締役社長・大川哲郎さん(中央)とスターバックス コーヒー ジャパン 株式会社 店舗衛生・環境推進チーム・チームマネージャーの普川玲さん(右)

国内に1400店舗以上(2019年3月現在)を展開する巨大コーヒーチェーン、スターバックスでは、ドリンクに使う牛乳の紙パックをリサイクルし、その一部を紙ナプキンとして再利用しています。

スターバックスの牛乳パックの画像

スターバックスでは、牛乳パックのリサイクルに取り組んでいる(写真/スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社HPより)

さらに、コーヒー豆かすの資源化にも取り組んでいます。
十数年前、コスタリカに赴いてコーヒー生産地を見学しました。そこで、コーヒーが非常に手をかけて作られているんだということを目の当たりにしたんです。それをきっかけに、無駄にしない使い方はないかと模索し始めました」という普川さん。毎日大量に発生するコーヒー豆かすを有効利用するために試行錯誤しました。

スターバックスのコーヒー豆かすのリサイクルの図

スターバックスの店舗で発生するコーヒー豆かすは、牛の飼料や畑のたい肥として利用。ミルクや野菜となって再び店頭に並ぶという循環を生んでいる(図/スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社HPより)

豆かすを牛の飼料にしよう、という案が出てプロジェクトを進めましたが、牛がコーヒーの焙煎臭を嫌って食べてくれずとん挫。他社の技術者のアイデアで、豆かすを発酵させてから与えることで問題を乗り越えました。その後も、コーヒー豆かすの輸送の面で行政や配送業者とのハードな交渉をクリアする必要があったと言います。
現在、スターバックスの関東、関西の一部の店舗から出たコーヒー豆かすは、牛の飼料や畑のたい肥として利用され、牛から搾乳したミルクはドリンクに、コーヒーをたい肥として育った野菜はサンドイッチ等のメニューに採用されて、店舗に戻ってくる仕組みができあがっています。

1企業のなかで資源の循環サイクルを形成する取り組みは、スターバックスのような巨大チェーンならではのものかもしれません。トークセッションでは他に飲食業界の取り組みとして、飲食店やホテルで出た使用済みワインコルク栓を回収してインテリア等に再加工する株式会社GOOD DEAL COMPANY、まだ食べられるのに廃棄される料理を一般消費者がリーズナブルにレスキューできるアプリ「TABETE」を運営する株式会社コークッキングの代表者の登壇もありました。

Yi Young Yeunさんも登壇した様子の写真

廃材を使ったかわいいアイテムが人気の韓国企業Just ProjectのデザイナーYi Young Yeunさん(写真右)も登壇

飲食業界以外にも、輸送トラックの幌を使ったバッグで世界的に知られているFREITAG lab.Japan、廃材を使ったデザインアイテムが人気のJust Projectなどの代表者も登壇。傘のシェアリング事業で注目されるアイカサや、容器を回収して中身を補充する循環型ショッピングプラットフォームLOOPを運営するTerraCycleのスピーチもありました。LOOPはリサイクル界のポストamazonとの声があるほど今後の成長が見込まれるシステムで、日本進出の予定も語られました。

企業、消費者、行政を巻き込んで活動を続ける「530week」

「530week」の発起人で代表の中村元気さんは「530week conference 2019」を振り返り、
日本って、いい意味でゴミがちゃんと管理されている。なぜプラスチックゴミが世界の海にあふれているのか、実感としてよくわからない人もいますよね。そういうことをそれぞれの切り口で話して、自分のこととしてとらえてもらえる場を作りたいと考えています。
どのビジネスも、これからどう変わっていくかが問われています。例えばプラスチックゴミについていえば、プラスチック業界が悪いわけじゃない。それを取り巻く大きな仕組みを変えなきゃいけない。そのためにも、企業、個人、行政……いろんなレイヤーの人たちを巻き込んでいきたいと思っています」と語ってくれました。

ンの耳でできたクラフトビール「bread」の写真

「530week」と「ブリコラージュ ブレッド&カンパニー」とのコラボで生まれた、パンの耳でできたクラフトビール「bread」

「530week」はこのイベントの後、六本木の「ブリコラージュ ブレッド&カンパニー」とのコラボレーションで、売れ残ったパンの耳を原料にしたクラフトビール「bread」をリリース。「530week」の活動はますます広がりを見せています。
飲食業界や飲食店が当たり前のように廃棄していた資源を、今後どのように活用して循環・再利用し、それを事業化していくか。「530week conference 2019」はそれを考えるためのヒントにあふれるイベントでした。「530week」はこれからも、こういったカンファレンスイベントを開催していくそうです。

■取材協力

イベント名 530week