食の世界をもっと自由に、もっと笑顔にするために。
cookbizが、食の歓びを未来につなぐため、15のアクションに取り組む『15のオイシイことプロジェクト』。
そのテーマの1つである『こども食堂支援プロジェクト』チームが、こども食堂へ実際に足を運び、取材しました。
今回おうかがいしたのは、世界遺産や自然環境に恵まれた福岡県宗像市にあるオーベルジュ・フレンチレストラン「Les Quatre Saisons Munakata」が開催している『宗像子どもフレンチ食堂』。
オーナーシェフである上村秀字さんに、こども食堂開催のきっかけやこども食堂に対する想いなどをお聞かせいただきました。
(取材:2024年4月24日)
──こども食堂を始めたきっかけをお教えください
上村さん:いちばんは「子どもにこそ、宗像の食材の魅力、おいしさを知ってほしい」という思いです。僕はもともとトラックの運転手をしていて、全国のいろんなところに行って食べ歩くのが好きだったんです。そこで出会った宗像市の食べ物がとてもおいしくて、水や海産物、ジビエなど非常においしいものがたくさんあることを知りました。それから北九州市で飲食事業をやっていたんですが、3年くらい前から宗像市にガッツリ入ることになって、宗像市の食材を使ったフレンチレストランを始めました。
最初は、宗像市の農家さんの畑を手伝わせてもらったり、産直売り場のおばちゃんに食べ方を教わったりしました。そのなかで、農家ではいくらおいしくても傷モノの野菜は売れないという食材ロスが多いことや、気候変動の問題、昔ながらの仕組みがあることを知りました。そこで、たとえば割れたトマトや傷のあるキャベツなど、八百屋さんやスーパーに並ばない野菜を使って子どもたちが喜んでくれる料理が作れたら、傷のある野菜がおいしいことを広めていけると考えました。
──対象者と参加人数をお教えください
上村さん:参加者は宗像市内に住む親子で、費用は無料です。参加人数は100人を目標にしました。
100人というのは「30人だったら、50人だったら、すごいかも」と考えて、行きついたのが100人。さすがに店のスタッフも目が点になっていましたが(笑)。
お店が駅から遠いんですが、駐車場がそこまで広くないので、「公共交通機関を使って歩いてきてください」というルールにしました。道中を親子で「何が出るのかな」「ケーキおいしかったね」など、会話してもらいたかったんです。結果的に、車で来た方は1人もいなくて、びっくりして。ご協力いただけたことが、とても嬉しく思いました。
──食材の調達やボランティアスタッフの募集はどのようにされましたか?
上村さん:Instagramで農家さんに向けて「売れない野菜をコンテナでおろしてください」と呼びかけました。農産物を直接売りたいという農家さんも多くて、協力してくれる方は多かったです。もともと農家さんの助けになりたいというのが目的なので、きちんと正規の価格で買い取りました。とはいえ、100人分は正直キツイことはキツイかったです(笑)。でも僕のお給料が減るだけなので(苦笑)。
ボランティアスタッフは、店のスタッフが数人参加してくれて、あとはこちらもInstagramで募集して、20人以上集まりました。
──こども食堂を運営していく上での「やりがい」や「良かったこと」をお教えください
上村さん:子どもが喜んでくれると素直に嬉しいんですよ。もともと子どもが好きなわけじゃなかったのに、こども食堂は楽しいなと思いました。
昔は利益やお金のことばかり考えていたからか、正直仕事が楽しくなかったです。こども食堂は、利益を出す事業ではないし、宗像の野菜、ジビエ、魚がおいしいんだ、ポテンシャルがあるんだということを発信することを目的にしています。自分の使命くらいに思っています。
ただ、自分の作る料理の味は自分では分からないんです。いつもその恐怖とたたかっているんですが、子どもに喜んでもらえると、素直にいい感じでとらえられています。
農家さんが喜んでくれたのも嬉しかったです。農家の子どもたちが「お父さんが作る野菜がこんなにおいしいキッシュになるんだ」と思ってくれたので。
──今後の展開などあればお教えください
上村さん:宗像市は気候風土、テロワールがバツグンにいいです!ポテンシャルが高い宗像市の魅力を、行政に任せるのではなく、自分たちが発信していかないといけないと思っています。
10人や20人の規模ではできないんですが、夢をいえば大島(宗像市にある世界遺産の島)で子どもだけではない食堂をやりたいです。
大島で300人規模の食堂の構想があるのですが、これを周りに話すと聞こえないフリをされます(笑)。いまは大島のひじき、わかめ、甘夏など、特産物の味を確かめにいっています。
宗像市の人と大島の人、どちらも呼んで開催できないかと市役所にかけあっているのですが、なかなか難しいです。でもいつか実現できればと思っています。
まとめ
今回の取材で感じたことは、上村シェフを先頭に、農家さん、ボランティアスタッフ、子どもたち(保護者)みなさんが、わくわくしながら参加されていることです。
宗像子どもフレンチ食堂の当日に見学させていただきましたが、キッチンの中にボランティアスタッフがたくさんいらっしゃり、シェフから料理の説明を受けていました。「トマトを煮詰めていくと赤ではなく、白になる」と説明を受け驚かれていたり、当日のメニューで使用される食材の生産者さんがボランティアのホールスタッフとして入られ、子どもたちが食べる様子を見守っていらっしゃいました。子どもたちは保護者と山道を歩き、お店までやってきて、どんな料理がでてくるのかと期待に胸を膨らませて参加をしていました。はじめての料理に苦手意識を持つ子もいましたが、子どもたちが苦手といわれる食材も食べやすく調理がされており、おなか一杯になった子どもたちは空っぽになったお皿を見せてくれました。
宗像子どもフレンチ食堂を通じ、宗像市の食材や料理の良さを知るだけでなく、地域の方々の人の温かさを感じる場所になっていることを感じられました。
今後も毎月開催をされるこども食堂に注目していきたいと思います。
▼こども食堂の様子を動画でご覧いただけます
撮影協力 : 乙益 大晟
<実施概要>
名称 | 【宗像】子どもフレンチ食堂 |
住所 | 福岡県宗像市三郎丸4-17-4 |
運営 | フレンチレストラン「Les Quatre Saisons Munakata」 |
開催日 | 月1回 ※詳細はInstagramにて |
公式サイト | Instagram ご応募は公式LINEよりお問い合わせください。 |