
昨今、日本国内でも徐々に認知・広まりつつある飲食店におけるベジタリアン・ビーガン対応。
食の多様性を受け入れ、対応していくために、こちらの記事でベジタリアンやビーガンへの違いを理解していきましょう。
今回はベジタリアンとビーガンの違いや、メニュー作りのポイントを紹介していきます。
目次
ベジタリアンとビーガンの違い
最初に、ベジタリアンとビーガンの違いから詳しく解説していきます。
混同されがちですが、両者には明確な違いがあります。同じつもりでメニュー開発をすると、狙った客層に適切なアピールができず、お客様に不満を抱かせてしまう原因にもなるので、しっかり違いを理解しておきましょう。
ベジタリアンとは?
「ベジタリアン」は、肉や魚介類、またそれらを含む食材を摂取しない人のことをいい、「菜食主義者」とも呼ばれています。
ベジタリアンの場合は肉や魚を避けても、卵や乳製品を食事に取り入れるケースもあって、さまざまです。
主なベジタリアンの種類
ベジタリアンの代表的な種類を紹介していきましょう。
ベジタリアンは全てをあわせると、ビーガンも含めて9種類のバリエーションがあるといわれています。
■ラクト・オボ・ベジタリアン
肉や魚介類は食べない一方で、卵や乳製品といった動物由来の食材、昆虫が集めたはちみつは食します。
欧米に多いベジタリアンです。■ラクト・ベジタリアン
肉や魚介類、卵は食べない一方で、乳製品は食します。
インドを中心に多いベジタリアンです。■オボ・ベジタリアン
肉や魚介類、乳製品は食べない一方で、卵は食します。■ペスコ・ベジタリアン
肉は食べない一方で、魚介類や卵、乳製品は食します。
ぺスタリアン、ペスキタリアン、ぺスクタリアンとも呼ばれています。■ポーヨー・ベジタリアン
鶏肉以外の肉を食べないのが特徴で、魚介類や卵、乳製品、鶏肉は食します。
その他ベジタリアンの種類
そのほかのベジタリアンの種類も紹介します。
ここで紹介するのは絶対に肉食をしないわけではなく、食の嗜好として、野菜中心の食事を好むベジタリアンだと考えればわかりやすいでしょう。
■セミベジタリアン
肉食をまったく食べないわけではなく、無理のない範囲で、植物由来の食材だけを食べることを心がけている人です。■ロー・ヴィーガン
植物由来の食材だけを使って、加熱しない料理だけを食す人です。
まったく加熱をしないのではなく、46℃以下での調理を取り入れているやり方もあります。■マクロビオティック
陰陽説に基づき、玄米を主食に野菜や豆類、海藻などを中心に食べる食事法です。
肉類は極力使わないものの、小魚などは食事に取り入れることもあります。
ビーガン(ヴィーガン)とは?
「ビーガン(ヴィーガン)」はベジタリアンのなかでも、肉や魚介類、その加工品だけでなく、卵や乳製品、はちみつといった動物由来の食材を一切口にしない人をいいます。
基本的に植物由来の食材しか食べないため、「完全菜食主義者」とも呼ばれています。
ビーガンの考え方は食事だけでなく、生活用品にも普及しており、近頃は動物由来の素材を使わない衣類や化粧品も見かけるようになりました。
ベジタリアンとビーガンの2つの大きな違い
ベジタリアンとビーガンの違いは、動物由来の食材の一部を摂取するか、しないかです。
ベジタリアンの場合は完全に肉食を排除しているわけではなく、場合によっては卵や乳製品、はちみつなども食生活に取り入れています。ですがビーガンは一切の肉食をせず、100%植物由来の食材だけを食べて生活をしています。
また動物の命を尊重する「エシカル・ビーガン」を提唱する人もいて、革製品を使わないなど、生活全般でも動物由来の素材を排除しています。
世界と日本の菜食主義になる理由や背景
ベジタリアンやビーガンの人が、菜食主義を選ぶ理由を解説します。
肉や魚介類は栄養豊富で旨味が強く、おいしい食材です。なぜ動物由来の食材を摂らないのか理解することで、ベジタリアンやビーガン向けのメニューをどう作るべきか、考えてみましょう。
宗教上の理由
菜食主義を選ぶ理由でまずあげられるのが、宗教上の理由でしょう。インド発祥のヒンドゥー教やジャイナ教のように、殺生を禁じている宗教は多く存在しています。
イスラム教では豚が不浄とされ、一切食べることが認められないうえに、調味料としても使うことができません。そのほかの肉類も宗教上認められた「ハラルフード」以外を食べることができないため、ベジタリアンやビーガンと同様の配慮が求められます。
ハラルと菜食主義は異なるものの、どちらも幅広いお客様に食品を提供するうえで理解しておきたい食文化です。クックビズ総研でもハラルについて詳しく紹介しているため、以下の記事もぜひチェックしてください。
健康上の理由
野菜を多く摂ると生活習慣病や認知症のリスクが減るという研究報告もあり、健康上の理由から菜食主義になる人も多く存在しています。
「ダイエタリー・ヴィーガン」と呼ばれていますが、なかには肉類や乳製品が身体にあわず、菜食主義を選択せざるを得ない人もいます。
倫理的な理由
動物愛護、味覚や栄養のために動物を殺すのは良くないという倫理上の観点から、菜食主義を選択する人も増えています。
このような「エシカル・ヴィーガン」は最も厳格なビーガンとされていて、肉とは直接関係のないはちみつ、骨灰が含まれるベーキングパウダーも食卓から排除しています。
環境保護のため
畜産業が地球環境への大きな脅威となっている指摘もあり、環境保護のために菜食主義を選ぶ人もいます。
こういった考え方は「エンバイロメンタル・ヴィーガン(環境)」と呼ばれており、畜産物を生産する際に生じる大量の二酸化炭素やメタンガス、放牧地を作るための森林破壊、糞尿を処理する際の水源汚染を問題視しています。
世界の食糧問題の解決のため
世界の食糧問題の解決のために、菜食主義を選ぶ人もいるでしょう。人口増加や肉食の増加、異常気象による農作物の不足は深刻な問題です。
肉の消費量や生産量を抑え、予想される世界の食料問題に備えて菜食主義にシフトすることで、より多くの飢餓を救える指摘もあります。
ベジタリアン/ビーガン料理を提供するには?
最後に、ベジタリアンやビーガン向けの料理をお客様に提供するポイントを紹介していきます。
ベジタリアンやビーガンの考え方は外国だけでなく、国内にも広まりつつあります。お客様の食の多様性を尊重することは、飲食サービスにとって重要な課題です。幅広いお客様を呼び込むためにも、ベジタリアンやビーガン料理を無理なく取り入れていきましょう。
ベジタリアン料理の提供に資格は不要
ベジタリアン向けの料理を提供する際は、資格は不要です。ハラルのような厳格なルールがないため、それぞれの理念に沿った料理の提供を心掛けましょう。
NPO法人が行っているベジタリアン認証制度として「V」マークの使用があげられますが、「V」マークは団体の認証が必須ではありません。自発的にメニューに「V」マークを記載できるため、活用を検討しましょう。
認証を行っている機関はいくつかありますので、確認してみてください。
ベジタリアン/ビーガンのメニュー開発
ベジタリアンやビーガン向けのメニュー開発では、基本的には野菜のみで料理を作れば、どのタイプにも対応が可能です。魚や乳製品などを調味料に使っている場合は、メニューに使用食材の表記をすると良いでしょう。
日本に昔からある精進料理は、ベジタリアンやビーガン向けの料理です。メニュー作りに迷ったら、ぜひ参考にしてください。
アプリやサイトを利用する
スマートフォンやインターネットで飲食店を探すお客様は多いため、店舗のHPやSNSで告知したり、アプリやサイトを活用したりするのも賢い方法です。
ビーガン対応の飲食店を探せるアプリ「Bene」、ベジタリアン・グルテンフリー・ヴィーガン対応レストランを検索できるサイト「Vegewel」もあるので、チェックしておくことをおすすめします。
編集後記
ベジタリアンやビーガンに肉食主義と、食の嗜好や食文化は多種多様です。ニーズにあう料理を提供することで、より多くのお客様を呼び込みましょう。
ベジタリアンやビーガンの特徴や背景を理解して、前向きにメニュー開発に取り組むことをおすすめします。