当たり前やけど、伸びる奴は毎日をおろそかに生きていない

生田:三嶋さんは料理のプロであるだけでなく、多店舗展開をされる経営者としても手腕を発揮しておられ、たくさんの人材のマネジメントも必要だと思います。人材育成に対するお考えをお聞かせください。

三嶋氏:僕の修業時代は1日13時間〜14時間、休みなく働きました。今の従業員にそれを強いることはできません。ただ時間の長短にかかわらず、自ら工夫し、同じようにがんばって、それに耐えて這い上がってきた人材は例外なく幹部になっています。新人のころに厳しい環境に耐えてがんばればこそ、やはり伸びるものです。もちろん、現在は新卒も採用し、労働環境も整備しています。その中には10年以上在籍している人材が多数いますね。

生田:飲食業界で、勤務10年以上のベテランぞろいというのはすばらしいですね。

三嶋氏:飲食店を辞める人が多いのは、ほとんどがミスマッチの問題です。つまり、大量採用して、残れる人材だけが残ればいいという考え方です。そのために離職率が必然的に多くなります。うちの場合は大量採用はしません。面接の時にかなり詳しく話をし、入社してイメージが違うという問題をできるだけ排除します。
昔は入ってもらって、ガツンと教育して残れる人材だけが残ればいいという考え方でしたが、今は入って働き続けてもらい、その中で芽が出そうな人材を引き上げていこう──という考え方です。
もちろん、そうした人材を伸ばす優秀な人材と、そば打ちにおける確固たる技術力があることも、うちの強みでしょう。うちは独立して経営者になれるところまで教えられますよ。

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生田:そこは今日のお話でもたびたび出てきたように、ご自身が、密度の濃いお仕事をしてきた結果ともいえますね。

お客さんを裏切ったらあかん、裏切ったらまちがいなく離れていく

三嶋氏:繁盛店にするには、ほかには真似のできないことをすることが大切です。うちでいえば、まずおいしいそばをつくる技術力です。そしてもう一つは、関西でなじみの薄いそばの普及活動をすること。それを30年以上ずっと続けてやっと今、手打ちそばの先駆け店として商品が売れているわけです。
今は、さらに塾を開き、門下生も増え、国から黄綬褒章もいただきました。そうなると名実共に『堅実な会社、良質のそば屋』として認知度が上がります。私たちはそれを裏切らないように、これからも地道な努力を重ねるだけです。だから、裏切ったらあかん。裏切ったら、お客さんはまちがいなく離れていきます。これは社員にも重々言って聞かせています。
知名度が上がってお客様も期待してこられるからこそ、裏切らないようにしなければいけない。コツコツと積み上げてきたブランド力と技術力は、目に見えない大きな力を持つものです。食べてくださったらまた来たくなるというブランド力です。

生田:そこまでのブランド力を築き上げるには、人一倍の努力とご苦労があったと思います。最後に、手打ちそばの第一人者として、また、経営者として、料理界でトップや独立を目指す若手にメッセージをお願いします。

三嶋氏:お客様に愛される繁盛店を作ることは、本当は誰でもできることなんです。ただ、本当にはやろうとしていない。一言でいえば覚悟です。とことんまでやれたか自問自答していないと思いますね。そして一番大事なことは、“その仕事を好きか──”と言うことです。これしかありません。ほかに心を奪われるものがあると、大事なことは成功しません。趣味も生活もすべてがこれに集中している。それが一番の肝です。

生田:圧倒的なエネルギーに、有喜屋さんの原点を見た思いです。「和食」が世界無形文化遺産に登録された今、日本のそば文化も注目が集まりそうですね。これからもますます有喜屋さんに期待しています。本日は誠にありがとうございました。

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編集後記

三嶋さんとお会いするのは実は2回目です。前回は、残念ながら、ごあいさつのみでしたので、今回のインタビューが楽しみでした。今日、じっくりとお話をお聞きして、その圧倒的な人間力に引き込まれました。三嶋さんのお話をお聞きして、20代をいかに頑張るか。これが30代以降の人生を大きく変えることを改めて教えていただきました。社内の若手にも伝えていきたいですね。

クックビズも、この春には名古屋支店を立ち上げる予定です。関西に粋なそば文化を広め、黄綬褒章まで受賞した三嶋さんのように、クックビズも、フロンティア精神をもってカッコ良く(笑)名古屋に進出していきたいですね。
(取材:クックビズ生田)

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