食産業でのキャリア形成の秘訣は?これからの食産業はどうなる?などなど、「食産業の成功者の本音」をクックビズ藪ノがお話を伺いました。
今回、お話をお伺いするのは全国に287店舗(2012年6月末現在)を展開する「鳥貴族」の代表取締役 大倉 忠司氏。
全品280円(税込294円)均一という低価格にも関わらず、ボリューム感のある大きな焼き鳥、元気いっぱいの接客でお客様を魅了し続ける鳥貴族。26年前の創業以来、トップとして組織を牽引し続ける社長の大倉氏にお話を伺いました。
全国287店舗で、変わらぬ接客クオリティ。品質を支えるのは、人が醸し出す「活気」。
藪ノ:弊社は浪速区桜川で創業したのですが、当時、桜川にある鳥貴族様に足繁く通っていました。『近くで安く飲める』ということで(笑)。
大倉氏:ありがとうございます。いま全国に直営148店舗、FC139店舗あるのですが、桜川に本社を置くのは二度目で、一度事務所を移転したものの、再度本社を置いた縁ある町なのです。
藪ノ:先日東京に行った際、都内の鳥貴族様にも伺いました。驚いたのは接客の「統一感」。関西のお店と関東のお店とで、接客クオリティにほとんど差が無いことにびっくりしました。
大倉氏:ありがとうございます。当たり前のことなのですが、ちょっとほっとしました(笑)。
藪ノ:全国展開する際、ネックになるのが関東と関西での「人の違い」ですよね。人の傾向や習慣が違う中で、接客レベルを統一する秘訣とは?
大倉氏:鳥貴族の基本は”活気”。これはチェーン店である以上、全国どの店も同じです。つまりこの”活気”をキープできれば、お客様にはどこの鳥貴族でも、同じ雰囲気を感じて頂けるようになる。基本的に現場は皆に任せるのですが、この”活気”だけはしつこく言い聞かせています。
藪ノ:やはり接客が一番印象に残りやすいポイントですよね。
大倉氏:ちなみに現時点で、マネージャーは関西出身者が多いです。ハイペースな関東の出店に、育てていると追いつかないのが現状。創業の地・関西で育った人の中からマネージャーを選出し、関東を支えてもらっています。
藪ノ:やはり関西のほうが採用しやすいですか?
大倉氏:関西と関東ではやはり「知名度」と「市場」が違います。関東ではまだ鳥貴族の知名度が低い上に競合も多い。人材の取り合いになる関東で採用するより、関西で採って関東へ行ってもらう方が、いい人材に出会える確率が高いのです。
藪ノ:鳥貴族様の”活気”を保つのに、関西人のパワーが発揮されているのですね。同じ関西人としてなんだか嬉しく感じます(笑)。
今の経営幹部は、元・学生アルバイト。「みんなの会社を作る」、その一心で頑張れた。
藪ノ:一般的には5店舗~10店舗、店舗展開をするあたりから、弊社がお手伝いしている人材紹介のニーズが出てきます。ただ時折、創業メンバーに恵まれず、創業の段階で人材紹介の門を叩く方もあるのですが、鳥貴族様ではいかがでしたか?
大倉氏:今の専務と常務は大学生時代、1号店でアルバイトをしてくれていたスタッフです。アルバイト時代に頑張る姿を見ていて、こちらが「誘いたいな」と思った人を創業メンバーに誘っていっただけ。人柄が分かっている分、安心感や信頼関係もありましたしね。
藪ノ:1号店時代のアルバイトさんが、現在経営のトップにいるなんてすごいですね!
大倉氏:恐らく「みんなの会社を作っていこう」という発想に共感してもらえたのだと思います。
藪ノ:1号店時代のアルバイトさんが、現在経営のトップにいるなんてすごいですね!
大倉氏:超ワンマンで利益を独占する社長は少なくないですが、私には最初からその気がなかったのです。世襲制はしない、自分だけの会社にしない。もちろん戦略は描きますし、大切なことはトップダウンで指示します。ただ、それ以外は任せるタイプなので、結果、みんなのやりがいに繋がったのもしれません。
藪ノ:『一緒に働きたい!』とメンバー自らが思ってくれたのは心強いですね。でも飲食業界全体を見ると、若い人が続かない、業界にくる絶対数が少ないというのが現状。この問題点はどこにあるとお考えですか?
大倉氏:やはり「厳しい労働環境」でしょうか。いくら『一緒にみんなの会社を作ろう』、といっても、あまりに身体を酷使する環境では、誰しも耐えられない。飲食業界の「3K」のイメージを払拭させるには、労働環境の整備が不可欠ですね。
また、報酬も他の業界に比べて低い。個人店が多い業界なのでなかなか難しいですが、業界イメージの向上に向けて、弊社も努力し続けたいポイントです。
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