
2015年4月3日、新たなアイデアを持った外食関連企業を支援すべく、株式会社トリドールの100%子会社「TDインベストメント株式会社」が誕生しました。
外食関連企業を中心に投資を行うこの会社はこれからの外食産業を変革する起爆剤となるのでしょうか。
今回、TDインベストメント株式会社代表の小林寛之氏にクックビズ代表 藪ノがインタビューを行いました。
■小林寛之氏プロフィール■
同志社大学 大学院時代に会計士の資格を取得。その後、監査法人トーマツにて監査業務に従事し、3年後某投資ファンドに活躍の場を移す。複数の飲食関連投資業務にあたり、そこで株式会社トリドール代表 粟田貴也氏と出会う。粟田氏から誘いを受け、株式会社トリドール 経営企画室 室長として入社。社内戦略や予算策定、資金調達などの業務に従事し、その功績が認められTDインベストメント株式会社の代表取締役社長に抜擢される。
目次
時代のスピードに追いつくために迅速な意思決定が出来る環境が必要だった
───今回、投資会社「TDインベストメント」(以下:TDI)を設立した経緯はどういったものだったのですか?
小林氏:意思決定を早くしたいというところですね。やはり、比較的大きな会社の意思決定には時間がかかりますが、今の若い人の会社は成長スピードがとても速いので、投資検討に時間をかけているとついていけず、案件が頓挫してしまいます。迅速な意思決定をするためにTDIを作りました。
───これまでも金融系のベンチャーキャピタル(VC)はあったと思うのですが、そういった既存のVCとの連携というのは行っていく予定ですか?
小林氏:いえ。それは全く考えていません。むしろ、私たちは、そういった金融系VCが投資できないような案件に投資していくことが可能だと思っていて、イメージはアメリカのエンジェル投資家のような感じでしょうか。アメリカでは飲食系のスタートアップがスポンサーを獲得しやすい仕組みがあり、当社もそういう若い人が開業するための支援をしていきたいと思っています。
規模にとらわれず面白いアイデアを持った企業に投資していきたい
───既存のVCが投資しないのは何が原因なんですか?やはり、外食産業はあまり理解されていないとか?
小林氏:実際問題、投資できるフェーズではないと考えている投資会社も多いようです。それこそ、そういうところはクラウドファンディングを利用している場合もあると思います。過去には飲食に投資をしてきた時代もあったみたいですが、やはり、インターネットが出てきてからはかなり縮小傾向にあるようです。TDIは飲食関連企業の規模に関係なく面白いところに投資していきたいと考えています。
───海外も投資対象として考えていらっしゃるのでしょうか?
小林氏:結果的には国内が多くなるとは思いますが、そこに境界線は設けていません。
欧米をはじめとした先進国市場、アジアの新興国市場も投資対象として考えています。
飲食特化型クラウドファンディングとのコラボレーション
───※キッチンスターターと協力し飲食店支援を行なっていくというお話を伺ったのですが、その狙いとは?
小林氏:もともと飲食特化型クラウドファンディングサービスという試みそのものが面白いと思っていました。また、我々が協力することで、キッチンスターターで初期段階の資金調達やマーケティングに成功した方の、ネクストステージを支援できれば尚面白いな、と考えています。
※キッチンスターターとは
日本初の飲食特化型クラウドファンディングサービス。店舗・生産者(スターター)と支援者(サポーター)をマッチングさせ、飲食店を支援することを目的としている。スターター側は資金調達だけではなく、自身のアイデアの事前リサーチ、事前マーケティングによる初期顧客層の確保などが可能となる。2015年7月7日よりサービスを開始。
https://kitchenstarter.jp/
───なるほど。基本的にはTDIでもソーシング業務は行うと思いますが、キッチンスターターをソーシング機能のひとつとして活用できれば、クラウドファウンディングやその利用者(スターター)の出口戦略のひとつとなり、まさに三方良しですね。
小林氏:あとは、気軽に飲食店を立ち上げて、それこそ雲(クラウド)のようにふぁーっと進んでいける環境があってもいいのかなと思っています。
飲食店を立ち上げる際のボトルネックとして、初期投資というのが当然あると思うのですが、そういった面でも、キッチンスターターはまさに飲食業界が求めていたサービスなのではないでしょうか。
───要は、自分がいいと思うアイデアを世の中にぶつけてみて良ければ資金提供が受けられるし、ダメなら開業しなければいいということですからね。
小林氏:今の若い方ってアイデアがないわけではないのですが、昔みたいに必死に働いて開業資金を貯める、という考えの方は少ないように感じます。それが悪いことではなくて、時代の流れや価値観の変遷だと思うので、そこをバックアップしていくことが重要だとは思いますね。
───なぜ、今飲食のクラウドファンディングだったんでしょう。
小林氏:新規性というか日本初、というところで飲食特化型があったんだと思います。キッチンスターターさんはITに強くて、我々は飲食に強い。なので、お互いの強みを補完しあっていければいいなと思っています。ITって結局突き詰めればリアルな生活をいかに便利にするかということだと思うので、リアルなところに対してどうやって価値を付加するのかという視点が面白いのではないかと思っています。
───つまりは、ITだけじゃなくて、IT×リアル(店舗)みたいな感じですか?
小林氏:そうです。ですので、実際の店舗を開業するアイデアじゃなくても、そういったITツールみたいなもので面白いものがあれば、トリドールの店舗で使ってみて、良ければTDIで出資するということも視野に入れていきたいですね。
投資側の価値観にとらわれることなく、新しいものを生み出してほしい
───どうしても大きな資本の元では自由度がないと思う方々も多いように感じますが・・・。
小林氏:私たちの経験や体験、価値観を押し付けるつもりは全くありません。そこが、TDIのボトルネックになると考えており、私たちの価値観を押し付けてしまったりするとせっかくの斬新なアイデアも潰れてしまうと思っています。そういう意味で語弊があるかもしれませんが、自由にやってほしいという気持ちです。もちろん、ご質問いただければお答えしますが、投資側の価値観に囚われずあるがままを受け入れることが重要だと考えています。やはり、私たちは何か新しいものが生まれることを期待しているんですよ。
■TDインベストメント株式会社
設立: 2015年4月3日
所在地: 神戸市中央区小野柄通七丁目1番1号
代表者: 小林 寛之
事業内容: 外食関連企業に対する投資および融資
取材/藪ノ 賢次
文/佐藤 朱里