イメージ画像:パソコンのキーボードとスマートフォンの写真

近年は動画配信やアプリなど、さまざまな業界で「サブスク」型のサービスが見かけるようになりました。その動向は飲食業界にも広がりつつあり、コロナ禍においてもリピーターを獲得したり、安定した売上を得たりするための手段として取り入れる飲食店も多くなっています。

今回は飲食店のサブスクの概要やメリット・デメリット、実際の活用事例もご紹介していきます。

飲食店のサブスクは3つの形態に分けられる

最初に、飲食店のサブスクについて詳しく解説していきます。

「サブスク」とは、「Subscription(サブスクリプション)」の略語です。「予約金」や「会費」といった意味があり、ビジネス上では定額課金サービスのことをいいます。従来のように、来店したお客様が食事をするたびに料金を支払うのではありません。利用期間に対して料金を先に支払い、継続してサービスの提供を受けるビジネスモデルです。

飲食店で取り入れられているサブスクには、次の3つのサービス形態があります。

定期使い放題サービス

月額や年額料金が決まっていて、先に定額料金を支払うことで、一定期間食べ放題や飲み放題になるサービスです。ネット配信での音楽聴き放題、漫画読み放題と同じビジネスモデルといえば、イメージしやすいでしょう。

たとえば「焼肉・ホルモン料理 とらじ亭」では、月額2,980円で「月額飲み放題会員」というサービスを実施中。飲み放題会員になると、生ビールやハイボールなどのドリンク飲み放題(2時間)を毎日無料で楽しめます。

割引・無料サービス

定額料金を先に支払うことで、期間中にメニューの割引や無料のトッピングなどをプラスできるサービスです。クーポンのような特典を、サブスク化したビジネスモデルと考えればわかりやすいかもしれません。

たとえば、「イザカヤキツネ」では、月額3,000円で牡蠣を何人前でも半額で食べられるサービスを提供しています。

会員限定サービス

会員限定で来店できる権利や、料金の割引などの特典を得られるサービスです。会員制のバーに似たビジネスモデルで、消費者は年会費を支払って会員となり、長期間に渡ってサービスを受けることが実現します。

たとえば「YAKINIKU FUTAGO 17th St」では、期間限定の特別会員サービスを提供しています。年額16,500円の支払いで、会員だけの特別なアラカルトメニューが半額になるサービスです。(※現在は販売終了しております)

飲食店がサブスクを導入するメリット

現在、中小規模の経営が多い飲食業界でサブスクを取り入れている店は珍しいため、お客様にとっては話題性があるといえるでしょう。ただし、目新しさだけに注目して導入するのは好ましくありません。

サブスクの導入によって飲食店の経営がどう変わるのかを、正しく理解しておく必要があります。

ここでは、飲食店がサブスクを導入するメリットを紹介していきます。

安定した収益が得られる

飲食店がサブスクを導入する最大のメリットは、安定した収益が見込めることです。

一般的に飲食店は、暑さや寒さ、天候、季節によって、集客が大きく左右される傾向があります。しかしサブスクはお客様のリピート利用を前提としており、繁忙期や閑散期にも関係なく一定の売上を確保することが期待できるでしょう。

またサブスクは料金を前払いするため、売り上げを早めに回収でき、突然の出費があっても店が柔軟に対応できるといったメリットもあります。

食材ロスの削減

仕入れや在庫管理がしやすく、食材ロスが少なくなります。

これは、会費とユーザー数に応じて当月の売上目標が立てやすく、必要な食材の見通しがより明確になるためです。この結果、原価率を高めることができ、比較的低価格で料理を提供することができます。お店にとっても、お客様にとってもメリットだといえるでしょう。

来店頻度の向上が図れる

お客様の来店頻度の向上に役立つのも、飲食店がサブスクを導入するメリットのひとつです。

サブスクは「よりお得に利用したい」というお客様の気持ちに寄り添うサービスです。お客様にとっては利用するほどコストパフォーマンスが向上するため、お客様がコンスタントに店に足を向け、継続的な来店が見込めます。

定期的にお店に来てもらうことで、サブスクで利用できるメニュー以外の料理もアピールでき、さらなる売上が目指せるのも魅力でしょう。サブスク導入を宣伝すると、お客様の「試しに利用してみよう」という気持ちを刺激して、新規顧客の獲得でも良い効果を発揮します。

顧客とのつながりが生まれる

店と顧客とのつながりが生まれるのも、サブスク導入の魅力です。従来のビジネスモデルのように、お客様に来店していただき、食べたら終わりのサービスではありません。

顧客とのつながりが深まると、消費者のニーズもつかみやすくなり、さらなるメニューの改善が実現します。またサブスク利用の際に得たお客様の名前や年齢などの会員情報は、マーケティングに活かすことも可能です。

あわせてお客様の連絡先も収集し、新メニューやキャンペーンなどの情報をタイミング良く配信できるため、さらなる集客や来店頻度の向上につながります。

飲食店がサブスクを導入するデメリット

「コスト」のイメージ写真。電卓の脇に散らばった気に金色のコインの上で小さなサラリーマン風の人形がお金について話し合っている。

サブスクを始めるとお店にとってメリットが多い反面、デメリットもあります。

次に、飲食店がサブスクを導入するデメリットについて解説します。

決済システム導入にコストがかかる

サブスクは長期的に見れば安定した売上につながるものの、決済システムの導入など、初期費用にコストがかかります。

特にこれまで現金での支払いしか対応していなかった飲食店の場合は、クレジットカードやスマホ決済といった自動課金システムの導入が必須になります。導入後も随時ランニングコストが発生し、新たな費用が必要になるため、導入前に資金面の計画をしっかりたてておきましょう。

トラブルやクレームにつながることも

サブスクを取り入れたことでクレームが寄せられるなど、場合によってはトラブルが起きるリスクもあります。

サブスクは消費者にとっても魅力的であるがゆえに、本人以外の利用など、プランの悪用が発生する可能性もあります。正規に利用しているお客様に不公平感を抱かせないためにも、権利の貸与や譲渡を防ぐルールを作り、既存の顧客へのフォローに配慮することが大切です。サブスクを停止したり、休会したりする決まりをつくる場合には、しっかりと明記しておきましょう。

サブスク利用のお客様が急増したことで、常連客が来店できないといったトラブルも多いです。顧客離れが起きる可能性が高いため、サービス導入による悪影響を防ぐ対策をたてましょう。

料金設定によっては赤字になることも

サブスクを始めるとき、価格設定は重要な要素です。なぜなら「お得感」や「特別感」を求めて利用するお客様が多いためです。

しかし、その魅力を重視するあまり、サブスクを取り入れたことによってお店が赤字になってしまうこともあります。経営上の問題に加えて、お店で提供する他の商品の価値が下がることにもつながるため、注意が必要です。

一般的に、サブスクは赤字からスタートして徐々に黒字化していく事業です。価格設定をするには、お客様が継続しやすく、お店にとってもだんだんと利益が出るように設計する必要があります。

飲食店におけるサブスクの導入事例

イメージ画像:コーヒー豆が散らばったテーブルの上で淹れたてのコーヒーをカップに注ぐ写真

実際にサブスクを導入した飲食店の事例を紹介していきます。ぜひあなたのお店のサービスのヒントにしてみてください。

COFFEE MAFIA(コーヒーマフィア)

西新宿に店を構える「COFFEE MAFIA(コーヒーマフィア)」は、日本初の月額定額制コーヒースタンドといわれていて、3種類の定額会員コースでサブスクを取り入れています。

コースは月額3,000円のLIGHT会員、4,800円のSTANDARD会員、6,500円のPREMIUM会員と分かれていて、それぞれ割引率や特典が異なり、自分のライフスタイルにあわせた利用ができることで人気を集めています。

串カツ田中

日本全国、海外にまで店舗展開する居酒屋「串カツ田中」は、ドリンク割引定期券「田中で飲みPass」の名称で、割引サービスのサブスクを導入しています。

月額550円の定期券購入で400円以下のドリンクが1日に何杯でも199円になり、3杯注文すれば元が取れるコスパの良さで、若い世代から注目されています。

6curry(シックスカレー)

東京都の恵比寿と渋谷で店舗展開する「6curry(シックスカレー)」は、会員制・招待制のサブスクを取り入れたカレー店として有名です。

会員になるにはすでに登録済みのメンバーから招待されるか、ワークショップへの参加が必要で、月額・年額にわかれて多彩なプランがラインナップしています。メンバープランであれば月額3,980円から、1日1杯無料でメニューを注文でき、プランによってはスパイスキットなどのオリジナルプロダクトを無料で購入できるサービスも受けられます。

野郎ラーメン

東京都をはじめとする関東で店舗展開する「野郎ラーメン」では、月額8,600円の支払いで、1日1杯ラーメンが無料になるサブスクサービスを提供しています。

ラーメンは豚骨・味噌・汁なしの3種類から選択することが可能で、豚骨ラーメンであれば、1ヶ月に12杯食べれば充分に元を取れます。コスパの良さだけでなく、決済手続きはすべてアプリででき、利用時も店員にスマホを提示するだけで済む利便性の良さも、人気を集めている秘訣でしょう。

編集後記

上手くサブスクを取り入れれば、飲食店の安定した収益アップにつながるでしょう。ただし、お客様が魅力を感じるメニューを提供できなければ、良い効果は見込めません。

飲食業の経営で必要なのは、情報収集です。遠回りに見えるかもしれませんが、ぜひこれを機に調べてみてはいかがでしょうか。