イメージ写真:厨房でパンの生地を切り分けて並べているようす

飲食店の開業資金を抑え、リーズナブルに開業できる「シェアキッチン」が注目されています。

では、具体的にシェアキッチンとはどのようなもので、どのような用途で使用するものなのでしょうか。

今回は、シェアキッチンの概要や営業許可を取る方法と、シェアキッチンを活用するメリットについて紹介していきます。

シェアキッチンとはどんなもの?

イメージ写真:厨房で野菜をカットしている料理人さんの手元。

まずは、シェアキッチンとは具体的にどういったもので、どのような用途で活用するのか、の点について解説します。

活用を考えている場合には、使用目的に合うかを判断して、どのように利用するかを検討しましょう。

シェアキッチンとは?

シェアキッチンとは、複数の料理人や飲食店で共同使用するキッチンのことを指します。

「レンタルキッチン」、「コラボカフェ」、「クラウドキッチン」などとも呼ばれ、飲食店経営者だけではなく色んな用途で使用されているものです。

基本的に料理に必要な設備が完備されているため、自力ですべて準備する必要がないのもシェアキッチンの特徴になります。

最近の飲食業界でも注目されており、週末のみや特定の曜日だけ間借りする形で起業しているケースもあります。飲食業界以外にも活用例は多くあり、飲食業に関わる人だけでなく用途や目的に合わせてさまざまな人が利用しています。

シェアキッチンにはさまざまな用途がある!

シェアキッチンには多くの用途があり、営業目的以外にも活用方法は多岐にわたります

たとえば、空いた時間の副業目的に週末起業としてカフェを運営したり、新しいコミュニティを開拓する場として他の業態の料理人とコラボするイベントを開催したりする方法もあるでしょう。

また、実店舗を間借りする形でシェアキッチンとして活用する場合、通常の飲食店として使用することも可能です。

デリバリーのみならず、きちんとイートインスペースを確保することもできるため、個人で開業したい場合や試験運用として利用するのにも適しています

そのほか、営業目的ではなく個人利用として、パーティースペースのように活用することができるのもシェアキッチンの魅力です。

一緒に料理を楽しむ、結婚式の二次会や飲食をともなうイベントを開催するなど、営利目的ではなく一般的な利用を行う場合もあります。

また、キッチンや店舗の設備だけでなく、そこで働く人材もシェアする形で人件費の負担を抑えて、営業を行うケースがあるのもシェアキッチンの特徴です。

シェアキッチンの営業許可に必要な物

イメージ写真:厨房内のガスコンロの写真。無機質な感じ。

シェアキッチンを活用して販売や飲食の営業を行う場合、営業許可を得る必要があります。

基本的に、以下で紹介するふたつの項目を満たすことで営業許可を貰えるので、シェアキッチンの利用を考えている人は確認しておきましょう。

食品衛生責任者の設置

シェアキッチンで営業許可を取る場合であっても、当然ながら「食品衛生責任者」を置く必要があります

食品衛生責任者とは、食品の提供が衛生的に行われるように、調理や管理が行える人材のことを指します。

食品衛生責任者を設置していれば、調理師資格の有無問わず販売を行うこともできるので、営業許可申請の際に必要になる重要なものです。

食品衛生責任者の資格を得るためには、自治体の講習を受講する必要があります。

自治体によって異なりますが、調理師や製菓衛生師、栄養士などの有資格者は、講習を受けることなく申請できる場合もあるので確認しておきましょう。

食品衛生責任者資格は、以下の手順で設置の手続きを行います。

  1. 営業施設のある市区町村の保健センター(食品衛生の担当窓口)に「食品衛生責任者設置状況届」を提出する(講習会修了証明書などを持参)。

    もしくは、これから講習を受ける場合は「食品衛生責任者講習会受講申込書」を提出する。

  2. 受講日時や場所などの通知が受講日の約1週間前に届く。
  3. 講習会に参加する(必ず本人が受講すること)。
  4. 講習会終了後に受け取る食品衛生責任者プレートに氏名や講習会終了年度を記載・添付して店内に掲示する。

食品衛生責任者の資格は、基本的に1日~2日の講習を受講すれば取得ができます。

ただし、自治体によって調理師などの有資格者でも受講が必要になるケースや、申請のみで良い場合など取り扱いが異なるため、必ず確認しておきましょう。

条件を満たしたキッチン

保健所のルールでは、生活用のキッチンと営業用のキッチンは分けなければならないとされています。

これは、食中毒を予防するための措置です。営業許可申請を行う際には、営業用の食品を取り扱うための設備をきちんと準備できているか、というチェックを受けることになるので準備しておきましょう。

また、物件内のキッチンを改装することでも申請可能ですが、流しを二槽設置するなど営業用の基準を満たす必要があります。

そのほか、イートインスペースがある店舗の場合は、手洗器も設置しなければなりません。従業員用とお客様用をわけるなど、衛生管理において重要な設備ですので必ず設置するようにしましょう。
ただ、シェアキッチンであれば飲食店の店舗を内装からすべて工事する必要がないため、既存のキッチンを活用することができます。

紹介した基準のほか、どのような基準が求められているのか、自分の店舗が基準を満たしているかわからない場合は、申請前に保健所に相談してみることをおすすめします。

メリットが豊富なシェアキッチン

役所での手続きイメージ写真。ビルのような形の積み木に「役所」という看板が貼られており、手前には紙幣が置かれている。

シェアキッチンは開業しやすく、開業してからもさまざまなメリットが受けられるためおすすめです。

ここからは、一般的な使用ではなく、営業目的にシェアキッチンを活用する場合のメリットについて紹介します。

リーズナブルに開業可能

シェアキッチンを活用すれば、リーズナブルに開業できる点がメリットのひとつです。一般的に飲食店の出店にかかる費用は、数百万円から1,000万円程度必要だといわれています。

一方で、シェアキッチンであれば数十万円から300万円程度で開業できるうえに、月額制でレンタル費用の支払いができることも少なくありません。

また、複数人で共同開業・使用するため、初期設備投資にかかる費用が分散される利点もあります。

さらに、近年ではレンタル用としてシェアキッチンの貸し出しを行っている企業も増えており、そのサービスを活用するのも良いでしょう。

一般的な開業では初期コストの負担が大きいことからリスクがともなうものの、シェアキッチンだと低リスクで開業できるのでおすすめです。

スキルを共有できる

シェアキッチンを共有している同業者と協力することで、スキルの共有ができるメリットもあります。

調理の技術的な面だけでなく、自分が提供しているメニューとは異なる、多種多様な料理を提供している事業者と関わることができるためです。

他ジャンルのメニューからインスピレーションを得て、自分のメニュー開発にも反映できる場合があるので、スキルやメニューの品質向上に役立ちます。

また、効率の良い提供方法などのアイデアも共有できるので、ひとりで営業していると知ることができなかった情報を得られるのもメリットではないでしょうか。

編集後記

シェアキッチンに必要な営業許可を得るには、ある程度の事前準備が必要になります。調理師免許など、取得に時間のかかる資格は必須ではないので、比較的容易に開業できるのもシェアキッチンの魅力です。

「開業資金をたくさん用意することができない」、「できるだけ低リスクで開業したい」という場合でも活用できるので、シェアキッチンを利用した開業を検討してみてはいかがでしょうか。