「今日はどこで食事をしようか?」飲食店を探す際、お客様は何を情報源にしているのでしょうか。あるネットリサーチ会社による「飲食店情報の検索に関するアンケート調査」(2017年)では 、こんな調査結果がでています。
飲食店情報を調べる際の情報源
(本・雑誌やインターネットを使う方)あなたは、本・雑誌やインターネットで飲食店情報を調べる際に、どのような情報源を使っていますか。(複数回答可)
情報源ランキング
- パソコンのインターネットサイト(73.4%)
- スマートフォンのインターネットサイト(34.7%)
- フリーペーパーやグルメ雑誌などの紙媒体情報(30.1%)
- スマートフォンのアプリ(16.9%)
- タブレット端末のインターネットサイト(6.1%)
- 携帯電話のインターネットサイトや検索メニュー(2.4%)
複数回答のアンケートですが、パソコンを使ってインターネットで情報収集する人が7割以上。スマホは3割。お客様がこれだけインターネットを利用しているのですから、飲食店が集客力を上げるには、ネットで上手く情報発信していくことが大事です。
しかし実際は、放っておいてもグルメサイトが情報を収集・発信してくれるため、オリジナルのホームページを持たずにSNSでしか情報発信していない飲食店が目立ちます。
飲食店は独自のホームページを持つべきなのか。ホームページを持つことのメリットは何なのか。ホームページ作成サービスを運営する2社に聞きました。
Web業界の2社に聞く、飲食店がホームページを持つべき理由4つ
■ホームページを持つべきかどうか、議論することに違和感がある
飲食市場に特化したマーケティング支援に取り組む、株式会社favy代表取締役社長高梨巧さんに飲食店がホームページを持つべき理由を聞くと「そんなことを話題にすることに違和感がある。逆に、ホームページを持たない理由を聞きたい」との反応が返ってきました。
「ホームページを持たないケースが多いのは飲食業界ぐらい。アパレルだってメーカーだって、通販サイトで商品をくわしく紹介されていても、それとは別に自社のページをきちんと作っています」(高梨さん)
グルメサイトに情報が掲載されているから自分たちのホームページは必要ないという考えは改めるべきだと指摘します。
理由1…ホームページはプロモーションの基盤になる
ホームページを持つことは、Webマーケティング、プロモーションの基本。飲食店からお客様に向けての情報発信にとどまらず、どのくらいの数の、どういったお客様が店に興味を持ってくれているのかを店側が知る基盤になると高梨さんは言います。
実際に、高梨さんはある店の名前を検索してみてくれました。トップに出てきたのはクーポン付きのグルメサイトのページ。「お客様が正確に店名を入力して指名検索しているのに、他社が運営するサイトに行ってしまう。ホームページに来てくれればお客様のデータが取得できるのに、店は機会を逃しているのです」(高梨さん)
興味を持ってくれているお客様の数や、検索の経路、ページでの滞在時間など、マーケティングのベースとなる有益なアクセス解析情報をわざわざ他社のサイトの成果にしてしまっているということです。さらに「指名検索してくれているお客様はクーポンなしでも来店してくれる可能性が高い。でも、あるなら使いますよね。結局、ホームページがないことで、店は自分の首を絞めているのです」(高梨さん)
理由2…広告戦略の幅が広がる
広告の面でもメリットがあります。「積極的にWeb広告を出したい場合、ホームページがあればリスティング広告を仕掛けることができます」(高梨さん)
リスティング広告とは、検索ワードに合わせて検索画面上に広告を表示するもので、ジャンルやエリアなどお客様のニーズと店の情報が合致した場合に店をアピールできるため、効率的で効果的です。
ある条件下で飲食店を探しているお客様に、その条件に合った店が名乗りを上げられるので、facebook上で広告を出すよりも実際の来店につながる効果が望めるとも言えます。ホームページがなければ、こうした広告戦略を打つことがそもそもできません。
■SNSではなく、ホームページでしかできないことがある
ホームページ作成サービス「Jimdo」を提供する株式会社KDDIウェブコミュニケーションズの古矢美歌さんは「ホームページがあるかどうかで、お客様の信頼感・安心感に違いが出てきます」とし、こうした効果はSNSの運用だけでは得られないと言います。
理由3…お客様の信頼感が得られる
「どの店に行くか悩んで検討している時、お客様は想像以上にいろんな情報を集めています」(古矢さん)
例えば、まず検索エンジンで検索ワードを入力して、あるグルメサイトに行ったとします。そこで気になったお店のページにオフィシャルサイトのURLがあると必ずアクセスします。
「お客様は『誰かの口コミや、SNSで流れてくる投稿以外のことも知りたい』と、オフィシャルサイトから発信される情報を無意識に求めています。お店の雰囲気やシェフの考えをチェックしたいんです。さらにネット上のホームグラウンドとしてお店のホームページがある状況は『ちゃんと店舗を構えて営業している』という信頼感を与えます」(古矢さん)
理由4…店独自の情報発信ができる
さらに古矢さんはfacebookなどのSNSではなく、ホームページでなければ発信できない情報があると言います。「ホームページはページの追加も自由ですし、好きな場所に動画や画像などのコンテンツを配置できるので、独自の情報をお店のカラーで表現できます」(古矢さん)
Jimdoを使って情報発信をしている和食店「下丸子一休」の店長はホームページを作ってよかったと実感しているそうです。
「料理長の思いや、一品一品の料理の説明など、接客時に必ずしもすべてのお客様に伝えきれないことを文章にして伝えられることがうれしいと。ホームページはお客様のための情報発信でもあり、店が伝えたいことを自由に表現できる場でもあります」(古矢さん)
ホームページは簡単に低コストで開設できるようになった
マーケティングやプロモーションの選択肢の広がり、お客様からの信頼感獲得、店からの自由な情報発信など、店独自のホームページを持つべき理由はさまざまあります。
一昔前は、ホームページを作りたくてもコストや時間がかかり、技術的に難しいというハードルがありましたが、今は簡単に低コストで開設できる選択肢が増えています。
具体的に2社のサービスを見ていきましょう。
■スマホだけでホームページ開設・更新ができる
株式会社favyが提供するホームページ作成サービス「favyページ」は、スマートフォンのみの操作でホームページが開設でき、更新もスマホで完結します。
飲食店に特化したサービスだということも「favyページ」の大きな特徴です。テンプレートは飲食店にとって使いやすい仕様になっており、メニュー写真の追加や更新も簡単。予約システムにも力を入れており、favyが運営する「favy予約」をはじめ、「Yahoo!ダイニング」など他社予約サイトとの連携も充実。英語翻訳にも対応しており、インバウンド客へのアピールも万全です。
ホームページは無料で開設でき、独自ドメイン(店固有のURL)を持つことができます。有料の「プレミアムプラン」に加入すれば集客強化のための広告を出すこともできます。
■対面で相談できる窓口を準備
株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ運営のホームページ作成サービス「Jimdo」はもともとドイツで生まれ、利用者は世界中に広がっています。飲食店に特化したサービスではなく、学生や個人事業主、中小企業など、幅広いユーザーがいます。
「Jimdo」の特徴はデザイン性の高さ。複数あるフォーマットからレイアウトを選び、写真や文章を反映。カスタマイズも自由にできますが、ユーザーがどういじってもすっきり洗練された見た目をキープできます。かっこ悪いホームページを公開するくらいならないほうがいい、と考えている方は検討する価値がありそうです。
サポート体制もしっかりしており、わからないことがあった場合、全国で展開している勉強会「JimdoCafe」に参加すれば専門家から直接アドバイスがもらえます(基本的に不定期開催、勉強会参加は有料)。
ホームページ開設は無料。有料プランでは独自ドメインやメールアドレスを持ったり、アクセス解析のサービス等が受けられます。
無料で簡単にホームページを開設できるサービスは増加しており、作る意志さえあれば誰でも独自のホームページを持つことができます。
「ホームページは接客の一歩目。大金をかけてしっかりしたページを作るかどうかは店ごとの判断ですが、ページを開設すること自体は手軽になっていますから、持たない手はないですよ」(「favy」高梨さん)
「ホームページは、ないとダメ、というものではないのかもしれません。でもオフィシャルなページがある店とない店とでは印象が違います。ネット上に店の看板を立てることは大事です」(「Jimdo」古矢さん)
ネットの活用がますます重要になってくる中、各飲食店がオリジナルのホームページをもつ風潮はこれから広まっていくかもしれません。
■取材協力
企業名 | 株式会社favy |
企業名 | 株式会社KDDIウェブコミュニケーションズ |
サービス名 | Jimdo |