佐野直史氏
2006年の1号店オープン以来、2013年12月現在25店舗を展開中。愛知県・三河地方を中心に急速に店舗数を増やしている「伝串 新時代」は、株式会社ファッズの自社ブランド。『伝串』とはオリジナルの「伝説のスパイス」「伝説のタレ」を使用した看板メニューで、リピーター続出中だ。

そんな勢いある株式会社ファッズを牽引するのは、代表の佐野 直史氏。今回は、プロサッカー選手から飲食業界へ飛び込んだ佐野氏に、クックビズ藪ノが直撃。独自の視点や経営手法を探ってきました。

一度来たら「また来たい!」と思ってもらえる。悪条件な立地でも売上をあげる自信があった

ファッズ佐野氏

藪ノ:名古屋の南東辺りのロードサイド中心に店舗展開されていますが、何か理由はあるのでしょうか。

佐野氏:1号店を出したのがこの辺りだった、ということですね。独立して、最初から300坪くらいの物件を求めていたんですが、北陸から関西・中国地方などの西日本を半年くらいかけて探し回りました。その中で偶然、高浜市に250坪ある物件の話が出てきて。情報を調べてみたら当時人口は約3万7千人、畑と鶏小屋しかないような場所の物件でした。周辺に店がまったくなくて、これは喜んでもらえると思いましたね。

藪ノ:人の少ない場所で出店することについて、不安はなかったんですか?

佐野氏:うちの平均客単価は2,000円なんです。高級食材を求めるのではなく、一般的なサラリーマンの方が家計や小遣いの中から行くことができる。2,000円でこの料理なら良し、そのうえ仲間とワイワイ楽しく飲めて、明日からまた頑張ろう!という気持ちになって帰ることができる。そこにうちの価値がある。

実際にお店作りを始めてから前を通る方々が、「ここでは絶対に売れないよ」って言うんですよね。さらに物件開発を専門にしていた人が来てくれたんですが、その方も「佐野さんにどれだけ力があるのか知らないけれど、ここでは上手くいって月300万円だよ」と言われました。

それでも僕は「そんなことはない、絶対に売れる」と信じていましたね。で、結局開店してみたら初月の売上は1,000万円でした。だいたい来店客数が1カ月で5,000人くらいでした。人口の約6分の1ですね。リピートされるので実際は少々違うかもしれませんが、それでも非常に多くの方に来店していただきました。

藪ノ:2006年9月28日に1号店をオープンし、現在は直営22店舗、FC3店舗。1号店から丸7年が経過されていますね。

佐野氏:波はありましたけれど、7年間トータルでみるなら右肩上がりできたかな、という印象です。最初の店を出してから、2号店までは1年半かかったんですよ。3号店まではさらに半年、そこから4号店までは1年空きました。結局4年間で5店舗でしたね、最初は。

駅前などのテナントで、駐車場などの外工、建物の基礎工事、構造体の建方などコストを掛けずに作って、といった展開ならもっと出店の伸びは早いと思いますけど。うちみたいに更地から何千万とかけて、一からお店を作るとなると、金融機関から事業実績が少ないから心配だねと言われて借入ができなかったという問題もありました。

1,000万売れる“空気”を感じる土地を探す。居抜きだからといって惹かれない

伝説の串新時代

藪ノ:最近は居抜きの業態も流行っていますが、更地から出店することを徹底されています。何かこだわりがあるのでしょうか。

佐野氏:こだわりはありますね。最初のイニシャルコストについては高くても低くても、結局どっちでもいいんです。目の前に居抜きの物件があって、安い投資で展開できるからと開店させたところで、後々のランニングが大変ですよね。

それよりは、自分の中で初月1,000万売れるんだ!と思えるような空気を感じる土地を探します。2号店は材木工場があった場所を空けていただきました。

藪ノ:そこまで!それはどうしてですか?直感ですか?

佐野氏:そうですかね(笑)。中心地から結構離れている郊外で。1時間あたり1~2台しか交通量のない変わった土地でした。でも、引き込まれる空気を感じて。ここなら人が集まって、月商1,000万円売れるんじゃないかと感じました。

また専門家が来て、「絶対ダメ!」と言われましたが、そこも結局、月商で1,000万円売れましたね。良い立地と売れる立地は違います。良い立地は“データ上、良い”というもの、売れる立地は“感覚的に良い”というものと考えています。

藪ノ:その気というか、空気というものを分かりやすく説明していただくことはできますか?

佐野氏:例えば、ある物件に空気が流れているのか、出ているのかを確かめる為に、物件を背にして周囲を見るんです。空気を感じる物件の場合、歩行者や車に乗ってる人と目が合うんですよ。これは物件に流れ込む空気に引き込まれている証拠。他にもいくつか空気の感じ方はあります。

今は用地開発の1次選考は開発部長に任せ、最終判断は自分がしています。当初の感覚を大切にしながら、データの要素も加えていますね。創業時と比べ出店スピードが速い為、目標額を決めて、それをクリアしそうな物件ならOKとしています。

藪ノ:創業時のメソッドを大切にしながら、今の状況に合わせて判断軸を変えてらっしゃるんですね。用地開発は、どこで学ばれたんですか?

佐野氏:前職は営業部だったので、立地開発には携わっていませんでした。本を沢山読んだりしましたが、本質は絶対分からない。実際いろんな現地に足を運ぶうちに感性が磨かれていったんだと思います。

何もわからないところから店長に。売上不振店をまとめるマネージャーを経験

ファッズ佐野氏

藪ノ:佐野様は、プロサッカー選手から飲食業界へ転身されています。異業種から入社し、店長として早期に頭角を表し、業績NO.1で表彰されたと伺っています。飲食業の感覚というのはすぐに掴まれたのでしょうか。

佐野氏:最初はなんにもわかりませんでしたね。店長になってからも、数値計算の仕方とか原価率とかいろいろ言われて、分からないことばかりでした。でも、お店に来てもらえたお客さんに喜んでもらいたいとか、スタッフみんなが元気で明るい職場を作ろうとか。そんなことは飲食業に限らないからわかる。

月に2回くらいスタッフを全員集めてミーティングを開いて、こんな店にしよう!と語りあったり、勝手に表彰項目を自分で作ってアルバイトスタッフを表彰したりとか。みんなで頑張ろう!という雰囲気を作りあげていました。

藪ノ:独立開業というのを意識されたのはいつ頃ですか?

佐野氏:それは飲食業界に入る前からですね。1年で店長としてある程度成績を残せたんですが、その頃に本部からマネージャーをやらないかって声掛けをいただきました。独立したかったので最初は断ったのですが、今の僕の師匠、当時の上司から「もっと広く見ないと失敗するぞ、1店舗の成功だけでなく他の店舗を見て力をつけないと」といったアドバイスいただきました。

マネージャーのポストについて不採算店も4店舗担当することになりました。

藪ノ:SVとして売上不振の4店舗を任された。そういった不振店の場合、まず何から着手されて売上を伸ばされるのでしょうか。

佐野氏:ただ目標や予算を並べても、本気で達成しようとする気持ちが無ければどんな策を打っても意味がない。店長を立てながら、アルバイトも含めてみんなでミーティングをしよう、と声をかけてまわりました。そういった全体ミーティングを繰り返して「よし、やろう!」と。「みんなで頑張ろう!」という雰囲気を作ったあとで、具体的に取り組んだのは掃除です。

藪ノ:嫌々参加される方も中にはいらっしゃると思うんですけど、そのあたりは?

佐野氏:そのとおりですよ、声をかけても、最初は1人、2人しか来なかったですね(笑)。僕と店長の2人だけしかいない時もありました。これではアカン、ただ集まれといっても来てくれない。じゃあどうしよう、というので実際に僕もスタッフと現場に入りました。実際の営業の中で本当はもっとこうしたいんだよねとか、予算はこれくらいだけど、今現在このくらいしかなくて俺はくやしいんだよね、とか。そういった話を1人ずつ徹底的にして、説得してまわって。最終的にみんなに集まってもらえた。

そこからチーム作りですよね。「みんなは今、どよんとした空気の中で、全然楽しそうじゃない。まずは楽しく働こうよ」と。売上も200万くらい、でも同じ時間を楽しく働いて700~800万上げるとこもある。みんな時間を無駄にしてないか、みんなで上を目指そうって話をしたらアルバイトの子も「頑張ります!」と言ってくれました。

藪ノ:楽しく働きたい、っていうのはみなさん持っておられますよね。

佐野氏:一生懸命やるのが恰好悪いみたいな空気を取っ払ってあげて。「失敗すればいい、失敗しても一生懸命やる、それって恰好よくないか?」なんて言いながら、小学生の頃に忘れてしまったがむしゃらな何かみたいなものを思い起こさせて。そこからチームが回りだすと強いですね。

300万になった、400万になったって時に「目標までもう少しだ!」といった雰囲気になると、僕が思い付かなかったようなアイディアがアルバイトからも上がってきたり。そんなのもあったか、これもやってみよう、と全てが良くなっていきましたね。そうしたことを繰り返した結果、任せられた当時、不採算店だった4店舗は、半年後には1店舗だけ500万台、あとの3店舗は600万円台に乗っていました。

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