
新卒社会人にとって「入社式」は大きな節目。さまざまな不安と期待を胸に、学生から社会人へと変化する人生の中でも重要な転換期です。
最近では入社式に親(保護者)同伴OKの企業が増えているようですが、ここでは飲食業界における新卒入社式の最新事情と「入社式」の準備についてご紹介します。
離職率にも関わる入社式前のフォロー
春に入れ替わるアルバイトや中途入社希望者の採用活動が山場を迎え、新卒入社式の準備も同時進行で進めなければならないのが3月〜4月の春先。
会社側にとって慌ただしい時期ではありますが、そんな時期だからこそ、新卒社員の離職率を抑えるための入社式前フォローは忘れずにしておきたいものです。
■内定者のモチベーションを上げるコミュニケーション
入社前の内定者(新卒社員)は新たな期待とともに不安な気持ちを抱えていることが多く、その不安が拭えないままでいると、入社後すぐに退職したり、体調を崩してしまうことがあります。
ですから、内定者時代のフォローは大切。繁忙期にはつい後回しにされがちですが、会社側から定期的なコミュニケーションを取るのが理想的です。入社への気持ちを高め、会社を身近に感じてもらう上では、社内報の送付なども効果的なアプローチのひとつでしょう。
■親(保護者)を交えた懇親会の開催
内定者同士の親睦を深める懇親会は多くの会社で取り入れられていますが、最近では内定者と親(保護者)も交えた懇親会や、親(保護者)向けの懇親会を開くケースも見受けられます。
こういった施策の裏側には、昔と比べて今の親子は距離感が近く、子どもの就職先の決定に親(保護者)の意向が大きく反映されていることがあります。
■入社のための必要書類等の準備、学校卒業の状況確認
初めて社会人となる新卒社員の場合、社会保険等の手続きなどは未知のことばかり。提出が必要な書類については、会社から丁寧な説明や案内を示す必要があります。
また、例年2月には大学等の試験が終わることから、ちゃんと卒業できるのかを事前に確認しておくと安心です。入社ギリギリで「実は、卒業できませんでした…」と報告されることもありますので、注意が必要です。
親(保護者)同伴はあたりまえ!?今どきの入社式最新事情
4月になるとニュースでもよく取り上げられる入社式ですが、最近では親(保護者)同伴で行われる入社式が話題になっています。おもしろい企画でプロモーション効果を狙う会社も増えていますが、実際に飲食業界ではどのような入社式が行われているのでしょうか?
■入社後の定着率にも関わる?「親(保護者)」に関わる最新事情
入社式に限らず、会社説明会や内定式の中で親(保護者)向けのプログラムを組む会社は飲食業界でも年々増えています。
例えば、3月頃に内定者の親(保護者)向けの会社説明会と懇親会を行い、4月の入社式にも参列してもらうなど、企業と親(保護者)との距離感はかつてと比べるとかなり近くなっています。
■「親子の絆が感じられる」入社式プログラム
今どきの入社式では、新卒者から親(保護者)への感謝の言葉を伝えたり、親(保護者)からのサプライズレターが新卒者に渡される、といったような親子の絆を感じられるプログラムが取り入れられることもめずらしくありません。
親(保護者)に会社のことを深く知ってもらうことが必要だと考える会社が少なくないことが伺えます。
こうした親(保護者)を意識した取り組みは、近年特に親子関係が密接になっていることが大きく影響しています。入社後に職場や仕事上での悩みを親(保護者)に打ち明ける新卒者が多いため、まず親(保護者)に職場のスタンスや雰囲気を理解してもらい、安心してもらうこと家庭内でのフォローにつながり、それが新卒者の定着率にもつながるという期待が会社にはあるのです。
新卒者の離職を防ぐための入社式後プログラム
新卒者の離職率を左右するのが導入研修。ほとんどの会社では入社式後すぐに新卒者向けの研修を実施しますが、実際のプログラムをご紹介します。
■入社後すぐの合同研修
入社式後、多くの会社で取り組まれているのが新卒者向けの合同研修です。座学スタイルを中心に、1日のみの開催もあれば、長いところでは1週間ほどかける会社もあります。
合同研修を経て、各配属先で行われるOJT研修とプログラムが被らないよう、どの研修で何を教えるのについては、事前の調整と連携が大切です。
新卒者向けの合同研修に盛り込まれる代表的なプログラム内容には、主に次の2つがあります。
ビジネスマナー
身だしなみや敬語の使い方、接客の基本など、社会人としての基礎を学びます。現場でとても大事な「ほうれんそう(報告・連絡・相談)」や「期日は必ず守ること」といった社会常識・ルールも含まれます。
業界や会社の基礎知識
業界の構図や理念の共有、商品の基礎知識など会社の一員として働くために必要な知識を学びます。業界の大きな流れやビジネスモデルなども理解してもらうことで、より高い視点を持つ新卒者を現場に送り出すことができます。
■配属先で行うOJT研修
合同研修を経た新卒者は、それぞれの配属先でOJT研修を受けることになります。OJT研修を成功させるためのポイントには2つあります。
OJTの指導員選定(新卒者を見守る環境作り)
指導員の選定には新卒者との相性もある程度は考慮する必要があります。また、指導員だけに新人教育を任せきりにするのではなく、配属先のメンバー全員で新人を育てる意識を醸成する必要があります。
社内にSNSを活用したコミュニケーションツールがあるなら、掲示板などで「明日から○○さんが配属されます。みなさん、お声がけよろしくお願いします」といったメッセージを配信するなど、温かいコミュニケーションを醸成する工夫はとても大切です。
「いつまでに・何ができるようになるか」の目標設定
実務経験を通して直接学んでもらうOJT研修は、漠然とした目標設定の中で行われることが多いですが、「いつまでに・何ができるようになるか」を明確に目標設定しておくとよいでしょう。
例えば、配属の1週間後には、何を知っている状態にするのか、1カ月後には何ができる状態にするのか、3カ月後は…といった具合に、新卒者も成長の度合が可視化できれば、達成感ややりがいを持って業務に取り組むことができます。
まとめ
新卒者が期待と不安に胸を膨らませて臨む入社式。年々様変わりする入社式ですが、共通するのは「この会社で頑張ろう!」と社会人としての夢を描いてもらう場であるということ。その夢を育むためにも入社前の受け入れ準備と、入社後の人事・配属先現場が連携した研修やフォローアップは綿密に進めていきたいですね。
■この記事の指南・監修
クックビズフードカレッジ講師 荒木寿夫
大学卒業後、アパレルメーカーを経てマンションコンシェルジュ、飲食業界で人事・採用・教育を担当。現在、クックビズフードカレッジにて、飲食業界の各企業向け人事ノウハウや研修サービスを提供。飲食業界や人材業界での知見を活かしたメディア出演も多数。
クックビズフードカレッジ
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