JR福島駅からほど近い住宅地の一角。大通りを少し離れた先にあるマンションの1階にその店はあります。一見しただけでは、そこにレストランがあるとは分からない。扉をくぐり、巧妙に視界を遮る壁を抜けた先に突如現れるのは、大きなガラス窓越しに腕をふるうシェフたち。キッチンと客席が一体感をもつ独特の造りが、「ポワン」ならではの“活きた“雰囲気を生み出している。カタカタ、トントン、ジュワッ、耳をくすぐる音と、店全体をまとう豊かな香りが空腹を誘う。だれもがこれから始まるストーリーへ期待を膨らませ、心躍らせることになるでしょう。
このレストランを率いるのは、オーナーシェフの中多氏。同氏が2007年に大阪・西天満で開業したフレンチレストラン「アキュイール」は、ミシュランガイドで2つ星を獲得。大阪を代表するフランス料理店のひとつとして、多くのファンを魅了した。後に場所を福島へと移し、2013年4月に「レストラン ポワン」をオープン。
フレンチの伝統を意識しながらも、自身の感覚を大切にするという中多シェフ。素材の持ち味を最大限に引き立たせることをめざした、至高の一皿が愉しめます。明朗快活、ナチュラルな魅力を持った中多氏に話を伺いました。

インタビューのポイント

point.1 フレンチを日本人が好きな「できたて」「あつあつ」で提供するスタイルがこだわり。その実現のため、店をオープンキッチンに
point.2 修行した本場フランスの名店でも、日本で培った料理の技術は十分に通用した
point.3 お店のチームとしての密度を高めるため、スタッフは全員正社員に。完全に役割分担するよりも、スタッフ全員が全ての調理をできるのが理想

 

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調理学校には行かず、未経験から直接料理の世界へ

料理の世界に入ったきっかけは?

中多氏:
大学生時代はまったく料理に興味がありませんでした。たまたま友人が営んでいたバーを手伝うことになり、そこではじめて料理を作ることになったんですね。料理の本を買ってきて、家庭料理レベルのものを見よう見まねで作る。それまでは包丁もまともに握ったことがないくらいの、完全に素人状態でした。

実際に料理を作るようになると、当時のイタリアンブームも手伝って「もっと作ってみたい」と興味をもつように。さらに偶然連れて行ってもらった、人生初のフランス料理店ですごく感動して。「こんな料理を自分で作れるようになりたい」と思ったのが、この世界にのめりこむきっかけとなりました。

調理の専門学校を卒業している兄からアドバイスを受けて、学校に通うのではなく直接店で働かせてもらいながら修行することになりました。

 

どのような修行時代でしたか?

中多氏:
まず最初に入ったのは、江坂にある店でした。ここはチーズ料理やフレンチ、イタリアンを幅広く出すレストランで、基礎からフレンチ・イタリアンを学ばせてもらいましたね。それから経験のために結婚式場で働いた後、26歳の時に淀屋橋のフランス料理店「ラ・クロッシュ」に入店。

私の修行時代はすごく厳しい環境というわけでもなく、良い先輩に恵まれていましたね。ただ料理については「見て覚えろ」というスタンス。毎日キッチンで先輩たちの仕事ぶりを見て、「これ、できるか?」と聞かれた時に「できます」と言えるよう、独学もしていましたね。「だれかに師事する」というのではなく、その時々で一緒に働いていた先輩たちから、多くを学ばせてもらいました。

その後、フランス料理を本格的に学んでみたいと思うようになり、フランスへ渡りました。

 

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